SuMiKa 佐藤さん、ツクルバ 中村さんと「これからの暮らし」を考える。green drinks Tokyo「”住まい方”の現在地」をレポート!

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グリーンズが毎月開催している、アイデアとアイデアをつなげる飲み会「green drinks Tokyo(以下、gdTokyo)」。

5月21日に開催されたgdTokyoは「”働き方”の現在地」というテーマで開催しました。

この数年、オフィスや住宅、学校やカフェなど、人が集まるあらゆる場所のみならず、乗り物、空き部屋、工作機械、知識など、これまで考えられなかった領域にも、「シェア化」「DIY化」「コミュニティ化」の波が及んでいます。

さらに、単なる「シェア化」「DIY化」「コミュニティ化」ではなく、「DIY+コミュニティ=コミュニティビルド」「シェア+DIY=DIY型シェアオフィス」などの、多種多様な場やビジネスも誕生。

「この先、私たちの働き方や暮らし方は、どのように変わっていくのだろう?」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、5月のgdTokyoでは、「SuMiKa(スミカ)」の佐藤純一さんと「ツクルバ」の中村真広さんを迎え、greenz.jp編集長の鈴木菜央さんが「現在とこれからの住まい方」についてお話を伺いました。今回は、そのトークの中から一部を抜粋してお届けします。
 
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(左)中村さん、(中央)菜央さん、(右)佐藤さん

佐藤純一(さとう・じゅんいち)
株式会社SuMiKa 事業開発担当取締役 / 株式会社そろそろ 代表取締役

大学卒業後、大手電機メーカーの研究開発部門に従事。その後、エンジニアとしてシステム技術系ベンチャー企業の立ち上げに参加。R&D、プロダクション、品質保証、コンサルティング、パートナーサポートなど、ソリューション全般に対するマネージメントを担当。
学生時代から一貫し、多様なメンバーでの協働作業となるプロジェクトワークが大好きで、2004年にはチームワーキングをテーマとした株式会社トラストコンベクションを創業。金融業や製造業における数千人規模のプロジェクトマネージメントのリードから、インターネットでのチームワークプラットフォーム:echoの開発まで、より多くの人がチームワークの楽しさや充実感を得られるための様々なサービスを提供。
2011年、ビジョンに共感した面白法人カヤックに企業ごと合流。執行役員に就任。現在は、同社の関連企業である株式会社SuMiKa(スミカ)の立ち上げに参加。同取締役に就任。これからの生活者感覚に寄り添う、新しい家づくりに関した事業開発を進めている。またSuMiKaでの活動と並行し、アイディアとユーモアをツールに社会的な課題解決を支援する「そろそろ」を創業。共同代表をつとめる。

中村真広(なかむら・まさひろ)
株式会社ツクルバ 代表取締役・CCO / クリエイティブ・ディレクター

1984年生まれ。2009年東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、展示デザイン業界を経て、2011年8月、実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する、場の発明カンパニー「株式会社ツクルバ」を共同創業。
日本全国に展開する会員制シェアードワークプレイス「co-ba」、人が集まる機会と場所を提供する貸切型飲食店「365+」、中古住宅の流通を促進する不動産のオンラインマーケット「cowcamo」などの自社事業を展開。また、社内組織として”tsukuruba design”を設置し、オフィス・飲食・住環境などジャンルにとらわれない空間デザイン・プロデュース事業を行っている。http://tsukuruba.com

新築住宅を好む日本人

菜央 今日は「”住まい方”の現在地」というテーマでお話をしていきますが、佐藤さんも中村さんも”住まい”という分野で勢力的に活動しているので、きっと2人だからこそ見えている風景があると思うんですよね。

