ISSUE☆おすすめの連載! リノベーションまちづくり実践記

1 year ago - 2015.07.31

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知識・経験ゼロでもOK! カリスマDIY主婦Kume Mariさんに聞く2DKを”夢のマイホーム”に変えた、現状回復できるDIYって?

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(c)Yuko Nara

お洒落なインテリア雑誌を眺めて、「いつかはこういう家に」と夢を膨らませている方はいませんか?「その”いつか”って、いつやってくるのだろう?」と遠い未来の話として考えている方も多いかもしれません。

今の住まいを、リーズナブルなお値段で、理想の城に変えられる方法があればいいのに… そんなふくらむ夢を現実に変えるのがDIY(Do it yourself)のリノベーション。自分でやれば、コストダウンも可。空き家をシェアオフィスにしたり、個人宅をがらりとリフォームしたり、とその可能性は無限大。今やそのブームは全国区で広がりつつあります。

そこで今回は、DIYで築47年の自宅を、新築同然にまでリノベーションした久米まりさんにお話を伺いました。久米さんが実践する、ワクワクDIYの様子をみなさんにもシェアしたいと思います。
 
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(c)Yuko Nara

Kume Mari(くめ・まり)
1986年大阪府出身。結婚をきっかけに築46年の共同住宅2DKのリノベーションに着手。「現状回復できるDIY」のハウツーをていねいにブログで綴り、読者数1万人を越す超人気ブログに。企業とのコラボレーションによるワークショップ、商品開発も手掛ける。著書に「Kume MariのDIYでつくる家、つくる暮らし DIY LIFE」(主婦の友社)、「Mari’sマジックで簡単!おしゃれ部屋づくり」(宝島社)、「Mari’sおうちカフェ」(宝島社)がある。

築47年の物件が新築同然。ここまで変わる!マリ☆マジック

久米さんのお住まいは築47年2DKの集合住宅と伺っていた私。

取材の日「どうぞお入りください」と、ドアが開いた瞬間、そこには想像を越えた別天地が広がっていて、とても驚きました。

「どうぞ、どうぞ」と久米さんに促され、靴を脱ごうと視線を足元に移すと、整然とヘリンボーン模様に組まれた床。土足で踏んでしまうのが忍びないくらいにきれいです。

中に入ってみると、2DKという間取りを感じさせない開放感。部屋と部屋を仕切るふすまがありません。

久米さんは寝室と子ども部屋との仕切りを取り払い、壁も天井も真っ白ですっきりと統一しています。通していただいたリビングも、古材風のクッションフロアが敷かれ、壁には漆喰まで塗られ、ここが和室だったという痕跡は1ミリも見られません。

ここは賃貸物件なので、すべて現状回復できるように工夫してDIYをしました。私は、賃貸物件の限界に挑戦しようかなと思ってるんです。

と、笑顔の久米さん。そうです、久米さんがカリスマDIY主婦たる所以は、何といっても「賃貸でもできる現状回復可能なDIY」。しかし実際に見てみると、これが元に戻るなんて、なかなか想像がつきません。少しDIYの様子を少し見てみましょう。

まず玄関を入ってすぐ目の前にある扉。実はIKEAで本棚を買い、扉をつけてリメイクしました。中はシューズボックスになっています。
 
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もとの家具は本棚なので、靴の大きさに合わせて高さが自在に調整できるのがポイントです。(c)Yuko Nara

キッチンのシンク下にもベニヤ板をはり、取手を好きな取り変えて、真っ白にペインティング。扉にモールディングをつけて、すっかり洋風に。
 
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キッチンのシンク下の収納にはベニヤ板を張りました。シンクのステンレス部分にもベニヤ板をタッカー(大きなホッチキスのようなもの)で張りつけ、さらにその上にはタイルをびっちり並べて水が染みないように目地をコーキングしました。清潔感でまぶしく輝くキッチンです。(c)Yuko Nara

しかもこのモールディング、市販のものもありますが、買うと結構高いもの。久米さんは半円柱状の工作棒を45度にカットしたものをつなぎ合わせています。
 
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しかもこのモールディング、市販のものもありますが、買うと結構高いもの。久米さんは半円柱状の工作棒を45度にカットしたものをつなぎ合わせています。

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写真には写っていないのですが、ベッドの横にも大きな棚をつくり、その裏を工具などの物置きに。さらに、その奥には押し入れがあります。(c)Yuko Nara

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リビングの照明は空き瓶の蓋をくり抜き、IKEAで買った電球を中に入れただけ。(c)Yuko Nara

と、目に見えるもののほとんど全てがDIY。とはいえ、これらすべてが現状回復できるなんて驚きですよね? 一体、久米さんはどんな工夫をしたのでしょうか?

