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「Maker Faire Tokyo」に行って、持続可能な未来につながりそうなプロジェクトを探してみました

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こちらの記事は、greenz peopleのみなさんからいただいた寄付を原資に作成しました。

8月6日・7日の2日間、東京ビッグサイトで「Maker Faire Tokyo」が開催されました。

このイベントを主催したオライリー・ジャパンは世界でブームになっている「Makerムーブメント」の仕掛け人である雑誌「Make」を日本で発行する出版社で、アメリカでも行われている「Maker Faire」はMakerたちによる年に1度のお祭りなのです。

Makerというと手づくりで色々なものをつくっている人というイメージで、まあほぼそのとおりなのですが、いわゆるものづくりから最新のテクノロジーを使ったハイテクなものまで、さまざまなものが雑多に集まるのが「Maker Faire」。

一体どんなものがあるのでしょうか。greenz.jp編集長・鈴木菜央とともに訪れた今年の「Maker Faire Tokyo」を、菜央さんのコメントをはさみながらレポート形式でみなさんにもお届けしたいと思います。

持続可能な未来に向けて

私自身、初参加ということで、一体どんな感じのイベントかもわからないまま行ったわけですが、会場の外にすでに自作の車でレースを行う「Nerdy Derby」の会場があったり、物を展示するというよりは実演してみせたり、実際にものづくりを体験してみたりする場という感じで、夏休みの自由研究のためなのか、子どもたちの姿もたくさん見られました。

会場をざっと見渡して、まず存在感を放っていたのがこのロケット。
 
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会場の一角が「Space Island」と名付けられ、ロケットや人工衛星といった宇宙開発関連の展示が集中して置かれていました。

宇宙開発というと国家プロジェクトというイメージが強いですが、テスラで有名なイーロン・マスクもロケット開発を行っていますし、日本でも民間でロケットを打ち上げるMakerが生まれてもおかしくはないのだと感じました。

実際、最近TVコマーシャルも目にする、KDDIも参加する月面探査プロジェクトHAKUTOのブースもありました。こちらは、スポンサーブースなので手づくり感は薄いですが、実現しそうな感じは強く、Makerが企業と手を組むことで大規模なプロジェクトとして成立していくという部分も見ることができます。

ロケットが置かれていた宇宙コーナーを含む「スペース&サイエンスゾーン」には、もっと身近でサイエンスを使う取り組みも色々紹介されていました。

菜央 宇宙開発というと巨大国家プロジェクトというイメージだったけど、個人ができる可能性が広がっているんだなぁと実感しました。関わった人たちはもちろんだけど、結果をみんなで共有することで宇宙から地球を見る視点が育まれるとすれば、すばらしいことですね!

その中で注目したのは、「有機野菜水槽クリエーション Agrium(アグリウム)」です。こちらは、アクアリウムに使う水槽の中で有機野菜を育てるというもの。

この面白いところは、地中の微生物が植物の成長に必要な窒素やリンを生成することで肥料がいらず、光と水だけで植物を育てることができるという点です。いわゆる植物工場のようなシステムではなく、できるだけ自然の環境を再現し、しかもそれをインテリアとしても使えるような水槽の中に閉じ込めているのです。
 
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しかも、開発した永田さんはサラリーマンをしながら、「食と農」に興味を持ち、いわば「マイプロジェクト」としてこの開発を進めてきたのだそうです。今は静岡を拠点に、実際の販売を目指すとともに、現在実現しているスプラウト以外に、きのこ類の栽培を可能にしたり、農業の現場への導入の可能性を探るなどしているそうです。
 
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菜央 これはおもしろい! インテリアとして美しいのもすばらしいし、生態系を目の前で観察できるというのは、楽しいだろうな。

こういう持続可能な未来を想像させてくれるようなモノは他にもあって、例えば太陽光の電力だけで動く手のひらサイズのウェブサーバを考案している人がいたり、わずかな電力で空を飛べる小型飛行機「空カブ」を開発しているひとがいたりしました。

まさに自分のほしい未来を自分の手でつくろうとしている、そんな人たちが集まっていたのです。
 
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バカバカしさから生まれるイノベーション

このように、まじめに未来について考えるものももちろん面白いですが、やはり興味を惹かれるのはバカバカしかったり、思いもつかなかったりするような発明です。

みなさんもそうだと思いますが、くだらないことやバカバカしいことを考えている時ほど豊かなアイデアが生まれてくるものなのです。

今回の展示の中で、私が一番バカバカしくて面白いと思ったのは、レゴでバカバカしい装置をつくる「Kohsuke’s Lab.」。

中でも目を引いたのが、トイレットペーパー用のタコメーターというもので、トイレットペーパーホルダーに速度計と使った長さがわかるメーターをつけたというもの。

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そしてこちらが編集長が今年のMakerfairで一番バカバカしくておもしろかったという、カップ麺の粉末スープを開ける前に遠心力で粉を寄せてくれる機械。

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菜央 こういうふうにとりあえずつくってみる「プロトタイピングする」姿勢がすばらしいなと。ソーシャルデザインみたいな形のないことでも、小さく始める、実験してみることって大事だよね。

