ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

3 months ago - 2016.03.28

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理想の暮らしは永遠に手に入らない? 暮らしかた冒険家が「雑貨展」@21_21 DESIGN SIGHT 出展作品「終わらない自問自答」に込めた思い

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21_21 DESIGN SIGHT企画展「雑貨展」
展示作品 「終わらない自問自答」池田秀紀/伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家)
(Photo:大谷宗平/ナカサ&パートナーズ)

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。

greenz.jpでも度々登場する、高品質低空飛行生活をモットーに結婚式や新婚旅行、住居などの「これからのあたりまえ」を模索する、ウェブディベロッパーの池田秀紀と写真家の伊藤菜衣子による夫婦ユニット「暮らしかた冒険家」が、エネルギーの自給の先にある、暮らしかたを、考えます。エネルギーも、インフラも、人間関係も、どんなつながりをつくるのかを考えるオフグリッドライフな対談シリーズ。
 
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「暮らしかた冒険家」池田秀紀さん(以下愛称ジョニー)・伊藤菜衣子さん
ウェブディベロッパーの池田秀紀と写真家の伊藤菜衣子による夫婦ユニット。高品質低空飛行生活をモットーに結婚式や新婚旅行、住居などの「これからのあたりまえ」を模索中。 100万人のキャンドルナイト、坂本龍一氏のソーシャルプロジェクトなどのムーブメント作りのためのウェブサイトやメインビジュアルの制作、ソーシャルメディアを使った広告展開などを手がける。

婚約カメラ、結婚キャンプ、築100年空き家17年の廃墟セルフリノベ、greenz.jpでも度々注目される暮らしかた冒険家の暮らしにまつわる思考をYES/NO MAPにし、2015年D&DEPARTMENT HOKKAIDO「ないものねだりからあるものみっけの暮らしかた展」で発表しました。

その噂は、インターネットを通じ、800kmの距離を超え、六本木にある「21_21 DESIGN SIGHT」に届いたのです。そして、現在、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の企画展「雑貨展」にて作品「終わらない自問自答」を展示しています。

場所も変わったので中身もバージョンアップ。この作品にどんな思いを込めたのか、早速、二人に話を聞いてみました。

理想の暮らしは買いたい?

— 今回の二人の作品は、『雑貨展』なのに、雑貨を置いてないんですね。

菜衣子 「そもそも」の自分たちの役割は問題提起かな、と。物と暮らしって、とても密接な関係だからこそ、どういう暮らしをしたいのかをもう一度問いなおすというか。

ファッションの消費を超えて、ライフスタイルすら消費になっている今、その売られているライフスタイルは、持続可能なのか?っていうのをすごく疑いの目で見てて。だからそういう理想の暮らしとかの背景にまつわることをぶわーって展示して、可視化してみようっていう試みです。

— だからこそ、最初の質問が「理想の暮らしは買いたい?」ってことですよね。

菜衣子 そうだね。買って手に入れるものも、もちろんあるけど、それってお金が無くなることへの恐怖心とセット。それはほんとうの意味で ”理想の暮らし” なのかな?って。

— とは言え、買わなきゃいけないこともありますよね。

菜衣子 あるね。私たちの生活でいうと、薪とかね。薪ストーブの薪、今シーズンは半分ジョニーが集めて割って、半分買って使ってる。来シーズンはジョニーさんが全部割るらしいよ。
 


もらってきた木を薪割り。買ったばかりの斧は、この後、柄が折れるというアクシデントも…

ジョニー やります。夏頃には完璧な薪棚ができあがってるから。

— 大丈夫ですか?(笑)薪を買うのに、罪悪感は?

ジョニー というよりは無力感かな。薪は自分でつくれば買わなくていいのに、時間がなくてできなかった。

だから今シーズンは「ezorock」という地元のNPOから買いました。若くて頑張ってる人たちなので買うならばそこから買いたいと。薪は、供給源を選べるのはいいな、って思ってる。

でも世の中の物欲系のモノってそうはいかない。ギャルソンのシャツが欲しかったらやっぱりギャルソンのを買わないといけない。誰から買うのか、はたまた全部自分でつくるのか。「選べる」のは薪以外にもあるよね、と思っています。

— 買わずして自分でつくれるものであれば、極力自分でつくりたい?
 
