“地域を良くしよう”でなく“自分のため”に。「マチマチ」とgreenz.jpが始める新連載「となりのご近所物語」が探ることって?

みなさんは、自分の住むまちに、知っている人はどのくらいいますか?
たくさんの顔が思い浮かぶ人もいれば、「隣に住んでいる人も知らない……」という人もいるでしょう。それはそれで困らないかもしれない。でも、何かあったときに助け合える人が近くにいたら、安心ですよね。

そうは言っても、地域の人とつながる機会がない。そんな人におすすめしたい、気軽にご近所付き合いのできるサービスがあります。その名も「マチマチ」。スマホやパソコンで、自分の住んでいるまちの情報共有ができる、いわゆる“ご近所SNS”です。「ご近所のオンライン掲示板」とも呼ばれています。

今回から始まったこの連載「となりのご近所物語」は、「マチマチ」代表の六人部生馬(むとべ・いくま)さんとgreenz.jpが一緒に、心地よいコミュニティを育んでいる地域や団体を訪ね、それぞれの物語をインタビューするというもの。

自分たちの暮らすまちで人と人の心地よい関係をつくり、支え合い・助け合いのコミュニティを生み出すためのヒントを、みんなで探っていきます。

今回はキックオフとして、「マチマチ」とは何か? を詳しくご紹介したうえで、六人部さんとgreenz.jpコミュニティエディター植原正太郎による対談をお届けします。

「マチマチ」代表の六人部生馬さん(右)と、greenz peopleコミュニティエディターの植原正太郎(左)。

六人部生馬(むとべ・いくま)
1983年、神奈川県出身。ソフトバンク財務部投資企画室、UBS証券投資銀行本部にて数多くのM&A、投融資、資金調達に従事。メガネの通販サイト「Oh My Glasses」を立ち上げた後、株式会社Properを創業し、「ご近所とのつながりを通じて、地域の課題を解決する」というミッションのもと、ご近所SNS「マチマチ」を開始。
植原正太郎(うえはら・しょうたろう)
NPO法人グリーンズ/greenz.jp コミュニティエディター。1988年、仙台生まれ。大学卒業後、WEBマーケティング会社を経て、2014年10月よりグリーンズにスタッフとして参画。「greenz.jp」の寄付読者制度「greenz people」を担当し、日本初の寄付型メディアづくりに挑戦中!ライフワークとして、東京の武蔵小山で「風邪で倒れた時にお粥を届けあう」助け合いの地域コミュニティづくりに励む。

ご近所SNS「マチマチ」とは?

今や、外国で暮らす人ともリアルタイムでコミュニケーションをとれるようになりましたが、その一方でここ数年、アメリカの「Nextdoor」やイギリスの「streetlife」など、海外では地域限定でつながる“ご近所SNS”が広まっています。

地域コミュニティを大事にする気運が世界的に高まるなか、ついに日本でも、日本オリジナルのご近所SNSとして、2016年に「マチマチ」がスタート。東京都渋谷区を出発地点に、現在は全国で展開されています。

「マチマチ」の投稿例。スマホでもパソコンからでもOK。

登録の仕方はとても簡単。「マチマチ」のサイトから、住んでいる地域の郵便番号を入力し、該当の地域を選択します。あとはメールアドレスとパスワードを登録するとショートメッセージでパスコードが届くので、それを入力すれば完了!

ほかのSNSとちがって「友だち」を探す必要はなく、すでにその地域に登録している人たちが集まっているオンラインコミュニティに加わります。

電話番号で登録するので“なりすまし”防止になり、また匿名では使用できない仕組みになっているため、互いに安心して利用できます。自分のページにはプロフィールを書くことができるので、「1歳と3歳の母です」「サッカーが趣味」など書いておくと、自分と近い人とつながりやすくなりそうですね。

具体的にどのように使っていくのか、六人部さんに聞いてみました。

自分の住んでいるまちを知るきっかけに。

正太郎 僕も「マチマチ」を利用していますが、どんなふうに使われていることが多いのでしょうか?

