ISSUEインクルーシブ 子ども

6 months ago - 2016.06.08

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子どもたちが自ら”育つ”空間をつくりたい。農作業を通して子どもたちの生きる力を育む未来の保育園「Nursery Fields Forever」

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突然ですが、みなさんはどんな保育園や幼稚園に通っていましたか?

わたしは幼いとき、ごく一般的の幼稚園に通っていたこともあり、幼稚園や保育園はどこも同じようなものというイメージをもっていました。

しかし意外にも「シュタイナー教育やモンテッソーリ教育を実践する保育園・幼稚園に通っていた」、「自然体験にとても力を入れている保育園で毎日泥遊びをしていた」という友人は多く、子どもの育ちの場に関する選択肢は、今やひとつではないと実感することがとても多くなりました。

そんな、近年多様化しつつある子どもたちの学びの場。greenz.jpではこれまで「しぜんの国保育園」や「まちの保育園」など、子どもにとっての理想の環境づくりに取り組む保育園や幼稚園を紹介してきましたが、今回は新しい教育環境で子どもたちの可能性を広げようと一歩を踏み出した人たちを紹介します。

よりよい社会を実現するデザインを生み出すことをポリシーとする建築家集団「aut- -aut」。イギリスとイタリア出身の4名の建築家から構成されるこの集団が提案した”Urban Farm(都市農業)”と保育園がひとつになった学びの場、「Nursery Fields Forever」は2015年に行われたAWR International Ideas Competitionという建築や都市計画にまつわる、国際的なアイデアコンペティションで1位を獲得しました。
 
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保育園の中はこんなイメージ。屋内にいても、子どもたちがすぐそこに”農”を感じることのできる構造になっているようです。

「Nursery Fields Forever」が取り入れた都市農業とは、大都市の市街化区域内に存在する農地での生産活動のこと。

都市のなかで持続可能な食料供給の仕組みをつくる、というビジョンのもと、都会に緑をもたらすだけでなく、子どもたちの食育・教育の場や地域住民同士の交流の場として広まりをみせています。現在では人工光を利用して野菜を育てたり、まちの空きスペースやビルの屋上を改造して野菜やハーブを育てたりする人や企業も増えている様子。
 
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都市の中で、都市との調和を保ちながら展開される農業のスタイルが都市農業です。

「Nursery Fields Forever」は、そんな都市農業の食育・教育機能にヒントを得て、Learn from Nature (自然から学ぶ)Learn from techniques(技術から学ぶ)Learn from Practice(実践から学ぶ)という3つのテーマをもとに、子どもたちの身体的、社会的、情緒的、知的な発達を促す独自の教育を展開していくのだとか。

「Nursery Fields Forever」における子どもたちの学びの場は、常に屋外や温室内。長い時間をかけて子どもたちは作物や動物が育つ自然の循環を学び、農作物の生産から食材がお皿の上に並ぶまでの一連のプロセスを実際に体験することができます。
 
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子どもたちの活動のベースは屋内ではなく野外。知識の豊富な教師と仲間と共に助け合いながら動物の世話をし、農業について学んでいきます。

従来の保育園の空間と、農作業に触れることのできる空間が合わさった実験的な環境で、環境に対する子どもたちの興味関心を養うだけでなく、何かを育てるというミッションを通して子どもたちが自分で生きる力や他人や社会との関わり方を学ぶことのできる空間。それこそが「aut- -aut」の描く新しい保育園の形なのです。

発案者の一人であるJonathan Lazarさん(以下、ジョナサンさん)は一般的な都市の幼稚園のあり方についてこんな危機感を抱いていました。

一般的な都市の保育園には、ほとんど植物もなければ動物もいない。自然とのダイレクトな関わりの不足は、子どもたちの世界に対する誤った認識を生み出してしまいます。

ここ最近、土遊びをしたことがなかったり、牛乳が牛からつくられることを知らなかったり、豆は缶の中で育つと思っていたりする子どもを見かけることが多くなったんです。

子どもたちの間で、食や環境への間違った認識が進んでいることを肌で感じたジョナサンさん。子どもたちの環境に対する無関心さを食い止めるため、教育と環境のギャップを埋める取り組みが今こそ必要だと感じたといいます。
 
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完成イメージはこんな感じ。日々、土や生き物に直接触れることで、こどもたちは自分が環境・地球とつながっていることを感じられる。

「Nursery Fields Forever」はまだ実現に向けての第一歩を踏み出した段階。実際にこれを都市で実現するためには時間がかかりそうです。

「保育園落ちた」騒動をはじめとして、子どもたちの学びの場・機会に関する問題は山積みですが、この状況を見ていて私が思うのは「大人が大人の都合で物事を進めてしまい、肝心の子どもたちの存在はいつも置き去りにされているのでは?」ということ。

大人の都合ではなく、あくまでも子どもたちを中心にして、大人は「子どもたちにとってどんな環境やサポートが必要なんだろう?」という視点から子どもの成長をそっと支えてあげる。そんな形の教育が浸透していくことで、大人も子どもも幸せに暮らせる社会をつくっていけるのかもしれない。

「Nursery Fields Forever」のアイデアは、そんな当たり前のようで忘れられがちなことを私たちに投げかけてくれているのではないでしょうか。

[via aut- -aut,まちの畑は役に立つ!考えてみよう都市農業の多面的機能。,CORRIERE DELLA SERA,CITYLAB]

(Text: 松沢美月)

米国では既にこんな取り組みが行われています。
食は校庭で学べ!米国に広がる食育プログラム「Edible Schoolyard」とは?

writer ライターリスト

松沢 美月

greenz ジュニアライター 埼玉県生まれ、さいたま市育ち、生粋のさいたまっ子。 絵を描くことがとにかく大好きな大学3年生。2015年8月から1年間、北欧ノルウェー、トロムソに留学し、その留学中にgreenz.jpと出会う。2016年2月からライターインターンを経験。 座右の銘は”足るを知る”。 将来の夢は三足の草鞋を履くマルチなおばあちゃんになること、小さなお家で暮らすこと。 食、住まい方、地方での働き方・暮らし方に猛烈な興味あり。

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