「大阪ガスの仕事そのものがソーシャルデザインだ!」 関西のマイプロジェクトが一堂に会した「ソーシャルデザインフォーラム2015」レポート

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(撮影:楢侑子)

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

2013年春にスタートした、大阪ガスとgreenz.jpのパートナー企画「マイプロSHOWCASE関西編(以下、マイプロ関西)」。「関西をもっと元気に!」をテーマに、これまで関西を拠点に活躍する60以上のソーシャルデザインの担い手を記事にしてきました。

今年は、大阪ガス社内に「ソーシャルデザイン室」が誕生したことでさらにスケールアップ! 関西発のマイプロジェクトの紹介だけでなく、さまざまな連載企画を進めているところです。

そんな中、9月初旬に開催されたのが、大阪ガスグループの従業員に「ソーシャルデザイン」への認識を深めることを目的とした「ソーシャルデザインフォーラム2015(以下、SDフォーラム)」。そこでは、「大阪ガスの仕事そのものがソーシャルデザイン」という、意欲的な”ソーシャルデザイン宣言”もありました。

そこで今回は、2015年版マイプロ関西のキックオフ記事として、SDフォーラム当日の様子や、大阪ガスのソーシャルデザインへの取り組みをご紹介したいと思います。
 
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会場では、大阪ガスが支援するソーシャルデザイン活動の団体の紹介も。(撮影:楢侑子)

「“小さな灯”運動」から始まった、大阪ガスのソーシャルデザイン

SDフォーラムは、大阪ガス社員の山本茂さんによる、社会貢献事例の発表からスタートしました。

山本さんは、地域資源を守る活動を中心に、温暖化防止活動や農作物の栽培のお手伝い、自然素材を活用した子ども向けの木工教室など、年間60回もの地域貢献活動を開催。そのことが評価され、社長表彰も受賞しています。
 
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主に、地域資源を守る活動をしているという山本さん。里山に出るときは、手ぬぐい+名札+タオルが基本スタイルなのだとか。(撮影:楢侑子)

山本さん もともと定年後の生きがいや、やりがいを見つけたかいという思いがありました。そして、労働組合で活動中、ボランティアへ参加したことをきっかけに、もっと地域で活動したい、社会貢献で地域を活性化したいと考えるようになったんです。

活動に参加していると、仲間も増えて前向きな気持ちになれるのが嬉しいですね。

また、大阪ガスには、地域貢献活動を支援する制度があるのですが、それを利用して資金援助をしていただいたおかげで、イベントの内容がより充実したものになり、とても助けられています。

続いては、まちづくりや社会貢献活動を統括する近畿圏部長の池永寛明さんが登壇。大阪ガスの歴史と地域への取り組みを振り返りながら、大阪ガスにとっての「ソーシャルデザイン」について、お話がありました。
 
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近畿圏部長の池永寛明さん(撮影:楢侑子)

大阪ガスが創業したのは1871年。当時最先端の建築だった本社社屋は、大阪大空襲のなかを焼け残ったのだそう。

また、1995年に阪神・淡路大震災が発生したときには72.5万戸の復旧活動に従事。2011年の東日本大震災でも、他エリアのガス会社と共同して復旧活動に取り組んできました。
 
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自然災害に遭った被災地復興支援のボランティア活動も行っている。写真は、2014年に発生した豪雨で、土砂災害に見舞われた兵庫県丹波市での泥出し作業の様子。

こうして創業以来、さまざまな社会的課題に取り組んできた大阪ガスですが、いま池永さんが着目しているのが、これからの日本が直面する超高齢化社会です。

人口構造の変化が目の前に迫るとともに、空き家の急増など、これまで経験したことのない地域の問題が浮上していきます。それらの問題を未然に防ぎ、さらにビジネスとしても新しい価値を生み出していくために、大阪ガスとして「ソーシャルデザイン」という手法に注目しているのです。

ちなみに、大阪ガスによるソーシャルデザインの原点といえるのが、1981年にスタートした「“小さな灯”運動」です。「一人ひとりが身近なことに関心を持ち、地域社会の抱える課題解決に積極的に取り組もう」と、社員の自主的な活動を応援してきました。
 