六人部さん たとえば、「◯◯に新しいスーパーがオープンしたよ」とか「今週末に◯◯で餅つき大会が開かれるみたいです」といった、まちのお店やイベントなどについて情報共有したり、あとは「子どもを皮膚科に連れて行きたいのですが、どこがおすすめですか? 」といった相談も多いです。

正太郎 地域に特化しているからこそ、本当に役立つ情報が多そうですね。

六人部さん SNSは何かを可視化するものだと思っていて、Facebookなら友人関係、Twitterは興味関心を可視化してつなげることで価値を発揮してきました。そしてマチマチは自分の住んでいるまちにどんな人がいるか、何があるか、イベントがあるかといった、まちの資産を可視化してくれます。可視化されることでマッチングが起こり、価値につながると考えています。

例えば、子育て中のお母さん同士がつながり、子育ての情報交換をしたり、一緒に子育てをするようになったり、子育て支援の団体とつながることもありえます。

正太郎 新しいメンバーが増えると「ようこそ」というボタンを押せたり、投稿には「いいね」ではなく「ありがとう」ボタンを押せるのもいいですよね。

六人部さん Facebookと比較すると、友人と会話するのとは異なり、近所の方と話すときはお互いに少し気を使いながら、役に立つ情報を交換することが実際の場でも多い。役に立つちょっとした地域情報を投稿してほしいと思い、「ありがとう」というボタンになっています。

正太郎 ユーザーはどういった層が多いですか?

六人部さん 子育て中のお母さん世代がメインですね。あと意外に、もうすぐ定年を迎える50代くらいの方たちも多くて、地域貢献をしたいと思っている人たちが増えているようです。

地縁の薄まった都心で、再びつながりをつくる。

正太郎 六人部さんは、眼鏡のECサイト「Oh My Glasses」を運営していましたよね。なぜ眼鏡屋から「マチマチ」に変化していったのでしょう?

六人部さん ものづくりをビジネスにしたいと思ってECサイトを立ち上げたんですが、ある程度やりきったところで、もっと社会的意義のあることをやりたいと思うようになりました。人々の生活を変えるとか、社会課題を解決するようなサービスをつくりたいな、と。そんなときに子どもが生まれたこともあり、「地域」や「地縁」について考えるようになりました。

正太郎 なるほど。

六人部さん 今、都心で暮らすほとんどの人は「地縁」がないですよね。独身のときはそれでいいけど、結婚して子どもができると、ふと地域に知っている人が誰もいないという状況に気づき、孤立を感じやすい。

正太郎 わかります。

六人部さん 昔は農村社会で、みんなで田植えして、やらない人は村八分になる、みたいな社会でしたよね。でも、それはやらないと生きていけないから、みんな地域コミュニティに属していた。

それが戦後に“会社員”が増えたことで地域に属す必要がなくなって地域コミュニティから離れていき、さらに人口も増えて都市に流れて、どんどん地縁が薄まっていった。家族のあり方も、大家族で暮らしていたのが核家族化して……そうしたすべてが、地域から孤立させる流れを生んでいます。

今、その極限にきていて、揺り戻しが起きているんじゃないですかね。子育ても、昔はみんなで子どもを育てていたけど、今はどこに助けを求めていいか分からない。だからこそ、近くに助けてくれる人がほしいと思う人が増えているのだと思います。

正太郎 なるほど。僕の個人的な視点では、3.11の震災も大きなターニングポイントだったと思うんです。震災が起きたことで安定したものはないという前提をみんな持つようになって、どこかに依存するのではなく個として生きていく力が必要になった。でも、暮らしや子育ての部分とか、本当に困ったときは個人ではやっていけない。

六人部さん そういえば渋谷区で「マチマチ」の実験を始めたときも、若い人がけっこう登録していて。その理由として「震災があったときに友だちはFacebookとかでつながっているけど、近くに住んでいないから不安」という声がありました。

正太郎 確かに震災以降、「マンションで隣に住んでいる人が分からない」のは不安、という認識を多くの人が持つようになった気がします。

川崎市で行われたまち歩きイベント「マチマチあるき」。実際にまちを歩きながら「マチマチ」を使用してみました。

六人部さん 内閣府のアンケートで、近所付き合いは煩わしいけど、困ったときは助けてほしいと思っている人が多いという結果が出たんですよ。都合のいいときだけ必要、という(笑)

でも近所の人と「仲良くしなきゃ」と思っている時点でやりにくい。楽しいから集まる、一緒にやったほうが楽しい、というのが理想的ですよね。

正太郎 たしかに。

六人部さん 僕が参加している「おやじ会」は、子どもが通っている幼稚園の父親の集まりで、ペンキを塗ったり遊具やピザ窯をつくったりしています。上の子どもの小学校では“PTO”というものがあるんですよ。

正太郎 PTA(Parent-Teacher Association)ではなくて、“PTO”?

