ISSUE☆おすすめの連載! マイプロSHOWCASE関西編 with 大阪ガス

7 months ago - 2016.02.03

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全国に元気なおばあちゃんたちの仕事場を増やしたい。「patch-work」村上史博さん × 「BABAラボ」桑原静さん対談

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patch-workの作品。全部、おばあちゃんたちの手づくりです。

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。こちらの記事は、「NEXT STEP対談」。過去に登場していただいたみなさんが“人生の先輩”の胸を借りて次のステップを模索する場をgreenz.jpがプロデュースしました。

あなたの知っている一人暮らしのおばあちゃんは、どんな毎日を送っていますか? 日本の女性の平均寿命は男性(80.50歳)より6年以上も長く、世界トップの86.83歳。単身で暮らすおばあちゃんたちの第二の人生を考えることは、私たちの未来を考えることでもあります。

そこで今回は、高齢でも元気なおばあちゃんたちが仕事を得て、よりイキイキと過ごせることを願って活動している東西の起業家たちの対談をお届けします。

西からは、2012年に結成された男子2人のユニット「patch-work」の村上史博さん。兵庫県を拠点に、おばあちゃんたちを先生とする手芸教室を開き、その作品や手芸キットを企画・販売。祖母世代の手仕事に若い感覚のデザインをミックスしつつ世代間交流を図り、高齢者の社会的孤立を防ごうとしています。

東からは、やはりgreenz.jpで何度もご紹介している「BABAラボ」の桑原静さん。BABAラボは、「100歳まで働けるものづくりの職場」として、埼玉県の住宅街に2011年に開かれた工房です。近隣のおばあちゃんたちと、より使いやすい抱っこひもやエプロンなどを開発して手づくりし、「『ばば』による『ばば』のための孫育てブランド」を展開しています。

両者に共通するのは、「おばあちゃんたちの職場づくりやコミュニティづくりを手伝いたい」という熱い思い。どちらも、その最初のツールは「手芸」です。

関西と関東で、偶然にも似た活動を続けてきた2人が、BABAラボに集い、お互いの作品を眺めながら語り合いました。
 
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patch-workの村上さん(左)とBABAラボの桑原さん

村上史博(むらかみ・ふみひろ)
patch-work共同代表兼コミュニティデザイナー。2012年、祖母世代のコミュニティ支援を目的とするユニット「patch-work」を、職場の同僚だった丸井康司さんと設立。兵庫県宝塚市を拠点に、地元の伝統工芸品である播州織やそろばん、地域にあった良質な古着を活用して、高齢者の仕事づくりに取り組む。公式ホームページ http://www.patch-work.jp
桑原静(くわはら・しずか)
BABAラボ代表。大学で映画を学び、ウェブ業界を経て、2007年にコミュニティビジネス支援NPOに就職。2011年、出身地である埼玉県さいたま市の地域活性化を目指して独立。職場の同僚だった中森まどかさんと仕事創出をテーマに「シゴトラボ合同会社」を立ち上げた。その最初の事業として、出産を機に祖母や母と始めたのが、「BABAラボ」の活動。公式ホームページ http://baba-lab.net

起業のきっかけは、自分のおばあちゃん

村上さん そもそもなんですが、桑原さんがBABAラボを始めたきっかけは何だったんですか?

桑原さん 「誰もが自分らしい働き方や生き方ができる社会」を目指して、「シゴトラボ合同会社」を立ち上げたんですが、その第一弾が高齢者支援の事業だったんです。

村上さん どうして最初に高齢者問題に取り組もうと?

桑原さん それは、やっぱり、おばあちゃん(祖母の絹子さん)の存在ですね。自転車に乗ってここまで来るほど元気な86歳ですけど、おばあちゃんが元気なうちにやりたくて。

村上さん そうだったんですね。僕も同じく、起業の動機は、昨年亡くなった自分のおばあちゃんでした。夫に先立たれて一人になった姿を見て、長寿がゆえに独居に至る女性の多さに気づかされたんです。

僕は、おばあちゃんたちの引きこもり予防に最も効くのは、社会的な活動も含めて「仕事」だと思っています。仕事は外に出て活動する理由になるし、誰かのためになることが生きがいにもなるので。

祖母は趣味でパッチワークをやっていましたが、その作品の生地やデザインを若い人がほしいものにしてゆけたら、買ってくれるかもしれない。そうすれば、おばあちゃんたちの仕事になる、と思いついて。

まずはパッチワークを学ぼうと、会社の先輩だった丸井康司さんを誘って、大阪のパッチワーク教室に1年間通い、それから独立しました。

桑原さん やっぱり手芸は、関われる人数が多いところが魅力ですよね。私たちは最初、おそうざい屋さんとか、手芸以外の仕事づくりも考えたんですが、手芸に落ち着きました。
 
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BABAラボのオリジナルTシャツ(この商品は干支の「申」をデザイン)。お孫さんとおそろいで着られます。

おばあちゃんたちと働くということ

村上さん 立ち上げ当時、ご苦労はありましたか?

