古民家(co-minka)を拠点に卒業生とのコラボもスタート! 今年もやります「河和田アートキャンプ2015」(第四回)

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「宙守(そらもり)」/美術作家:とだまきこ。2005年アートキャンプ参加者」 写真:片木孝治

2014年に10周年をむかえた「河和田アートキャンプ」。今年も日本各地から学生たちが河和田へ集まってきました。現在9月の一般公開にむけてのキャンプインがおこなわれています。

昨年はグッドデザイン賞を受賞するなど、いっきに地域デザインの分野でも注目される芸術祭となりました。10年の節目を超えて、いったいどんなフェーズへとすすむのでしょうか。

greenz.jpでは、これまで3回(第一回第二回第三回)にわたって紹介してきましたが、連載最終の今回は2015年からはじまる「河和田アートキャンプ」のあらたな10年についてプロデューサーの応用芸術研究所所長の片木孝治さんにお話をうかがいました。
 
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「河和田アートキャンプ」プロデューサーの片木孝治さん

古民家をリノベーションした「co-minka」

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「河和田アートキャンプ」の拠点「co-minka」のギャラリースペースでの茶会。天井高1400の奥行き3m、幅が4m。家の外と屋内をつなぐ、六畳間の不思議な空間。 写真:片木孝治

今年も8月7日〜9月20日まで、学生たちの合宿生活がはじまりました。120名が参加し、そのうち30名〜40名が河和田の町のいたるところでアート制作を開始しました。

今年も「モノ」「ヒト」「コト」「マチ」の4つのカテゴリーで、学生たちは河和田のひとたちと交流しながら、さまざまなアートプロジェクトをすすめていきます。

そんな2015年の拠点となるのが、6月にオープンした「co-minka」です。

片木さんは卒業生たちが再びつながる拠点として、学生たちの合宿所として使っていた古民家を購入し、「co-minka」と名付けました。築120年の古民家を、モダンなアート空間に。開放的な土間と茶室にもなるギャラリーが特徴です。

ここでは建築やアートを学ぶ学生の手で、古民家そのものをアート作品でリノベーションしていく「おいえあーとプロジェクト」を立ち上げました。

もともと日本建築の欄間の彫刻、ふすま絵などに日本のアートの元型があるんです。古民家で使う家具や食器をすべてアート作品として制作していきます。

障子の和紙を漉くのも学生、プロダクトの学生がランプシェードをつくったり、トイレのサインのデザインを考える。お風呂のタイル貼りも職人にまかせず、自分たちで作品づくりとしておこなう。

大工さんでしかできないところは大工さんにやってもらうけど、空間作品としてあらゆる表現していくのがリノベーション。

いわば「アートでセルフビルドなシェアハウス」といったところでしょうか。

企画展示と常設展示があるんですが、ぜんぶシリアルナンバーをつくりデータ化し、作家や作品のデータベースをつくります。たとえば壁画やふすま絵、床の間の違い棚などが常設作品として展示されます。欄間の彫刻は木版画の原板になってそこでも作品がつくられていきます。

家全体がアート作品の展示スペースとなって、河和田に関わる作家や職人さんのポートフォリオとして機能していく。それが、新たな交流や事業化するための仕組みになると、片木さんは言います。
 
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「河和田アートキャンプ」の拠点となっているコラボ古民家プロジェクト「co-minka」2015年6月にオープンした。写真:片木孝治

片木さんの専門は「建築」。今回のリノベーションにもいろんな工夫がなされています。

今回のリノベーションには3つのポイントがあります。

まずこの場所にはいろんなひとにどんどん入ってきてもらいたいと考えました。しかし日本の文化では靴を脱いで家にあがるのはひとつのハードルです。

そこで考えたのは大きな「土間」。土足のままなかに入る昔の古民家スタイルが、現代のセミパブリック空間を構成できていたんだなあと思い、それをあらためてリノベーションの中に復活させて、再表現しました。

そして入り口の近くには「外に開く」というコンセプトで、大きなギャラリーをつくりました。ほぼ六畳間の空間。職人さんの展示スペースとしてのショーウインドー的な場でもあるけど、そこにすわると茶室になったり、寄席ができたりする空間。

そして3つめは「縁側」です。神社が横にあるんですが、神社にむかう面に路地をつくってウッドデッキをおいてそこを「縁側」にします。

3つのポイントのすべてが地域のひととの交流を促すクリエイティブな仕掛けとなっています。

このスペースは学生たちの宿泊所以外にも、シェアオフィス、コワーキングスペースとしても使えるようにしたいと考えています。また海内外のバックパッカーの拠点にすることも検討中です。

