ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

11 months ago - 2015.07.16

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稼ぐことから自分を解放しよう! ソーヤー海さんに聞く、“ギフト経済”の次にある、“ギフトエコロジー”の世界

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例えば、参加者が食べ物を持ち寄る“ポットラック”や、自分の判断で支払う金額を決める “ドネーション”。もしくは、自分が受けた好意を見知らぬ誰かに送り、広げていく“ペイフォワード”で運営されるレストラン「カルマキッチン」。

これらは「ギフトエコノミー(ギフト経済)」のひとつであることを、知っていましたか?

資本主義経済の、次のありかたを示唆するムーブメントとして世界中で広がりつつあるギフトエコノミー(ギフト経済)。

お金というツールを使ってのモノの“交換”ではなく、見返りを求めない“ギフト”に置き換えて(ギフト経済)、さらに与え合うことを生態系にまで広めよう(ギフトエコロジー)!と提案する、共生革命家のソーヤー海さん

今回は、アメリカ・カリフォルニア州でギフトエコロジーの実践者に会い、体験する「ギフトエコロジーツアー」を企画したソーヤー海さんと鈴木栄里さんに、ギフトエコロジーの可能性について聞きました。
 
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ソーヤー海
コスタリカでのジャングル生活中にパーマカルチャーと出会い、アメリカでのパーマカルチャー研修を経て「東京アーバンパーマカルチャー」を主催。近著に「都会からはじまる 新しい生き方のデザインURBAN PERMA-CULTURE GUIDE」。

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鈴木栄里(すずき・えり)
地球一周船旅中、サティシュ・クマールの言葉「Soil, Soul, Society~土と心と社会」と出会い衝撃を受け、それを軸とした社会の実現を目指し活動を始める。現在は、サンフランシスコベイエリアを拠点とし、Edible Schoolyardの提唱者として日本でのエディブル教育モデルの普及をサポートしたり、NPO法人ミラツクの海外研究員として働きながら、日本とアメリカ西海岸での魅力的な人・モノ・ことを繋げ、アイデアの交換を促すべく様々な活動を展開中。ブログはこちら

ギブ&テイクから、ギブ&ギブへ

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東京・リトルトーキョーにて、ギフトエコロジーツアーの参加者やサポーターに向けた公開インタビューを行いました。鈴木栄里さんは、オークランドから参加!

「ギフトエコロジーツアー」は、共生革命家のソーヤー海さんと、海さんが主催した「パーマカルチャーツアー2014」に参加した鈴木栄里さんによる共同企画で生まれた、カリフォルニア州に暮らすパーマカルチャーの実践者やギフトエコロジーの実践者に会い、実体験に基づいた知識や思い、人間関係の深さを体験するツアーです。

このツアー自体が、食材提供や料理、宿泊場所の提供やガイド、資金の提供といった “ギフト”から成り立つ、ギフトエコノミーの実験的なプロジェクトであることが大きな特徴です。

まずは、このツアーで訪れる、オークランドでギフトエコロジーを実践するパンチョとサムのことを、少し説明しておきましょう。

海さん パンチョとサムは、オークランドで共生革命家として活動している、僕が一番インスピレーションを受けている人たち。ギフトエコノミー(ギフト経済)ではなく、お金を介さない、人と人との関係性による支え合いの生態系の中で生きています。

カリフォルニア州のなかでも低所得者層が多く住む街として知られているオークランド。ほとんどの家の窓には、防犯のための鉄格子があるような街に、パンチョとサムは暮らしています。

彼らは、24時間家の鍵をかけないと決めていて、午前中は玄関ドアを開けっ放しに。いろいろな人たちが家に訪れては、彼らと一緒に瞑想をし、裏庭で育てた野菜をいただいて帰ります。
 
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ガンジー的男子のパンチョと、仙人的男子のサム。

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自宅の2Fは、いつでもみんなで瞑想ができるスペースに

また、毎週金曜日にはオープンデーとして家を開放し、いつものように瞑想をしたあと、詩や短編を読んで、その感想をひとりひとりがシェアしたのち、参加者全員に食事を提供しています。

提供する食材は、毎週日曜日のファーマーズマーケットで農家さんの手伝いをしたあとにいただく、売れ残りの野菜。持ち帰ったら自分たちで食べるだけでなく地域の人に配り、さらに残ったものでオープンデーの食事をまかなっています。

ギフトエコノミー(ギフト経済)ではなく、お金を介さず、人と人との関係性による支え合いの中で生きるギフトエコロジー(与え合いの生態系)。

そこには、お金と何かの“交換”から、見返りを求めずに与え合う“ギフト”へのパラダイムシフトがあるのです。それはどんな変革なのか、ソーヤー海さんに教えてもらいましょう。

必要なものは、生まれた時からすべて与えられている

そもそも、人間が生きるために欠かせないものは、生まれた時からすべて与えられているとソーヤー海さんは言います。
 
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海さん 酸素、水、食料…。僕らが生きるために本当に欠かせないものは、すべて地球がつくっていて、フリーなんだよね。それを誰かが商品化して、販売している。

つまり、資本主義や貨幣経済といったものは、与え合いの生態系の上にちょこんとある、つい最近になって人間がつくったシステムにしか過ぎないと思っていて。本当は、与え合いの循環の中に生きているんです。

