カフェ、古材、エネルギー、タイニーハウス……4人の暮らしの共通点は、身近なものをぐるぐる循環させること

2017年2月11日、なごり雪がちらちらと舞う土曜日。約60年前に建てられた日本初の観光タワー・名古屋テレビ塔で、「green power drinks Nagoya」”憧れの「つくる」暮らし~電力・住・食 編~”が開催されました。

募集の受付スタートから、わずか2週間で定員50名が満席に! 急遽、枠を増やして、当日は約60名の来場者で賑わうほど。参加者の顔ぶれは20代から40代が最も多く、なかには小さなお子さん連れの若いご夫婦の姿もありました。

普段エネルギー関連のイベントは年齢層がやや高くなりがちなのですが、今回は食や住など、各地から集まった登壇者の専門分野が多様だったこともあって、サザエさんのエンディングシーンのように、テレビ塔に次々とひとが吸い寄せられる大集合の日となりました。

雪降るテレビ塔、展望台から見上げた風景。夜はライトアップもされるため、ちょっぴり観光気分に

そもそも「green power drinks」とは?

グリーンズのイベントといえば、ソーシャルデザインを合言葉につながる交流会「green drinks」を思い浮かべるひとも多いはず。でも、今回のイベント名には、よく見ると“power”の文字が入っています。これはいったい…?

実はgreenz.jpでは、2011年11月から、GREEN POWERプロジェクト※の一環として「わたしたちエネルギー」という企画を走らせています。これは、今まで“他人ごと”のように感じていた再生可能エネルギーを“自分ごと”と捉え、みんなで考えていこうというもの。

私も最近学びはじめたばかりですが、ソーラーパネルやエコ燃料を扱うような再生可能エネルギーって結構身近なもので、知れば知るほど楽しい分野なのです。この感覚、庭でプチトマトを育てたり、果物をクツクツ煮てジャムをつくったりするのと似ているかも。

※GREEN POWER プロジェクトとは、「日本をグリーンの力でうごかそう。」というコンセプトのもと、経済産業省資源エネルギー庁が中心となり、国と民間が協力して、再生可能エネルギーを通じて未来の日本を創っていくプロジェクトのことです。

この「わたしたちエネルギー」のイベントとして開催されているのが「green power drinks」。知らない分野は、誰だって最初の一歩が踏み出しにくい。ならば、楽しげな会場にみんなで集まって、生活や仕事にエネルギーをうまく取り入れているひとたちの話を聞いて、疑問点はその場で尋ねてしまおう! というわけです。これなら、気楽に学べそうでしょ?

開催地は全5ヶ所。スタートは、レポート記事も公開された2016年12月8日の東京、続いて大阪。そして今回の名古屋、福岡、最後に札幌と、まるで音楽バンドの全国キャラバンのように次々と実施していきました。

では、大枠をご紹介したところで、今回の名古屋についてレポートしましょう。

まずは参加者のエネルギーとの距離感チェック。まだ縁遠いというひとから、すでに取り入れているというひとまで

「green power drinks Nagoya」をレポート!

今回のイベントは「大ナゴヤ大学」さんとの共催、コラボ企画です。

「大ナゴヤ大学」とは、“街がまるごとキャンパス”をコンセプトとする特定非営利活動法人シブヤ大学の姉妹校。“誰でも先生、誰でも生徒”という合言葉のもと、名古屋の街全体を校舎に見立て、幅広い世代交流を通じた生涯学習の機会を提供しようと、2009年9月に一般市民の寄付金により開校しました。

活動を通じて地域と深い関係を築く「大ナゴヤ大学」さんのおかげもあって、今回のイベント会場は、なんと、名古屋テレビ塔の3階にある会議室! エレベーターのドアが開いた瞬間、展望台へのカウンターが見えて少々浮かれてしまう、レアなスペースでの開催が実現しました。

