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住み開きをはじめて20年! 約60の自宅講座と稼ぐシニアコミュニティをつくる「泉北グループ・スコーレ」利安和子さんのいきがいとは?

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特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

「住み開き」という言葉を聞いたことがありますか?

自分の好きなことをきっかけに自宅を催し物会場にしたり、近所の人が集まれる拠点にしたりしながら、ちょっとだけ開かれた活動の場にしていくこと、また、そこからゆるやかなコミュニティが生まれることを「住み開き」と言います。

「住み開き」という言葉は日常編集家のアサダワタルさんが提唱し、2012年に『住み開き 家から始めるコミュニティ(筑摩書房)』が出版されたことで広まりました。しかし、「泉北グループ・スコーレ」は、それよりも20年近く前からメンバーの「自宅を開放」し、“来る者は拒まず”のコミュニティをつくっています。(アサダさんも書籍のなかで活動を紹介されています。)

現在は、約60の自宅講座と280名近いメンバーが活動している「泉北グループ・スコーレ」。平均年齢は66歳以上、しかも助成金に一切頼らず、全ての活動費を自前で稼いでまかなっています。「泉北グループ・スコーレ」の継続力のある運営のコツを学びに、発起人である利安和子さんの自宅を訪問しました。
 
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利安和子(としやす・かずこ)
大阪府堺市泉北ニュータウン在住の71歳。53歳まで自宅で学習塾を開き、閉塾後にシャンソン仲間と「泉北グループ・スコーレ」を起ち上げる。自宅開放によるコミュニティづくりが高齢化するニュータウンの「縁」づくり、アクティブシニアの暮らしづくりとして注目され、地域再生や社会福祉等のシンポジウムのパネリストとしても登壇多数。2016年現在、グループ理事。

最高齢メンバーは86歳!自宅開放が元気のもと!

大阪の南部、堺市南区に広がる泉北ニュータウンは村落と村落の間の丘陵を整備して、昭和42年に誕生しました。高度経済成長時代の住宅需要に応えるために整備された街は、40年以上が経過し、人口減少、少子高齢化をむかえています。当時ニュータウンに住み始めた家族の子どもたちは独立。夫婦2人、あるいは一人暮らしという世帯構成が増えているからです。

そんななか「泉北グループ・スコーレ」は会員の自宅を回る「自宅開放」型の講座を開き、血縁に頼らないコミュニティとして、ゆるやかな人のつながりを生んでいるのです。
 
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毎月、郵送で届くスケジュールには会員が得意事を活かして開講した講座がびっしり。どれだけ受講しても無料です。

そもそもの始まりは利安さんが53歳の頃でした。子育てが終わり、自宅で経営していた学習塾も閉め、仕事をリタイアした後に自分の人生のいきがいをみつけることにとても悩んだそうです。ある日、シャンソンを習っていた仲間が自宅に集まったとき、利安さんは得意な料理をふるまい、仕事をしていたとき以上の充実感を覚えたそうです。

周りを見ると、他にも麻雀が得意な人がいるし、シャンソンを教えられる人もいます。それぞれが50年以上の人生のなかで培ってきたものを持ちよればそれだけで、専門の講師がいなくても楽しく暮らしていけると考えたのです。

幸い自宅は夫婦2人で暮らすには広く、もてあましていました。集会所を借りればお金がかかりますが、自宅なら無料で講座を開けます。知り合いに声をかけていくうちに、1ヶ月のカレンダーが埋まるほどの講座数になっていったと語る利安さん。
 
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料理、麻雀、シャンソン、手芸、音楽などメンバーの得意なことは何でも講座に。いくつ受講しても無料で受講スタンプが貯まると百貨店の商品券がもらえます。この日は「男の料理教室」男性と女性がマンツーマンで一品づつ

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麻雀講座の様子。ついつい時間を忘れて延長することもあるのだとか

お互いが先生になったり、生徒になったりしながら、学びあうから誰でもリーダーになれます。

講座料は無料ですが、その後のお茶の時間に出されるお茶とお菓子、冷暖房費として1人500円を、講座を開いた家に支払うことになっています。そしてそのお茶の時間がスコーレにとってはお互いに本音で言い合える、とても大切なコミュニケーションをはかる場なのです。

利安さんは発足当時を振り返り話してくれました。

当時は、こんなに人間関係が希薄になる時代がくるとは思ってもいませんでした。ただ、自分の老後が寂しくならないようにと考えて井戸端会議ができる長屋のような暮らしをニュータウンでもつくりたかったんです。

「泉北グループ・スコーレ」のようなつながりが、社会から注目され必要とされるとは思っていませんでしたよ。

取材に訪問した日は、ちょうど20周年の記念誌編纂会議の真っ最中。利安さん宅のリビングには7人の役員と編纂委員さんが集まり、お茶を飲みながら文章やデザインについての意見が飛び交っていました。

今日もライターさんが来るから、お花を飾り直したの。家に人が来るとなると、嫌でも掃除もしないとあかんでしょ。きれいになるし、気持ちにもハリがでますでしょ。だからみんな元気なんです。最高齢の方は86歳の男性ですけど私たちが見習いたいほど達者ですよ。

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周年誌の編集会議はレイアウトからデザインまで自前で決める。外から見ているとけんかのようにも見えるが 言いたいことを言い合ったあとは不思議と意見がまとまります

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歴代の周年誌。すべて自費でまかい、編集もメンバーで行っています。

いくつになっても、忙しいことほど幸せなことはない!

