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カラダだけでなく家も地球もきれいに! 「グリーナーアース」山下登最子さんに聞く、手づくりオーガニック化粧石けんに込めた想いとは

みなさんは通りがかった川に泡のようなものが浮いているのを見て、残念な気持ちになったことはありませんか?

今回ご紹介する、「グリーナーアース」代表の山下登最子さんも、ある湖沼が汚染されている光景を目の当たりにしたことで、環境問題に対して行動を始めたひとりです。

「グリーナーアース」は、鬼怒川の堤防決壊があった茨城県常総市を拠点に、手づくりオーガニック化粧石けんとオーガニックハーブクリームの製造・販売をしています。

店舗前景

山下さんの石けんづくりの背景にあるのは、日用品という身近なものから、気候変動のような大きなテーマを“自分ごと”として考えてほしいという願いです。そこで今回は山下さんに、普段の暮らしの中でできる環境問題へのアプローチについてお話を伺いました。

山下登最子(やました・ともこ)
1949年福島県生まれ。汚染された沼へ視察に訪れたことをきっかけに、手づくりオーガニック化粧石けんとオーガニックハーブクリーム作りをはじめる。2009年に、地球のために、より緑多く、人々がより幸せに、そして夢多くの意味で「グリーナーアース」を設立。現在、口コミにて人気が急増している。

口コミで広がるグリーナーアースの手づくりオーガニック化粧石けん

2015年9月に上陸し、鬼怒川の堤防決壊など大きな被害をもたらした台風18号。被害に遭われた方の救出シーンなどをテレビで見た方も多いかもしれません。

今も続く川と人々の暮らし。(画像提供:P-NUTS630kg)

幸いにも「グリーナーアース」は、決壊地点の反対側だったので、お店は被害を受けていませんでした。初めて取材で訪れた日は、災害が起きてから2か月ほど経過した頃でしたが、取材に向かう途中も、街中のあらゆる場所で「がんばっぺ、常総」の文字を目にしました。

行き場のない思いで胸が熱くなりながらも、お店に到着すると、「あら! いらっしゃい!」と明るいお出迎えが。さっそくお菓子を用意してくださったり、荒れ放題だった場所をご自身が一から手入れしたという裏庭を見せてくださったり、山下さんの明るくあたたかい人柄にほっとする思いでした。

テーブルの上にもこのような気遣いが。

そして見せていただいたのが、敏感肌でお悩みの方の間で話題になっているグリーナーアースの手づくりオーガニック化粧石けんです。

あこがれのあなた(90g、1,000円(税別))、恋ごころ(90g、1,500円(税別))

赤ちゃんでも安心して使える看板商品の「あこがれのあなた」や、保湿の必要な方に好評の小豆島のオリーブオイル入り化粧石けん「恋ごころ」など、商品名もユニーク。

原材料のほとんどが、口に入れても安全なものでできているので、敏感肌に悩んでいる人や赤ちゃんからお年寄りまで、特に、妊婦さんにも喜ばれています。さらには、使えば使うほど排水溝がきれいになると話題になり、口コミを通じて多くの人に届いています。現在は店舗とオンラインショップのほか、銀座の「茨城マルシェ」でも購入できます。

事務所の本棚にはこんなにもたくさんの環境に関する本が。

想いから始まった商品化

山下さんがグリーナーアースをはじめたのは2009年。それまで環境と健康に関する活動に携わっていた山下さんですが、水質汚染で知られていた千葉県の手賀沼を訪れたとき、「なんとかしたい!」と思ったのだそうです。

その沼はとにかく泡だらけで、とてもショックでした。一番の原因は家庭排水だと聞いて「じゃあ、どうしよう」と考えていたとき、廃油を使った石けんづくりを学ぶ機会があったんです。

環境にも人の健康にも優しい石けんが広まることで、何かが変わるかもしれない。そう思った山下さんは、手づくりの石けんを周りの人にプレゼントすることからはじめました。

私のつくる石けんを「すごくいい」と褒めてくれて。でも、「タダだともらいにくい」という方も実際いたんですね。そうすると声を掛けていただけなくなったりする。それよりは金額を定めて、皆さんに気持よく商品を使っていただこうということで、茨城県の許可を取得し、バージンオイルを使用したオーガニック商品を作る会社を設立することになりました。

商品化も会社設立も、求められたからという、自然の流れ。グリーナーアースが広告を出さないのも、「よさは使った人がわかるものであり、使うか使わないかも消費者が選択する」という考え方が根底にあるからです。

「うちは売れればいいで始まったわけではないし、商品は買わなくていいから、気軽にお茶を飲みにお店に来てほしい」と山下さんは言います。そういう柔らかな物腰こそ、いいものが長く続く秘訣なのかもしれません。

普段もこのように一人一人と向き合って話をしているそうです。

そんな山下さんのあり方に惹かれて、グリーナーアースのお店には自然と人が訪れます。ある日は野菜をどさっと持ってきてくれる人がいたり、元気がなかった人が談笑するだけで見違えるほど明るくなったり、なくてはならないコミュニティの場となっているのです。

私は困っている人のために、何かをしてあげたいだけなんです。だから、商品でこだわりがあるとすれば、それは想いかな。みんなのところに行ってお役に立つんだよ、という想いをこめて作っています。それに、作っているときも、喧嘩したりむっとしたりしないで、楽しく作っているの。そういう自分たちのエネルギーが石けんに伝わっているんじゃないのかなあって。あったかい感じがしない?

商品の石けんはこのような型で一個一個手づくりされています。

日用品から考える環境問題

そして、石けんのような日用品の選び方によって、環境問題も解決できると山下さんは信じています。

今は便利にするために余計なものをたくさん使って、それが環境問題につながっているんですよね。でも、本来大切なのは、人も植物も元気であること。私たちの本来の生活を取り戻して、元気でいることができたら、私たちの石けんのように余計なものは必要ないと思います。だから、毎日使うもので、頭のてっぺんから足のつま先まで全身に使える、自然なものを作り続けていきたいんです。

洗顔、ボディーシャンプー、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、詰め替え用と、ものが増える分ゴミが出ます。しかし、グリーナーアースの商品は1個包んでいるビニールだけ。山下さんは余計な梱包をしないように心がけています。

そこには、ゴミ処理の煙もめぐりめぐって破壊されてしまう環境に対する想いや、少しでも安く、いいものを、必要なところへ届けたい、という姿勢があります。

(画像提供:P-NUTS630kg)

毎日、当たり前にあるお風呂の時間。石けんで自分がきれいになるたびに、その向こう側の川や海や、さまざまな生き物たちがいることを思い描くことができたら、ワクワクしますよね。

壮大なプロジェクトに参加したり、莫大な資金をつぎ込んだりしなくても、一人一人が当たり前となった日常の一部を変えるだけで、環境問題に対して変化を起こしていくことができるのかもしれません。

身近なところからしか、変えられないんです。目の前から始めることが、強く根付いていくと思います。だから、わたしは一生石けんづくりを続けていこうと思っています。“たかが石けんされど石けん”なんです。

そう取材中に語ってくださったその瞳には、生涯を通じて環境に貢献していこうという強い意志を感じられました。

ぜひ、みなさんも、毎日使っている日用品を見なおしてみることからはじめてみませんか?

グリーナーアースの詳細はHPをご覧ください。≪ greener-earth.jp/

(Text: 宮田晴香)