ISSUE まちづくり

1 year ago - 2015.07.15

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地域のポテンシャルは、中小企業が握っている! 岐阜で”人づくり”に取り組む「G-net」秋元祥治さんに聞く、地方都市ならではの可能性

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岐阜の枡メーカー「大橋量器」三代目 大橋博行さんとインターン生。大橋量器では、「G-net」が提供する長期インターンシップ「ホンキ系インターンシップ」をきっかけに入社した若いスタッフとともに新しい事業展開を進めています

ひさしぶりに帰省したら、家族の行きつけだったレストランや高校時代に初めてデートした映画館が消えていた…。残念ながら誰もが一度は経験しているのではないでしょうか。

岐阜生まれの秋元祥治さんもまた、学生時代に「ふるさとの商店街から百貨店が消える」ということを経験。そのとき、商店街のおじさんたちがまるで他人ごとのように「アーケードが古い」「駐車場が少ない」「役所が悪い」と言い合うのを聞いて、心のなかに疑問がよぎったそうです。

「なんでみんな、自分のまちのことなのに、他人のせいにするんだろう?」

消えた百貨店の前で「見えるはずのなかった空」を見上げたときの思いは、その後にはじまった秋元さんの活動の原点。そして、秋元さんが代表理事を務める「NPO法人G-net」の「手を挙げて行動する人を増やす」という、地域活性化へのアプローチのスタート地点にもなったのです。
 
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秋元祥治(あきもと・しょうじ)
1979年12月15日生まれ。 NPO法人G-net代表理事。岐阜高校、早稲田大学教育学部/政治経済学部にて学び、01年にG-netを創業。G-netでは、中小企業支援と若者をつなぐ成功事例として全国的に評価を受ける一方、中小企業支援をf-Biz・小出宗昭氏に師事し、 OKa-Bizの立ち上げを担当。受賞歴に、13年経産省「キャリア教育アワード」優秀賞、12年内閣府「ものづくり日本大賞」優秀賞、09年経産省「ソーシャルビジネス55選」選出ほか。滋賀大学客員准教授、中小企業庁よろず支援拠点事業全国本部アドバイザリーボードに14年就任ほか、公職多数。

「思いを言葉に、言葉を行動に!」からスタートした「G-net」

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「G-net」が立ち上げた若者と地域を巻き込むライブイベント「ビーンズフェスタ」。2007年にはなんと16万人を集める大規模なイベントに成長しました

「G-net」は、岐阜を拠点に「起業家精神を持つ人材育成を通じた地域活性化」に取り組むNPO法人です。「G」は、「岐阜」の「G」。今までに、経産省「チャレンジコミュニティ創成事業」に採択された「ホンキ系インターンシップ事業」などで、岐阜を中心に挑戦する若者を支え応援するまちづくりを進めてきました。

「G-net」のはじまりは2001年。早稲田大学に在学中だった秋元さんが、「思いを言葉に、言葉を行動に!」をキャッチフレーズに立ち上げた街おこし任意団体が前身でした。当初は半年限定くらいのつもりで、タレントや知識人、専門家を岐阜に呼び、トークライブイベントを定期開催していました。

当時の思いを、秋元さんはこう振り返ります。

商店街から百貨店が消えて、文句ばかり言ってる商店街のおじさんたちもカッコわるい。でも、そのおじさんたちの文句を言うだけの僕もカッコわるい。

そのとき、学生時代にアニキ分だった鈴木寛さん(当時は慶応義塾大学助教授、現在は東京大学教授・文部科学大臣補佐官)の言葉を思い出したんです。

「ウダウダ言って何もしない人より、ウダウダ言われてでも何かやる人のほうがずっとずっとカッコいい」って。

そのトークライブ企画が話題になり、2001年末には岐阜駅ビルでカウントダウンイベント「GIFT」を開催。すると、今までにない若者たちの動きに呼応して、地元の銀行支店長から「若者だけでなく、社会人を交えた異業種交流会をしませんか」とラブコールがあったのです。

