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“奈良で仕事をつくる”ってどうやるの?プチ起業したママに聞く特集「ママごと・しごと・じぶんごと」キックオフ対談!

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子育ても仕事もあきらめたくない!でも、どうしたらいいの?そんな悩みを持ったことはありませんか?

男女問わず育児休暇を取れる環境が増えてきたとは言え、女性にとって子育てをしながら仕事を続けることはまだまだ大変なことです。また結婚や転勤にともなって仕事を辞めたり転職したりすることもあります。職業の選択肢とワークスタイルの種類が豊富な(ように思える)都市部でもこの問題に直面する人は多いはず。

では、地方ではどうでしょうか?さらにハードルが高い(ように思える)地方でママたちはどう働いているのでしょうか?

特集「ママごと・しごと・じぶんごと」では、奈良で親子絵本料理教室や、小学生によるご当地お弁当の開発(記事上写真はそのちらしです!)を手がける「COLOR」おにきりえさん(2児のママ)と、奈良出身の「greenz.jp」ライター東が、仕事をつくりだすママたちを訪ねて、自分の働き方を見つけ出した女性に大注目していきます。

まずはキックオフということで、編集長YOSHさんを交えて、今回の企画がどんなことを目指しているのか、対談してみました。今回はその模様をお届けします。
 
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右からgreenz.jp編集長のYOSH、COLORのおにきりえさん、greenz.jpライターの東善仁

奈良にはどんなママさんがいるの?

 今日はおにきさんの「COLOR」の活動拠点としてもお世話になっている、奈良県天理市のマイ工務店オフィスに来ています。(YOSHさんは鹿児島からハングアウト中継)

おにき 私の自宅も天理市なんです。すぐ近くです。

YOSH 今日は遠方から失礼します。早速なのですが、これからどんなママさん紹介していくのか、少し教えてもらえますか?

おにき はい。たとえば奈良の東の山の方、宇陀市にコミュニティレストランをつくった3児のお母さんがいます。まだ30代前半の松田麻由子さんという方なんですが、築80年の郵便局が解体されるのに「待った」を出して自分で改装したんです。

宇陀地域でも結構田舎のほうだけど、2013年の4月にオープンして約半年でお客さんがついているんですよね。もともといろんな人がつながる場所づくりを目指していたんですが、それが実現してきているんです。

 観光地でもなくて最初は心配していたんですけどね。電車で降りても歩いていけない場所ですし。

YOSH どうして上手くいっているんでしょうか?

おにき 改装する時から色々な人を巻き込んでいて、参加型でみんなで一緒につくるというのがよかったのかと。

 それと、じっくり時間をかけていたこともありますね。「のんびりやっているなー」って言われるくらいの時間感覚でやっていたのが、逆によかったのかもしれません。関わる人がどんどん増えていくから、オープンした後もみんな高い関心を持ってくれて。
  

奈良の伊那佐でプチ起業している松田さん(中央)

YOSH 起業にチャレンジした理由が気になりますね。

おにき お母さんでいながら、理系の高専卒で小学校の理科の支援員をしていたり、地域プランナーコーディネーター養成講座に通っていて、地域活性に関心があったというのはありますが。その理由も今後のインタビューできいてみたいところです。

 もともと奈良の都市部に住んでいて(それほど都市でもないけど)、古民家をみつけて田舎に引っ越したそうです。その決断の経緯も気になりますね。

面白かったのは、旦那さんは現場にほとんど出てこない。改装しているときも。子育てしながらの仕事づくりってやっぱり家族の協力がないと難しいと思うので、家族のかかわり方もこのシリーズで掘り下げたいポイントです。

おにきさんが奈良でプチ起業しようと思った理由は?


COLORの活動風景から

 ちなみに、おにきさんが「COLOR」を始めようと思ったのはどうしてですか?

おにき 私が奈良に越してきて、自分がやろうとしているようなことをしている人がいないかネットで探していたら、『ママのためのプチ起業講座』というものをみつけたんです。

そこでは「まず自分のできる範囲でやってみましょう」と”プチ起業”を薦めていて。普通の起業のイメージからすると初期投資が必要ですけど、できる範囲で自分の得意をいかして一歩踏み出すことならできるかなと。

 おにきさんは、もともとはどこの出身でしたっけ?

おにき 茨城県です。東京で仕事をしていて、結婚と出産のタイミングで、夫の転勤もあり三重県へ転居しました。私も名古屋に勤務地を変えて、また転勤で奈良へ。そろそろ転勤で転職するのも限界かと思い、奈良に来てプチ起業しました。

 奈良ならではの課題として、女性就業率が全国ワースト1だそうですが、仕事に就くことの障壁は肌感覚で感じますか?