そういった風景をシェアして頂きながら、その先に見えているものまで含めて、今日は住まい方のこれからについて話していけたらと思います。

佐藤さん 僕らは、「好きに暮らそう」をテーマに人々が家づくりの専門家と出会うことができる「SuMiKa」というマッチングサービスを展開しています。

普通はマッチングというと、だいたい新築注文住宅が対象になることが多いんですけど、僕らは棚をつくるような100万円以下の小工事から、新築注文住宅やリノベーションまで、家づくりの専門家と出会うサービスをしています。だから、利用されるお客さまは、注文住宅はもちろん、オフィスや店舗をつくりたいという方やリノベーションしたいという方もいて、いろいろな形で利用して頂いています。
 
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佐藤さん でも一方で、多くの日本人は、新築住宅が大好きなんですよ(笑) 日本とアメリカ、イギリスやフランスの住宅取得を比較すると、日本はダントツで新築住宅が多い。こういう状況だと、中古住宅は需要が少ないから、家の資産価値がなかなか上がらないんですね。

ご存知かもしれませんが、家の建物の資産価値が0になるまでの期間は、日本では27年。しかし、アメリカは66年で、イギリスは80年と言われています。性能が27年で0になる訳ではないですが、価値は0になってしまう。これでは、中古住宅は流通しないですよね。

菜央 たしかに。

佐藤さん アメリカ・ドイツ・イギリスなどでは、住み替える度にきちんと手をいれて、暮らしながら家をつくっていく習慣があります。そうすると、中古住宅が築年数によらず”ただの古い家”ではなくなるんですよね。

でも、日本の場合は新築して手を入れることなく、そのまま古い家になり、どんどん価値が下がっていきます。この価値観をなんとかしなくちゃいけないと思うんですよ。

住宅に投資した分、きちんと住宅資産になり、それが豊かな住宅環境につながっていく。暮らしやすいし、リセールもしやすい。そんな当たり前の状況になっていけば良いな、と思ってSuMiKaをやっています。

菜央 僕は親戚が半分イギリスにいるんですけど、みんなDIYが嫌いなんですよね(笑) みんな嫌々やってる。つまり嫌々やるくらい、みんなDIYに取り組んでいるということですよね。

彼らには「一生懸命家に手をいれないと、手放すときに高く売れない」という意識があって、でもプロに頼むとかなりお金かかっちゃう。だから彼らにとって、DIYはとても大事なようです。
 
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佐藤さん 日本では「新築した後に手を入れなくて済む」というのが、一つの住宅の性能として評価されています。日本では”一生に一度の家づくり”と言われてるんですね。

家に暮らしが縛られるという感覚があるかどうかはわからないんですが、基本的に家を買ってしまったらそこを離れられないし、収入を失うこともできないし、家を持っていると重荷と感じるタイミングが誰しもある。「好きに暮らす」から離れていってしまうわけです。

だから、”一生に一度の家づくり”から、”半年に一度の家づくり”にシフトしていければ良いと思うのです。半年から一年に一度くらい、何らか暮らしの変化がありますよね。親の介護や子供の成長に応じて、暮らしに寄り添いながら家に手を入れて行く。その楽しさを伝えていければと思っています。
 
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中古住宅のならではの良さって?

中村さん 僕らは「カウカモ」という、中古物件の住まいを集めたオンラインサービスを展開していて、中古の住まいを引き継ぐ、つまりは住み継いでいく文化を日本につくりたいと思ってます。

今年の1月に立ち上げたのですが、一番始めは”リノベ再販”といわれるような、中古物件をリノベーションをして、もう一度再販している物件をメインで扱ってメディアをつくってます。

佐藤さんも話されていましたが、日本って本当に新築至上主義なんですよね。

中古物件の流通量が圧倒的に少ない。今後の人口減少時代においては、新築ではなくストック活用に移らなきゃと個人的に思っているし、国交省もそう言っていますが、「じゃあ本当に移るの?」というと、まだまだ疑問で啓蒙活動が必要だなと感じてます。

でも、僕はアラサー世代、つまり初めて家を買う人たちの間で、「何か新築じゃないんだよね」と考えている人が、徐々に増えていると思うんです。だから、マーケットが変わってきそうだと予感しています。

佐藤さん 中村さんは「カウカモ」で、中古住宅の流通をやってますが、まだ僕の中で中古住宅のならではの良さについてどう説明するべきか、明快な解がないんですよ。中村さんは、そこをどのように考えていますか?