秋元さんは、これを機に半年限定という枠を外し、精力的に「G-net」を展開していきます。なかでも、若者と地域を巻き込むライブイベント「ビーンズフェスタ」は大規模化。2007年には16万人を集めるまでに成長させました。

しかし、東京と岐阜を新幹線で往復しながらの学生生活、イベントでは利益どころかむしろ持ち出しが出るほど…。このままでは続けられないと思いはじめた2003年、秋元さんは「G-net」をNPO法人化。2005年3月には早稲田大学の中退を決意します。

「ここまで支えてくれた地域の人たちの期待に応えたい」という思いに背中を押されて、本格的な活動をスタートさせたのです。

地域のために行動する人をつくる

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ホンキ系インターンシップ事業のコンセプト図。企業と学生の双方にとってメリットのあるものになるように考えられています

「G-net」のミッションは「岐阜の地域活性化」。その実現のため、現在は「人づくり」のためのインターンシップ事業および、インターンシップ事業を通じた中小企業支援に力を入れています。

しかし、立ち上げから7年目までは、イベントの企画運営やフリーペーパー事業も行っていました。現在のように「人づくり」にフォーカスすることにしたのは、「どうすればまちを活性化できるのか?」「まちを変えられるのか?」と考えた末での結論でした。

いろいろやってみて気付いたのは、「岐阜に稼げてワクワクする仕事があれば、このまちに住むことを選ぶ若者が増え、地域が活性化するはず」ということでした。

だからこそ「G-net」が取り組むべきなのは、若者たちの目が届いていない地域の魅力的な企業を応援し、そこでチャレンジする若者を増やす“生態系”を育むこと。そのために、インターンシップ事業と創業支援、中小企業支援へと事業の軸を変えたのです。

現在、「G-net」が提供しているインターンシッププログラムは3種類。2週間で6社の企業を訪問して経営者や社員と直接対話する複数企業取材型インターンシップ「シゴトリップ」、長期休暇を利用し6週間で地域の課題解決に取り組む「地域恊働型インターンシップ」。

そして、3つ目が「G-net」の中核事業であり、2004年経産省「チャレンジコミュニティ創成事業」にも採択された長期実践型プログラム「ホンキ系インターンシップ」です。
 
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インターンシップフェアで学生面談のようす。多くの学生たちがインターンシップに興味を持って集まってきています

「ホンキ系インターンシップ」の特徴は、熱意ある二代目、三代目社長と一緒に、半年間に渡って新規事業に取り組むこと。受け入れ先は、新たな醤油の価値を伝えようとする醤油醸造会社や家業を継いだ果樹園など、地元に根付いた中小企業などです。

「今は成り立っているけれど、このままでは先がない」という危機感を抱き、新しい取り組みを模索する中小企業の二代目や三代目はたくさんいます。彼らのもとに、若者を送り込んで、「チャレンジしましょう」と後押しするのが僕らのインターンシップ事業です。

学生たちにとっては、一企業の社長のそばで働くというまたとない経験ができるチャンス。一方、企業側にとっては、新規事業のテストマーケティングができるというメリットがあります。

僕らが提供する価値は3つあると考えています。「新規事業に向けた社内の仮説づくり」「若者が育つ社風づくり」、そして「人が育つ会社に変わるための社内ルールづくり」です。

最初は半信半疑でも、一度経験したらみなさん「なるほど!」と納得されますよ。

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醤油メーカー・山川醸造 山川晃生社長とインターンシップ生。独自開発商品「たまごかけごはんのたれ」などのヒット商品を生み出しすパワフルな社長の挑戦を支えるのは、インターン生や長期インターンシップを機に入社した社員をはじめとした若い力です!