こちらが、イベント共催「大ナゴヤ大学」の学長・今回の授業コーディネーターの加藤幹泰さんです

コンテンツは、エネルギー分野だけでなく住や食といった多方面から「つくる」暮らしを実践するゲストを招いた、トークイベント&グループワークショップ。暮らしのDIY実践者たちのプレゼンを聞いたのち、分科会のように登壇者ごとのグループにわかれ、ワークシートの回答を共有しあったり、登壇者へ直接質問を投げかけたりするというものです。

各地から集まった4名の登壇者はこちら。神奈川県相模原市を拠点にミニ太陽光発電システムの組み立てワークショップを日本各地で行っている「トランジション藤野藤野電力」の佐々木博信さん、長野県下諏訪を拠点に廃材をレスキューして次の担い手に継ぐ「ReBuilding Center JAPAN」の代表取締役・東野唯史さん

地元、愛知県からは自家栽培のオーガニック食材を用いた料理を提供する海辺のカフェ「OCEAN」料理長・フードディレクターのかみやいずみさん。そして、千葉県いすみ市でトレーラーハウスというタイニーな暮らしを実践する、greenz.jp編集長の鈴木菜央です(ここからは親しみを込めて、普段通り「菜央さん」と呼ばせていただきます)。

会場後方では、「OCEAN」の畑で採れた果物や米糀(こめこうじ)などを使った4種のフレッシュなドリンクが振る舞われ、「大ナゴヤ大学」の学長であり今回の授業コーディネーターでもある加藤幹泰さんの司会のもと、和やかなムードで「green power drinks Nagoya」が進行しました。

日本みつばちのハチミツとかりんと生姜の「酵素ソーダ」や「玄米糀いちごミルク」など

では、ここからは、暮らしのDIY実践者たちの話のなかで“参加できなかったひとにも、ぜひこれは伝えたい!”と強く思ったポイントをお届けしてまいります。

電気をつくる、「トランジション藤野/藤野電力」佐々木さんのお話

トークイベント1人目は、軽くて持ち運べる“超小型ソーラー(太陽光発電)システム”の発明者「トランジション藤野/藤野電力」の佐々木さん。バケツ一杯ほどのコンパクトなソーラーシステムをつくり、自家発電のエネルギーを日々の暮らしに取り入れています。

普段は神奈川県相模原市に家族5人で住んでいますが、超小型ソーラーシステムの組み立てワークショップの講師として依頼を受け、全国各地へ出向いています。藤野電力の講師チームとしては、すでに200ヶ所以上も訪れているそう!

佐々木博信(ささき・ひろのぶ)
外資系医療機器メーカーのマーケティング戦略マネジャー。2009年よりトランジションタウン藤野の活動に合流。2011年の東日本大震災の直後から、藤野電力の立ち上げにも参加。未来を担う子どもたちに持続可能な地域コミュニティを渡すことを目的に、森林保全や自然農、健康と医療などの分野で活動を展開。 [過去のgreenz.jp記事はこちら]

佐々木さん 電線に頼らないオフグリッドな電力を持てば、震災で停電が起きた時も困りません。我が家では子どもたち1人1人にも、家のなかで持ち運べるソーラーシステムを持たせているのですが、だんだん子どもたちに“電気を愛でる気持ち”が芽生えてきて。

今では、私が電気を消し忘れることがあれば「パパ、ちゃんと消しなさい」と逆に叱られてしまうほど(笑) 子どもたちの意識の変化、それこそがこのシステムを導入した一番の効果だなと感じています。

小さい頃から電気をつくることが当たり前にある暮らしを体験することで、知識だけでなくモノを大切にする心も育つ。しかも1台あたり2時間未満6000円ほどでつくれるそう! 私たちは、もっと積極的に、家庭にオフグリッド教育を取り入れるべきかもしれませんね。