中村さん 僕が思うのは、コミュニティがある程度でき上がっている所に入れることかなと思っています。

新築だとゼロから、「今日からみなさん共同生活スタートです!」って入居し始めるので、どういうコミュニティになるか全然わかんないんですけど、中古住宅の場合はある程度でき上がってて、空気がわかるじゃないですか。

佐藤さん なるほど。たしかにそういう良さありますね。僕は中古住宅に住むことの意味に、もっとみんなが気づくことができれば、選択の仕方も変わると思うんですよ。

中古住宅を選ぶことの意味が「安く買うことができる」というって解だけだとつまんないじゃないですか。だから「中古住宅を選ぶ」という価値を何かでつくらないといけないなと思っています。
 
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賃貸住宅が面白くないと、中古市場は盛り上がらない

菜央 「中古住宅を安く買って高く売る」ということを、人生で4回から5回くらい繰り返していきながら、人生のステップアップをしていく。

そうすると、DIYスキルがめちゃくちゃ身に付くし、かなりの事が自分でできるようになる。そういう市場になっていくと、町の小さな工務店やビルダーに、小さな仕事がいっぱい生まれていきます。

「どのように中古市場を盛り上げていくか」と考えたときに、いきなり全体を盛り上げることは難しいと思うので、まずどこから盛り上がっていくべきなのか。中村さんは、どこから盛り上げるべきだと思っていますか?

中村さん 僕はまず、そもそも「家を買うのか? 借りるのか?」というところが分岐点になる気がしていて、「カウカモ」をやっててこういうことをいうのもあれなんですけど、「賃貸から始めないといけないんじゃないか」とも思ってるんですよね。

菜央 ほうほう。

中村さん 賃貸物件って、基本的に貧相であることが多いじゃないですか。現状復帰の義務もあるし、手を加えることもできない。その賃貸の制約を外すことができると良いと思うんですね。

若いころに色々手を加える経験をしていれば、その後に自分で家を買ったときに手を加えるようになるはず。新築のキラキラしたマンションを買っても、なかなか手を加えないんですよね。みんな初期のオプションで終わりになっちゃう、みたいな。

菜央 たしかに。

中村さん だからこそ、「賃貸住宅が面白くないと盛り上がらないんじゃないかな」って思ってます。賃貸でエントリー層をつくっておかないと、「中古物件を買いましょう」「DIYをがんばりましょう」と言っても、そもそもその層が育ってないと思うんですよ。

菜央 そういう意味では、「暮らしを自分の手に取り戻す」という話なのかもしれないですね。
 
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菜央 去年、SuMiKaさんが開催した小屋展示場に僕も出させてもらって、小屋をみんなでつくったんです。そのときに総勢100人で作業したんだけど、失敗できるんですよね。

ペンキを塗ったり、材木を切ったり、「あ~失敗しちゃった!」とみんなで笑って、またやり直したりするんだけど(笑)僕は、他のメンバーのDIYを手伝うようになって、友達のところで失敗できるって、すごい幸せだなと思ってます(笑)

そういう友達のところへ行って手伝うとか、コミュニティ化していくことについて、佐藤さんはどう考えていますか?

佐藤さん そうですね。やっぱり、体験が重要じゃないですか。

たとえば、子どもが「ピンクの壁紙が良い」って言っても、「中学になったらきっとピンクは飽きるから白い壁紙にしなさい」って言う親御さんもいます。でもそんなの、そのときに壁紙はがして塗ったっていいわけですよね。今はいろいろな塗料も出てきているし、自分たちで塗るのも楽しい。

壁を塗ったり張り替えることって、一回やっちゃえばハードルが低くなると思うんですよね。だから「最初に一つ体験する」というポイントがあれば、だいぶ変わりますよ。

菜央 そうですね。僕が小屋をつくったときに手伝いに来てくれたみんなの様子を見ていると、現場に一つ参加すると面白すぎて次の現場にもいくんですよね。

そうしていくうちに、だんだん解像度も高まって、それで自分でなにかをつくる準備が整っていく。失敗をしたり、体験をして経験の幅が広がっていった末に、自分でリスクをとって始める順番がまわってきます。

”セルフビルド”っていうとストイックな感じがしますが、みんなで建てる”コミュニティビルド”という考え方もあるんじゃないかなって思うんですよね。そんなことが、小屋の分野ではいっぱい起きているんじゃないですか?

