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まちから自家用車が消えたらどうなる!? 自動車のないまちづくりを実験する、1ヶ月間のフェスティバル「EcoMobility Festival」が可視化したこと

2015年8月26日に公開した記事を再編集してお届けします!

みなさんは、自動車が走っていない街を想像できますか? 考えてみると、私たちの人生で自動車を見かけない日というのは、ほとんどありません。都会でも田舎でも、私たちは車に当たり前に乗って生活しています。

でも私たちの暮らしって、車がないと本当に成立しないものなのでしょうか? 街から車が一台もなくなったら、どんなことが起きるのでしょう? そんな問いを抱いて、実際にシミュレーションした事例を韓国で見つけました。

今回ご紹介するのは、2013年に韓国で1ヶ月にわたって開催された、「EcoMobility Festival」。なんと「カーボンフリーな未来」を実現するために、自動車がない街をつくる実験が行われたのです!

舞台となったのは、ソウルから1時間ほど離れたところにある、韓国の歴史都市スウォン市のソンドン区。「EcoMobility Festival」が行われる前のソンドン区は車があふれ、人々はどこへ行くにも車をつかっていました。そして路上駐車や、それによる渋滞や環境汚染に悩まされていたのです。

以前のスウォンの街は、無断駐車も多発。人々は、ちょっと店に買い物に寄る時に、つい車を道に停めてしまうことなども

「EcoMobility Festival」が開催された2013年9月の1ヶ月の間、スウォンの街にあった合計1500台の車は街の外に出され、その代わりに400台ものスクーターが配られました。郵便物は、電気スクーターによって運ばれ、15分ごとに運行される電気で動くシャトルバスが運行。人々の足は、そのシャトルバスや自転車になりました。

以前のスウォンの街は、無断駐車も多発。人々は、ちょっと店に買い物に寄る時に、つい車を道に停めてしまうことなども

街から車がなくなった結果、カフェやレストランは、新しく歩道にテラス席を設置し、道は人々でいっぱいに。まるで毎日が日曜日のイベントのようになり、1ヶ月の間に、合計で100万人以上の参加者があつまりました。

「絶対無理」だと言われた、車のない街を実現するまで

この「EcoMobility Festival」の仕掛け人で、「The Urban Idea」のクリエイティブ・ディレクターのKonrad Otto-Zimmerman(以下、コンラッドさん)。プログラムをスタートするまでのいきさつを、こうふりかえります。

ほとんどの人々は、最初は街から車がなくなってしまう生活というのを想像できませんでした。そして、彼らはぼくに言ったんです。「そんな生活、絶対無理だ」って。

この「EcoMobility Festival」を実現するまでに、コンラッドさんたちは、さまざまな反対意見をもつ人々と2年以上もミーティングを重ねてきたのだそう。コンラッドさんは、このプログラムがを1ヶ月という長期間実施したことには、とても大きな意味があると言います。

週末だけでも1週間だけでもなく、1ヶ月間の実験だからこそ、人々の暮らしから車をなくすという”習慣”が適合されるのです。

仮に週末や1週間だけという短期間だったら、人々はその時の予定だけをなんとか変えて、乗り切ればいいだけです。でも1ヶ月あると、人々は嫌でも生活の仕方を変えなければなりません。

だからこそ、街の人々は”本物のEcoMobility”を経験することができるのです。いまの街、実際の人々、現在という時間。それらをつかって、近所の地域そのものを舞台として、“EcoMobilityな未来”を描く劇の一部のように演出してみたのです。

「EcoMobility Festival」の開催によって、市民や行政のなかで変化が起き始めている様子。当初の計画では、1ヶ月の期間が終了したあとは、すべてを元に戻す予定でした。しかし、「EcoMobility Festival」に感銘を受けた市長のYeom Tae-Youngさんの意見により、街の歩道を広くし、新たに小さな公園をつくることが決まったのです。

コンラッドさんは、こう話します。

市長は、このまま街を元に戻してしまっては、せっかく変わり始めていた市民の生活も元通りになってしまい、これでは一向に何も変わらないと感じてくれたんだと思います。確実に変化を生み出すには、人々に「この実験はスタートにすぎない」と感じてほしかったのではないでしょうか?

「EcoMobility Festival」開催終了後も、市民を中心に「この変化がもっと長くつづくようにしたい!」という思いで、ミーティングが開かれました。

その結果、自動車のスピード制限を従来のほぼ半分にすることが決まり、車をつかわない日「car free day」が、毎月開催されるようになったそう。そしてスウォン市も、2015年までに、市民ひとりあたりのCO2を半分にするという目標を立て、積極的にとりくむ姿勢をみせています。

そして新鮮な空気、騒音の減少、そして安全で自由に自転車に乗ったり歩けるようになったことで、住民からの評判もよく、実際に、フェスティバルに参加した近隣の住民からも羨ましがる声が聞こえたそう。実際、このフェスティバルの反響は大きく、後に2015年にはヨハネスブルグで、2017年には高雄市でも開催されたのです。

「普段の生活には、変えるのはむずかしい」と思ってしまうものがたくさんあります。でも、本当にそうなのでしょうか?

疑ってみたら、実は捨てられるもの、変えられるものは、たくさんあるのかもしれません。みなさんも、この機会にほしい未来を実現するために、「自分が本当に必要なものは何か」と考えてみませんか?

[via EcoMobility World Festival, The Urban Idea,fastcoexist retrieved June 2015]

(編集: スズキコウタ)