考えてみると、社会と環境の関係性を語る場合、いろいろな文脈で“社会”が土台になっていて、その社会への関係性として“環境”が語られているように思います。でも本当は、酸素や水や食料といった“環境”が土台にあるはずです。

海さん ギフトエコロジーは、そもそも与え合いの生態系の中に生きているという意識を取り戻す、意識の変革だと思うんだよね。

経済的には貧しくても、つくっているものがたくさんあれば、それを与え合っているうちに仲間もどんどん増えて、いろいろな人たちに支えられて生きている状態になる。これをソーシャルキャピタル(社会関係資本)と捉えると、ソーシャルキャピタルがどんどん豊かになっていくんです。

必要なものは全て与えられているし、自分にも与えられるものがたくさんあると信じれば、どんどん世界が広がっていく。逆に、必要なものは全てお金を払う必要があるから、たくさん稼がないといけないと信じると、貧しさの世界に生きることになるのです。

お金は“壊れた関係性”をあらわすもの

パンチョとサムとの会話の中で、心に響いた言葉があると鈴木栄里さんは加えます。
 
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鈴木さん サムが、「お金は壊れた関係性をあらわすものじゃない?」と言っていて。関係があれば、お金を介さなくても自然と手伝いたくなるし、余っていれば、分け与えたくなる。パンチョとサム自身はもちろん、彼らの周りにも、ソーシャルキャピタルの考え方がすごく根付いています。

確かにお金は、自分から離れたところにある何かしらの成果を、やや無理矢理に自分のもとへとたぐり寄せるために使う道具なのかもしれません。

鈴木さん 今回のギフトエコロジーツアーは、クラウドファンディングでの資金集めをやめて、すべてギフトでまかなうことにしました。

最初は戸惑いましたが、実際にカルマキッチンに足を運んだときに感じた、関わる人の楽しそうな空気感や、人との関係性の深さに胸を打たれるものがあって。

カルマキッチンのような豊かなコミュニティに支えられたペイフォワードを、このツアーでも実現したい。そして、この感動の波紋を広げていくのが、私にできるギフトだと思ったんです。

稼ぐことから自分自身を解放する

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ソーヤー海さんは、本当にギフトだけでツアーは遂行できるのか、という不安もあったそう。

もともとの計画では、渡航費を抜いて、レンタカー代や宿泊代、現地で案内してくれる人への謝礼、自分たちの渡航費やコーディネート代などを考えて、参加費ひとり15万円のツアーを計画していました。

クラウドファンディングをすることも考えていましたが、どうしても達成金額が気になってしまうし、応援金額ごとのお返しをしないといけない。だったら参加費をもらわずに、クラウドファンディングもせずに、すべてをギフトでまかなおう。そう考え始めたものの、本当に実現できるのか…と悩み、何度も話し合いを重ねました。

それでも“ギフトの精神”が生み出す力を信じたい、ギフトエコロジーをコンセプトとして学ぶだけではなく、みんなで体感したいと、ソーヤー海さんと鈴木栄里さんは、大きな冒険の一歩を踏み出します。

鈴木さん 時間をかけて、ようやく“ギフト”だけでツアーをしようと決めたものの、当然不安はあって。でも現地の人で、1日食事を提供します!と言ってくれる人があらわれたり、参加はできないけど日本でサポートをします! と言ってくれる人があらわれたり。パンチョとサムも、3日間の宿泊をギフトしてくれた。

自分が蒔いた種からいろんな芽が出て来て、想像していた以上のことが自然と回り始めている現実があったんだよね。ああ、ギフトだけで成り立つ世界は本当に存在しているんだなって。

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グローバル資本主義経済のシステムに疑問を持つ人は、たくさんいると思います。今やっと、他にどんな手段があるのか見えつつある。私たちはそんな時代を生きているのだと思います。

“与え合い”で成り立つ社会「ギフトエコノミー」の根本にあるのは、見返りを求めずに“与える”こと。そこが交換関係と大きく異なる部分です。

海さん “与える”ことのコツは、与えても減らないことから始める、ということです。小さな一歩から、無限の世界へと踏み込んでほしい。

それに、田舎だと成り立ちやすいと思われるかもしれませんが、都会のなかでも、僕たちは既にギフトエコノミーに参加しているんです。Wikipediaなどのオープンソースから、臓器移植まで。誰かによる誰かのためのギフトは、意外と身近にたくさんあります。

ギフトエコロジーを実践するために、いきなり現在の貨幣経済から自分を隔離する必要はありません。いろいろな選択肢がある中で、自分なりに“お金との向き合い方”が編集できるということに気づくだけで、そのあとの行動は自然と変わっていくだろうと思うのです。

みなさん自身の中にある、誰かに与えることができるギフトは何ですか?

稼ぐことから自分自身を解放して、あなたもギフトエコノミーの世界へと一歩足を踏み入れてみませんか?

後日、ギフトエコロジーツアーのレポート記事を公開予定です。また、8月1日(土)にはツアー報告会@鎌倉の開催も。こちらもお楽しみに!

ギフトエコロジーツアーについて詳しくはこちら
東京アーバンパーマカルチャーの世界をのぞいてみよう

writer ライターリスト

増村 江利子

増村 江利子

greenz シニアエディター/シニアライター 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。一児の母。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。八ヶ岳の麓の賃貸トレーラーハウスで、“小さく暮らす”をモットーに、DIY的暮らしを実践中。 facebook:http://www.facebook.com/e.masumura twitter:https://twitter.com/eriko_n

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