ISSUE 教育

4 months ago - 2016.07.14

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人文学部でソーシャルデザインが学べる!? 元「greenz.jp」編集長が担当する京都精華大学の授業をのぞいてきました

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授業中の兼松さん

昨今、さまざまな機会で「ソーシャルデザイン」という言葉を耳にするようになりました。特にこれからの社会を担う人材を育む大学・大学院の反応は早く、ざっと調べただけでも次のようなカリキュラムや研究機関がヒットします。

・京都精華大学人文学部「ソーシャルデザイン・プログラム」
・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科「ソーシャルデザイン集中講座」
・京都造形芸術大学大学院「ソーシャルデザイン・インスティテュート」
・九州産業大学芸術学部「ソーシャルデザイン学科」(2016年新設)
・早稲田大学先端社会科学研究所「ソーシャルデザイン研究部門」(2016年新設)
・慶応義塾大学大学院SDM研究所「ソーシャル・デザイン・センター」(現在は廃止)

「ソーシャルデザイン論」のような講義単位としても、法政大学(経営学部)、大阪大学(全学部共通)、日本大学(生産工学部)、武蔵野美術大学(造形学部)、多摩美術大学(美術学部)、東京造形大学(造形学部)、近畿大学(文芸学部)など。専門的な知識をいかしてクリエイティブに社会課題を解決する「ソーシャルデザイン」は時代の要請であり、今まさに隆盛を極めているといえるでしょう。

こうして俯瞰してみると芸術系か公共政策系の学部が目につきますが、その中でもひときわ異彩を放っているのが、日本で初めて人文学部の核に「ソーシャルデザイン」を据えた京都精華大学です。
 
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(左)元「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さん (右)ゲスト講師を務めた並河進さん

コミュニティデザイナーの山崎亮さん、詩人の上田假奈代さん、コピーライターの並河進さんなど、greenz.jpでもお馴染みの豪華ゲスト陣の講義を聞き、実践的なワークショップで具体的なアイデアを考えるというアクティブな授業。

その講師を務めるのが、グリーンズ編『ソーシャルデザイン – 社会をつくるグッドアイデア集』の主著者であり、2010年から2015年までgreenz.jp編集長を務めた兼松佳宏さんです。

インタビューの最後、兼松さんは「この仕事は究極のムチャぶりでした」と笑いながら話してくれました。その真意とは? そして、兼松さんが描く”人文系ソーシャルイノベーター”像とは? 前期の山場となる授業を見学させていただきながら、京都精華大学で実践中の「ソーシャルデザイン・プログラム」について、出来立てほやほやのお話を伺いました。
 
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兼松佳宏(かねまつ・よしひろ)
勉強家/京都精華大学人文学部特任講師。1979年生まれ。ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、10年から15年まで編集長。2016年、フリーランスの勉強家として独立し、京都精華大学人文学部特任講師、勉強空間をリノベートするプロジェクト「everyone’s STUDYHALL!」発起者、ことば遊びワークショップユニット「cotone cotône」メンバーとして、教育分野を中心に活動中。著書に『ソーシャルデザイン』、『日本をソーシャルデザインする』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。秋田県出身、京都府在住。一児の父。

「ことばのブーケ」を届ける?

編集部 「ソーシャルデザイン・プログラム」は人文学部2年生の必修科目とのことですが、今日の授業では学生は何をしていたんですか?

YOSH 「ソーシャルデザイン・プログラム」は、講義が中心となる「社会創造概論」とワークショップが中心となる「社会創造演習」の二つを合わせたものなんです。今日見ていただいたのは、「社会創造演習」の前期の山場で、2ヶ月ほど取り組んできた「ことばのブーケ」ワークショップの最終段階でした。

編集部 「ことばのブーケ」ワークショップというのは?

YOSH これは「サンタのよめ」代表で僕のパートナーでもある兼松真紀(makiLilia)さんと一緒に作った演習用のプログラムで、感謝の言葉をサプライズで届けよう、というものです。

教員や職員、守衛さん、清掃員さんなど身近な人の中から「ありがとう」を伝えたい人を自分たちで選ぶんですが、中には池の鯉に「いつも癒やしをありがとう」という思いをこめて歌を捧げたチームもいました(笑)
 
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池の鯉に「小さな鯉(恋)のうたを届けたチームの発表

その準備として買い出しに行ったり、ものをつくったり、あるいは実際にプロジェクトを実行したり、成果発表の準備をしたり。それぞれの進捗に合わせて、学生の主体性にまかせる感じで出入り自由にしています。