桑原さん 最初は、つくり手が足りなくて大変でした。高齢者の職場づくりがしたいという気持ちばかりが先行して、肝心なおばあちゃんたちは、なかなか集まらず。

村上さん おばあちゃんたちが定着するまで、どのくらいかかりましたか?

桑原さん 1年ぐらいかな。焦りはなかったけど、長かったですね。おばあちゃんたちは、たぶん警戒心が強いんです。実際、ご家族に「変な宗教じゃないだろうね?」と心配されちゃった方もいましたし(笑)

村上さん 他に事例が無いから、伝わりにくかったんでしょうね。

桑原さん でも何人か集まってきたら、だんだんと紹介で増え始めました。地域の人に受け入れられることは継続の要です。今も、お隣のカフェと合同で手書きの地域新聞を発行するなど、「怪しくないよアピール」は欠かせません(笑)

村上さん ここは自宅ではないんですよね。鉄道3路線の3駅のちょうど中間地点にありますが、それは狙ったんですか?

桑原さん いえ、たまたまです。最初は自宅で活動していたけれど、子どもや夫が帰ってくるし、やりにくくて。よく「2階に住んでいるの?」と聞かれるけれど、ここは、とても理解のある良い大家さんに出会って、工房用に借りた家です。

作品を販売する店舗も兼ねているので、ふらりと入って、お茶をしていく人もいて。子どもたちも来るし、奥に上がって店主と話せる昔の駄菓子屋さんみたい。

あまりルールを決めず、いろいろなことをやっていれば、いろいろな役割が発生して、またいろいろな人が寄ってくる。それでいいのかなって。

村上さん 僕らは今のところ教室のある日だけ場所を借りているんですが、いずれは、BABAラボさんみたいな居場所づくりをしたいと思っています。

桑原さん 楽しみですね。
 
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BABAラボの工房は、閑静な住宅街に建つ一戸建て住宅。カラフルな看板が目印です。

村上さん どういうおばあちゃんたちが登録されているんですか?

桑原さん 孫守グッズからスタートしたので、子どもが大好きな人が多いですね。コミュニケーション能力の高い人も多くて、お茶を飲んでいると1時間なんて、あっという間。注文が多い時は、さすがにお茶の時間どころじゃないですが。

今、登録してくれているのは60人ぐらいです。もちろん、お孫さんができて孫守(まごもり)でしばらく留守にしたり、脚が悪くなって来られなくなった人もいます。それぞれのペースで働いていただいている感じですね。

村上さん 僕たちの教室も、おしゃべりさんが多いです。2時間しかないのに、前半たっぷりしゃべって、「もう終わるやん」って(笑)。もともとの目的が「場づくり」で、教室は二次的なものなので、それでいいんですけどね。

うちは、まだつくり手が3人なので、「あなたにしかできない」という役割をつくることを大切にしているんですが、たくさんのおばあちゃんたちに働いてもらうにあたって、注意していることはありますか?

桑原さん 3つあります。一つ目は、きちんと、ひとりひとりの状況を分かっておくこと。女性は、子どもを産み育て、子育てが落ち着いたら介護や更年期障害が始まり……、どうしてもライフステージの中で、刻々と大きい変化が訪れます。

そういう個々の状況を知っておかないと、無理をさせてしまって、結果的に続かない。だから、町工場の社長の奥さんみたいに、話し好きな人から情報をもらったりしながら、お互い気遣い合って働けるように心がけています。

二つ目は、気兼ねなく休める仕組み。これ、一方では専門性を奪うことにもなりますけど、休みづらくならないように、「〇〇さんがいないと進まない」という作業をつくらないことです。

三つ目は、作業の細分化です。管理は大変ですが、細かく役割を分担しておくと関われる人数が増えて、週に1度の人とも細く長く付き合えます。
 
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BABAラボは、共働き夫婦が増えて孫守を頼まれるおばあちゃんが急増していることを受けて、シニア世代が使いやすい育児用品を開発。2016年3月にはBABAラボ初の工業製品(孫育て用オリジナル哺乳瓶)も発売予定です。

村上さん ちなみに最近、patch-workの教室に来る生徒さんは30~50代という若い方が多いんですが、BABAラボさんではどうですか?