トイレットペーパーのタコメーターしかり、粉末スープ遠心処理機しかり、「だから何だ」と言われればそれまでですが、レゴという身近な材料でこういうものはつくれないかと発想して、それを実際につくる。その発想と制作というのはあらゆるものづくりに共通する過程なわけで、これが何かすごい発明につながることはないにしてもそこから面白いものが生まれる可能性はあるのではないかと思いました。

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http://www.nicovideo.jp/mylist/11988408には、「Kohsuke’s Lab.」の作品が投稿されています。

レゴというのは、本当に手軽にものづくりをやってみることができる玩具で、今はモーターはもちろん、マインドストームというコンピュータプログラムを使った工作をすることもできます。随分前にレゴで宇宙エレベーターをつくるというイベントに参加して記事を書いたことを思い出したりもしました。

レゴ自体で面白いものをつくるのもそうですが、プロトタイピング的に夢の機械をレゴでつくってみることでそこから発想が生まれるということもあるのかもしれません。

さて、バカバカしくて面白いものですが、何故か集まっていたのが音楽のジャンルでした。

ひとつは古い扇風機をギターのような電子楽器にするという和田永さんの「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」。なにより見ただけで面白いし、きちんと楽器としても成立しています。

ちょっと重いのが玉に瑕ですが、電子楽器としては見事に成立しています。和田さんは、ブラウン管テレビなども楽器にしていて、役目を終えた家電に楽器としての新しい命を吹き込むある種のアップサイクルを実現しているわけです。まあでも見た目がバカバカしいですね。
 
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菜央 これは、アップサイクルなのかな!? 古い家電に命が吹き込まれていて、最高に面白いですね。ここでは紹介できなかったいろんな楽器が実験されていましたよ。

もうひとつバカバカしかったのが、「Dam6 Sen5e」のロボット掃除機ルンバを使ったスクラッチロボット「Create 2 DJ Turntable II」。

ルンバのうえにレコードを載せ、回転を制御することでターンテーブルとして使おうというものです。こちらも見た目がとにかくバカバカしくて面白く、使っている材料も手に入りやすいもので思いつきさえすれば簡単につくれそうなもの。本家iRobotのサイトでも紹介されたことがあるそうで、みんなで面白がって色々なものをつくっているところに未来を感じました。

菜央 これもアップサイクルと言えるのか……わかりませんが、とにかくすごいですね。ルンバの発売元も驚いたとか。

 
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誰でも電子工作ができる時代

このロボットにも使われているArduinoのような「電子工作キット」が「流行っている」というのもすごく印象的でした。

それを使ったものが多数出展されているのはもちろんですが、ArduinoやRasberry Piなどの関連ブースも数多くでていて、ものをつくる人の間ではすでに浸透しているということを感じました。

まだ、一般的にはとっつきにくい印象はありますが、それこそレゴブロックのように、組み立てていくだけで色々なものをつくることができるので、じつはやってみれば簡単なのかもしれません。本当にコンピュータを使ったものづくりというのが身近なものになってきているんだなあと感じたのです。

身近さというところで言うと、単純に便利だなと思ったのがGIF(Generative Idea Flow)の「スワイプエプロン」。

料理などをしているときに、エプロンをスワイプすることでタブレットなどの画面をスクロールすることができるというもので、レシピサイトを見るときなどに非常に便利。「レシピを確認するためにいちいち手を洗うのが面倒くさい」という不満を単純なアイデアで見事に解決してくれます。
 
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今回、いろいろな「もの」をみて「すごいなあ」「面白いなあ」と思ったのですが、そのすごさというのは必ずしも技術的な部分でのすごさではなく、アイデアの部分のすごさが大きいとも感じました。

世の中は複雑化していて、コンピュータのような複雑なものをつくるのは難しいとついつい思ってしまいますが、その部分は少し勉強すれば決して難しいものではなく、むしろ難しいのは本当に面白いものをつくるためのアイデアを出せることなのだと思ったのです。

「ものづくり」という言葉のイメージにはどこか職人さんがこつこつと手でつくっているというものがあって、実際多くのものはだれかがその手でつくっているものなわけですが、今の時代においてはつくる手段というものがどんどん身近になって来ていて、そこまで質にこだわらなければ誰でも「ものづくり」ができる、そんな時代になっているのではないかと思うのです。

自分自身でも面白くて実現してみたいものづくりのアイデアがあったら自分の手でつくることに挑戦してみようと少し思ったイベントでした。

最後に、菜央さんからの締めのコメントをどうぞ!

菜央 今回はじめてMaker Fairに参加して全体として感じたのは、Makerムーブメント自体が、人の可能性を開いているな、というところ。

みんなとにかくワクワクから始まっていて、手でつくり、それをみんなと共有する。お互いに学び合って、また発展していく。ソーシャルデザインに取り組む人々にとっても、こういう場があるといいなぁと思いましたね。

ソーシャルデザインに取り組む人とMakerたちがもっと出会えたら、何かが起きる気がして仕方がありません。うーん、なんかできないかなぁ。とわくわくしています。