例えば壁を白くしたい場合は、まずマスキングテープを張り、その上に強力な両面テープを張り、その上にベニヤ板を張る、といった工夫をしています。

両面テープだけでは心もとない、という場合は壁に大きく穴が空いてしまうビス(ねじ)は使わず、タッカーというホッチキスのようなもので固定することもあります。

あまり長期間両面テープをはっておくと取れなくなることもあるので、半年に一度とか、一年に一度タイル部分を剥がしたり、壁を剥がしてつくり直します。模様替えみたいな感じで、気分転換にもなります。

DIYを始めた理由

久米さんがこのお住まいに越してきたのは今から5年前。結婚して、いちばん最初に住んだ新居がこの2DKの集合住宅でした。しかも内覧ができない物件だったとか。

鍵を開けてびっくりしました。想像以上に古くて、最初はちょっと落ち込みました(笑)

キッチンカウンターとカメラインターホンのある新築にあこがれていた久米さん。

でも、落ち込んだのは、ほんのちょっとのこと。換気扇を買うためにホームセンターに立ち寄ると、今まで見たこともないようなDIYの道具がありました。そこで初めてDIYという言葉と出会った久米さん。まずは床に敷くクッションフロアを大量に購入。さっそく貼ってみると、部屋ががらりと変わりました。

「これはいけるかも」と心が前向きになり、今度は壁、さらにはキッチンカウンターなど、住みながらコツコツDIYを続けていったそう。その様子を写真に撮り、手を加える前と後を見比べながら、少しずつ変わった様子を見ているとどんどん楽しくなってきたといいます。

最初はこの家に住むのが嫌で落ち込んでいたのに、DIYを始めたら人生が2倍楽しくなったんですよ。「もしかしたら私のように賃貸に住んで、落ち込んでいる人もいるかもしれない。家はこんな感じで暮らせているよ」ということでブログを書き始めました。

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こちらはリノベーションbefore。広さわずか4.5畳の居間。(c)Kume Mari

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リノベーション後。同じ空間とは思えません。テーブルの脚部分は木箱。どこからどう見ても古材で作られた雰囲気ですが、アンティーク風に加工したのだそう。(c)Yuko Nara

読者数1万人を越す、超人気ブログ

それまでDIYはおろか、工作でさえあまりやった経験はなかった久米さん。

DIYの本を見ても、設計図を見て、ものをつくることさえできなかったそう。そこで、ブログには他の人も見ればわかるように、写真を交えて「設計よりも過程」を大切にブログを書きました。さらに、自分が試行錯誤した箇所にはとてもていねいな解説がついているのがポイントです。

私は何をするにも初めてで難しかったけど、ブログを読む人にはDIYに挫折してもらいたくない。なので、注意するポイントをていねいに伝えています。DIYは楽しいと思ってもらえたら嬉しいです。

ところで、住みながらDIYするのは容易なことばかりではありません。塗装するときは養生シートをはったり、塗料や漆喰が乾く間も、じっとがまん。しかもご主人がお仕事に行っている間、ひとりでコツコツDIYをするのですから、「そこ、ちょっと持ってて」というときも、頼れるのは自分の根性と理想の住まいへの希求力。

長くDIYを続けるコツって何なのでしょう?

あまり長時間やらないことですね。3時間くらいやって、キリのいいところで終わらせて、完成しなくてもそこまでにするとか。長時間やるとストレスもたまっちゃうので、細く長く続けようと思っています。

久米さんが綴る日々のDIYのレポートは、いつも楽しいとワクワクがあふれています。こうしたワクワクの思いが伝わりブログのコメント欄は大にぎわい。読者数が1万人を越す大人気ブログになりました。

折しも時はDIY&リノベーションブーム。このブログをきっかけにUR賃貸住宅からオファーを受け、DIY住宅をプロデュースすることになりました。

通常、賃貸住宅は退去時に現状回復義務があるため、壁紙をはったり、作り付けの家具を設置することができません。ところが、このDIY住宅はその現状回復義務を免除し、さらにはDIYの施工期間として最大月額家賃3ヶ月が無料となる画期的な取り組みでした。

とはいっても、あまりにも前例がないこの事例。いきなり壁を自由に塗っても良いと言われても躊躇してしまうもの。そこで人気ブロガーの久米さんに白羽の矢が立った、というわけです。久米さんのプロデュースをきっかけに、約20世帯がDIYをしながらこのDIY住宅に住むようになったそう。
 
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リノベーションbefore。築36年の団地。もちろんこのままでも十分住めるけれど、何か物足りない?(c)Kume Mari

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久米さんによるリノベーション後。ここでも久米さんこだわりのキッチンカウンターを作っちゃいました。(c)Kume Mari

公団などでは空き家が多く、若い人にも、もっと団地を好きになってもらいたい、というお話を伺いました。リフォームって業者に頼んだらもちろんできる。けど、主婦でもできるよという事例をつくるプロジェクトでした。

今年2月には、「らいおん建築事務所」の嶋田洋平さんが企画・運営する「リノベーションスクール」でも講師を務めました。

「リノベーションスクール」とは、いわゆる遊休不動産をリノベーションで蘇らせ、新たな価値を生み出しエリアの再生を図る、学びと実践の場。リノベーションでビジネスモデルをプランニングするコースなど様々あるなかで、久米さんは、DIYする技術を学ぶ「セルフリノベーション」コースの講師を担当。