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大橋量器のインターンシップ生

たとえば、枡メーカーの大橋量器は「ホンキ系インターンシップ」で学生を受け入れることによって、新規事業展開を成功させた企業のひとつ。

枡といえば酒器あるいは「節分の豆入れ」が主な用途で、お世辞にも成長産業とは言えません。しかし、三代目社長の大橋博行さんは、カラフルな枡「MASS」や電力を使わない加湿器「マスト」など新たな商品開発に挑戦。

特に「MASS」はニューヨーク五番街にあるポール・スミスのショップでの販売をきっかけに、世界中の注目を浴びるまでになりました。
 
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五番街のポール・スミスのショップに展示され、ニューヨーカーを驚かせた大橋量器のカラフルな枡「MASS」

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枡をかんなで削るときの薄い木地から着想。水がしみ込んだ木で加湿する、電力を使わない加湿器「マスト」

驚きなのは、海外の展示会に出展する際の事務局や、国内の百貨店やセレクトショップのバイヤーとのやりとりも、インターン生が担当すること。

「なんでそんな大事な仕事を学生に?」と思うでしょう。それは、新規事業であれば社内にはその仕事をしたことがある人がいないからですよ。誰もがはじめての仕事なら、やる気のある若者に任せてみてもいいじゃないですか。

若者のやる気を信じて「任せてみよう」と思う経営者の思い。「任せてもらったから応えよう」と思う若者のがんばり。その歯車がかみ合えば、人が育つ組織になります。その状況をつくることが我々のサポートなんです。

ちなみに、インターン生を受け入れ始めてから現在までに、大橋量器の年間売上は約200%にまで成長を遂げているそう。インターンを機にはじめた新卒採用も成功し、今では若手社員の力が会社を動かすパワフルなエンジンになっています。

日本の未来のカギを握る「中核都市」と「中小企業」

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「G-net」の壁一面には、インターン生と受け入れ先企業の経営者との“師弟関係”を表現する写真が貼られていました。インターンでつながった縁は卒業後も続き、よき社会人の先輩として相談をしにいく元・学生も多いそう。なかには、卒業してから数年後に受け入れ先に転職する人も。

日本全国にある385万社の企業のうち99.7%は中小企業だと言われています。秋元さんは、都会の大企業で働いて安定を目指す働き方のオルタナティブとして、「若い世代に地域の中小企業で働くことを提案できれば、地域は元気になるはず」と言います。

「G-net」が選ぶインターンシップの受け入れ先企業は、伝統産業やものづくり企業など「地域に根ざしている、一見地味だけれど本当はスゴく面白い中小企業」。地域のポテンシャルを握っているのは、「成長しても大都市への本社を移さず、あくまで地域に根を張りつづける中小企業だ」と考えるからです。

だからこそ、「G-net」は受け入れ先の企業がいかに「経営的な成果を達成するか」ということも重視しています。

学生の成長を願えば願うほど、僕らは受け入れ先企業の経営的な成果を出すことに一生懸命になる必要があります。

インターン生の受け入れが会社にとって利益になると思えば、会社はもっと真剣に学生に関わってくれます。すると、学生はもっとホンキになるし成長します。この循環を生み出したいんです。

挑戦する経営者と、挑戦する若者たちが出会うインターンシップが生み出すのは「挑戦縁」ともいえる関係性。ここからチャレンジを応援しあう価値観を共有しお互いを支え合えるコミュニティ、あるいはソーシャル・キャピタルを育みたいですね。

こうした活動の手応えについて、秋元さんは「人口40万人の岐阜での地域活性化は、砂漠に水を撒くようなものですよ」と笑います。

しかし、一方で「地方再生のカギを握るのは岐阜のような中核都市だ」という強い信念を持ち続けてもいます。

今は、中山間地域の再生にスポットが当たっています。問題が深刻で、課題は明確。20代の若者が10人移住すれば、平均年齢が1歳下がったりしますから、結果も見えやすいですよね。

