あなたは古いスマホ、どうしていますか? 「iFixit」共同創業者のカイル・ウィーンズさんのスマートフォン分解実演を目にして、簡単に買い替えることのもったいなさを考えた

多くの人が肌身離さず持っているスマートフォン。この記事をスマホで読んでいる人も多いことでしょう。

そんな身近なスマートフォンですが、落として液晶が割れた、水没させたなどトラブルはつきません。そしてそのたびに、泣く泣く買い替えを余儀なくされたこともあるはず。買い替えしなくても、自分の手で修理できたらいいのに。そう思った方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

スマートフォンを始め、さまざまな電子機器の修理マニュアルを無料で公開している、アメリカの「iFixit」。その共同創業者、Kyle Wiens(カイル・ウィーンズ)さんの来日にあわせ、国際環境NGO・グリーンピースが、7月6日にSHIBAURA HOUSEで「あなたのスマートフォン、長持ちしてますか?」というイベントをiFixitと共催しました。

「スマホは、実は長く使える!」ことを知り、長く使うことが地球環境に与える影響を考える機会として開催されたこのイベントに、本当にスマートフォンを自分で修理することができるのか、興味津々で参加してきました。

iFixitの共同創業者・カイル・ウィーンズさん

「iFixit」
「2003年当時、カリフォルニアで学生だったカイルさんとルーク・スオールズさんによって設立。iPhoneから自動車まで、誰もが自分たちの手で修理できるように、さまざまなモノの修理マニュアルを無償のうえ、オンラインで公開。世界中で年間1億人ものボランティアが参加し、現在では11の言語に対応しています。そのミッションは、「できる限り多くの人が修理しやすい環境を与え、結果廃棄されるデバイスを減少させること。」

このイベントの目玉となったのは、カイルさん自らがスマートフォンを解体して見せる実演。スマートフォンと言えば精密機器で、素人の手には追えないというのが多くの人が持っている印象かもしれません。けれども、カイルさんの実演を見ていると、決して特殊な作業ではないことがわかりました。

カイルさんが解体してみせたのは、SONYの「EXPERIA Z ULTRA」。まずは、iFixitのサイトへ行き、修理マニュアルを探します。iFixitは、ウェブサイトで日々次々と新製品の修理マニュアルを公開しているのです。「EXPERIA Z ULTRA」のマニュアルを見つけると、さっそく見ながら分解にとりかかっていきます。

真剣な表情ながら、その手はよどみなく動き続ける

まずは、ねじをはずして分解。しかし実はこの機種、本体表面にねじが見えない構造です。そこでヒートガンと呼ばれるドライヤーのような機器で温めて、少しずつ接着剤を溶かしていきます。

集まった人たちも息を詰めるように、カイルさんの手元を映し出す映像に見入ります。

なぜスマートフォンが解体しにくいようになっているのか、細かい点を指摘

接着剤がやわらかくなると、割れるのを防ぐためスクリーンに吸盤を貼り付けて、本体から引っ張ります。すると、無事に本体とスクリーンが解体されました! そして、バキッと音がして一瞬驚いたものの、カイルさんの手には、本体からはずされたバッテリーが。ここまでで、分解経験の豊富なカイルさんの手にかかればせいぜい5~10分といったところでしょうか。

カイルさんの実演は、そもそも修理するという発想自体がなかった私にとって、とても衝撃的なものでした。そして同時に、このように簡単にバッテリーがはずれるなら、バッテリーの寿命が短くなってきたことを理由に本体をまるごと買い替える必要はないな、と私は感じました。ガラケーを使っていたときには、バッテリーを自分の手で交換することがもっと身近だったような気がするのです。

アフリカのガーナで見た電子機器の墓場

「iFixit」は、2003年にカリフォルニアにある工科系大学の大学生だったカイルさんらが、学生寮でスタートさせた会社内の非営利部門。ウェブサイトでは、無料公開している修理マニュアルだけでなく、修理のための工具を販売したり、また、さまざまな商品の修理のしやすさを格付けして発表しています。

iFixitでは、様々な電子機器の修理に対応する工具「PRO TECH TOOLKIT」を販売している

カイルさんは、なぜこういった活動を始めたのか、この活動を通して何をしようとしているのか話してくれました。

それまで環境問題に関心があったわけではないのですが、偶然グリーンピースのガジェットレポートを読んだんです。そこには電子機器からたくさんのe-waste(電子ゴミ=電子機器などが廃棄されることにより発生するゴミ)が生まれ、環境問題になっていると書いてありました。本当にそんなことが? と最初は信じられませんでした

本当にそんなことが起きているのか、自分の目で確かめてみようと、カイルさんはガーナの首都アクラに足を運んだそうです。すると、確かにレポートに書いてあるように大きな問題が生じていることがわかりました。

ガーナの首都アクラ。大量の電子機器の残骸が運ばれている

アクラの郊外へ行ってみると、そこにあったのは電子機器の墓場と言ってもいいものでした。つまり、グリーンピースの報告が正しいことがわかったんです。そこはリサイクル場でしたが、効率のいいものではなく、極めて原始的な方法で金属を取り出していたんです。つまり火を点けてプラスチックを燃やすことで、中にある銅線を取り出していたんですね。

カイルさんが、「ビックリしてカメラを落としそうになった光景」と紹介してくれた写真には、燃えているコンピュータを持った若者が映し出されていました。「彼は、そのまま私に近づいてきたんです」と、そのときの生々しい状況を口にしました。