桑原さん うちも一時期、子連れの20-30代のお母さんばかり集まって保育園状態になりました。そうすると、逆におばあちゃんたちが来られなくなるんですよね。

それで、改めて「シニア層が働ける職場」と明確に打ち出して、おばあちゃん募集キャンペーンをやったんです。「年金プラスアルファを得られる」など、発信する言葉も意識して変えて。そのうち自然に、また、おばあちゃん中心に戻りました。

村上さん もともとの目的が、おばあちゃんの居場所づくりですもんね。

桑原さん 若い人が多いほうが作品はいっぱいできるんですけど、スピードという誘惑に引っ張られすぎずに、若い力も借りつつ「おばあちゃん多め」を維持していく。ビジネスとコミュニティのバランス、老若のバランス、このあたりのコントロールも課題です。

村上さん その「若い力も借りつつ」というのは、最初から想定していましたか?

桑原さん してなかったです。最初は50代以上と考えていました。うちは、もともと運営主体が私たち親子3世代で、そこに求心力があるから、いろいろな年代が集まりやすいのかもしれません。若い人が来るのは、近場に子連れで働ける環境が少ないのも一因だと思います。

村上さん 今後ますます単身家庭が増える中で、こういう血縁がない家族みたいなものが、ますます必要になってくるでしょうね。おばあちゃんに限定せず、多世代が集う場が求められるというか。

桑原さん そうですね。多世代交流は楽しいし、実際に複雑な毎日の発送作業やインスタグラムでの情報発信など、若い人の力も必要ですし。やっぱり小さな子どもの存在も、おばあちゃんたちを喜ばせてくれます。高齢者が近くにいると思いやりの心が育まれるから、子どもたちにとっても大切な環境です。

村上さん おじいさんなど、男性はどうでしょう?

桑原さん 実は、じじ(おじいちゃん)の参加もチャレンジしているんですが、おばあちゃんたちの中に溶け込めない方もいて。

もっと販売戦略を練ったり、作品撮影のモデルとして活躍してもらったり、“じじ”が得意なところで関わってもらうようにしています。あと、ときどき、いわゆる草食タイプの若い男子が手伝いに来てくれますが、もうおばあちゃんたちにとっては大歓迎という感じです(笑)
 
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桑原さん。胸のワッペンは、patch-workの作品。

せまりくる高齢化のピークに備えて

桑原さん ここまでの活動でいちばん学んだことは、「人を年齢で見る思い込みは捨てたほうがいい」ということです。結局、個人個人なんですよね。もちろん加齢とともにできないことは増えますけど、元気な高齢者も多いですから。

最近は、本当にここの商品を好きと思ってくれているおばあちゃんには、営業として外に出てもらうことも考えているんです。

村上さん おばあちゃんたち、元気ですよね。僕らよりエネルギーがある方、いらっしゃいますもん。でも注文が集中すると、さすがにマンパワーが不足します。今も、春に阪急うめだ本店への臨時出店が決まって、つくり手に加わってくれるおばあちゃんを募集中です。

桑原さん テレビに出た後の急な大口受注とかは、人員の準備がないと無理ですよね。私たちも、大量生産ができない、おばあちゃんたちに無理はさせたくない、でも売らないと利益は上がらない、っていうループをぐるぐる。
 
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村上さん。この蝶ネクタイもpatch-workの作品。patch-workは月に2回、おばあちゃんを先生に、パッチワークと編み物の教室を有料で開催。先生も入れてスタッフは4人、その他にプロのつくり手のおばあちゃんが数名います。

村上さん おばあちゃんたちを徹夜させてしまうぐらいの勢いで受注してしまうと、何のためにやっているのか分からなくなってしまいますからね。

僕が最近気づいたのは、「押し売り」は良くないってことです。例えば、クマちゃんをつくりたいおばあちゃんに、「うちではクマを売る予定はないので、こっちの商品をつくってください」と言ったら意欲を失ってしまう。

