聞いて、書いて、成長する。育ち合いで、未来をつくる。greenz.jpライターという生き方を通して私が見てきた景色

「文章を書くのが苦手」と思っている方、いませんか?

私がライターを生業としていることを話すと、必ずと言っていいほど、「すごいですね〜、私は文章を書くのが苦手で…」という言葉が返ってくる。

これ、誇張ではなく、本当に多いのです。
肌感覚では、70%くらいでしょうか。

もちろんそこには謙遜も含まれているとは思いますが、そんなとき、私は「苦手って言ってたら、もったいないな」って思います。だって、取材して記事を書くことは、思っている以上に自由で、楽しく、ワクワクする営みだから。

そして何より、人として成長するチャンスにあふれているんです。書けば書くほど成長できるから、打ち上げ花火的ではなく、地に足の着いた楽しさと喜びがある。私はそんな楽しさの虜になってしまった人間です。

実は私、greenz.jpでは「シニアエディター/シニアライター」なんて立派な肩書きをいただいていますが、文章をちゃんと学んだことがありません。理系出身で、理系就職し、その後も出版社などに所属したわけでもなく…。

それでも、副業でgreenz.jpライターとして取材・執筆を重ねるうちに、聞くこと、書くことが病みつきになってしまい、フリーランス・ライターとして生きる道を選びました。今思えば、かなり無茶な選択でしたが、そんな自分への無茶振りが、今や生き方となって、私をつくっています。

聞くこと、書くこと。そこに、どんな手応えとワクワクを感じてきたのか。私が約9年間greenz.jpライターという生き方を通して見てきた景色を、みなさんと共有できたらと思います。

コラムなんて書きなれないので、ちょっとドキドキ。
欄筆乱文、ご容赦ください。

自分として「立つ」ということ

ライターは、人が一番成長する仕事」という言葉を聞いたのは、確か数年前。

編集長・鈴木菜央の発言に、少しドキッとし、でもまだ当時は自分の中で消化しきれずにいました。でも今、なんだかずっと気になっていたこの言葉のなかに、私がgreenz.jpライターとして生きることを選んだ本当の理由があるような気がしています。

まずは、みなさんにライターの仕事をイメージしていただくために、私が大好きな時間で、ライターにとっての「現場」である取材の場にご案内します。

取材は、不思議です。「取材」という名目があれば、少し遠い存在に思えていた人に、1時間もふたりきりで話す時間をいただけてしまう。「取材は魔法の絨毯」なんて表現も耳にしたことがありますが、私がgreenz.jpで書き始めたのも、最初は、書くことよりも、興味のある世界を覗き見たいという動機だったと思います。

そんな滅多にないワクワクの場であるとともに、取材は、ライターが「自分として立つ」ことが求められる、緊張感ある場でもあります。

フリーランス・ライターが多く関わるgreenz.jpですが、ひとりで取材に行くことも珍しくはありません。フリーランスであっても、取材先にとっては、「greenz.jpの人」。メディアの印象が、ライターのあり方で決まると言っても過言ではありません。背筋が伸びます。

インタビューの良し悪しも、聞き手によって変化します。相手が話しやすい環境をつくるには、人としての度量が必要になってきます。「聞く」という営みは、人間としてのあり方を鍛えられる場でもあると感じます。

子どものとなりで、背筋を伸ばして、インタビュー。産後最初のインタビューの場で、カメラマンさんが撮ってくださった、思い出の一枚。子連れの取材でもあたたかく迎えてくださるなんて、取材先の方々への感謝の気持ちが募ります。(PHOTO:SHINICHI ARAKAWA)

副業としてライターをしていた当時の私は、毎回ドキドキが止まらず、「グリーンズのことをどう説明しよう?」とか、「沈黙になったらどうしよう…」とか、何度も現場をシミュレーションしながら足を運んだことを覚えています。

でもそれを繰り返すうちに、このワクワクと緊張の絶妙なバランスに、私は病みつきになりました。今、絶賛子育て中の私にとっては、日常からビシっと自分を切り替える、心地よい緊張の場であったりもするのです。