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わが家の壁はみんなで漆喰を塗った。

ジョニー 今の一般的な生活は、必要以上にお金のかかる生活をしているんじゃないかって疑問があって。その大半が高い家賃とか、過剰な家電や雑貨。生きる上でのランニングコストが高い。その出費のために、人生の大半を仕事のために費やしていると言ってもいいくらい。

それなら、コストが減れば、仕事の量も適切になるんじゃないかって思って、いろいろやってみているわけだけど…

— 暮らしの冒険ですね。

ジョニー はい。でも、今、本当に豊かになってるのかって言ったら、ちょっと疑問だったり。毎日ケンカしてるし、出張の度に体ボロボロになって帰ってくるし。本当にこれが目指してたことなのかなかなって思うこともある(笑)

庭付き戸建てで薪ストーブとJeep®︎と生ハムと安心安全な食べ物のある暮らしを、あり得ないやり方で手にいれて、豊かになっていることは間違い無いのだけれど…(苦笑)

菜衣子 あ、やっとわかってきた?(笑)理想と現実のギャップが埋まってないんすよ。貪欲すぎて。

お金は便利だし、DIYが過ぎると孤独になる

— 夫婦ゲンカはどうにかしたいですね(笑)今回のYES/NO MAP、キモはどこにあるんですか?

菜衣子 最終的には「食っていくために働いているんだから、結局大事なのは食べ物なんじゃないか?」ってところのボリュームが大きくなったね。家だって、どうせお金をかけるなら、性能のいい家のほうがいい。

どこにお金をかけるか。っていうのがメッセージとして強いと思う。あまりにもコマーシャルや雰囲気、消費を煽ることに騙されて、しょうもないものを買ったりつくったりしてて、それに対する疑問というか。

— お金の使い方ですか?

菜衣子 うん、でも、いろんな矛盾があって。例えば、「お金より時間だ」って言って、そういう暮らしをはじめてみたつもりが、いろんなことをDIYでつくってるうちに時間がなくなって、あれ?みたいな。こうなったら、時間よりお金かもしんないみたいな、矛盾がグルグルするっていう。

やってもやっても矛盾してたり、いろんな問題が次から次へとでてきて。だからタイトルが「終わらない自問自答」なんだよね。黒板五郎がやっぱり金だ!って言うのは想像できないけど、私たちはやっぱり金なんじゃないかとか思ったりもする日もあります。

ジョニー 便利だよね、お金って(笑)
 
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2015年「ないものねだりからあるものみっけの暮らしかた展」では、お店の外からYES/ NOが始まった。

菜衣子 そうそう。ひとまわりして、そういう自分たちもやっぱりいる。理想の暮らしは買いたいに「NO!」っていっても、自分たちのほうがコスパが悪いから、お金払って大工さんにお願いしたほうがよいときもあるよ。矛盾だらけ。分業制が生まれた意味もよく分かる。

3.11のあと「自分たちでなんでもできるようになりたい」ってすごく思ったんだけど、でも、それはそれでやり過ぎると孤独になります。

— 孤独になるっていうと?

ジョニー ぼくがDIYの達人だったら、誰も入り込む余地がないじゃん?ぼくが素人で、うまくできないから、助けてくれたりする。「そんなふうに切ったらのこぎり折れるぞ!」って。

菜衣子 自分たちでは成し得なかったミラクルも起きないしね。

ジョニー ひとつ明確に分かったのは、すべての暮らしとか仕事とかを、全部DIYでやろうとすると、途方もない時間が必要で、スキルも求められる。百姓は百個のことができるから、百姓と呼ばれるわけだけど、百個のことを極めるってとてつもないことです。

— 百姓にはなれない?