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1981年より展開している、大阪ガスの企業ボランティア「“小さな灯”運動」

特にユニークなのが、地域を元気にする活動に対して、数万円の資金を援助する「コミュニティギフト」という仕組み。スポーツクラブでのバットの購入や小児がんのこどもと家族が一緒に暮らし治療ができる環境支援など、社員なら誰でも申請できるこの取り組みに、今年は昨年の5倍にあたる161件の応募があったそう。

「今年、ソーシャルデザイン室として舵を切ったことで、社員に意識が広がってきている」と、手応えを感じている池永さん。講演の締めくくりは、東日本大震災から2年半後、観光バスで石巻を訪ねたときのエピソードでした。

池永さん 石巻をご案内いただいているとき、地元のバスガイドさんが、突然泣き出され、こんなことを仰っていただきました。
 
「大阪ガスさんをご案内することになって、決して泣くまいと思っていましたが、ごめんなさい。やはり、あの日を思い出してしまいました。

避難所生活をしていたとき、自宅のガスの開栓に来ていただいたのが大阪ガスさんでした。『今日からお風呂に入れますよ』という社員さんのとびきりの笑顔に勇気をいただきました。本当にありがとうございました。」
 
このように、私たちにできることで社会の課題を解決しつつ、新たな価値を創造し、「世界でいちばん住みたい」と思うまちづくりに貢献していくこと。それこそ企業にとっての「ソーシャルデザイン」であり、いわば大阪ガスの仕事そのものなのです。

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路上生活者の自立支援シェアサイクルサービス「HUBchari」のポートとして、大阪ガス本社西側の駐輪場の一部を無償貸与している

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オリンピックにも出場した陸上選手・朝原宣治さんも大阪ガス社員。「NOBY T&F CLUB」を主宰、スポーツを通じたまちづくりに貢献している(撮影:楢侑子)

手芸で若者×おばあちゃんのコミュニティをつくる「patch-work」

池永さんによる「ソーシャルデザイン宣言!」を受けてのSDフォーラム後半は、greenz.jp編集長の兼松佳宏がモデレーターとして登場。「マイプロ関西」で取材をしている4組の団体の活動紹介が行われました。
 
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モデレーターを務めたYOSH編集長(撮影:楢侑子)

ひとりめは、パッチワークなどの手芸を通して、高齢者と若者が自然につながるきっかけづくりを行う「patch-work(パッチワーク)」の村上史博さん。活動の場では、趣味だけではなく家庭の相談に話がおよんだり、笑い話に変えたりして交流が生まれているそう。
  
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村上史博さん(撮影:楢侑子)

村上さん 自分ごとになったきっかけは、父が亡くなってひとり暮らしをする母の姿と、長崎に住んでいたおばあちゃんからもらった手づくりの小物でした。

もらってうれしいけど、デザイン的に使えない…どうにかならないかと。「だったら僕たちがデザインすればいい! 」と思ったんです。

村上さんたち「patch-work」は今後、単身高齢者の多い関西でチャリティショップをつくりたいという目標をもっています。服を寄付してもらい販売するショップだけでなく、傷ついたり、汚れているものをアップサイクルするための工房やコミュニティスペースを併設し、地域に根ざしたお店を展開していく計画です。

村上さん 単身高齢者の女性の半分が貧困層と言われているんです。だから、彼女たちが働いて、学んで、集う場をつくりたい。ぜひ、場所の提供や情報にご協力ください。

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会場に展示された「patch-work」の作品。思わず手にとってしまう、かわいい商品が盛りだくさん(撮影:楢侑子)

スポーツで地域の人とまちのつながりをつくる「FC岸和田」

続いては、「FC岸和田」を運営する河内賢一さん。河内さんは、小学校の教頭先生をしながら地域住民主導の総合スポーツクラブを運営しています。

そこでは、少年からシニアまで参加するサッカー教室やダンス、フラダンス、グランドゴルフなど、多種目のスポーツが行われています。
 
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(撮影:楢侑子)