こう書くと、取材はすごく難しいもののように感じられてしまうかもしれませんが、私がgreenz.jpの取材を通して出会った取材先の方々は、本当にあたたかな素晴らしい人ばかり。新米ライター時代、私のトンチンカンな質問にもおおらかに対応してくださいました。

私にとってgreenz.jpでの初インタビューは、2010年、コフレ・プロジェクトを立ち上げたばかりの向田麻衣さん(現Lalitpur代表)でした。会社員時代、午後半休を取って取材へ。向田さんも初の取材で、お互いドキドキしていたことを思い出します。(当時のgreenz.jpは、表示される画像サイズが小さかったので、そのまま掲載しました)

そして何より、編集部のみなさんが、素人ライターの私にもたくさんのチャレンジの場を与えてくださいました。期待をかけてもらえると、エネルギーが湧いてくる性分の私。おかげで少しずつですが、自信をつけることができました。感謝でしかありません。

本質を見つめる、という作業

さて、いよいよ書く時間です。取材のあとの気持ちの高揚も落ち着き、いざ、記事を執筆する前に、私がもっとも大事にしているのは、話の“本質”を探ること。テープおこしをして、インタビューの場を追体験し、インタビュイーの感情の抑揚をもう一度感じて、「この人の行っていること、伝えていることの“本質”は何なのだろう?」と、考えます。

「本質」とは? 手元にある大辞林第三版(三省堂)によると、「物事の本来の性質や姿。それなしにはそのものが存在し得ない性質・要素」とありますが、私は、人の言動(doing)は、本質を伝えるための手段に過ぎないと思っています。

その人の働きが、何を伝えるためのものなのか。あるいは、言葉ではこう言っているけれど、その根本部分にあるメッセージは何なのか。ときにはご本人も言語化できていないそれを読み解き、記事の軸を決めていくのが、“本質”を探る作業です。

私の相棒。一緒に、いくつの取材現場に足を運んだのだろう。(撮影:小禄慎一郎)

この「本質」が見えた時点で、執筆作業の半分は終わったも同然。あとは、誰かにそのことを話し聞かせるように、流れるように書くだけです。逆に言えば、これが見えなければ、書けない、とも言えます。

つまりは、「どう書くか」というテクニックよりも、その前提としていちばん大事なのは「何を伝えるか」が明確であること

どうしても「文章力」というと、テクニックに走ってしまいがちですが、実はこの「本質」を見極めるトレーニングが一番大事で、これさえあれば、あとは本数を重ねて書き慣れていくだけ。この考え方にはさまざまな意見があると思いますが、私自身はそう思っています。

(とは言え、テクニックも、もちろんある程度必要。きちんと学びたい方は、副編集長スズキコウタの「作文の学校」へ、ぜひ!)

「チャーミングにエコを伝えるメディア」と紹介されることの多い「森ノオト」。編集長・北原まどかさんのお話を聞く中で、私が伝えるべき本質は「人の成長がデザインされていること」だと読み解き、記事を執筆。北原さんにもとても喜んでいただけた、心に残る一本となりました

また、そうして見えた「本質」が、自分の生き方や価値観にまで沁み込んでしまうのが、greenz.jpのお仕事。世間の常識に囚われることなく、ほしい未来に向けて行動する取材先のみなさんの等身大のお話からは、自分自身の生き方や働き方、さらには生きることそのものを考えさせられます。

「つくることは豊かさの根本」と教えてくれた「つみき設計施工社」のみなさん。この言葉に深く共感し、その後、私も食べるもの、暮らしの道具、家の一部などを少しずつ「つくる」ようになり、暮らしが変わりました。価値観に大きな影響を受けた一本。(当時のgreenz.jpは、表示される画像サイズが小さかったので、そのまま掲載しました)

子どもの環境をつくることは未来をつくること」と教えてくれた「まちの保育園」松本理寿輝さん。この言葉に気づきを得て、その後「子ども」をテーマとした連載を持つように。母となってからも、度々思い出す言葉となりました。(当時のgreenz.jpは、表示される画像サイズが小さかったので、そのまま掲載しました)

