ISSUE☆おすすめの連載! マイプロSHOWCASE福岡編 with 西日本鉄道

3 months ago - 2016.02.12

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世界に誇る音楽都市を目指して! 音楽プロデューサー・深町健二郎さんに聞く、福岡と天神のこれまでとこれから

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(右)深町健二郎さん (左)YOSH元編集長

特集「マイプロSHOWCASE福岡編」は、「“20年後の天神“を一緒につくろう!」をテーマに、福岡を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、西鉄天神委員会との共同企画です。

京都といえば歴史。大阪といえばお笑い。では、福岡といえば何でしょう?

福岡を中心に、音楽プロデューサーやアーティストとして活躍する”福岡の顔”・深町健二郎さんは、「福岡といえば音楽!」と宣言します。

2000年以降、福岡市では「音楽産業都市」というビジョンを発表。福岡市役所の目の前で開かれる音楽フェス「MUSIC CITY 天神」やロックからジャズ、ゴスペルまで音楽の祭典を横つなぎする「福岡ミュージックマンス」、道路占用の規制緩和を活用した「FUKUOKA STREET PARTY」など、画期的な音楽の街づくりが行われてきました。

こうした一連の動きに深く関わってきたのが、福岡の音楽シーンの歴史とともに歩み、ご自身も大人気の野外フェス「Sunset Live」を仕掛けてきた深町さんです。

今回はそんな深町さんに、音楽の街・福岡のルーツからライフワークとして掲げる「音楽ミュージアム構想」まで、天神を中心とした福岡の可能性についてお話を伺いました。お相手は、シニアエディターのYOSHが務めます。
 
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深町健二郎さん(ふかまち・けんじろう)
1961年福岡市生まれ。9歳より音楽に目覚め、大学時代は元ロッカーズ(俳優の陣内孝則氏が在籍)のギタリスト谷信雄氏と共に「ネルソープ」を結成。大学卒業後に福岡の旅行会社に就職し、コンサートツアーや音楽イベントの企画・主催を行う。その後イベントプロデューサーとして、福岡のアーティスト・ミュージシャン・ダンサーによるコラボレーションイベントプロデュース等を手掛け、1998年からは糸島市で毎年開催されるSunSet Liveの共同プロデュース・MCを担当。そのほか執筆活動やTVやラジオ番組などにも多数出演し、現在も音楽プロデューサーとして、地元福岡を中心に活躍中。

深町さんが考える福岡の魅力って?

YOSH 今日はよろしくおねがいします。さっそくですが、深町さんにとって福岡の魅力はどんなところだと思いますか?

深町さん 僕はね、街って結局、人だと思うんです。そして、「福岡といえばこの人」みたいな名物的な人を多く輩出してきたことが、福岡の魅力のひとつなのかなって。

タモリさんはその代表格だし、さかのぼれば日本の演劇のルーツとも言われる「オッペケペー節」の川上音二郎も福岡出身です。

もちろん音楽の世界でも、シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠さんがいたサンハウスから始まって、モッズとかルースターズとか、師匠である陣内孝則さんのロッカーズとか。かっこいい先輩たちが「ドン!」と存在していました。

YOSH むしろ東京の人たちが真似したくなるみたいな。

深町さん うん。東京の流行りを持ってくるのではなく、逆のベクトル。70年代には「めんたいロック」とか、ビートルズを生んだ街にちなんで「日本のリバプール」とか呼ばれて。天神にある「親不孝通り(現・親富孝通り)」だって音楽の聖地だったんですよ。

YOSH そうだったんですね。
 

伝説のバンド「サンハウス」再結成ツアーのライブ映像!!(Victor Entertainmentより)

深町さん そういう歴史は若い人に伝わっていないのかもね。例えば「照和」という伝説のライブ喫茶も天神のど真ん中にあって。まあ、100人も入ったらパンパンになるくらい小さなところなんですけど、そこからチューリップや海援隊、長渕剛さんたちがどんどん巣立っていった。

照和がすごいのは、一時代を築いた伝説的な場所でありながら、今も若いミュージシャンにとって憧れの場所であり続けていることです。そんな場所は全国的にも意外と少ないみたいで、そういうところは福岡らしいのかもしれない。

YOSH 福岡がエンターテイメントの街になったのはどうしてなんでしょう?