六人部さん はい、これは「Parent-Teacher Organization」の頭文字を取ったものです。「Association(協会)」ではなく「Organization(活動団体)」として、“できるときに、できる人が、できることをやる”という理念のもと、ブレスト会議もあるんですよ。

知り合いの人はプログラミング講座をやりたいと提案して、そのお父さんは小学生向けにプログラミング授業をしていました。義務感なく、楽しく参加できるので、とてもいい仕組みですよね。

正太郎 僕が住んでいる武蔵小山でのネットワーク「MKN」はまさにそうで、もともとは大学の友だちが近くに引っ越してきて、そしたらその友だちも偶然住んでいて、また別の友だちが住むようになって、今では23人くらいメンバーがいます。ただ一緒にごはんを食べたりしているだけなんですけど、同じまちに住むとか、一緒に何かを共有するのは新しい価値だし、何より安心します。

それまでは家と会社の移動だけで、家には帰って寝るだけ、みたいな。東京に住むということはそういうものだという先入観があったけど、それ以外の選択肢があることに気づきました。

「MKN(武蔵小山ネットワーク)」では畑を借りて野菜を育てる「農業部」も発足。収穫後はもちろんみんなでおいしくいただく。

まちをよりよくする、社会インフラを目指して。

六人部さん 「マチマチ」では実際に会うことは少ないですけど、自分の住んでいるまちに知り合いが増えるだけで、安心感は高まりますよね。阪神大震災、東北の震災や熊本の震災が起きたときも、地域の人がつながっている地域ほどお互いの顔や名前を知っているため、避難所に誰かが来てないことに気づき、助けられることで結果的に助かる方が多くなった、という話もあるんです。

直接会いに行くことはハードルが高いけど、「マチマチ」はスマホを使って1分くらいで登録できて、参加できそうなものに参加する。それなら気軽にはじめられますよね。

正太郎 そうやって地域のなかでつながりができて、さらに信頼が深まると、まちもよくなりそうですよね。僕のまわりでは武蔵小山エリア内で引っ越す人が多くて、そのまま結婚して子どもも産んで育てるとなると、必然的にまちをよくしようと思うようになる。

自分のまちをよくすることは、子どものためになるって、すごくシンプルな動機ですよね。「マチマチ」でつながった人たちがそうやって育んでいったら、まちがよくなることにつながるんじゃないかなと思います。

六人部さん その通りで、「地域をよくしたい!」とかじゃなくて、自分のために始めることは大切だと思います。自分も、子どもが生まれてから初めて地域にコミットするようになって、それは自分や子どもに返ってくる。もちろん、まちのために何かしたいと思っているひとにとっても、一歩踏み出すきっかけになればと思います。

そのためにも、単なる掲示板SNSではなく、社会インフラを目指して、よりよいデザインをしていきたいと思っています。

「マチマチあるき」ではまちの知らないスポットを発掘。

“広い”視点をもって、より地域課題の解決を。

正太郎 今回「マチマチ」とは、「となりのご近所物語」という新連載に取り組むことになりましたよね。これは僕らにとっても、連載を支援したいと思う読者が、どれだけgreenz people(寄付会員)になってくれるかという挑戦でもあります。すでに「かものはしプロジェクト」と展開している仕組みです。

最後の質問として、今回の連載をgreenz.jpと展開していくことに、六人部さんがどんな期待を寄せているのか? について、お聞かせください。

六人部さん 僕自身が見えている世界は、まだまだ“狭い”と感じていまして。

正太郎 六人部さんが、“狭い”……ですか?

六人部さん はい。人って、意識的に広げないと、自分の価値観やバックグラウンドにもとづいた狭い範囲でしか、世の中を見ることができないじゃないですか。

僕はこれまでファイナンスやWebサービスという視点しかなかったのですが、「マチマチ」の開発を始めて、「こんな地域があるんだ」「こんなひとがまちづくりに取り組んでるんだ」という前向きな驚きに出会え、一方で、テレビで報道されているような保育園問題に苦しむお母さんたちの厳しい現実を目の当たりにすることもありました。

僕にとってgreenz.jpは、「ほしい未来は、つくろう。」という物差しで、様々な角度から、そういった社会問題とアクション、両面にスポットライトを当てて、プレイヤーの背中も、読み手の背中も、どちらもそっと押すようなメディアだと感じています。