おにき 個人的な印象ですけど、奈良にくるまで住んでいた場所では、女性が当たり前に働いていましたが、奈良にはそういう環境があまりないなと思いました。

例えば、奈良で営業に行くと、お客さんから「小さな子供いるのに何をしてるの?放っておいて」と露骨に言われたりして驚きましたね。これは仕事しにくいなーと実感しました。

 もともと産業があまりないところだから、昔は特に女性が働きに行くってことがなかったのかな。

半分が山の地域でしょ。観光産業が残っているけど、やっぱり地元で働かないにしても、お父さんは遠くまで働きに出ないといけない。1時間かけて大阪まで通勤しないといけなくて、その間、女性は子供をみていなくてはいけない、というような状況が長らくあるのだと思います。

おにき 奈良“府民”って言われているんですよね。大阪府に出て行くという意味で。東さんがおっしゃったように、旦那さんが夜遅く帰ってくるので奥さんは働きにくいかも。

 保育園や幼稚園の受け入れの問題もあるのかな。

おにき 一方で、けっこう教育熱心な県だったりもするんですよね。教育熱心なお母さんも多くて、通塾率も全国で2位だとか。

だから習い事させるにも、受験をさせるにも、仕事をしているお母さんだと、そこに時間がかけられなくなっちゃうのかなというのもあります。
 

「奈良の小学生によるご当地お弁当商品化プロジェクト」は「COLOR」の活動のひとつ。企画、マーケティング、販売も子どもたちが取り組みました。

全く知らない土地で、仕事をつくるには?

YOSH 働き方も多様化して、移住も増えていますが、こうやって流動性がどんどん高まっていく中で、”その土地に根ざした仕事”というものが大切になってきているような気もするんです。当たり前といえば当たり前なのですが。東さんはどう思いますか?

 自分に全く縁がなかった土地で、新たに仕事をつくるのは難しいとは思います。地方にいけばいくほど、職種も少なくなるし、これまでの職歴の応用がきかなくなりますよね。

でも表向きの「職業」の見え方は違っても、その人の働きによって何を解決していくのかを考えていくと、共通するスキルがみえてきて、違う場所でも肩書きを変えて仕事にできるのではないかと思っています。

おにき 今の話に関連して言うと、COLORで進めている「お弁当プロジェクト」は、まさに地域性の強いものなんですが、ずっとやっていこうと思って始めたことなのに、今年夫の転職で途切れてしまう事態になりかけているんです。

YOSH・東 え!

 まさか、いきなりの転勤話。ミイラ取りがミイラになったような(笑)

おにき そうなんですよ。自分でも楽しくやりがいをもってやってきたことが、途切れてしまう悔しさはありますね。やっぱりどこでも通用する仕事だけを選んでやるのは、やりがいとか地域への愛とかが必要なくなる部分もあるので、仕事をつくる面白みに欠けることかもしれません。

 それは大きな違いですね。

おにき ライターやデザイナーなど、ネット環境さえあれば地方でもできることと、地域に根ざして地域の人と一緒に何かをやっていく仕事。この2つの違いは大きいなと実感しています。

プチ起業ママに聞いてみたいこと

YOSH 地方で働くいろんな人が、どうやって葛藤を乗り越えていったのか。そのストーリーはみんなの参考になりそうですね。

 仕事をつくり出したばかりのママもいれば、一度仕事をつくってから転居しなければいけないおにきさんのような存在もいる。リアルタイムで起こることだからこそ、面白いですね。他にはどんな人がいますか?

おにき そうですね。子どもがいて大阪や京都に出ていくことが難しいママたちが、それなら自分で奈良の仕事をつくりだそうと立ち上がった「ナラマーシカ」という団体もあります。
 
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ナラマーシカ

今は45人くらい参加しているのですが、ママ目線のアイデアが企業に重宝されていて。全国的にもママモニターは多いですが、ナラマーシカは商品開発まで一緒にやって、モニターに終わらないというスタイルなんです。また「フルコト」というお店を共同で運営して、企画商品を販売している方もいます。

YOSH 自分の特技を上手にいかしているんですね。

おにき メニュー開発でも、メニューを考えるだけでなく、ポップを考えたりプレスリリースをしたり。奈良は山が資源なので、吉野杉のキッチンツールを開発していたりもします。

YOSH ちなみに、どれくらいの収入があるんですか?