ジョニー はい、僕はね。なんでもできちゃう男には憧れはあるけど、向いてないかもなって思うようになって(笑)自分で極めるよりもその道の達人に頼ったほうが、いいものが手に入る。

それを今まではお金を払って、全然知らない人に外注してきたけど、僕たちは今、顔の見える関係でいろんなものが買えるようになってきた。食べ物も友だちから買ったりもらったりしてるし、大工の知り合いも増えてきた。

「どうせ頼むならあの人」っていう選択肢が見えてきて、そのほうがみんなハッピーだよねっていう。顔の見える経済。ちょっと昔はそれが普通だったのかもしれないし、別段新しいことでもないんだけど。

菜衣子 うん。「自分がつくった野菜がおしくなかったらちょっと困る」っていう設問があるけど、理想の暮らしを夢見て、半分くらい自給自足できるような状態になったけど、トマトがおしくなかったんだよね。

葉物が雑草のようなワイルドな味だったりね(笑)ちょっと想定外でね…。自分でつくったら全部美味しいんじゃないんですか。みたいな。

お金持ちと時間持ち

ジョニー 「お金より時間が大事」と「時間よりお金が大事」が、グルグルとループするところもいいよね。

菜衣子 私たちのケンカは、だいたいこのMAPだよね。設問の元ネタはだいたい夫婦喧嘩だからね(笑)

ジョニー お金持ちじゃなくて、時間持ちってキーワードが最近出てきているらしいよ。時間持ちになりたいって人が少しずつ増えてきていると。

“タイム・イズ・マネー”、すなわち、働いたら働いた分だけお金になってた時代が続いてきたわけだけど、今は、貧富の格差、低所得者の問題でもわかるように、どんなに働いてもお金に変えられない時代に突入しているのかもしれません。

そもそも自分の時間を切り売りしてお金に変えるのが効率がいいことなのかっていう疑問もある。

菜衣子 でも、私たち、だいぶ働いて切り売りしているよ(笑)

ジョニー まぁ、確かに僕らこう見えて結構働いてるね(笑)

— これもまた矛盾ですよね。

ジョニー そうだね。つい半年前までは、会社員になって生活が安定しても、子どもと遊べる時間が減っちゃうのは不幸だって思っていて。本当は子どもや家族の笑顔を見たいがために働いていたはずなのに、気づけば後回しになっちゃうみたいな。

だから、家で子どもを育てながら仕事するってすごく幸せな働き方だって思ってたんだけど、やってみたら無理でした(笑)

菜衣子 保育園に預けずに子どもと遊びながら仕事もできる俺、超リア充って、本気で言ってたもんね(笑)子どものパワーは半端じゃなかったね。
 
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撮影中のテーブルの反対側で、かまってくれよと、ジタバタする子ども

ジョニー うん。でも、0歳から1歳の急激に成長する過程を全部見れたというのはとても幸せなことだなあとは思ってるよ。その分、菜ちゃんが出張のたびに子ども連れてったり、実家に頼ったり、気を使わないといけないことがたくさんあった。

わがままを聞いてくれた菜ちゃんには本当に感謝だよ。で、さっきの話と同じで、子育てにもプロがいるのだから、任せようと思えるようにもなってきて。というか怪獣は日々成長していくので待ったなしだけど(笑)

「答えがない」という答え

— そういった矛盾の末、あのYES/NO MAPには、答えがありませんね(笑)

菜衣子 そもそもは札幌バージョンでは答えがあったんだよね。それは、今の社会って、99%の富を1%の人が持っているといわれるような格差が広がっていて、1%のお金持ちになれない私たちは、どうやって大きな力に幸せを吸い取られずに生きていけばいいかっていう。

でも、東京ミッドタウンは世界の1%の人は来ないにしても、目指している人くらいはあるかもしれない。とくに東京って多様性の街だから、私たちの答えを出しすぎるのもおこがましいなって思ったり。地方都市ほどの絶望はないし。

それでどっちかというと自分たちで矛盾を抱えながら答えがでない。出たと思ってもまた振り出しに戻ってるみたいなこともいいかなって思って。それでグルグルとループする仕掛けにしてみたんです。
 
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2015年「ないものねだりからあるものみっけの暮らしかた展」では、札幌に引っ越してからの1年分の写真も展示された