だから、greenz.jpとの連載を展開することで、一歩踏み出した“広い”視点から、各地域でアクションしているプレイヤーたちの想いや課題に触れて、もっと深く理解できればと思っています。

正太郎 これから一緒にめぐる各地域での取材、楽しみですね。

六人部さん はい、本当に楽しみです。地域コミュニティを上手に築いている様々な取材先から、これまでの苦闘やうまくいったヒントなどを学ばせていただき、そのインプットを活かしたい。日本各地の課題解決に向け、「マチマチ」のプロダクトをよりよいものにしていきたいと思います!

(対談ここまで)

自分が暮らすまちのことを知り、同じまちに住んでいる人とつながり、よりよいまちをともにつくっていく。理想論に聞こえるかもしれないけれど、よく考えるとシンプルで当たり前なこと。

「まちをつくる」なんてことを考える必要はなくても、もし地域のなかで「おはよう」「ただいま」と挨拶できる人が増えたら、それだけで暮らしがより豊かになると思います。

いま、各地でそうした地域でのつながりを“取り戻す”取り組みが広がっています。そのまま真似をすることは難しくとも、自分たちのまちでも応用できそうなヒントを求めて、六人部さんと一緒に学んでいきたいと思います。

一人ひとりの“お隣さん”だけでなく、コミュニティ単位の“お隣さん”から学び合えることも、たくさんあるはず。この連載を通じて、心地よい関係をつくるためのヒントをみんなで探り、思わず覗いてみたくなる「となりのご近所物語」を増やしていきましょう。

– INFORMATION –

ご近所SNS「マチマチ」とgreenz.jpがともに取り組む新連載「となりのご近所物語」。

こちらの連載は、greenz.jpを寄付でサポートしてくださる「greenz people」が5名増えるごとに、プロジェクトを取材して、1本記事が公開できる仕組みになっています。つまり、25名のサポート読者が集まれば5本の取材記事、50名集まれば10本の記事を連載展開できることになります!

ちなみに現在、取材を検討しているプロジェクトは、こんな感じ!

【取材予定先】
・昭和30年代に生まれた日本初のマンモス団地「ひばりが丘団地」の住民コミュニティをデザインする「まちにわひばりが丘
・長野の善光寺で街に開かれたゲストハウスを運営する「1166 backpackers
・神奈川の藤野エリアで地域通貨「よろづ屋」などを通じて住民の助け合いコミュニティづくりを仕掛ける高橋靖典さん
・分譲マンションの自治会 成功事例
・賃貸住宅の住民コミュニティ 成功事例 などなど!

この連載を読者のみなさんの力を借りながら、一緒にカタチにしていきたいのです。連載サポーターは、greenz people(月々1,000円のご寄付)に入会することでなっていただけます。連載サポーターになっていただいた方々には、限定のFacebookグループにご招待して、取材の進捗や、連載のこぼれ話、地域コミュニティを考えるための気になるニュースなどをお届けします。

また、greenz peopleのみなさんに入会特典としてお届けしている「People’s Books」も、もちろんついてきます。最新号は「ソーシャルデザイン白書」。ぜひこの機会にgreenz peopleになって、「となりのご近所物語」連載をサポートいただけませんか? 以下の専用URLより、お申し込みください!

https://people.greenz.jp/?code=machimachi

– キックオフイベントも開催します! –

新連載「となりのご近所物語」のキックオフを記念して、今回の対談で登場したマチマチの六人部さんと、グリーンズの正太郎によるミニトークイベントを開催します! 誰でも参加歓迎です。あらためてマチマチを紹介していただくとともに、対談では話しきれなかったネタなどをお披露目しようと思います◎

【日時】
2017年4月25日(火) 19:00-21:00(19:30 トーク開始)

【ゲスト】
マチマチ・六人部生馬さん

【司会】
グリーンズ・植原正太郎

【参加費】
無料!

【定員】
20名

【持ち物】
夕飯、ドリンク/お酒が必要な方は各自お持ち込みください

【会場】
greenz Harajuku
東京都渋谷区神宮前2-19-5 アズマビル1階
https://goo.gl/maps/9eRUNVMeFd22

【お申込み】
以下のFacebookイベントで「参加ボタン」をお願いします!
https://www.facebook.com/events/396344510749086/