佐藤さん そうですね。僕は、YADOKARI小屋部の方たちがやってることってすごく面白いと思っています。

彼らがやっているコミュニティビルドは、コミュニティでつくるという意味もあるし、一緒につくることでコミュニティができるという意味もあります。一つのものづくりに関わった人たちが、その後も関係を続けていき、コミュニティができていくという課程は素晴らしいですよね。

プロの方が仲間にいるということも大事かもしれないですけど、そこにはすごく良い学びの場もあって、小屋もでき上がっていくけど、同時にコミュニティやチームができ上がっていく感がありますよね。

住み継ぐ文化をつくるには?

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参加者の方々からも、3人への質問が多く届きました

菜央 ここで、参加者の方から「住み継ぐ文化をつくるには、どれぐらいの期間がかかりそうか?」という質問が来ています。中村さんは、どう思いますか?

中村さん 難しい質問ですね(笑) ただ、文化として成立するには、どれぐらいかかるのか。確かにそれは非常に問題だなと思っていて。

ただ一つ思っているのは、今ようやく”リノベーション”という言葉が一般的に広まってきました。

この間びっくりしたのが、朝のテレビ番組で「100円均一リノベとかプチDIYをやってる主婦の方が増えてますよ」という特集を放送していて、「ついにここまできたか!」って思ったんですよね。そういう小さい所から始めて、いざ自分で中古マンションを買ったときに「リノベーションをします」という考え方が、徐々に一般化してきたと思います。

こうなると、これから3〜5年経ったときにライフスタイルの変化などで、今リノベーションをしている人たちが売り始めたら、マーケットが一気に変わると思っていて、それを見越して、僕らは今仕込んでいる感じですね。

菜央 なるほど。

中村さん 今で言うならば、自分で買ってリノベーションすることも徐々に一般的になりつつありますが、リノベーション会社が中古住宅を買って、手を加えて売るという流れが促進されつつあるし、たぶんそこがまず一番始めに花開くだろうと思っているので、そういう法人向けのサービスとして「カウカモ」を立ち上げています。

ただ、それでも多分まだ、文化の変化のちょっとした兆しだと思うんです。そこから本当にある程度のマジョリティや、あるいは一般的なオルタナティブとして認識され始めるには5年〜10年かかるんじゃないかなとは思っています。

菜央 成功体験がちょっとずつ積み上がっていくと変わっていく、ということなんですかね。

中村さん そうですね。リノベーションをした結果、家が高く売れたということも成功体験だと思うんで、正に菜央さんのおっしゃる通り、一つ一つの小さなところから始めていくと文化になるんでしょうね。
 

(対談ここまで)

 
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今回のフードは、コズミックキッチンさんにお願いしました。

成功体験を積み重ねていくことで、人々がリノベーションの楽しさと価値に気づけば、住み継ぐ文化がきっと確立される。佐藤さん、中村さん、菜央さんの話を聞いて、次の引越し先の選択肢が広がった方も多いかもしれませんね。

greenz.jpでは、「SuMiKa」と「暮らしのものさし」という連載企画を、「ツクルバ」と「場の発明」という連載企画をそれぞれ展開中です。どちらの企画も、住まい方や場づくりのさまざまな実践例を紹介しているので、ぜひこの機会に読んでみてはいかがでしょうか?

 
(編集協力:並木香菜子)
(撮影:コバヤシアイコ、スズキコウタ)