河内さんがこうした活動を始めた背景には、長く日本のスポーツを支えてきた部活と企業スポーツの衰退という現実がありました。

河内さん 少子化とともに、教師の高齢化も進み指導力が低下してしまい、部活動の数が大幅に減少しています。

実際に、私が転勤した地域でも中学校のサッカー部が廃部になってしまって。「この地域で中学生がサッカーを続けるためにはどうすればいいだろう」と考え、ヨーロッパのような総合型スポーツクラブを立ち上げようと思ったのです。

そして、地域に開けたクラブを目指した結果、2002年には60名しかいなかった会員数は、10年後には500名にまでに増えたといいます。

河内さん 初めはわからないことばかりでしたが、わからないなりにチャレンジを続けた結果、自身の幅も広がったように思います。

地域の方たちに少しでもいい環境でスポーツをしてもらって、誰もがスポーツを楽しめる。そして、100年続くクラブにしたいですね。

箱の浦のことは箱の浦で解決!「箱の浦自治会まちづくり協議会」

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(撮影:楢侑子)

次に登壇したのは、「箱の浦自治会まちづくり協議会」の岡保正さん。「箱の浦のことは箱の浦で解決!」をテーマにかかげ、自分たちの手で地域の高齢化という問題を解決するための活動を行っています。

箱の浦は、大阪府の最南端・阪南市にあり、高齢化率は37%。最寄り駅までは2キロも以上もあり交通の便が悪く、買い物をする場所すらも近所にはない…。課題は山積みでした。

まずは高齢者が気軽に集まれる場所をつくりたいという思いから、2012年に「おしゃべりサロン」をオープン。現在は週3日開催し、1日に40人もの人が訪れて賑わっています。

ほかにも「行政にばかり頼っていられない」と、“買い物難民”解消のため、「箱の浦・朝市」や生協の移動販売車をスタートしたり、さらに高齢者の困りごと解決のために「お助け隊」の立ち上げ、駅までの送迎車を自分たちで走らせるなど、地域の問題解決に向けて主体的に活動しています。

岡さん 自分たちだけの力で運営をしていくことは簡単なことではありません。しかし、やらなくてはならないことはまだまだあるんです。

阪南市は、認知症の予防なども他市に比べるとまだ遅れています。けれど、箱の浦の取り組みは、行政をも牽引していくような勢いがあります。これからも、高齢者に限らず、子どもたちが活躍できる場づくりなどにも挑戦していきたいと思っています。

目指せ!ブロードウェイ シニア劇団「Stick Theater」

トリを務めたのは、シニア劇団「Stick Theater(スティックシアター)」共同代表の倉田操さん。元気で活発なシニアライフを送ってほしいと、「一都市一シニア劇団」を目標に演技指導を行っています。

倉田さんがシニア劇団のサポートを始めたきっかけは、大阪のシニア劇団「すずしろ」から演技指導の依頼を受けたことでした。「めざせ!ブロードウェイ公演」という大きな目標を掲げ、やがて成功させたことでドキュメンタリー映画にもなりました。
 
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(撮影:楢侑子)

倉田さん 実を言うと、しぶしぶ指導を始めたんです。当時は、東京で役者として活躍したいという夢を持っていましたから。でも、シニア劇団の方たちの演技には、若い人がもっていない人生経験がにじみ出ていて感動したんですね。経験豊富な高齢者の知識は、社会の大きな財産なのです。

こうして3年間、東京から大阪に通いシニア劇団の活動をしていたことが、いつの間にか元気の源になっていたといいます。

倉田さん もっと多くの方に劇団に参加していただきたいと思っていますが、地域によっては月謝が高いところも多くて。行政の協力を得るなど工夫をして、年金生活者の方たちも楽しめる活動の場を増やしていきたいですね。

大阪ガスの池永さんと山本さん、そしてマイプロジェクトをお持ちのみなさんの発表、いかがでしたか? どのお話にも共通したのは、身近なふとした疑問がきっかけとなって、いつのまにか背中を押され、活動が広がっていくという自然な”ソーシャルデザインのあり方”だったのかもしれません。

大阪ガスとgreenz.jpでは、今後もさまざまな活動を伝え、つなげることで、関西ならではの新たなソーシャルデザインのうねりを生み出していきたいと思います。2015年版の「マイプロ関西」に、どうぞご期待ください!
(Text:山森彩)