ジョニー ぜひ自問自答してみてほしいです。ぼくだって常にしてるし。やってみたからこそ、こっちじゃないとか、あっちじゃないって思考ループが変わることもあるし。みんな冒険したらいいと思うけど、それでみんなが会社辞めちゃっても、責任とれないしね(笑)まず、シミュレーションから。

タイタニック号が氷山にぶつかった瞬間

— いろんな意味で、非常にパンクな作品だと思いました。

ジョニー そうだね。この作品の根底にあるのは、世の中が変わる瞬間に今いるってことで。今、日本は、世界で最も人口減少が進んでいる国って言われているけど、大きな変化はまだなんだよね。

今、ちょうどてっぺんで、これから10年でガクンと変化する。変化の点にいるから、まだ全然実感がないと思う。タイタニック号で例えると、氷山にぶつかった瞬間ぐらい。

菜衣子 なるほど。まだ優雅に演奏会をしてるタイミングだ。

ジョニー ぶつかった時には気づかないけど、傾いたら気づくわけでしょ。傾いた時を想像すると、今どんなことを考えて、どんなことをしたらいいのか、わかってくると思う。前提条件が変わると、結論って変わるでしょ。

たとえば「2040年には日本の半分近くが空き家になる」と聞くと、ほら、全然変わってくるでしょ。「10年後はどんな世の中になっているか」はここで見ることができるんだけど、時代が変わろうとしている今、「わたしの思考ループ、その前提条件で大丈夫かな?」って、自問自答してほしいな。

菜衣子 ジョニーいいこと言うね。でも、自分でつくったトマトがおいしくないんだけど。

ジョニー まだ1年やっただけだからさ、がんばろうよ(笑)
 

(対談ここまで)

 
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21_21 DESIGN SIGHT企画展「雑貨展」
展示作品 「終わらない自問自答」池田秀紀/伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家)
(Photo:大谷宗平/ナカサ&パートナーズ)

実際に見てみると、その大きさにびっくりする「終わらない自問自答」。床から天井まで、そして大きな壁2面にわたって描かれたYES/NO MAPは、そうそう見られるものじゃございません。6月5日(日)まで「21_21 DESIGN SIGHT」で展示されているので、ぜひ足を運んでみてください!
 

– INFORMATION –

 
21_21 DESIGN SIGHT 企画展「雑貨展」
会期:2016年2月26日(金)〜6月5日(日)
休館日:火曜日(5月3日は開館)
開館時間:10:00〜19:00(4月28日(木)は22:00まで開館)
http://www.2121designsight.jp/

『雑貨展』に行ってみよう!
21_21 DESIGN SIGHT 企画展「雑貨展」

writer ライターリスト

葛原 信太郎

葛原 信太郎

greenz ライター 「道に迷うことがあったらアジアを旅をしなさい」という教師の一言に影響を受け、貧困問題を学ぶために明治学院大学に入学。在学中は、東南アジアでボランティア活動をしたり、NPO法人の副理事長をつとめる。卒業後、一般企業に就職したり、独立して、雑貨屋を開業したりしながら、今はオーガニック&エコロジーをテーマにしたイベント制作オフィス「earth garden」にて、フリーペーパー&ウェブマガジンの編集長をつとめる他、greenz.jpや、日本の「揺れやすさ」と地震防災を考えるサイト「ユレッジ」にてライターも行っている。

partner パートナーリスト

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わたしたちエネルギーは、エネルギーを、じぶんごとにして楽しむプロジェクトです。エネルギーを減らしたり、つくることを楽しむ。つくったエネルギーで得られる楽しさ、幸せをみんなで共有する。エネルギーで地域が自立する。今、そんな試みが全国に広がっています。わたしたちは、greenz.jpの記事をつくること、グリーンズの学校で共に学ぶことなどを通してそんな動きをサポートし、そして共に歩みたいと思っています。 このプロジェクトは、経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。 ⇒ 特集「わたしたちエネルギー」FacebookページGREEN POWER プロジェクト WEBサイト

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