編集部 そうだったんですね。あまりに自由すぎてビックリしました(笑)

YOSH 「社会創造演習」は、人文学部の学生たちが自分の”作品”をつくる実技の時間だと考えているんです。クリエイティブな発想って、ちょっとした”スキマ”から生まれますよね。だから僕の授業では規律よりも寛容さを大事にしたいなと。もちろんメリハリは重要ですが。

例えば、ちょうど20歳を迎えるクラスメイトにサプライズを仕掛けたチームは、連日夜を徹してあれこれ仕込んだり、オリジナルTシャツまでデザインしたり怒涛の勢いで。最後にはお母さんにも手紙を書いてもらおうとなって、職員の方や僕も間に入って連絡をとったり。「最近の学生は元気がない」とか言われたりしますが、いったんスイッチが入るとみんなすごい力を発揮するんですよね。

サプライズを終わったチームは、「ドキドキしたけど、やってよかった」という感想をくれました。思い通りにいかないこともあるけれど、ハプニングも含めて小さな成功体験になったみたいで、それが嬉しかったです。
 
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クラスメイトにサプライズを仕掛けたチームの発表

編集部 スイッチを入れるためにどんな工夫をしていますか?

YOSH やっぱり人文学部だけあって、学生の言葉のセンスに光るものがあるんですよね。キャッチコピーを考えるワークショップを開いていただいた並河進さんも同じようなことを言っていて。そこで特に手紙、小説、歌詞など、「どんな表現でことばのブーケを届けるのか?」という点にこだわってほしい、というディレクションをしました。

実は一年生のときから「ことば演習」という必修授業を通じて、エッセーを書いたり、連歌を作った経験があるんです。そんな学生の言葉の力を活かせるとカリキュラムとしてもいい流れかなと。中には短編小説を仕上げたチームもいましたよ。

編集部 すごいですね!

YOSH もうひとつ学生がワクワクしてくれた要因として考えられるのは、「サプライズ」という設定そのものかもしれません。
 
プレゼントは高価なものよりも気持ちのこもったものが喜ばれるので、メンバーひとりひとりの貢献が大事になります。そうすると、「楽器を弾ける」とか「司会がうまい」とか、意外と知られていなかった仲間のできることがどんどん可視化されていく。さらに秘密を分かち合っていること自体、不思議なワクワク感がある。

それにソーシャルデザインとは、端的にいえば「困っている人の課題をクリエイティブに解決すること」だとすれば、大事なことは「押し付けにならないこと」だと思うんです。本当のニーズを汲み取らないとアイデアがズレてしまって、お互いにとってハッピーじゃなくなる。

一方、内緒で誰かを喜ばせようとするサプライズでも、場合によっては相手に迷惑をかけることもありますよね。それを避けるには、何より相手のことを尊重し、その状況を理解しないといけません。と、あれこれ考えてみると、サプライズにはソーシャルデザインのエッセンスがたくさんつまっているんです。
 
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「ソーシャルデザイン・プログラム」のカリキュラムデザインをするために参考にした書籍(ほんの一部)

編集部 サプライズは「初めてのソーシャルデザイン」にふさわしい題材なんですね。とはいえ最近フラッシュモブに対する風当たりも強かったりしますが、そのあたりは?

YOSH 最近もフラッシュモブでプロポーズしたらフラレてしまった、みたいな記事が話題になりましたが、そういう悲惨なことが起こってしまうのは、ターゲットとなる人がサプライズ嫌いだったり、受け取る準備ができていないのに強引にやってしまうからだと思うんです。こういう贈与の仕組みは人類学的にも根が深いのですが、大事なのは受け取るハードルを下げることなのかなと。

そこで、今回テーマとして選んだのが「ありがとう」という感謝の気持ちで、これは「返礼は必要ありません」というメタ・メッセージを含んでいるんです。最初は驚くかもしれないけれど、そこに書かれた手紙には「あなたから既にたくさんのものを受け取ってきました。あくまでこれはそのお返しです」という思いが込められているので、「返礼義務がないならいただいてもいいかな」とどこか楽になれる。

編集部 ふむふむ。

YOSH さらにいうと、感謝の気持ちはクリエイティビティの源泉でもあります。数十年来、世界各地で「つながりを取り戻すワーク」を展開し、そのノウハウを『アクティブ・ホープ』という本にまとめたジョアンナ・メーシーも、「感謝の気持ちを感じる」ことをすべてのアクションの起点としています。