現在は、社会福祉協議会からの講演依頼なども受ける利安さんですが、20年前は「ただのカルチャー教室でしょ?」「遊びの延長で続けられるわけがない」とバカにされたこともあったそうです。

どうせやるなら社会に影響を与えられるくらいに魅力あるものにしたいという想いが利安さんの原動力になっていたと言います。

ただお金をかけずに仲間内で遊んでいるだけじゃ、つまらないでしょ。きちんと組織で運営して、自分たちのアイデアでピカピカしたグループに育ててきたんです。

2007年には会員の平均年齢が66歳を超えてきたこともあり、会員の住む場所を10地域に分けて「お助けマンクラブ」をつくり、困ったときには近所で助け合える仕組みもつくりました。

自宅開放のつながりがベースにあるので、普段から家の様子をわかりあえていることが、小さな変化にも気付け、セーフティネットの役目を果たしています。

私はね、スコーレの活動は私の仕事やと思っているんです(笑)

お金のためじゃなくてできる仕事ってすばらしいですよ。この年になってこんなに忙しい生活ができるのはすばらしい老後ですよ。

発起人の一人である吉本さんも、「泉北グループ・スコーレ」がなかったら人生がどうなっていたかわからないと言います。

主人を亡くして落ち込んでいるときでも、ちょっとお茶だけ飲みにいかせてもらって元気がでました。講座を受けなくても、お茶だけでも快く迎えてくれるのがこのグループなんです。

今、孤独死や認知症の問題がニュースになっていますが、毎日、関われる仲間と忙しくすることで元気でいられ寂し想いをすることもありません。

「泉北グループ・スコーレ」に入会するときには5つの約束があります。

・時間が守れますか
・ちょっとおしゃれをしてみませんか
・心から笑いたいと思いますか
・ちょっとプラス思考に考えてみませんか
・ちょっと人の為に役に立ちたいと思いませんか

その約束のなかでも、5つ目の「ちょっと人の為に役に立ちたいと思いませんか」という言葉が一番大切だと利安さんは考えています。

人間の本質だと思います。自分がリーダーになって講座を開くときも、上手じゃなくてもいいんです。自分の経験を活かして役に立ちたいと思う心が大事。その心があるから忙しいことも楽しめます。

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ホールを借りて開かれた「クリスマスパーティー」

助成金は、もらいません。バザーで年間70万円稼いでます!

「泉北グループ・スコーレ」のすごいところは、会員に月一回の会報を郵送する通信費以外は年会費もなく、助成金ももらっていないところです。30万円ほどかかる周年誌の印刷費も全額自前です。自己資金はバザーで稼ぐ! しかも昨年は約70万円近くを稼いでいるといいます。

実は、場所を使ってのバザーは年に1度だけ。そのかわりバザーの翌日から始まるのが「事前バザー」です。講座がある日には、家であまった食材や手料理、手芸品などを持ち寄り、値段をつけてほしい人に買ってもらう「事前バザー」を一年中開いて売上げを積み立てているのです。バザーで稼いだお金が約20万円に対し、事前バザーで稼いだお金は約50万円!

事前バザーではお互いに“買わないといけないプレッシャー”がかかるのでは?と思いましたが、実態は違いました。「今日のおかずになるから助かるわ〜」「主人が家庭菜園でつくったじゃがいもはいりませんか?」などとみなさん事前バザーをそれぞれに楽しんでいます。

助成金のお話も頂きますが、断っています。自分たちの力で稼がないと、グループの力が萎えるんですよ。自分たちで稼ぐから、やりたいこともできます。知恵もでますし、稼ぐ喜びがあるんです。

もちろん稼いだお金は会員に還元できるように遣われています。自宅開放の講座の他にもホール等を借りての季節のイベントなども数回開かれ、コミュニティセンターを会場にして活動報告会も毎年開催しています。

バザーは感謝の心なんです。1年間、いろんな講座で遊んで学ばせてもらった感謝として皆が喜んで協力しあうんです。しかも楽しんで!

大根がスーパーで90円やったら、うちらは100円の値をつけましょか(笑)なんて言いながらやってるから「世界一値付けの高いバザー」やって自負してます。それでもみんな買ってくれるのは感謝の心があるからなんです。

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編集会議の前にも「事前バザー」。この日は会員さんが持参したハムが3秒でお買い上げに。

世代を超えて誰でも参加してもらいたい

最近は、男性の会員も増やしたいと「男の料理」教室も講座に加わりました。リタイア世代の男性の居場所がなく、家にこもりがちだと言われるなか、少しずつ男性会員も増え、夫婦で参加される方もいるそうです。もっと世代を超えて20代でも30代でも入会を歓迎しています。

「泉北グループ・スコーレ」はレジャーやサービス業として企画された「遊び」に頼るのではなく、お金も時間も企画さえも自分たちの工夫でつくりだしています。

その過程には、お互いに学び、学び合うからこそ得られる充足感があふれています。「スコーレ」とはギリシャ語で「スクール」の語原。その意味は、たんなる余暇ではなく、心や自己の充足に積極的につかうことできる時間のこと。「学び、学び合う。泉北グループ・スコーレ」と名付けたグループ名に利安さんの強い志を受け取りました。

みなさんのお友だちの顔を思い浮かべてください。そして、それぞれにどんなことが得意か、何に詳しいかを思い出してください。それだけでいくつか講座が生まれそうに思えませんか。

週末にちょっとだけの「自宅開放」講座。自分の得意なことで始めてみると、なかなか面白い週末になると思います。
 
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