おにき アイデアに対して対価を得るというかたちで、ひとつのアイデアに対して10万円とかでしょうか。それをひとりひとりに分配するので収入は限られていますが、レジ打とか時間を切り売りするような仕事ではなく、こういう形でお金を得られると、自分の自信につながっていきますね。

自分の好きや得意を生かして仕事することができているので、楽しくやれているし、勉強しながら収入を得ているような感じです。

YOSH なるほど。ひとりではなくみんなでやることも、「仕事をつくる」ことのハードルを下げるヒントなのかもしれませんね。
 
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旦那さんのサポートってあるの?

 この特集では、いろいろリアルなことを聞いてみたいと思っているんです。もっと稼ぎたいと思っている人もいるだろうし、今の収入のままで充分と思っている人もいるだろうし。そのあたりのお金を稼ぐことに関する感覚とか。

おにき あとは、家族との関係、パートナーシップなども聞きたいですね。

YOSH そうですね、旦那さんとの関係とか。あまり見えない部分ですが、もっと出していっていいのかもしれない。家庭の事情でカミングアウトできない部分はあるとは思いますが(笑)

おにき 私は結構さらけだしてますけど(笑)

 あ、でも今回、おにき家はどうだったんですか?旦那さんの転職に関して話し合ったりしたんですか?

おにき 今回の転職は私は応援していました。自分のしたいことが今の会社でできないのであれば、自分で切り拓いていったらいいのでは?って。「ずっと奈良にいられないこともある」とは一応覚悟のうえで、私のことも応援してもらっているし。

 今後のおにきさんの動向にも注目したいですね。一度、ゼロから仕事をつくりだした後にどうするんだろうかと。

おにき いやいや(笑)覚悟はしていたけど、実際、目の前にそんなことが起きて、実は結構ショックが大きくて。はーっと思って。単身赴任でという話もちらっとあったりしました。

でも私が子どもたちをひとりで育てられないという現実もあったり、私にとっても子供にとっても夫の存在は大きいし。それに「COLOR」を立ち上げたきっかけも転勤転職だったので、なんとかなるだろうと。前を向いています!

YOSH 前を向けるのも家族への信頼があるからなんでしょうね。

おにき そうですね。一時は大げんかして大変なこともありましたが、今は支えられていることに感謝しています。
 

「COLOR」の事業のひとつ「親子絵本料理教室」は絵本にでてくるお料理を子どもとつくりながら自主性を育てています

 もうひとつ聞いてみたいのが、これまでの経験とかスキルとかが今にどうつながったのか、ということなんです。逆に捨てた部分もあるかもしれない。そこにヒントがあるような気がして。

おにき 私たちのワークショップに、子育て本の翻訳をしている方が参加してくれたのですが、その方が「中学生のときのいじめの経験が、今の仕事につながっているかもしれない」と気付きを持てたことがありました。

どうやらそれまでは、「英語ができるし、子育てをしているから、子育て本を翻訳しているのだ」と思っていたようなんですが、実は「いじめの加害者をつくらない子育てを広めていきたかったんだ。そのために、海外の良書をお母さんたちに紹介していきたかったんだ」と。

 今回の特集では、そういう点と点が結びつく可能性があることに気づいて、その人の可能性が広がったらいいなあと思います。してそれは自分自身のためでもあって。

僕は実家の奈良に戻らず、大阪に住んで仕事をしています。思い切って戻ってしまった方が、逆に何とかしようとなるんだろうなと思いつつ、悶々と。そういう人も多いと思うので、考えるヒントを少しでも多く提示できたらと思います。

おにき 「こんな選択肢がありますよ」と示せるような特集になればいいですね。パート、主婦、自営業を手伝う…そんな限られた働き方のイメージを払拭できたらと思います。

「COLOR」を立ち上げたときにビジョンを掲げていたんですが、「料理教室、キャリアサロンというステップを経て。”奈良の女性起業家展”をしたい」と夢をもったことがあって、それを今回greenz.jp上で実現できそうだということに驚いていて。とっても楽しみにしています。

(インタビューここまで)

 
地方で仕事をつくることは、予想以上にハードルが高いのでしょうか?さらに女性が子育てをしながらとなると、どんなアイデアが必要になってくるのでしょうか?それとも、反対に都市部ではないからこそ可能な取り組みやかかわりが生まれているのでしょうか?

「ママごと・しごと・じぶんごと」では、奈良という場所に焦点をあてて”プチ起業”のヒントを探っていきます。今後登場する女性たちに、ご注目ください!