ISSUE まちづくり

3 months ago - 2016.06.11

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本当に”人々のため”にデザインされた公共空間って? パリ市内で、交通量の激しい広場を市民のためにリノベートする一大プロジェクトが進行中!

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みなさんはパリと聞いてどんなことを思い浮かべますか? おいしい料理、ファッション、エッフェル塔、マルシェ…。パリと聞くと、ついそんな華やかでおしゃれな世界を想像してしまう方も多いかもしれません。

しかし、実はそんな美しいものばかりではないパリ。華やかなイメージとは裏腹に、パリがある深刻な問題を抱えていることをご存知でしょうか。

そのひとつが大気汚染。実は去年、2015年3月には汚染が一時世界最悪レベルに達し、警察がパリ市内へ乗り入れる車両の数を制限するという異例の交通規制を実施したほどなんです。(出典元
 
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去年の3月18日に撮影された写真。エッフェル塔が見えなくなるほどのスモッグがパリの街を包みました。

こうした状況を受け、パリ市長のAnne Hidalgoさんは去年、2020年までにパリの主要7つの広場を、歩行者と自転車に優しい、緑あふれる空間へと生まれ変わらせると宣言しました。

今回のプロジェクトで対象となるのは、

・バスティーユ広場(Place de la Bastille)
・ディタリー広場(Place d’Italie)
・ナシオン広場(Place de la Nation)
・パンテオン広場(Place du Panthéon)
・マドレーヌ広場(Place de la Madeleine)
・ガンベッタ広場(Place Gambetta)
・フェット広場(Place des Fêtes)

の7つ。

市長によると、グリーンな空間を実現するために、車の交通量を大幅に制限し、いずれの広場も50%のスペースを歩行者と自転車にとって快適な空間にデザインし直す計画をしているといいます。

一体どんな改造が行われる予定なのでしょうか。ここからは、2017年から正式な工事が始まるというバスティーユ広場の例を紹介していきましょう。

広場は”車”のためではなく、”人々”のためにある

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上の写真はバスティーユ広場の現在の様子。この広場には中心に大きなモニュメントが存在します。

ですがよく見るとこのモニュメント、交通量の激しい大きな通りのちょうど真ん中にあるため、歩行者はその通りを突っ切らなければ、ここにたどり着くことができません。そんな設計上の問題もあり、広場といえども、市民や旅行者が寄り付くことはない様子。

(実はわたし、先日パリを旅行した際にここに立ち寄ってみたのですが、車の通りが激しすぎてモニュメントには近づけませんでした!)

再設計案では、この広場を車の進入を大幅に制限する構造にするとのこと。

さらに歩行者と自転車のためのエリアには木が植えられ、多数のベンチも設置されるようで、市民にとっては一休みにぴったりの理想的な憩いの空間になること間違いなしです!
 
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車が通れるのは波線と黄色のラインで示された部分のみになる予定。緑のラインは今後さらに緑化される区域を、赤いラインはそこのベンチが置かれることを示しています。

これら公共空間のリノベーションを大々的に推し進めるべく、パリ市は大手コンピュータネットワーク機器開発会社の「Cisco」と、リアルタイムの交通情報に特化した交通調査システムを展開する米国のスタートアップ企業「Placemeter」という2つの企業に声をかけたといいます。

今後は、彼らとの協働により、様々な実験データを駆使し公共空間がどのように利用されているのかを検証しながら、空間をリノベートしていくのだとか。

「Placemeter」のMartin Lagacheさんは、

私たちは今回初めて、パリでダイナミックな実験を行い、街並みと公共空間のリデザインに取り組んでいきます。過去にはそういったテストなしに莫大なお金を事業に費やしてきましたが、これからは画期的な手法で、様々なシナリオを想定しながら空間を改造します。

と語ります。

またフランスの公共交通機関ユーザー連合の代表者であるJean Macherasさんは、

パリジャンたちは気づいてしまったんだよ。一度は自分たちにとって理想的な空間だったはずの広場が、今はただの交差点でしかないってことにね。

と話し、市民の多くが今後行われる一連のプロジェクトに大きな期待を寄せているそう。

そして国内のみならず、国外からのパリ市の決断に対する反響も大きく、ネット上には「パリのような大都市でこんな取り組みが行われるなんて素晴らしい!信じられないよ!」といった称賛の声が溢れています。
 
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実はパリ市が、このような取り組みを行うのは初めてのことではありません。すでに2013年には、パリ3・10・11区にまたがるレピュブリック広場を改造し、車が入れないことはもちろん、人々が一休みできるベンチや木々のあるオープンスペースを設けたことで話題となりました。

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公園や市民のためのグリーンな空間が既にとても多いパリ。そんな場所では週末にマルシェが開催されることも多く、今回のプロジェクトで生まれ変わる広場でも、新たな使い道が提案されるかもしれません。

私たちの身近なところにも、活かしきれていない公共空間は意外とたくさんあるのではないでしょうか。そんな場所が、本当の意味で誰にとってもオープンで快適な空間に生まれ変わることで、人々の暮らしに心地よい空気感やコミュニケーションがもたらされのではないかと私は思います。

このプロジェクトによってパリという大都市に住む人々の暮らしにどんな素敵な化学反応が生まれるか、今後の動向から目が離せませんね!

[via inhabitat,THE WALL STREET JOURNAL,domus,The Local fr,citylab,PARIS]

(Text: 松沢美月)

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松沢 美月

松沢 美月

greenz ジュニアライター 埼玉県生まれ、さいたま市育ち、生粋のさいたまっ子。 絵を描くことがとにかく大好きな大学3年生。2015年8月から1年間、北欧ノルウェー、トロムソに留学し、その留学中にgreenz.jpと出会う。2016年2月からライターインターンを経験。 座右の銘は”足るを知る”。 将来の夢は三足の草鞋を履くマルチなおばあちゃんになること、小さなお家で暮らすこと。 食、住まい方、地方での働き方・暮らし方に猛烈な興味あり。

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