深町さん もともと文化的にオープンな土壌があった、というのはあると思います。歴史的にみてもアジアとの距離が近くて、文化が出入りする玄関口でした。僕が大好きな空海も筑紫から遣唐使として出発したりとかね。

その一方で、元寇のときみたいにいつ侵攻されるかわからない最前線でもだった。だから、常に世界を意識しながら、いち早く新しいものを受け入れる資質があったんだと思います。

YOSH なるほど。
 
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「空海劇場」に関わるなど大の空海好きということで盛り上がる二人

深町さん それと同時に、福岡がほどよく田舎だった、というのもあるのかな。最先端の情報が届くんだけど、断片的だったりするから、勝手に自分たちで解釈していくしかない。そうして「勘違い」が生まれるんだけど、そういうことから突飛なものが生まれてくる(笑)

そもそもロックって、勘違いの歴史だと思うんです。洋楽の数少ない情報をもとに、自分たちがカッコいいと思うオリジナルなものをつくるわけだから。それがちょっとイタいときもあるけど、その個性が圧倒的にかっこ良かった。

YOSH 情報がありすぎても受け身になってしまうから、ちょっと足りないくらいの方がいいのかもしれないですね。

深町さん そうやって福岡を拠点に活動するバンドが多かったのも、実はすごいことなんですよね。当時、メジャーな活動をするには、夜行列車で上京して、故郷を捨てて、みたいなのが普通だったんです。でも、敢えてそうせずに「いや、別に福岡でいいよ」と。

そういうカッコいい大人たちが身近にいると、当然、刺激を受けた後輩たちも次々と出てくるわけです。そして師弟関係というか、すごい縦社会ができあがる(笑)それは善し悪しもあって、「うるさいなあ」と思う場面もいっぱいあったけど、それ以上に何か新しいものを生み出そうというエネルギーはすごかったと思う。

YOSH 今とは時代背景が違うかもしれませんが、今なりにそういう幸せな状況をつくっていけるといいですね。

深町さん 本当に。「Sunset Live」も「音楽ミュージアム」構想も、そのためなんです。いろんな世代を知っている僕のライフワークとして、音楽で福岡を盛り上げていけるといいなと思っています。
 
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Sunset Liveの様子(公式サイトより)

ポートランド&シアトルへの旅

YOSH 最近の福岡について、どう眺めていますか?

深町さん もともと福岡って、「九州で支店を出すならここ」みたいに、何も努力をしなくても人が集まって来た街なんですよね。だから「特別に何かを仕掛けなくてもいいやん」みたいな空気も実はあって。

そこに最近、特に震災以降かな、東京方面からたくさんの人が移住してきた。そうやってさらに賑やかになったのは喜ばしいのだけど、一方で、東京に似てきているというか、街の個性はどんどん失われてきているような気もするんです。

YOSH ふむふむ。

深町さん 同じ福岡県でも、北九州は何回かどん底を味わっているんですよね。石炭が衰退したり、公害が蔓延したり。そういう過去を経て、先進的な考え方を取り入れるようになったし、まちづくりの機運が根付いている感じもある。

でも、福岡はよくも悪くもそういう経験がないから、あまり危機感を持てないというか。だから、今起こりつつある変化がどこに向かうのか、少し心配はあります。まあ、いいきっかけだと思うので、みんなで考えていきたいですね。
 
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「福岡が東京みたいになってきているのが心配」と深町さん

YOSH 最近ポートランドにシアトルと西海岸に行かれたようですが、それもそういう思いからですか?