これが噂の超小型ソーラーシステム。バケツ約1杯分のサイズで、20Wもの電力をつくることができます

家・空間をつくる、「ReBuilding Center JAPAN」東野さんのお話

2人目は、「ReBuilding Center JAPAN」代表取締役の東野さんです。妻・華南子さんとの空間デザインユニット「medicala」の活動で出会った長野県の下諏訪町の魅力に惹かれて移住。2016年秋に、建築建材の廃材を回収して次の担い手に継ぐ、カフェ併設の古材店として、今の会社を設立しました。

東野唯史(あずの・ただふみ)
ReBuilding Center JAPAN代表取締役・デザイナー。2014年より空間デザインユニットmedicalaとして活動開始。 全国各地で数ヶ月ごとの仮暮らしをしながら「いい空間」をつくり続けてきた。2016年秋、ポートランドにある本家の正式な承諾を得て、ReBuilding Center JAPANとして長野県諏訪市に会社を設立。 [過去のgreenz.jp記事はこちら]

東野さん 僕らは廃材となるはずの古材を回収することを“レスキュー”と呼んでいるのですが、古材をレスキューして何度も使い続けていくことは、環境にとって良いことなんですよね。建材として新たに木を切らなくてもいいわけだから。

会社を設立してから約4ヶ月、大小様々な50件以上のレスキューを行ってきたのですが、救われるのは古材だけではありません。家主さんの「ご先祖様から受け継いだ建物を全て処分せず、少しでも活かせたら…」という思いも、きっとレスキューされているんですよね。

自分ひとりで古材を取り出して整え、次の担い手を探すのは簡単なことではありません。家主の年齢が高ければ、体力的にもなお難しい。東野さんたちのように経験を積んだチームがリサイクルのハブとなって間に入ることで、スムーズな流れが生まれているのです。

「将来的にReBuilding Centerを全国に増やしていきたい」と東野さんは話します。廃材が価値ある古材となり、森林の伐採が減る、そうやって資源が循環する日本を、みんなでつくっていけたらいいですよね。

会場には、ReBuilding Center JAPANのメンバーが古材を組み合わせてリメイクした、ベンチが置かれていました

食をつくる、「OCEAN」かみやさんのお話

3人目は、愛知県の海辺に位置するオーガニックファーマーズキッチン「OCEAN」の料理長・フードディレクターを務める、かみやさん。自分たちで畑や田んぼを耕して、野菜や果物やお米などを育て、糀(こうじ)・味噌・醤油といった100%自家製調味料を用いて、オーガニック料理を提供するカフェを営んでいます。

かみや・いずみ
オーガニックファーマーズキッチン「OCEAN」の料理長、フードディレクター。パティシエ、ワインソムリエを経て料理人へ。「皆で種を蒔き、命を育み、地球とあそぶ」というコンセプトのもと、三河湾の美しい海と空が目の前に広がる立地で「カフェOCEAN」を営む。料理を軸に広がる多様なコミュニティ活動を企画・主宰する

かみやさん 野菜は無農薬で育てているので、虫に食べられることだってあります。でも、虫だってお腹が空いているのだし、殺すことはありません。食べたいものは食べたらいい。私たちは、それでも大きく育っていく野菜を少し分けてもらうくらいで十分なんです。

私たちにとって「つくる」というのは、ゼロから何かをつくるという難しいものではなく、身近なものをつくりなおしてぐるぐる循環させること。それが遠いところではなく日常のなかにあって、循環する様子が見えるから、楽しいと感じるんだと思います。

畑で育てる日本ミツバチは植物たちの花粉を運び、料理で余った野菜のクズはニワトリたちが食べてくれる。他者と奪い合って対立するのではなく、互いに委ねたり委ねられたりして、共存の輪のなかで日々の暮らしをめぐらせる、そんな姿が印象的でした。

