greenz people限定『生きる、を耕す本』が完成!今入会すると「いかしあうデザインカード」もプレゼント!→

greenz people ロゴ

自由に生きるには、物事の捉え方を変えること。”共生の楽園”を目指して活動する室田泰文さんに聞く、みんなが幸せになれるまちづくり

01

この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、こちらをご覧ください。

突然ですが、みなさんは今、幸せを感じていますか?

心では「これがしたい!」と思っていても、「その前にこれをしなきゃ…」と踏み出せないことはありませんか?

今回は「物事の捉え方を変えることで、楽しく自由に生きられる」ということを自ら実践している方をご紹介します。

山梨県北杜市で、「ビヨンド自然塾」の代表でもあり、「NPO法人みんなの街」の理事長を務める室田泰文さん。農地開拓、自然・農業体験、市民農園運営、お試し滞在施設、ワークショップ開催(古民家改修・ツリーハウス作り)、心の内観ワークショップなど、幅広い活動を通して、「みんなが幸せになる街作り」を行っています。

02

室田泰文
子供の頃から自分が興味を持っていることに夢中で突き進むという自由人。京都大学・大学院まで進んだ後、大手印刷会社に化学研究員として就職。印刷版の開発に成功し、国際特許を取得するなど第一線で活躍。しかし、仕事の忙しさや内容に疑問を感じ、入社五年半後に退職。起業を志すうちに、精神世界の探求に興味が移った。物事の捉え方・価値観が変わるに連れて、起きる出来事に明らかな変化が現れ、「信じる力」というものが確立。この「思考の現実化」という体験を多くの人に伝えたい、との想いから2012年に自然農園ビヨンド、2014年に心の寺子屋を開設、『ビヨンド自然塾』として運営を開始。2015年に幸せな環境作りの為、『特定非営利活動法人みんなの街』を立ち上げ、活動を続けている。

東京から電車で約2時間30分。山梨県の甲府盆地に位置し、八ヶ岳などの山々に囲まれ、日照時間日本一という北杜市。室田さんの活動拠点はそのような恵まれたフィールドにあります。
 

03

お試し滞在なのに、住みながら直す!?とりあえずやってみる精神

04
お試し滞在施設

こちらは移住支援の核となる「お試し滞在施設」です。山梨県は移住先希望ランキングで上位に入る人気の県。でも移住しようと思っても、知り合いも土地の情報もゼロ…とハードルが高かったりします。

室田さんはそのハードルを下げたいという思いで、武川町でお試し滞在施設の運営を始めました。ここにはお試し滞在施設だけではない特徴があります。それは「シェアハウス」にもなっていて、滞在中に先輩移住者から話を聞けることです。ここで繋がりを作ることで、移住後も知り合いがいるという安心感も得られます。
 

05
滞在施設での移住者と滞在者の交流風景

06
滞在施設の囲炉裏。寒くなると、囲炉裏を囲んでの団らんが始まる。

この滞在施設、なんと最初の居住者がやってきた時は居間の床がない状態だったそう。床下の根太を直すところから囲炉裏作りまで行ったとのこと。なぜ、きれいな滞在施設を用意するのではなく、改修途中の家に住みながら直すという形を取ったのでしょう。

お試し滞在を通して、誰でも自分の力で快適な空間を創り出せると気付いてほしいんです。空き家を気軽に直せると思えれば、移住しやすくなります。だからあえて「空き家の状態」から「住める状態」になるまでを体験してもらおうと思って、古民家改修ワークショップを開催しています。

DIY初心者の筆者も参加し、床張り、タイル貼り、天井の漆喰塗りを経験しました。木材を短く切りすぎたり、漆喰を頭から被ったりと、失敗しながらの挑戦でした。失敗してもリカバーすればいいという、室田さんの大らかな雰囲気のお陰で、のびのびと楽しく参加できました。

今まで家の改修はプロに頼まないとできないと思っていましたが、素人でもできることがたくさんあると感じました。「自分が欲しい空間は自分で作れる!」そんなワクワクした気持ちになりました。