曰く、感謝は幸福感を高め、信頼と寛大さを育み、何かを受け取っているという自覚が、世界のため、次世代のための行動を促す、と。深いですよね。「社会創造演習」はパッと見は遊びの連続かもしれませんが、こういう深いレベルの知恵をそこはかとなく取り入れていこうと思っています。

編集部 さすが肩書きが”勉強家”ですね。

YOSH 何だかすみません(笑) でも、本当にこの授業をつくるためにたくさんの本と再会している実感はありますね。記事の最後に文献リストをまとめてみたので、気になった方はぜひ目を通していただけると嬉しいです。

とにかくサプライズについては、結果のよしあしは成績にはまったく影響ありません。それよりも、何に自分は葛藤したのか、何を自分は大切にしたいと思っているのか、仲間とリフレクトしながら気づいていく方が大事で、それを前期のレポート課題としています。

希望としてソーシャルデザイン

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人文学部主催の公開イベント 内田樹×白井聡対談「この危機に臨んで人文学にできること」より

編集部 改めて伺いたいのですが、京都精華大学人文学部における「ソーシャルデザイン・プログラム」のゴールとは何なのでしょうか?

YOSH 一番の願いは、人文学を学んで得た専門知識を社会にいかす基礎的な力を身に付けてほしい、ということです。また、3年次には自分でテーマを設定して学外で学ぶ「フィールドワーク・プログラム」という必修科目があり、それに向けて経験を積むという狙いもあります。

ここで大切なのは「社会とつながる」といった漠然とした話を、”自分ごと”として捉え直すことなんです。ひきこもりのこと、シャッター商店街のこと、国際紛争のこと、ブラック企業のこと…毎日のようにさまざまな社会問題が叫ばれていますが、自分にとって本当に重要なこと、ほっとけないことって十人十色のはず。裏を返せば、それぞれにやるべき理由がある、ともいえます。

例えば、ひきこもりの経験があればこそ、「その状況に困っている人のために貢献したい」と本気で思えるだろうし、当事者や家族の気持ちに寄り添ったアイデアを生み出すことができるかもしれない。

そういう、その人にしかない”モヤモヤ”を出発点に、自分だけでなく仲間の”好きなこと”や”得意なこと”、そして”FUN(楽しさ)”を掛け算して、自分だけのプロジェクト=「マイプロジェクト」を立ち上げよう、というのが授業全体の設計です。

このあたりは慶應義塾大学特別招聘准教授の井上英之さんやビジネス・ブレークスルー大学准教授の須子善彦さんたちが磨いてきた「マイプロ」のノウハウをベースにしています。
 

全国高校生MY PROJECT AWARD2014の様子。「マイプロ」の手法は高校生にも広がっています

編集部 学生にはハードルが高かったりしませんか?

YOSH まあ、急がずに一歩ずつですね。前期はもっと自分のことを掘り下げたり、仲間のことを知ったり、小さな一歩を踏み出した経験を持つだけでも御の字かもしれない。

それに後期でひとりひとりが実現していくマイプロジェクトも、派手なものじゃなくていいんです。「お金があれば」「芸能人が来れば」みたいな”ないものねだり”ではなく、今あるものに光を当てる。やらなきゃいけないような義務ではなく、好きだったこと、ずっとやってみたかったことから始める。いいことを思い付いたら、失敗したってOK、まずは試してみよう、と。

それを繰り返していくと、次に何か課題と出会ったときは、「この条件を活かして、楽しく解決するにはどうしたら?」とクリエイティブな問いを立てられるようになります。そして「うん、きっと何とかできる!」という不思議な自信を持てるようになる。

編集部 いいですね。

YOSH ソーシャルデザインはひとつの希望なんです。ひとつひとつの”モヤモヤ”の経験が、“ワクワク”のエネルギー源になるので、いまの時代に疑問を持ったり、周りに流されるのがイヤという高校生のみなさんに、ぜひ精華に興味を持ってほしいですね、

それに日本における「ソーシャルデザイン」の授業は、芸術系や公共政策系の学部で行われることが多くて、人文学部としてはまだ例がないのもやりがいを感じています。

芸術系の武器が造形力だとすれば、人文系の武器はやっぱり言葉。文学・歴史・社会という人文学の力をいかして、物語を紡いで新ブランドを立ち上げたり、歴史を踏まえて地域づくりに関わったり。せっかくの機会をいただいたので、これからの社会に必要とされる「人文系ソーシャルイノベーター」という新たな仕事像を確立していけるといいですね。