ここを拠点に脱領域の分野で地場の産業や風土を生かした関わって行ける基盤づくりをしたいと考えているそうです。
 
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「co-minka」を支える柱が作品化している。「宙守(そらもり)」 写真:片木孝治

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写真:片木孝治

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古民家再生建築家の三木佑美さん。2005年の「河和田アートキャンプ」参加者。片木さんといっしょに「茶+事」プロジェクトをすすめている。(お茶会+仕事=茶事)お茶会を通して、「ものづくり」の新しい制作プロセスを模索する場づくり) 写真:片木孝治

次の10年へ向けて、「10+1」

さらに今年は、次の10年に向けてプロジェクトも起動中とのこと。

10年を区切りとして新しい10年がはじまったと考えているので、今年のコンセプトは、「10+1」という表現にしました。

10年もたつと「河和田アートキャンプ」を卒業していったOB、OGもたくさんいます。大学時代の夏を「河和田アートキャンプ」ですごした学生たちが、卒業して都市部に就職して働いて、すでに社会でスキルをつけている。

ライターやっているひと、カメラマンやってるひと、ウェブを制作しているひと、雑貨屋やっているひと、アーティストとして作家活動しているひと。

そういう卒業生がふたたび河和田につながり、プロの目線でアートキャンプをみてもらえるような、あらたなかかわり方をしてもらおうと思っています。

中には、「河和田アートキャンプ」の卒業生のなかには、河和田に移住し、鯖江に就職をきめた若者たちもいるそう。

例えば、学年の異なる元アートキャンプメンバー、7人で立ち上げたものづくり+デザインユニット「TSUGI(ツギ)」は、「河和田アートキャンプ」をきっかけに河和田の人々や自然と出会い、そこで起業を決意した若者たち。

福井県鯖江市は眼鏡をはじめ、漆器・繊維・和紙などの地場産業が集積し、手仕事のものづくりが息づく町です。TSUGI(ツギ)は今年、晴れて合同会社ツギをたちあげました。「河和田アートキャンプ」卒業生の中からうまれた法人のひとつです。
 

「河和田アートキャンプ」の卒業生、TSUGIが福井新聞社「まちづくり企画班」と制作した「かわだくらしの晩餐会」の動画。河和田の職人たちがつくる越前漆器の器と木彫りのスプーンを使って地域伝統の食をリデザイン。TSUGIと「食工房野の花」代表の佐々木京美さんとによる食空間プロデュース。

新しい動きやプロジェクトが目白押しの2015年の「河和田アートキャンプ」ですが、9月19日、20日には、誰もが参加できる発表会が開催されます。そこでは1ヶ月半の間、河和田の古民家で共同生活をした学生たちのプロジェクトが披露される予定です。

この日、この地域では河和田のお祭りも同時におこなわれています。ふだんは一見さんおことわりの越前漆器の工房のなかを見学できたり、そば打ちの名人が蕎麦を提供したり、ご夫人方が郷土料理をふるまったり、街全体が開放されています。

学生がおこなうアートイベントという枠を超えて、かずかずのハイブリッドな進化をとげ、ひとつの生態系を生み出している「河和田アートキャンプ」。

会期中は制作中の学生と作品について語ったり、アートキャンプを受け入れた地元のひとたちと交流する機会も設定する予定だそう。詳しくは「河和田アートキャンプ」のウェブサイトなどで最新情報を確認ください。

今期の参加学生の募集はすでに口コミでいっぱいになっているそうですが、どうしても参加したい学生は事務局に問い合わせてみるとよいかも。

河和田に行ってみよう!

というわけで、4回にわたった「河和田アートキャンプ」の連載いかがだったでしょうか?

アートキャンプが生まれるきっかけとなった福井豪雨についての第一回、2008年から2013年までの歩みについての第二回、2014年の様子についての第三回、そして2015年の今回。

「まだみてない!」という方はぜひ、過去記事を振り返ってみてください。そして、ぜひいちど、河和田をおとずれてみませんか? アートが地域にできること。きっといろんなヒントが見つかるはずです。

– INFORMATION –

 
「河和田アートキャンプ」参加希望があれば、今からでもgreenz.jpの読者の学生に限り、参加の相談に応じます!
応用芸術研究所
http://aai-b.jp

「河和田アートキャンプ」2015発表会
9月19日、20日 福井県鯖江市河和田町内 にて
co-minka」〒916-1222 福井県鯖江市河和田町15-4
http://www.aai-b.jp/ac/

(写真の表記のないものは「河和田アートキャンプ」のBlogより転載)