耕作放棄地の開拓・自然体験・農業体験~究極の遊び~

07
農業体験の様子

次にご紹介するのは、自然体験や農業体験、市民農園の運営、農地開拓を行っているこのフィールド。ここは4年前まで木や草が密生していた耕作放棄地で、なんと室田さんが一人で開墾したそうです。
 
08
開拓した約2万平方メートルの耕作放棄地。敷地内では栗や筍や柿、山菜が収穫できる。

近くに6畳程の休憩小屋もあります。もちろん、こちらもワークショップを開催して自分達で作ったそう。大人も子供も参加し、協力しながら作業を進めます。子供が率先して釘打ちや塗装をし、やりたい気持ちに応えてチャレンジさせてくれます。それを見て大人も笑顔になる。室田さんのワークショップには、いつも和やかな温かい空気が流れています。
 
09
完成した休憩小屋と小屋作りワークショップの参加者の集合写真

心の枠を超えよう!

10
瞑想指南ワークショップの様子

室田さんは思想家としての顔もお持ちの方です。9年間の精神探求の結果、物事の捉え方で目の前に起こる出来事が変わることに気付きました。望む方向へ進めずに迷っている人の心の手助けをする為、「心の寺子屋」という活動を始め、内観ワークショップや瞑想指南を行っています。室田さんは自分が進みたい道を選べるよう、そっと背中を押してくれます。

人は本質的に自由で、生き方を選べる。でも安定や常識という基準で物事を考え、行動するのが当たり前になっていたりする。やりたい方向に進むには覚悟や責任が伴うけれど、確実に充実感を与えてくれる。自分の気持ちに正直に生きられる人を増やしたいと思っています。

11
内観ワークショップの様子。登山をしながら行うこともある。頂上からの景色も絶景。

みんなが望むことをする、楽園創りの為に

幅広い活動をしている室田さんが目指す街づくりとはどんなものなのでしょうか。

会社を退職してから理想の生活ってなんだろうと考えていたら、「お金=パワー」じゃないと気付いて。お金に安定を求める人が多いけれど、もっとシンプルに「幸せを望める環境」を創ったら面白いと思ったんです。

まずは自然と共生し、豊かな恵みが受け取れる場を創る。そこに集う人は誰もが自由に作物を作り、くつろぎ、やりたいことができる場所にする。次第に互いが得意なことをして支えあい、助け合える「共生のネットワーク作り」となっていく。

その集団が「望む方向に進む素晴らしさ」を伝えることで、新たな流れが加わり大きくなる。それが結果として「みんなが幸せな、共生の楽園」を創ることに繋がる。小さな力をあわせれば物凄い力になる。まず一人一人が自分の幸せへ一歩進むことから始まるんです。

12

筆者は1週間程、農地を耕したり、イノシシ用のワナを作ったり、栗を拾って渋川煮のお手伝いをしたりしました。室田さんは「全てを遊びと捉え、自分の気持ちに正直に、人生を楽しく生きる方」という印象を受けました。農地開拓、古民家改修、瞑想・・・一見街づくりとは関係ない取り組みにも見えます。

でも、「自分に正直に生きる」を実践する室田さんの魅力に惹かれた人達が集まり、これからこの一つ一つの取り組みが芽吹き、やがては大きな花として咲いていく。結果として「みんなが幸せになる街づくり」になる。その面白い流れの一端を見たように思います。

ここに来れば、あなたの中の何かが触発され、自分の新しい可能性を掴むことができるかもしれません。ぜひ足を運んで実感してみてください。

(Text: 山崎杏美)
 
write

山崎杏美(やまざき・あみ)
神奈川県出身。「今を楽しく生きる!」をモットーにワクワクしたことはまずチャレンジ。最近は自分の生活を自給自足したいと思い、DIYや家庭菜園に熱中。自分にとっての豊かさ・幸せとは何かを模索し、いろいろな生き方を実践したいと考えている。