ここには養老孟司さん(客員教授)、内田樹さん(客員教授)をはじめ、思想家であり作家でもある佐々木中さん、『永続敗戦論』で知られる白井聡さんなど、錚々たる教員がそろっています。まずは教員たちでコラボレーションするだけでも、面白いことが起きるはずです。

編集部 「人文系ソーシャルイノベーター」は新しいキーワードですが、何だか可能性を感じますね。

YOSH 何を隠そうグリーンズのライターさんたちこそ、そのパイオニアだと僕は思っているんです。なので、ゲスト講師としてどんどんお呼びしようといろいろ画策しています(笑)
 
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兼松さんの自宅に来たような雰囲気の研究室、通称「STUDYHALL! 214」。ライターの交流会など、さまざまなミニイベントが開催されています

「授業づくりは究極のムチャぶりでした」

編集部 まだ前期は終わっていませんが、いまの段階でどんな気持ちですか?

YOSH 3ヶ月前の自分が思い出せないくらい、浮き沈みの激しい、濃い日々が続いています。グリーンズという環境にいかに甘えていたか、離れてみて思い知らされましたね。

編集部 というと?

YOSH グリーンズが何かイベントを開いたとしたら、基本的にはgreenz.jpを読んでいたり、ソーシャルデザイン的なことに興味がある意欲的な人たちが集まってくれます。そういうみなさんは根底にグリーンズへの信頼があるからこそ、編集長という立場ならば場をホールドしやすい。

でも、大学の必修科目では、ほとんどの学生にとって「ソーシャルデザインって何?」という感じだし、場合によっては「この人だれ? 」から始めなくてはいけない。すると、自分の真価が問われるわけです。

もし、「ソーシャルデザインなんてつまらない」と思われてしまったら、僕の責任は重大です。そこでいかにソーシャルデザインの入り口まで来てもらうのか、綿密な組み立てをせざるをえませんでした。

例えば前半は僕の話はもちろんせっかくゲストをお呼びしても、半分くらいがポカンとしている。それは決して話が面白くないからではなく、専門的すぎたり、身近ではなかったからなんだろうなと。

そこで後半は、詩人、コピーライター、編集者、シナリオ作家、放送作家など、卒業後のロールモデルとなりそうな、言葉の力をいかして仕事をしている先輩たちに来ていただくことにしました。そうやって、少しずつ”前のめり率”が高まっていきましたね。

編集部 相当な試行錯誤だったんですね。
 
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記念すべき一回目の授業の様子

YOSH 事実上の転職ですし、マイナスからのスタートですからね。いちばん悩んだのは、僕が考えてきたカリキュラムと学生のニーズとのギャップです。講義を進める中で少しずつ学生の顔が見えてきて、どんなときに戸惑うのか、逆にどんなときに表情が輝くのかが見えてきた感じで。

例えば最初の頃は、「グリーンズの学校」でやってきたようにじっくり対話をしながら、クラスメイトと自分のストーリーを共有し、それぞれの”自分ごと”を掘り下げていこうと思っていたんです。ただ、それが場の空気に合わなかったんですよね。

それよりも、自分の好きなことを出発点に勝手に「日本●●協会」を立ち上げて、「●●の本質的な価値」をいかして、「”●●の日”に何をするかを考えよう!」「Eテレの5分番組をつくってみよう!」というワークショップをしてみたら、ものすごくキラキラしていたんです。

そのときに出てきたのは「日本遅刻家協会」とか、「日本ラクガキ協会」とか、「日本社畜協会」とか(笑) このときは「さすが精華!」と思いました。

編集部 対話よりも妄想、ですか。

YOSH 「対話」はある意味、自分の過去をオープンにすることでもあるので、場合によってはキツいときもある。それを必修だからといって強制するのはちょっと違う。

無理して急ぎすぎず、「妄想」しながらアイデアを出し合うことでお互いの意外な一面を知り、そうして育まれた新しい関係性の中で対話できるようになるとすれば、その方がいいはずですよね。

編集部 お話を伺っていると、必修科目ならではの難しさがあるんですね。

YOSH 必修科目って、学生にとっては強制に見えるかもしれませんが、教員からしてみたら”願い”なんですよね。いつか必ず役に立つと信じて、今はしっくりこなくても未来のために種をまく。その分、ムチャぶりするのではなく「何のためにするのか」という種明かしを丁寧にしたり、学生から教員に安心してフィードバックできる回路をつくったり、そういう工夫が大事なんだなと。

