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獲れすぎた農作物で銀行口座ができる、残高がどんどん増えていく…!農民の貧困スパイラルを解消する「AgroBanking」

かつてアジアの中でも貧しい国だったバングラデシュは、いまめざましい経済発展を遂げつつあります。しかし、その人口の33%を占める農民の多くは、まだまだ貧困から抜け出せないまま。

その原因として挙げられるのは、過剰な収穫物を仲買人に買い叩かれがちだということ。そして、銀行口座を持たない多くの農民は、安全にお金をためたり、融資を受けたりすることができません。

これらの問題を解決するために考えられたのが、バングラデシュの大手銀行UCBと小売チェーンShwapnoによる、農民のためのユニークな銀行口座サービス「AgroBanking」です。

「AgroBanking」はこんなしくみです。農民が売り切れなかった過剰な農作物を窓口に持っていくと、当日朝の卸売レートによる公正な価格で買い取ってもらうことができ、口座に振り込まれます。入金や出金の情報は携帯電話のSMSに記録され、買い取られた農作物はShwapnoの流通網を介して店頭に並ぶことに。

AgroBankingができたことで、農民は農作物さえあれば銀行口座を持つことができ、獲れすぎた農作物が買い叩かれることも、捨てられることもなくなりました。そして、安心してお金を貯めることができたり、給付金や融資を受けられるようになったりと、貧困から脱出するきっかけになります。

この画期的なサービスは反響を呼び、開始から1カ月で750口座が開設され、58トンもの農作物が無駄にならずに済んだそうです。



SDGs(持続可能な開発目標)の達成の鍵を握るのは、パートナーシップだと言われています。銀行と小売チェーンが組むことで、サービスを使う農民にとっても、金融ビジネスを行う銀行にとっても、食品を扱う小売チェーンにとってもメリットがあるかたちで、持続的な社会課題の解決につなげているというところが実によく考えられたしくみですね。

ネガティブな状況を緩和するだけではなく、根本的な原因にアプローチする。しかも、無駄になっていたものを生かし、価値あるものに変える。

世の中にはどうしたら終わらせることができるのかと頭を抱える課題があふれていますが、こういう事例を見ると、まだまだポジティブな流れをつくっていくアイデアが生まれる余地があることに気づかされます。

行き詰まったら、身の回りにあふれているものを、いままでと違う角度から眺めてみる。そこから解決のヒントが見えてくるかもしれません。

(翻訳協力: 山崎くみこ)

こちらの記事は「greenz people(グリーンズ会員)」のみなさんからいただいた寄付をもとに制作しています。2013年に始まった「greenz people」という仕組み。現在では全国の「ほしい未来のつくり手」が集まるコミュニティに育っています!グリーンズもみなさんの活動をサポートしますよ。気になる方はこちらをご覧ください > https://people.greenz.jp/