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大豆を通じて「日本の食」を考える場に。期間7ヶ月。種まきから仕込みまで手作業で行う「日本一手間のかかる味噌作り」を体験してきました!

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みなさんは、味噌の仕込みをしたことはありますか?

茹であがった大豆の香りや手触りを感じ、できあがりに思いを馳せながら仕込む“手前味噌”は愛着が湧きますよね。食育にもつながることから、最近ではワークショップも各地で行われるようになってきました。

そんな味噌づくりのなかでも、今回ご紹介するのは“日本一手間のかかる”味噌づくりワークショップです。

有機野菜宅配を行う「大地を守る会」、有機農業を推進する生産者団体「さんぶ野菜ネットワーク」、新規就農支援を行う「ほんものの食べものくらぶ」のコラボレーションにより始まったこの取り組み、ただ味噌を仕込むだけではなく、大豆の種まきから行う、というものです。

味噌の原料である大豆はしょうゆや豆腐、納豆など日本の食には欠かせないものですが、その自給率はわずか6%。(参照元)このワークショップには、今、改めて大豆を通して日本の食文化や食の問題について考えようという想いが込められています。

今回は、2014年8月からスタートしたワークショップの締めとなる、味噌の仕込みの現場にお邪魔して、作業を体験しながらお話を伺ってきました。

畑を農家と生活者のプラットフォームに

「大地を守る会」では、これまでも料理教室や生産者を訪ねるツアーなど、年100回ほど食に関するイベントを開催してきました。一方で日本には、農業従事者の高齢化や後継者不足のため、耕作放棄地が増加しているという問題があります。

そこで、このような問題に対し、農家の方と一緒に何かできないかと、この「日本一手間のかかる味噌づくり」の企画が立ち上がりました。大地を守る会の村瀬峻史さんは、今回の目的について、こう語ります。

耕作放棄地を使って大豆をつくるとともに、この場を都市と農村に住む人たちや、持続可能な社会に関心がある人たちの交流の場にしていきたいと考えています。

味噌づくりを通じて、参加者の方にも耕作放棄地の問題に関心をもっていただき、解決に向けたアプローチをしていきます。

「耕作放棄地の問題」と聞くと難しく感じますが、「味噌をつくる」という誰にとっても身近な「食」をテーマにすることで、ハードルもぐっと下がります。実際に農家さんと交流する中で、農業の実情などに触れることもでき、この問題に対してよりリアルに考えることができそうです。
 
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味噌の仕込み終了後には、農家さん手づくりの食事を食べながら交流

種まき〜味噌の仕込み

それでは、2014年度に行われた「日本一手間のかかる味噌づくり」の様子をご紹介しましょう。今回の参加者は約20人。千葉県山武市の畑を舞台に、下は3歳から上は60代の方まで、老若男女様々な方々が集いました。

1.種まき(2014年8月2日)

ワークショップのスタートは、大豆の種まきです。今回育てるのは、千葉県の代表的な在来の固定種である「小糸在来(こいとざいらい)」と、黒大豆。小糸在来は甘みが強く、上品な味わいが特徴の高品質な品種です。2つの畑を借り、計13aの土地に、種を手で一つひとつまいていきました。肥料は使用せず、元々の土壌にあった栄養で育ちます。
 
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2.草取り、野菜の種まき(2014年9月〜10月)

草取りは、地味ながらも、大豆の成長を促すための大事な作業。初秋から初冬にかけて、収穫までの間に2回ほど行われました。
 
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草取りの様子

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草取り後の畑

3.収穫(2014年12月7日)

寒さが増してきた12月、いよいよ大豆の収穫です。種からまいた大豆が、こんなに大きく成長し、立派な実となりました。収穫できたのは、黒大豆が9.5kg、小糸在来が21.3kg。天候も良く、大豊作となりました。
 
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小糸在来は実が大きく、やや緑色をしています。

4.脱穀(2015年1月18日)
収穫して1ヶ月間干した大豆を脱穀しました。地元農家の方の指導により、機械での脱穀のほか、手作業での脱穀体験も行われました。
 
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土がついた根っこは取り除いて機械に入れます。

5.選別(2015年2月8日)

脱穀した大豆の選別が行われました。虫食いや傷のあるものなどを手作業で取り除いていく、かなり手間のかかる作業。大人12人が約2時間かけて、選別が完了しました。
 
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6.味噌の仕込み(2015年3月15日)

いよいよ、選別した大豆で味噌の仕込みを行います。材料は、参加者一人あたり、収穫した大豆1kgと、塩420g、麹1kg。混ぜ込みからつぶす作業、容器詰めまで全て手作業で行われ、まさに参加者それぞれの“手前味噌”をつくり上げました。
 
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まずは、塩と麹をよく混ぜます。

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大豆は2時間茹でた後、つぶしていきます。

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塩、麹、大豆を混ぜ合わせます。

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空気を入れないようにするために大豆団子をつくり、たたきつけるようにして容器に入れていきます。

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カビを防ぐため、容器の縁部分をへこませ、塩を入れます。

これで、味噌の仕込みが終了です。今回仕込んだ味噌は半年〜1年後に食べられるようになるとのこと。どんな味に仕上がっているのか、楽しみですね。参加者のみなさんにとっても、貴重な機会となったようです。

参加者・馬場さん これから味噌ができあがってくるのが楽しみです。親子で作業しながら味噌づくりを体験的に学べて面白かったです。

大豆の栽培から仕込みまで、約7ヶ月。参加者のみなさんは、身近な食材である味噌ができるまでには、大豆の栽培や選別、仕込みなど多くの手間と時間がかかっていることを実感した様子です。

また、現地の農家さんから直接指導を受けて作業したり、交流しながら食事をすることで、より農業を身近なものとして考えるきっかけにもなったようです。
 
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ふだん口にしている食べ物がどうやって育ち、どのような工程を経て私たちの食卓へやってくるのかを体験しながら学ぶことができる7ヶ月間。

今年度はさらに面積を広げて8月にスタートしていますが、播種機を使っての種播きにしたことで、発芽率があがったそうです。10月にはオープンイベント「発酵まんぷくフェス」も開催されました。

「発酵まんぷくフェス」は、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、五味醤油6代目の五味仁さんを迎えたトークライブ、寺田本家の酒かすや味噌の食べ比べなど、「発酵」を学び体験できるイベントとなり、大盛況で幕を閉じたとのこと。味噌づくり参加者のみならず、多くの方が「発酵」に触れる機会となったようです。
 
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「耕作放棄地」という日本の農地が直面している課題に対して、味噌づくりという身近な食をテーマとしたワークショップを通じて、体感しながら個人の意識の変化を促していく「日本一手間のかかる味噌づくり」。社会課題を、入りやすい切り口から知ることのできるこのような取組みのさらなる広がりに期待したいですね。