例えば、授業で「フィッシュボウル(金魚鉢)」という対話の形式をやってみたんですが、見事にうまくいかなくて学生に「俺たちは何をやっているんですか?」と詰め寄られたこともありました。

あるいは時間をかけて安心できる場になるように「ホームグループ」をつくってみたら、グループ分けによって傷ついてしまう人がいて、そんな「アウェーグループ」を解散したこともありました。

当たり前ですが、手法に自信を持っていても、サイズだけでなく積み重なった状況や参加者の準備によって、うまくいかないこともある。このあたりは学生からの直談判によって、ハッとさせられた部分です。それがこの数カ月の僕自身の成長につながっていますし、思ったことを伝えるというのはとても勇気のいる行動だと思うので、本当に感謝しています。
 
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研究室の前に置かれたホワイトボードには学生からの書き込みが

編集部 アクティブラーニング型授業が話題になっていますが、兼松さんの試行錯誤が他の教育の現場でもいかされるといいですね。

YOSH いや、本当に、それを考えています。

こうしてたくさんの気づきがあるのも、「そもそも大学教員一年目にして必修科目」、「人文学系では日本で初めてのソーシャルデザインの授業」、「大学二年生というある程度人間関係が固定化された難しい時期」、「約90名という大人数を対象にしたワークショップ型授業」という、言わば究極のムチャぶりのおかげなんですよね。

実際のところ僕自身はあまり気付いていなくて、周りの方から指摘されたんですが(笑)

それでも僕を信じて、白羽の矢を立てていただいた人文学部長のウスビ・サコさんはじめ諸先生方に本当に感謝していますし、何より僕自身いまこのタイミングでゼロからの挑戦ができていることに深遠な歓びを感じています。

編集部 確かに、グリーンズ編集長を卒業して、さらに自由になった感じがします(笑)

YOSH わかりますか?(笑) もう、生まれ変わったような気持ちですね。

とはいえ矛盾に聞こえるかもしれませんが、グリーンズを一旦離れたからこそ、今までにない形でグリーンズに貢献できると思っているんです。例えば、僕に限らずさまざまな現場で、さまざまなノウハウが生まれていると思うので、ソーシャルデザインを教える先生たちによる学会発表みたいなものを、グリーンズとして主催しても面白いかもしれませんよね。

ひとつひとつの京都精華大学での取り組みも、パラレルに進んでいる「everyone’s STUDYHALL!」という僕にとってのマイプロジェクトも、いつかグリーンズに役に立つ日が来ると信じて続けています。やっぱりグリーンズは僕にとっての祖国ですから。

とにかく今は京都精華大学の画期的な取り組みを多くの方に知っていただいて、「人文系のソーシャルデザインといえば精華!」というイメージが自然と広まるように、迷いながらも着実に、学生たちと一緒に歩んでいきたいと思います。

(インタビューここまで)

  
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「STUDYHALL!214でお待ちしています!」

というわけで、元「greenz.jp」編集長・兼松さんのインタビューいかがでしたでしょうか。「ゼロからの挑戦」ながらも、編集長時代に培ったさまざまな出会いや気付きを自分なりに昇華させ、兼松さんそしてグリーンズが信じる「ソーシャルデザイン」の可能性をさらに一歩前に進めようとしているのが印象的でした。

7月23日(土)・24日(日)に開催されるオープンキャンパスでは、この「ソーシャルデザイン・プログラム」を体験できる時間もあるそうです(23日13:00〜15:00)。高校生だけでなく誰でも参加OKとのことなので、この機会に京都精華大学まで訪れてみませんか?

先生として歩み始めた兼松さんの熱い眼差しが、きっとあなたを待っています。

– INFORMATION –

京都精華大学オープンキャンパス 〔総合人文学科〕
http://www.kyoto-seika.ac.jp/opencampus/
あなたの興味・関心、進路がきっと見つかる! 無料で学食ランチ体験(学食メニュー・パンなどが食べ放題)も。
 
《授業体験》人文学部3専攻(文学・歴史・社会)
7月23日(土)24日(日) 10:40~12:30/受付:清風館1階 C-101
3専攻(文学・歴史・社会)の学びの特徴について一度の授業で体験できる企画です。今回のテーマは、「女性」。3専攻の教員が、各専攻独自の視点から、共通のテーマについて模擬授業を行います(文学=惠阪友紀子/歴史=矢野美沙子/社会=澤田昌人、各30分)。
 
《参加型授業》ソーシャルデザイン体験
7月23日(土)13:00〜15:00/受付:清風館1階 C-101
この記事でも紹介した、京都精華大学人文学部の特色ある学び「ソーシャルデザイン・プログラム」が体験できる! 「感じているモヤモヤ」に「自分の好きなこと」と「FUN!(楽しさ)」を掛け算して、新しいプロジェクトのアイデアを考えてみませんか?
 