深町さん そうですね。数年前ぐらいから「ポートランドと福岡は似ている」って言われ始めていたので、実際どうなのかなと思って。ただ、正直「似てるな」とは思わなかったですけどね(笑)

新しいビルが多い福岡と違って古い街並みが残っているし、人口も60万人くらいと福岡より少ないので、スペースがあるというか。

YOSH そうですか。

深町さん 実際にポートランドの街を歩いてみて感じたのは、「いいものをすごく大事にしている」ということです。

一軒一軒しっかりとした哲学をもってお店をやっていて、それが街に集まっている。それはもう、面白いに決まっていますよね。しかもこだわりの店なのに、これみよがしではないのも心地いい。

YOSH そういう小商いが成り立つのは、価値を理解して買う人がいるということですよね。

深町さん それが街全体の価値観であり、アイデンティティになっているんでしょう。

例えばコンサートにも行ったんですけど、それもいわゆる劇場とかではなくて、小学校の講堂をリノベーションした、それはもう気持ちいい場所で。そういうところで一流のアーティストの音楽を聴けるのも嬉しいけれど、待っている時間も何だか幸せだったんです。その場自体がメッセージになっているというか。

とにかくポートランドでは、「大事にしたいことは街全体で受け継いでいこう」という強い思いを感じました。そういう感覚は、今の福岡にはあまりないかもないなあ。

YOSH その後のシアトルはどうでしたか?

深町さん シアトルの目的地は、Experience Music Projectという音楽の博物館だったんです。「音楽ミュージアム」構想のための視察みたいな感じで。

そこはシアトル生まれのジミヘンにまつわるレアアイテムの展示とかがあって、ファンにはたまらない場所なんだけど、それだけではなく、実際にセッションを「体験できる」部屋があるんです。

YOSH なるほど。それで「Experience Music」。
 
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Experience Music Project Some rights reserved by Curtis & Renee

深町さん その部屋に入る前に「バンド名は?」とか「好きな曲は?」って聞かれて。「サンセット」「ジミヘンのパープルヘイズ」って答えていざ入ってみたら、もうステージが出来上がっているんですよ。

で、スタンバイしたら、MC役の人が「次のバンドは…サンセット!」って盛り上げてくれて。照明もガンガン当たって、あの曲が流れ出すわけです。

YOSH うわあ。

深町さん もう感動してね(笑)で、それっぽく演奏を終えると、帰り際に「今のライブ映像をご希望ですか?」って聞かれるんです。実は録画してもらっていたみたいで。さらにはポスターとかチケットまで、いつのまにか完成していたりとかね。そうやって、ひとつのエンターテイメントになっている。

実はEMPって、マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレンが出資した場所で、程よくテクノロジーがいかされているんです。福岡にもIT系のスタートアップが増えているので、テクノロジーと融合した体感型ミュージアムの可能性はありえるなあって思いました。

福岡といえば音楽! 音楽産業都市に向けて

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「福岡といえば音楽!」というイメージを広げたい、という深町さん

YOSH 改めて、福岡をもっと魅力的な街にしていくために、どんなことが必要だと思いますか?

深町さん  まずは、福岡にはどんな歴史があって、何を大事にしてきたのか、そういう根っこの部分を共有する機会をつくることですね。そしてその柱のひとつがやっぱり音楽なんです。

「京都といえば日本文化」「大阪といえばお笑い」と同じくらい、「福岡といえば音楽」というイメージをつくりたい。

YOSH 大阪ではつねに笑いを取りにいくように、福岡では日常に音楽があふれている、みたいな。

深町さん 現実、今はどうかって言われたらまだまだだけど、街のBGMとして、街の一角に溶け合ってる感じになったらいいなと思います。

かつてはバスの後部座席でおっさんが大きな声で歌っているけど、何かうまいからみんな聞き入る、みたいなことは普通にあったんですよ。そういう芸事に寛容な文化があるから、「MUSIC CITY 天神」のように、都会のど真ん中でフェスができる。