それよりは「どうやって可愛いクマちゃんにするか」を考えてサポートしたほうがいい。もちろん商品としてのクオリティーは保たないといけませんが。

桑原さん 手づくり感と特別感のバランス、難しいですよね。活動を維持していくためには売上が必要ですし。うちは5年目に入って、ようやくコミュニティができてきたので、いよいよ資金繰りなどビジネス面が課題になってきています。

村上さん そういうときに、価格設定が難しいですよね。例えば、播州織という伝統の布地で、元縫製のプロのおばあちゃんが手づくりしたゾウの携帯ストラップは1500円です。でも若い方は、作品の良さは認めてくれつつも「ちょっと高い」って。

桑原さん (作品を手に取りながら)この丁寧な仕事を時間換算したら全然高くないんだけどな。すごく安価な手づくり品がネット上で出回っているから、比べられてしまうと辛いですね。

正直、現在のおばあちゃんたちは年金をそこそこもらえるので、お小遣い稼ぎが目的というよりも、人と会いたいというおばあちゃんのほうが多い印象です。

でも確実に今後は、困っている高齢者が増えていく。だから収益を上げることが必須になります。おそらく私たちの世代がピークですけど、年金プラスアルファがないと生活できませんよね。

村上さん 本当にそう思います。僕が起業したのも、「65歳以上になっても楽しく働くロールモデルを今からつくっておかないと」という危機感があったので。

桑原さん 要介護の認定をもらえる人はデイサービスなどを利用できるけど、元気な人は、行く場所がないですもんね。BABAラボにも、「70代になった時のために今から通っている」という50代の方がいます。

村上さん 介護が必要になる手前が一番重要なのに、そこにはあまりサポートがない。そういう世代が立ち寄れる場所や働ける場所を用意しておくことが、介護予防や老後の引きこもりの減少につながると思うんです。いったん閉じこもってしまったお年寄りを外に出すのは至難の業ですから。
 
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居心地の良いBABAラボの和室で、絹子さん(桑原さんのおばあちゃん)が出してくださったお茶を囲んで。

桑原さん いま村上さんがチャレンジしていることは何ですか?

村上さん 実は最近、手芸にこだわらないインターネット版のチャリティーショップを始めたんです。高齢者が多く住む地区の古着屋さんでは、良質の若者向けブランドやビンテージものが売れ残るんですね。それを、人だけじゃなくて物の第二の人生も輝かせようと「secound-life」というサイトを立ち上げました。

そこでは、梱包や発送作業は、おばあちゃんたちに発注して、売り上げの一部は、高齢者が孤立しないための活動に寄付できたらと。

桑原さん 素敵ですね。私はウェブ業界にいたこともあって、 “おばあちゃんの働くを考える”メディアの立ち上げを考えています。将来のおばあちゃん、つまり40-50代が対象で、2016年5月に公開予定です。ゆくゆくは、高齢者白書のような紙媒体も出したいなあ。

村上さん 僕らも、定年退職後や、子育てが終わった人たちの働き方の事例を伝えていきたいと思っていて。関西版と関東版でコラボレーションできたら楽しいそうですね!

桑原さん ぜひぜひ! 似たような活動は他にもあるけど、ここまで志が似ている活動って、まだないですもんね。

おばあちゃんたちは自転車で行けるぐらいの距離でないと通えないから、各地に拠点が必要ですよね。関西に一つ、関東に一つ、では全く足りないから、もっと職場づくりの意義を発信して、全国に似た活動を広げていきたいですね。
 

(対談ここまで)

 
世界でも前例のない、深刻な超高齢社会に突入しつつある日本。今は「きっと年金には頼れないな」というぼんやりとした自覚しかないけれど、想像もつかない未来が待っているのかもしれません。

数十年先を見据えて動きだしている頼もしい起業家たちの対談には、のんびりとした温かい語り口の中にも、しっかりと危機感が漂っていました。私たちも、老後の働き方を想像してみるなど、今からできることを一つずつ始めたいですね。

(撮影:廣川慶明)

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瀬戸内千代

瀬戸内千代

greenz シニアライター 東京生まれ。両親の故郷で瀬戸内海に親しみ海洋動物生態学者を志すも理系文系の橋渡しに興味が移り出版業界へ。2007年からフリーランスの環境ライターとして書籍・雑誌、ウェブに執筆している。プロフィール画像は伊豆下田でスケッチしたムラサキクルマナマコ。

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