コンピュータに火を点けて、中の銅線を取り出す

こうして現地の人びとは、一日数ドル程度の生活費を稼いでいるのです。これはガーナだけで起きていることではないそうです。

カイルさんは、電子ゴミを減らすためにも、ユーザーが修理をしてひとつの電子機器を長く使用することが重要だと考えました。そこで、修理マニュアルを公開する「iFixit」をスタートさせたのです。

使い捨てるのではなく循環させる

では、私たちユーザーが電子機器を長く使うことにどんな意味があるのでしょうか。

カイルさんは、元素記号表を映し出しました。国連によるリサイクルレポートに基づいて、元素記号が色分けされている表で、金属のリサイクル率を示しています。たとえば、緑色は50パーセント以上リサイクル可能な金属。けれども赤や黄色のものは、リサイクルできません。リサイクルできない金属も多くあることがわかります。

国連によるリサイクルレポートに基づいて、色分けされた元素記号表

金属によってリサイクルできるかどうかはさまざまです。ガーナでカイルさんが見たようなリサイクル場で取り出せるものは、銅のように簡単に取り出せるものだけ。それ以外の金属は単なるゴミとなってしまいます。

「効率や技術が向上しているリサイクル場ならば、もっと利活用できるのでは?」と思いきや、実際には日本でも、金属のリサイクルは決して上手くいっていないそうです。

稀少な金属は、採り尽くし、使い切ってしまえば、なくなってしまいます。これから50年後も電子機器の産業を残していきたいのであれば、今のままではいけないとカイルさんは力説します。実際、このままいけば2050年には、液晶のディスプレイに使用されているインジウムはなくなってしまうそうです。

そこで、カイルさんが提唱したのが、もっと理想的な世界のモデル、つまり循環経済の仕組み。リサイクルだけでは十分ではないので、ユーザーに近いところで循環を完結させていこうというのです。つまり、私たちユーザーが自身や身近な人がモノを修理し、長く使うことが大切になります。

とはいえ、スマートフォンもタブレットも、次から次へと新しい機能を搭載した魅力的な商品が新発売されるのも事実。そういった機能に惹かれて買い替えたいという人もいることでしょう。そういったことについてどう考えているのか、カイルさんにたずねてみました。

もちろん新しい技術は人間が進歩していくうえで必要ですし、新しい技術をつくっていくことはやめないほうがいいと思います。ただ、ものを買うときに、自分にとって利用価値のある機能のあるものを真剣に吟味して買うことが大切です。それで、買ったら長く使えるといいですよね。

たとえばインドには、iPhoneがほしい人は5億人ぐらいいると思いますが、その人たちは必ずしも最新機種を求めているわけではないと思うんです。ですから、最新機種のiPhoneを買うのもいいですが、これまで使用していたものを、ただタンスの中にしまっておくのではなく、売るなりして、何らかの形で、誰かに使ってもらうことが重要です。

ユーモアをまじえて話すカイルさん。話に引き込まれた会場に一体感が広がった

現在、地球上にはこれまで既に71億台のスマートフォンが製造されているといいます。そして途上国では、インフラ整備をするよりも便利で有効なので、スマートフォンが通信手段として広まっています。そういった現状を考えると、もし短期間でスマートフォンを買い替えるなら、不要となったスマートフォンを電子ゴミにしたり、引き出しの奥にしまっておくのではなく、いかに活用するかまで考えることが大切だということがよくわかりました。

今すぐできることを始めよう

世界にはたくさんのスマートフォンがありますが、「iFixit」でもっとも高い格付けをしているのは、オランダのアムステルダムの会社が製造している「フェアフォン」です。

これは、世界初のモジュラー型のスマートフォンなんですね。ですから、修理しやすいだけでなく、もっとよいモデルが出たら、その部分だけを交換して使い回すことができるんですね。

カイルさんは、フェアフォンを例に挙げ、持続可能で長持ちする製品はつくることができると言います。そしてこれは他のメーカーでも可能で、そうすることによって、使い捨ての社会ではなく、循環型の社会をつくっていくべきだと訴えました。

自信あふれる表情と笑顔で話し続けたカイルさん。最後は、日本語で「お願いします」と、私たちユーザーが意識を少しでも変えるように伝えていました。

このように「iFixit」は、一般ユーザーに対し、現在の使い捨て社会に対し警鐘を鳴らすだけでなく、修理しやすい製品、デザインをつくるための活動を企業や政府に対してもおこなっています。既にEUでは、修理しやすい製品を推し進めていく方針が定められ、修理しやすさの基準をつくる動きも生まれているそうです。(出典元: CIO 2017/07/06)日本には、伝統的な“もったいない”という考えが浸透しているにも関わらず、電子機器の買い替えに対する意識は低いように感じます。

グリーンピースのホームページでは、スマートフォンやタブレットの「修理しやすさ」を掲載する製品ガイドを発表しているので、デザインや機能だけでなく、「修理しやすさ」も、機種を選ぶ基準の参考にしたいものです。

もし次にスマートフォンを買い替えるときがあれば、使い終わったスマホがどうなるのか、その行く末に少し想いを馳せてほしいと思います。

(Top Photo: Creative Commons: https://www.ifixit.com/Teardown/iPhone+6+Plus+Teardown/29206

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