同じ時期に開催される「中洲ジャズ」だって、交番の目の前で結構過激な演奏をしていたりするわけですよ。よく「ちょっとおかしい街ですね」って言われますが、客観的にみると本当にそう思います(笑)でも、そこにポテンシャルがある。

YOSH きらめき通りを歩行者天国にしてパーティー会場に見立てた「FUKUOKA STREET PARTY」も画期的でしたよね。国家戦略特区認定による規制緩和で初めて実現したということで、市長や行政のカルチャーへの理解度にも驚きました。
 
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FUKUOKA STREET PARTY(公式Facebookより)

深町さん いろんな取り組みのおかげで、面白い人たちがどんどん福岡に集まってきてくれているのは嬉しいですね。

元JUDY AND MARYのタクヤくんは京都出身ですが、日本の音楽の可能性を広げていくために、「福岡にアジア音楽のハブとなるスタジオをつくりたい」って言っているんです。やっぱり「アジアへの近さ」が決め手みたいで。

そういう”世界の中の福岡”のような新しい動きと福岡の歴史や文化的な素養が組み合わされば、もっともっと面白くなると思いますよ。そろそろ、タモリさんとか陽水さんに戻ってきてほしい(笑)

YOSH ぜいたくですね(笑)

深町さん とにかく、いま必要なのは「新たな勘違い」だと思うんです。それは「福岡って何だかすっごく音楽やりやすそう」くらいでいいんですよね。僕らがやれ音楽都市だ、音楽ミュージアムだって言い続けて、それが少しずつ形になっていけば、勘違いする人たちが集まってくるかもしれない。

「Sunset Live」も「福岡をもっと面白くしたい」という一心でみんなに声をかけたら、気づけば20年も続くイベントになったという感じなんです。そうやってみんなが主体的に加担しながら、これからの福岡の文化を一緒に作り上げていけるといいですね。
 

(対談ここまで)

 
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対談の収録はgreenz.jpでもご紹介した警固の「albus」で行いました

というわけで、深町健二郎さんとの対談、いかがでしたでしょうか?

インタビュー自体は僕の不勉強もあり、日本のロックシーンの歩みを丁寧に教えていただくような一時間半となりましたが、だからこそ改めて、世界に誇る音楽都市・福岡の可能性をありありと感じることができました。

何より多くのスタートアップが拠点を構えたり、たくさんのクリエーターが移住したり、注目を集める福岡のルーツに、受け継がれてきた”芸事への寛容さ”があるということ。そして、それが今なお新たな価値を生み出す源泉であるという深町さんのお話には、それぞれの地元の未来を考えるために欠かせない、シンプルで大事なメッセージが含まれていたように思います。

いつか天神にお越しの際は、ぜひ音楽を聞く旅をしてみませんか? 街に溶け込むような心地良いBGMが、きっとあなたを待っています。

“20年後の天神“を一緒につくろう!福岡を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手をご紹介します。
「マイプロSHOWCASE福岡編」

writer ライターリスト

YOSH

YOSH

greenz シニアエディター/NPO法人グリーンズ理事 1979年生まれの勉強家 兼 お父さん。2004年よりウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。 CSRコンサルティング企業に転職後、2006年クリエイティブディレクターとして独立し、ウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わる。2010年より編集長。秋田市出身、京都市在住。一児の父。 2016年より京都精華大学人文学部の特任講師として、「ソーシャルデザイン・プログラム(社会創造演習)」を担当予定。

partner パートナーリスト

西鉄天神委員会

西鉄は、事業基盤として深く関わりのある福岡・天神の街を、多様な方々に集まっていただける場にしていきたいと考えています。そこで大切になるのは、「人」にフォーカスした視点でのまちづくりです。 今回の「マイプロSHOWCASE福岡編」を通じて、福岡・天神で活躍されているみなさんをさまざまな形で支援させていただき、これからの天神をともにつくってゆけたらと思います。 ⇒ 西鉄×グリーンズキックオフ対談!マイプロSHOWCASE福岡編

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