左から、畑スタッフの小久保亮子さん、OCEANスタッフ aoiさん、OCEAN 料理長かみやいずみさん

暮らしをつくる、greenz.jp菜央さんのお話

4人目は、greenz.jp編集長、菜央さんです。過去にこちらの記事で紹介されたように、2014年から家族4人、約35㎡(ロフトを入れても50㎡! )のタイニーなトレーラーハウスで、冷蔵庫の電源もオフにしてしまうほどの、オフグリッドな暮らしを送っています。

編集長の菜央さん。イベント冒頭での挨拶を終えたのち、4人目の登壇者として再登場です

菜央さん 4年ほど前、自分で“ほしい暮らしをつくっていない”と実感したことがありました。世の中のことを考えて邁進してきたけど、帰宅や出勤するのは娘が寝ているような時間帯で、久々に顔を合わせると「パパ、また来てね!」と言われてしまう。ついには妻に離婚を切り出される始末。

家族のことが考えられていなかったんですよね。まさに“「ほしい未来は、つくろう」のドーナツ化現象”(笑) そこで、自分の暮らしをもう一度、イチから見直すことにしたんです。

「ほしい未来は、つくろう」が代名詞である菜央さんにも、そんな時代があったとは。それから改めて“自分にとってほしい未来とは?”を突き詰め、今では多機能性や小規模集約といった5つの大事な考え方を自らに定めて、暮らしをつなげるようにしているのだといいます。

菜央さん いろんなことをやっていて忙しそうにみえるかもしれないけど、僕にとっては全部つながっていること。実は、全て“子どもの教育”という観点を軸にやっているんです。そこから同心円状に、暮らし<地域<世界と広がっても、全部関係があるようにしたいなと。

そうやって、全部のことをつなげて、軸を追加してしまわないようにする。それが、僕が“ほしい暮らし”をつくるうえで、気を付けていることです。

あれもこれもと手を広げ過ぎて、気付けば過去の自分に未来の自分が苦しめられてしまうという経験、きっと誰もが一度はあるんじゃないでしょうか。そんな時、菜央さんが教えてくれた「暮らしをつなげる」という考え方をぜひ思い出してみてください。ちなみに「今では、子どもたちとは良い関係、妻ともラブラブです」だそう。めでたし、めでたし!

あなたの“ほしい暮らし”はどんなものですか?

最後は、グループワークショップです。電力・住・食・暮らしという登壇者のカテゴリーにあわせて4つのグループに分かれ、登壇者に直接質問したり、「あなたが描く憧れの“つくる”ライフスタイルはどんなこと?」が問われたワークシートを用いてグループごとに意見交換をしたりしました。

参加者からは「古材を使って自分で何かつくってみようと思います。いつも思考が頭でっかちになりがちなので、まずはみなさんのお店を訪ねてみようかな。そう思える場所に出会えて良かったです」「自分でしっかり選んだものや自分でつくったものを、生活に取り入れることからはじめてみようと思います」といった感想があがりました。

グループワークショップの様子

最後にみんなで記念の集合写真! ©大ナゴヤ大学

あなたの“ほしい暮らし”はどんなものですか? 自分のことだからこそ、なかなか見つからないと感じることや、見つけたと思っても気付けば見失っている、なんてこともありますよね。

そんな時、佐々木さんの超小型ソーラーシステムをつくるワークショップへ参加してみたり、東野さんの「ReBuilding Center JAPAN」に訪れて古材を眺めつつお茶をしてみたり、かみやさんの「OCEAN」で海を望みながらオーガニックフードをいただいたりと、暮らしのDIY実践者たちのもとを訪れ、彼らの暮らしぶりを覗いてみてはいかがでしょう。

菜央さんの言葉を借りれば、「つくる」という自発的なアクションを選んだ彼らの中には、確固たる“軸”が存在しています。つぼみだった花びらが開くように、軸から広がってつくりだされた現場やモノに直接触れることで、あなたの答えに出会えるかもしれません。

さあ、なごり雪も降りおわり、春を感じる季節となりました。
次は自分の未来を「つくる」というステップに、一緒に進んでみませんか?

(写真:楢 侑子