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大規模な工事は必要なし。世界初、太陽光発電できる道路「Wattway」がフランスで開通!

みなさんは“太陽光発電”と聞いて、どんなものをイメージしますか?

身近なところでは、住宅の屋根に設置されている太陽光パネルを思い浮かべる方も多いかもしれません。最近では、太陽光で充電ができる電気自動車「Sion」や、太陽光を使って調理ができるソーラークッカー「GoSun Grill」など、太陽光発電のポテンシャルを活かしたプロダクトにも注目が集まっています。

そんな中、フランスでは建設費用約6億円をかけ、世界初の太陽光発電道路「Wattway」が開通しました!

太陽光発電ができる道路とは、いったいどんなものなのでしょうか?

太陽光発電パネルが敷き詰められた道路「Wattway」

「Wattway」は、道路建設会社のコラス社がフランス国立太陽エネルギー研究所との5年にわたる共同研究で完成させたもの。このたび、フランスのノルマンディー地方で全長約1kmに渡って設置されました。距離は短めですが、約2,800m²のソーラーパネルが敷き詰められています。

厚さはわずか7ミリながら、車がスリップしないようにざらざらとしたアスファルト状に加工されていて、雨などの天候にも左右されず発電を行うことができます。

厚さはコインと比べてもあまり差がないほど。

車が上を走っていると太陽光が当たらないので発電できないのでは? と心配になりますが、車が通ることで発電できないのは日照時間の約10%で、太陽光パネルとしては使うのに問題はないとのこと。

気になる耐久性についても「Wattway」は少なくて10年、駐車場など交通量の少ないところだとなんと20年も持つといいます!もちろん、トラックなどの重たい車が通っても、不安になる必要はありません。

こんなに薄いのに大型トラックが乗っても大丈夫!

「Wattway」の魅力は、普通のアスファルトの道路上にそのまま設置するので、特別な工事も必要なく、取り替えも簡単なところ。20m²あたりで家1軒分、1kmあたり約5,000人規模の町の街灯に必要な電気を供給でき、世界中の道路で使うことができます。

将来的には「Wattway」による発電で、街灯や信号機、街中の大型スクリーン、バス停の案内板や建物など、あらゆるものの電力が道路から供給されるようになるかもしれません。

「Wattway」設置の様子

「Wattway」による発電電力の利用イメージ図

現在は電力の75%を原子力発電に依存し、再生可能エネルギーの分野で遅れをとっているフランスですが、2015年に「エネルギー転換法」を制定。エネルギー転換法では2025年までに原子力発電の割合を50%へ引き下げることを決定しています。だからこそ再生可能エネルギーに着目した「Wattway」は発表されたと同時に大きな注目を集め、気候変動を解決する革新的な製品として国際会議「COP21」でも表彰されました。

とはいえ、まだ課題もあります。現状では屋根に取り付けるソーラーパネルよりも、「Wattway」は13倍の費用がかかってしまうのです。今後の課題は、より研究を進めて安価で販売できるようにすることだそう。

「Wattway」の開通式典に参加したフランスの環境大臣Ségolène Royal(以下、セゴレーヌさん)はこう話します。

2年間試験運用を行い、1kmから供給される電力で道路周辺の3,400人の人びとが暮らす町の街灯に十分な電力を供給できるかどうかを検証します。今後5年間で、約1,000kmの道路を「Wattway」に変え、フランス全人口の8%にあたる約500万人が使用する電力量を供給したいと思っています。

「Wattway」の上を歩く環境大臣のセゴレーヌさん

太陽光発電というと、大規模な工事をイメージしてしまいますが、太陽光発電パネルを道路の上に被せるというアイデアで簡単に普通の道路を発電所に変えた「Wattway」。

まるごと取り替えるのではなく、既にあるものと組み合わせたり、少し付け加えることで、今まであったものが新しい機能を発揮するというアイデアのお手本になりそうです。

みなさんも今ある身近なものに何か加えると新しい使い方ができないか、少し考えてみませんか?

[via wattway, forbes, treehugger, indy100]
(Text: 菅磨里奈)

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。