《野外研究》人文学部3専攻フィールドワーク体験
7月24日(日)13:00〜15:45/受付:清風館1階 C-101
自然と歴史の豊かな京都にある大学の良さを感じてください! 今回のフィールド(訪問先)は、京都精華大学キャンパス・岩倉実相院周辺。3専攻の教員が、同じフィールドを対象に、それぞれの専攻の切り口から、どんなことがわかってくるか、どんな景色が見えてくるのかを紹介します(文学=加美甲多・堤邦彦/歴史=齊藤紘子・柳沢菜々/社会=板倉豊・小松正史)。
※参加者は日傘・帽子、清涼飲料など暑さ対策をお願いします。


 
 

<おまけ>授業づくりの参考文献リスト!(ほんの一部)

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『アクティブホープ』ジョアンナ・メイシー+クリス・ジョンストン
仏教哲学者/社会活動家ジョアンナ・メイシーの思想書であり、前向きな行動を支える「つながりを取り戻すワーク」の貴重なノウハウを収録。<やってみよう!>というミニコラムには、授業でいかせそうなヒントがもりだくさん!

『たったひとつを変えるだけ ー クラスも教師も自立する「質問づくり」』ダン・ロスステイン、ルース・サンタナ
先生が発問するのではなく学生自ら質問をつくることで、学生が主役となる授業をつくることができる。そんな「質問づくり」ワークショップの具体例が充実しているので、すぐに試せそうと背中を押してくれます。

『U理論 ー 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』オットー・シャーマー
Uの字のように、まずは自分自身を掘り下げ、Uの底で”ソース(源)”とつながった先に、未来を形にしていく。ここで描かれている開かれた思考、開かれた心、開かれた意志はすべての学びの基本だと思っています。

『ファシリテーションで大学が変わるー アクティブ・ラーニングにいのちを吹き込むには』中野民夫、三田地真実編
アクティブ・ラーニングの本来の定義をめぐる本質的な入門書。ジョアンナ・メーシー、マイケル・ドイルといった先達との原体験を綴った中野民夫さんのコラムは必見です。

『ゲームストーミング ― 会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム』Dave Gray、Sunni Brown、James Macanufo
ワールドカフェからOST、ペチャクチャまで、定番となっているさまざまなワークショップ手法が辞書的に網羅されています。割りと説明はあっさりなので、まずはやってみてアレンジしていくのがオススメ。

『ずっとやりたかったことを、やりなさい』ジュリア・キャメロン
脚本家であり創造性を育てる手法「アーティスト・ウェイ」の提唱者ジュリア・キャメロンの著作。モーニング・ページ、アーティスト・デート、ウィークリー・ウォークなどシンプルかつ深遠な手法を提案しています。

『人を伸ばす力 ー 内発と自律のすすめ』エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト
学びの場に欠かせない内発的動機づけと自律性はいかに伸ばすことができるのか。ゆっくりと時間をかけて本質的な変化を生み出すために向き合っておきたい大切な気づきにあふれた本です。

『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』フランシス・ウェスリー、ブレンダ・ツィンマーマン、マイケル・クイン・パットン、エリック・ヤング
われわれはすべて、世界の変化の一部である。「ソーシャルデザイン」や「ソーシャルイノベーション」が一般的ではなかった頃に、もうひとつの方向を示してくれた記念碑的一冊。

『問題は「タコつぼ」ではなく「タコ」だった!? 「自分経営」入門』友成真一
「マイプロジェクト」のルーツのひとつが、早稲田大学友成真一さんの「自分経営」という授業。「自分の腑に落ちる夢」を獲得するために必要なエッセンスが、ユーモアたっぷりに解説されています。

『ソーシャルデザイン』グリーンズ編
2012年1月に出版されたグリーンズ初の書籍。ソーシャルデザインの7つのTIPSや井上英之さん、山崎亮さん、山口絵理子さんのインタビューも収録、ソーシャルデザインの入門書、教科書としてぜひ!

[sponsored by 京都精華大学]

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greenz.jp編集部

greenz.jp編集部

この記事は、greenz.jp編集部のメンバーが執筆しました。

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