ISSUE まちづくり

6 days ago - 2016.11.27

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地価高騰で苦境に立たされる街の芸術家を救う。サンフランシスコ発、倉庫をリノベーションしたアートスタジオ「Minnesota Street Project」

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アメリカ西海岸の美しい港街、サンフランシスコ。ゴールデン・ゲート・ブリッジや美味しいシーフード、そしてさまざまなカルチャーなどの魅力を持った街ですが、最近10年ほどはGoogleやAppleなどシリコンバレー発のIT企業の盛り上がりもあり、より世界中でも注目されています。

このようにさまざまな魅力を持つ街・サンフランシスコですが、アート業界も盛んであることをご存知の方は多いかもしれません。今年には、「San Francisco Museum of Modern Art(通称: SFMOMA)がリニューアルされ、華々しくオープン。

現地の企業とのコラボレーションにより、スマートフォンアプリを開発し、芸術作品の解説を聴いたり、写真撮影を楽しみながら鑑賞できるようになり、話題になりました。(参考

そんななか、街の芸術家の活動をさらに活発にさせるべく、立ち上がった夫妻がいます。それが、ベンチャーキャピタリストのAndy Rappaport(以下、アンディさん)と妻のデボラさん。彼らは、街の芸術家たちに安価でスタジオとギャラリーを提供するプロジェクト「Minnesota Street Project」を展開しています。
 
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サンフランシスコの南に位置する古い倉庫街、ドッグパッチ地区。もともとは軽工業向け区画に指定されていた地区で、「ここならアートビジネスに適しているし、改装さえすれば低コストで抑えた利用ができる」と思ったデボラさんは、かつて倉庫として利用していたスペースをリノベーションし、スタジオやギャラリーとして低価格で貸し出すサービスを始めました。

夫妻は芸術作品を収集する人々に呼びかけ、彼らにギャラリーを提供することで利益を生み出し、それを原資にした低価格で利用できるスタジオをつくりだしたのです。
 
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プロジェクトを立ち上げるにあたって、治安の悪いドッグパッチ地区をアートで再活性化することも視野に入れ、倉庫街や周辺には木材店や共用の釜や炉、印刷施設、キャンバスを目一杯広げられる広いスペースなどが用意され、レストランやカフェも併設しました。
 
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これらの施設は誰でも低価格のレンタル料で利用でき、2016年3月のオープンから現在では37人の芸術家が常駐しており、来賓の芸術家や、14のギャラリーが利用しています。
 
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ジェントリフィケーションから、芸術家たちを救う。

アンディさんとデボラさん夫妻が、このプロジェクトを立ち上げた背景には、サンフランシスコの直面している、ある社会的課題がありました。

IT企業の急激な成長により、サンフランシスコでは人口上昇が進み、急激に地価や家賃が高騰しているのです。人口の増加に対して充分にまかなえなくなっている住居不足の問題と、それによって起こった街の様相の変化。そんな現象は、「ジェントリフィケーション(貧困層の住む街に比較的豊かな人々が流入し、地域の社会や経済が変化する現象)」と呼ばれ、他の都市にも同様の現象が広がり始めていると指摘する声も。

人口が増加する一方で、サンフランシスコには景観を保全するための法規制があり、市内での大型アパートや高層マンションの建設ができません。したがって、アパートの家賃は上がる一方。その結果、街に多く集まる芸術家たちが活動する上で重要な「アートスタジオ」や「ギャラリー」がレンタル料を値上げしたり、経営自体が危機に陥る事態にも発展してしまったわけです。
 
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立ち退きをさせられてしまった現地住民の間には、デモも広がっている様子

自分の住む家の家賃を支払うだけでも精一杯な状況な、サンフランシスコ在住の芸術家たち。彼らのコミュニティまでもが崩壊しつつある事態を重く見たアンディさんとデボラさんは、自らもコレクターとして芸術を愛する人間として、この街の芸術を守るべく一念発起。より低価格で利用しやすい活動場所を提供するべく、プロジェクトを立ち上げました。

こうして芸術家たちが安価に使えるアートスペースを生み出したふたりですが、デボラさんは「まだ課題が残っている」と話します。

それは、アーティストやギャラリーで働く人々が居住できる場所を用意する必要があるということ。市街では寝室一部屋のアパートの賃貸料でも平均4000ドル近くは支払わなければなりません。

デボラさん これは早急に進めなければならない。我々はこの街で活動していた芸術家たちを失ってしまった。そして、まず早速始めたのがスタジオでした。

ただ、それが居住に関する問題の解決にはならないと分かっていました。しかし、アーティストたちが活動する上でのコストを少しでも下げてあげられないかと思い、最低限でも可能なことに取り組んでいるのです。

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アンディさんとデボラさん

街が発展し、盛り上がっていくのはうれしいことですが、その環境の変化により、頭を抱える人々や思わぬ形でのしわ寄せが起こってしまうことがあります。日本でも、東京オリンピックを目指して大規模な開発があちこちで起こっているだけに、サンフランシスコで起きていることは、決して他人事ではないのではないでしょうか?

街の持つ文化を守ろうとするだけではなく、芸術家や街の人々を巻き込む「Minnesota Street Project」。みなさんだったら、自分が住む街の文化を守り、さらに発展させていこうというとき、どんな人々を巻き込んで活動を展開しますか?

[via fastcoexist, Minnesota Street Project, 7×7, Artspace, Techcrunch, World Population Review, millennialmagazine]

(Text: 米津琢磨)

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