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つくるべきは隣国との壁ではなく、優しい国家。ニューヨーク発、グラフィックデザイナーがトランプ・タワー前につくりあげた「白い壁」が伝えるメッセージって?

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credit:Alyssa Coscarelli

こちらの記事は、greenz peopleのみなさんからいただいた寄付を原資に作成しました。

4年に1度の米大統領選も、投開票日がいよいよ11月8日に迫ってきました。

共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏を、テレビで見かけない日はありませんね。でも、トランプ氏の過激な発言に、クリントン氏の私用メール問題など、両候補者とも何かと騒動が続いている様子。

特にトランプ氏は、「メキシコとの国境に万里の長城を築く」や、「イスラム教徒の入国を禁止する」といった移民排外主義的な姿勢が、国内外で大きな物議を醸しています。過激な発言で注目を集めるトランプ氏の予想以上の躍進に、国内では懸念を抱く声も多く、ニューヨークでは大規模なデモも行われました。

そんな中、マンハッタンにトランプ氏が保有する高級マンション「トランプ・タワー」の前で、グラフィックデザイナーたちによる一風変わったデモが行われたようです。その様子がこちら!
 
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credit: Daniel Forero

「トランプ・タワー」の前に現れた一列の文字が表すのは、「BUILD KINDNESS NOT WALLS(壁ではなく、優しさを築こう)」のメッセージ。

約1m×1.5mのパネルに力強く刻まれた文字が、「メキシコとの間に壁をつくる」というトランプ氏の発言に、真っ向から立ち向かっています。実際に「壁」をつくりだすというデザインの力を活かしたデモは、人の目を惹きつけ、想像力をかき立てます。早朝から行われたこの活動には、100人のボランティアが参加し、約3時間の間、建物の前に立ち続けたそう。

このプロジェクトをいち早く紹介したウェブマガジン「Fast Company Co.Design」は、トランプ氏が発信する「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(アメリカを偉大な国にしよう!)」というメッセージに対抗し、

「MAKE AMERICA KIND AGAIN(アメリカを親切な国にしよう!)」

という言葉を発信。プロジェクトにも、賛辞を送っています。
 
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パネルの裏側には、「壁を築くかわりに、もっと親切心と、愛を築こう」の言葉も。 credit: Daniel Forero

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活動に参加した人たち。credit: Ramon Trotman

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credit: Daniel Forero

このデモの発案者は、ニューヨークをベースに活動するグラフィックデザイナーのJessica Walsh(以下、ジェシカさん)と、Timothy Goodman(以下、ティモシーさん)。

普段は美術学校で講師を務める2人ですが、互いから恋愛関係の構築を学ぶため、期間限定での交際を記録した「40 Days of Dating」などの斬新なウェブサイトや本が、以前から反響を呼んでいました。実は今回のデモも、ネット上で実践の様子を公開していた「親切な人になるための12ステップ」の最終ステップだったのです。
 
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「12 Kinds of Kindness」では、2人が実行した「より親切な人」へ向かうための、12の試みをレポート。

これまで「1日中、笑顔で過ごす」や、「お金とメッセージの入った財布を街中に落とす」といったステップを実践してきた2人が最後に挑戦したのは、「自分たちができると思うものより、ずっと大きなことをする」というものでした。このデモ活動を最後のステップに選んだ理由を、2人は、このようにブログに綴っています。

以前から、ドナルド・トランプ氏に対しては、人々を強力に分断させているという危機感がありました。誰かを追いやれば、差別や、嫌悪、時にはテロリズムを引き起こします。壁をつくり恐怖心を煽る代わりに、私たちは、親切心、愛、寛容さを築かなければならないのです。

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このプロジェクトには、トランプ氏が過去に述べてきた失言、暴言をまとめた「TRUMPSULT!」と、もしトランプ氏が本当に大統領になったらどうするか?を投票できる「If Trump Wins…」というウェブサイトも含まれていました。

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「もしトランプが勝ったら・・・。」という質問に対して、「大泣きする」「カニエ・ウェストを待つ」「カナダに移住」など、ユーモアの効いた選択肢から、ちゃんと投票ができます。

2人は、今回のデモで活動は終わらせないと、宣言しています。

私たちは政治の専門家ではないけれど、もし自分たちが本当に気にかけていることに対して声を上げなければ、それは怠惰だと思いました。これからも、ソーシャルメディアを使って、平和的に発信し続け、アメリカは、様々な人種や、宗教、文化を持つ人がいるからこそ、素晴らしい国なのだということを伝えていきたいです。

得意分野とアイデアを駆使し、シリアスになりがちな「政治的な抗議」に、新鮮な風を巻き起こした2人。自分が楽しく、熱意をもって取り組めるアプローチを選ぶことで、より大きな共感が生み出せたといえます。
 
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ジェシカさんと、ティモシーさん

アメリカ大統領選挙の動向も気になるところですが、私たちが気づいたことを自分なりに伝えていくことも、変化を起こすひとつの方法。これを機に、自分ならどんな伝え方ができるのか、考えてみてはいかがでしょうか。

[Via 12 Kinds of Kindness, Fast Company, 日本経済新聞]