ISSUE まちづくり

1 year ago - 2015.07.23

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みんなの「こんなお店があったらいいのに」を実現させよう! 食のスモールビジネスをつないでまちを育てる「Union Kitchen」

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みなさんは、家やオフィスの近くに「こんなお店があったらいいのに」と思うことってありませんか?

たとえば私は、「削りたてのかつお節や挽きたての小麦を量り売りしてくれる専門店があればいいのに」と思います。お味噌汁に削りたてかつお節を使ったり、手づくりのピザやパスタに挽きたて小麦粉を使ったり。そんなお店が自分のまちにあれば、興味の近い人との出会いも広がるのではと感じるんです。

だけど、そういった店を「誰かがつくってくれたら」と待っているだけでは、何も生まれません。

ワシントンD.C.に住むJonas Singer(以下、ジョナスさん)は、「住みたいまちを自分たちでつくりたい!」とポップアップ・カフェをオープン。そして、開業するときに苦労した自らの経験をきっかけに、まちでお店を開きたい人たちの起業を支援するため、”インキュベーション・キッチン”「Union Kichen」を立ち上げました。

”ビジネスを育てるインキュベーション施設”というとなんだか堅そうですが、その中心にあるのは入居者同士がフランクにコミュニケーションをし、成長し合えるコミュニティです。一体、ジョナスさんが構想する”インキュベーション・キッチン”とは、どんな施設なのでしょう?
 
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ジョナスさんと共同創業者のCullen Gilchristさん

「Union Kitchen」は、元は倉庫だった施設をリノベーションしてつくられた、広さ680㎡で2階建てのシェア・キッチン。60のフードビジネスが入居し、スペースや様々な調理機器などをシェアしています。

スペースや設備だけでなく、入居者には”チャンス”と”アクセス”を提供することが狙いだといいます。

たとえば「Union Kitchen」を使うことで、低コスト低リスクでビジネスを始めることができるので、テスト段階から成長段階までビジネスを育ててから開業することが可能になります。大きな失敗をする前に、「Union Kitchen」で小さな失敗経験を積み重ねることができれば、さらに開業のチャンスも増え、さまざまなハードルが低くなりそうです。
 
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そして、会計や法律やデザインの専門家にすぐに”アクセス”できることも、大きな魅力。「食で起業したい!」と、近いビジョンを持つ起業家仲間と意見交換しながら、ビジネスとしての価値を磨き、知識・経験・ネットワークを短期間でつくりあげることができるのです。
 
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ここで気になるのが、「Union Kitchen」を利用している人々。一体、「Union Kitchen」を拠点に、どんなフードビジネスが生まれているのでしょうか?
 
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「Union Kichen」に2年間入居してからスイーツショップ「RareSweets」をオープンさせたMeredith Tomasonさん。入居中は「Union Kitchen」を通して商品が売れるので、入居費以上に収益があり開業費用も貯まる仕組みだそう。「もし入居していなかったら、こんなに早くオープンできなかった」とか。

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ケータリングサービスの「A Taste of Heaven」。デザートは「Union Kitchen」のメンバーとパートナーを組んで提供。

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妊娠中や授乳中のママのためのスナックをつくったのは「momme meals」。きっかけは友達の妊娠だったとか。

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ガラスープ専門メーカーの「Brainy Belly」が売るのは草育ちの牛の骨からとったスープ。胃を悪くした自分のリハビリ経験をきっかけに商品化。

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オークの香りをつけたコールドブリュー(水出し)コーヒーが人気な「Confluence Coffee Co.」。創業者はビジネスとサイエンスをバックグラウンドにもつ2人。

自らのお店の開業で得た経験をオープンにしよう、という発想で「Union Kitchen」を立ち上げたジョナスさん。彼のオープンさは、「Union Kichen」の入居者コミュニティにもあらわれています。

実際、入居者はみんな「自分たちの住みたいまちをつくろう!」という共通の価値観のもと、お互いのビジネスにアドバイスをしたり、コラボレーションをすることもあるのだそう。

実は、以前ご紹介したピザ釜トラックの「Timber Pizza」も、「Union Kitchen」を拠点にしています。創業者のAndrew Danaさんは、このコミュニティについて次のように語っています。

「Timber Pizza」にとって最もよかったのは、同じような環境にあるフードビジネスのスタートアップがまわりにたくさんいたことだよ。

同じようなストレスや問題、そして成長を経験している仲間たちと一緒に働くのはとても元気づけられるんだ。コミュニティの一員だと感じられるし、自分が進もうとしている方向性についても確信できるしね。

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Timber Pizzaを経営するふたり

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試食も入居者同士で。他の入居者の商品を食材として仕入れたりするコラボも。

コミュニティをつくるのは自分たちだ

実は「Union Kitchen」を立ち上げる際、ジョナスさんはインキュベーション施設をつくろうとは思っていなかったのだそう。

「コミュニティがうまれるカフェをつくりたい」と始めたポップアップ・カフェ「Blind Dog Café」がとても評判になったので、さらに事業を拡大させるためにキッチンを探していたジョナスさん。しかし、見つかった物件が大きすぎて、一人で借りるにはハードルが高かったそう。

そこでジョナスさんは、仲間を集めて一緒に借りることにしたのです。そして「苦労したけど自分にはお店づくりができる」と感じたジョナスさんは、キッチンをシェアすることで、起業を支援していくことを考え、インキュベーション機能を充実させていきました。
 
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ジョナスさんたちが掲げた「コミュニティをつくるのは自分たちだ」というミッション。

「欲しいまちは自分たちでつくろう!」という思いで動き出し、同じ思いの仲間が集まるコミュニティをつくりあげたジョナスさん。その後。さらに「Union Kitchen」の仕組みをもオープンにし、アイルランドのダブリンに「Newmarket Kitchen」が誕生。「Union Kitchen」モデルの”インキュベーション・キッチン”は、確実に広まりつつあります。

みなさんは、どんなまちに住みたいですか? そしてもし日本にも「Union Kitchen」のような”インキュベーション・キッチン”があれば、みなさんならどんなお店をつくりますか?

[via UnionKitchen, creativemorning, modernreston, usatoday, cbsnews, npr, YouTube]

writer ライターリスト

板村成道

板村成道

greenz ライター 1次産業や自然エネルギーを中心に、産業や業種を横断して新しい流れをつくりだすヒトやプロジェクトに注目。福岡在住。

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