参加者や他の講師とともに、築年数も古く冬は寒いという一軒家を「高機密高断熱、オフグリッド、DIY」の3つをテーマに、まるまるリノベーションしました。

本好きの家主のために、押し入れの襖を取り外してタイル張りの本棚に作りかえ、さらに床板も貼り直しました。そして玄関横にあった部屋の床を外して土間にし、玄関から一続きの広い空間にリノベーション。何とこれだけの作業をたったの4日間で行ったそう。
 
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お得意のステンシルでドアにワンポイントを。

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緑のタイルが部屋を引き締めて、モダンな雰囲気にしています。

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先ほどの扉は、養生を外すとこんな感じに。テーブルももちろんDIYです。

このほか、久米さんのもとには建築資材の会社などからワークショプのコラボレーションの依頼も多数。昨年の9月にはムック本『Kume MariのDIYでつくる家、つくる暮らし』を、12月には単行本『Mari’sマジックで簡単!おしゃれ部屋づくり』を続々と出版。また、昨年の12月にはインテリア部材を販売する「壁紙本舗」とコラボレーションしたMUMUペイントを発売しました。

難しいことはやらないDIY

まさに、とどまるところを知らない久米さんの活動ですが、久米さんがDIYで大事にしていることはとてもシンプルでした。

あまり難しいことをしないってことでしょうか。規模を大きくしすぎるとあまりやらなくなっちゃう。日々ちょっとずつできることをやって、たまには壁つくってみようとか。細く長くやることです。

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久米さん御用達の道具たち。左上から時計回りにジグソー、サンダー、充電式インパクトドライバー、ドリルドライバー、ネジザウルス(ドライバーに失敗した時、ネジを引き抜く道具)、タッカー。(c)Yuko Nara

どうやらキーワードは継続とほんのちょっとの応用力、のようです。久米さんは電動丸ノコや大きなベルトサンダーなどを使わなくてもできる小さなDIYがモットー。どうしてもカットが必要な場合は、最寄りのホームセンターのカットサービスを利用するそう。

最近はもっとDIYを広めるべく、DIY初心者向けにワークショップもはじめました。これまでには簡単にできるプランターボックスや、ジュートで編んだプラントハンガーなど身近にある素材を活かしたDIYを教えています。特にこれから親元を離れて暮らしを作っていく10代後半や20代の若い人にDIYのムーブメントを広げていきたいそう。

一人暮らしをするときに、良いワンルームに住むのもいいけれど、ちょっと古い家に住んでみて、そこに愛情をかけてるとどれだけ変わるのかがわかると、その後家族を持ったときに、自分たちの家族と一緒に家をつくっていけると思うんです。

久米さんは男性はもちろん、女性だってDIYの素質があるといいます。

主婦って冷蔵庫にあるものでお料理つくるじゃないですか。それと同じだと思っているんです。

たとえば、端材を集めて時計をつくっちゃった、とか。そういうノリでDIYをやって欲しいんですよ。みなさん、お料理はするけど、壁に色を塗るのは躊躇する人も多いじゃないですか。そこの壁を乗り越えて欲しいです。日本中の人がDIYをすることが日常になってほしい。

最初は部屋が古過ぎて「神田川みたいと思ったし、早くお金を貯めて引越したいと思っていた。でもこの部屋に住んだからこそDIYに出会えたし、今はずっとここに住みたい」と久米さんは言います。

もし、あなたが今の家に不満を持っていたら、その不満は、きっと幸せの種。

待っていても魔法使いはやってきません。住む家の主役はあなたです。

プロの業者がいなくても、一級建築士がいなくても、自分が手を動かせば、少しずつ目の前の景色を変えていける。家への愛も育てるもの。家への愛が育てば、自然と自分が住む地域への愛にもつながっていきます。

新築至上主義の日本には、現在、820万戸の空き家※があると言われています。DIYのリノベーションを味方につければ、まさにパラダイス。

とはいっても、いきなり家のリフォームは無理!と思ったあなた。「初心者は中古家具のリメイクがおススメですよ」と久米さんは言います。まずは手近なところから、何かひとつはじめてみませんか?

統計局ホームページより

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ヘメンディンガー綾

ヘメンディンガー綾

greenz シニアライター。地域情報誌、ファッション誌のエディターを得てフリーに。「景色を小さく変える」をモットーに、毎日の暮らしから地域のことまで、ウェブ・雑誌・ムック本などにて取材・執筆・編集に携わっています。旦那さんがセルフリノベーションした築70年の古民家で薪ストーブ生活エンジョイ中。

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リノベーションスクールは、不動産の再生を通じてまちでの新しいビジネスを生み出しエリアを再生する実践の場です。 みなさんのまちには、使われていない古い建物や空き地はありますか? 誰にも気づかれることなく、ゆっくりと朽ちていく木造家屋。 空き店舗が増え、徐々にスラム化する商業テナントビル。 空き家はまちの宝物。空き家の新しい使いかたをみんなで考えて、みんなで楽しく使って、まちを元気にする。「リノベーションスクール」を通じて、そうした事例が全国に生まれつつあります。 ⇒リノベーションまちづくり実践記」 ⇒リノベーションスクール ウェブサイトリノベーションスクール Facebookページ

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