取材を重ねるごとに、彼らから受け取った言葉の根底にある価値観が自分の肥やしとなり、また次の取材で背筋を伸ばして話を聞き、やっぱり背筋が伸びる想いで言葉を紡ぐ。それは決して取材先の宣伝をすることではなく、彼らと一緒に、世の中に向けた「価値のプレゼンテーション」としての記事を生み出す作業です。

こんなgreenz.jpライターの仕事を経験したライターさんたちの中には、本を出したり、新しいメディアを立ち上げたり、暮らしの実践者となったり、次なるステップへと歩み始めた方もたくさんいらっしゃいます。取材先との出会いから仕事が生まれたという話も、本当によく聞きます。これはきっと、greenz.jpならではのこと。

そんな眩しいほどの活躍を見せるみなさんを横目にのんびりしていたら、なんと9年も経ってしまった、というのが私の現在地。

でも最近は、取材先の人や近しい人たちから、執筆における「マインド」や「あり方」という視点で講師の依頼をいただけるようになりました。これは紛れもなく、greenz.jpの取材を通して、取材先や編集部のみなさんに育てていただいたことで生まれたチャンス。今度は自分が学んだことを誰かに伝えることで、恩送りをしていきたいな、と思う今日この頃です。

「そっか」の取り組みをインタビューさせていただいた八幡暁さん、小野寺愛さんに囲まれた幸せな一枚。逗子の海にて。取材先の方々とは、ずっとゆるやかにつながっていられる。これも、greenz.jpライターの仕事の醍醐味です。(撮影:小禄慎一郎)

ライターコミュニティをさらなる育ち合いの場に

さて、10年目を迎え、すっかり古株ライターとなってしまった私の最大の関心事は、ライターさんたちと育ちあう関係性を築くこと。「人の成長がデザインされていないところに、未来はない」。これも、ドキッとする鈴木菜央の言葉です。

大好きなgreenz.jpというメディアが、ずっと続いてほしい。続けていくことで一人ひとりが主役になれる社会、みんながほしい未来のつくり手になれる社会をつくっていきたい。そのために、人が入れ替わってもgreenz.jpライターというコミュニティを持続可能なものにしたい。そんな想いから、私は今、ライターさんたちとチームでつくる連載を実験中。

チームには、ライターなりたてホヤホヤの人から、中堅、ベテランさんまで、多様な人が参加し、ベテランさんの取材に新人さんが同行して勉強したり、新人さんの取材にはベテランさんが同行して、横でインタビューのアドバイスをしたり。

さらには、新人さんの原稿構成のアドバイス、記事校正、取材先とのやりとりの方法など、ベテランさんがきめ細かく伴走。もちろんベテランさんにとっても、「人に教える」ということは大きな学びにつながります。そんな「育ち合いモデル」をワイワイ楽しみながら、つくっているところです。

greenz.jpジュニアライター水野淳美さんの、ストーリー記事デビュー作!彼女のがんばりに、伴走しながら感動してしまいました

まだ始めたばかりですが、インタビューは初めての後輩ライターさんが、長めのインタビュー記事を執筆し、反響を得て、いきいきと輝きだす未来が、少しずつ見えてきました。これをどう仕組み化していくのか、志をともにするライターさんたちと一緒に、実験を繰り返していきたいと思います。

つい先日、取材に一緒に来てくれた4歳になった娘。取材先のみなさんに遊んでもらって、0歳のときとは違い、あやす必要もなくなりました。この子の成長には勝てないけれど、私もまだまだ育ちますよ

聞いて、書いて、成長する。育ち合って、未来をつくる。
改めて紐解いてみたら、私にとってgreenz.jpライターという仕事は、こういうものでした。

私にとっては、もはや生き方となってしまったこのお仕事。興味を持って下さった方は、ぜひ「作文の学校」の門を叩いてみてくださいね。

言葉にし切れないこのワクワクを、ぜひご一緒に。