でも、日本の人口のほとんどが、大都会でも里山でも離島でもなく、岐阜のような地方都市に住んでいるはず。社会のウェイトとしても一番大きいはずの地方都市の話があまりにも抜けていますし、そこを活性化するロールモデルがまだありません。

地方都市を強くするには、産業を強くしなければいけない。地方都市が元気になれば、必ずや周辺の郡部や中山間地域の村々にも効果があるはずです。

だからこそ、僕らは岐阜でやらなければいけないんですよ。

秋元さんは「砂漠に水を撒くようなもの」だと謙遜しますが、大橋量器をはじめとしたいくつもの企業が、「G-net」のインターンシップを通じて新しい事業展開を成功させています。

また、3年前に卒業したインターン経験者の71%は、大企業の内定を断ってでも中小企業に就職しているそう(2013年卒OBOGを対象とした調査、G-net調べ)。「G-net」から蒔かれた未来の地域活性化への種は、岐阜のまちに芽吹いて葉を広げ、根を下ろしはじめているのです。

手を挙げて行動する人を増やす、そのための一歩を

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「Oka-Biz」で中小企業からの相談を受ける秋元さん。まずは経営者の思いをじっくりと聴き、経営者自身が「あたりまえ」だと思っていることのなかにある「スゴいこと」を発見。新たな事業展開や、PRの方法を考えていきます

「G-net」がスタートして12年経った2013年、秋元さんは「岡崎ビジネスサポートセンター(以下、Oka-Biz)」のセンター長に就任しました。きっかけは、秋元さんが師と仰ぐ企業支援家であり、現在は「富士市産業支援センター(以下、F-Biz)」センター長の小出宗昭さんの依頼でした。

しかし、「Oka-Biz」はあくまで中小企業の売上アップに特化した相談所。「G-net」の軸である「若者支援」からは外れてしまうのですが、他ならぬ師の声がけには応えないわけにはいきません。そこで、秋元さんは「Oka-Biz」をパートナーの高嶋さんとともに個人で受託。毎週木曜日と土曜日の二日間、岡崎に通うことにしました。

オープン当初「月間50件の相談」を目標に掲げていましたが、今ではその4倍以上の相談が舞い込み、73%という高いリピート率を達成。次々に成功事例を生み出し、あっという間にメディアの注目を浴びました。
  
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「売りを明確にすることで新規顧客を集めよう」というアイデアが形になった木村産業のチラシ。ブログの地道な更新も効果を生み、「鋼材切断」「岡崎市」で検索するとトップに表示される。

「Oka-Biz」では、相談者の話を1時間しっかりと聞いて、本人が気づいていないセールスポイントを一緒に発見。それを活かして売上アップの方法を考えていきます。

たとえば、「うちにはいいところがない」と相談にきた鋼材切断業をいとなむ社長さんは、相談開始後40分を過ぎた頃に「当日納品依頼にも対応している。他社はやっていないと思う」とぼそり。このひとことをヒントに、秋元さんは新規顧客獲得のアイデアを提案しました。

まず、「社長。それ、すごいですよ!」とめちゃくちゃ褒めました。なのに、一度も外に向けてアピールしたことがないと言うので、「売りを明確にして新規顧客を集めよう」と、「Oka-Biz」のITとデザインのアドバイザーを紹介。

「超特急サービス 鋼材切断119番」というチラシをつくり、プレスリリースを打ったんです。さらに、ブログも立ち上げて毎日更新してもらったら、複数件の受注がバン!と入ってきました。

大事なポイントは、お金が一切かかっていないこと。お金も人も足りていない小さな企業の売上アップを考えて、「知恵を使って企業の流れを変える」のが「Oka-Biz」の中小企業支援です。

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肉球好きにはたまらない!? 小野玉川堂の「肉球羽二重餅」。販売日にはあっという間に売り切れる人気商品に

ほかにも、「若いお客さんに来てほしい」という老舗和菓子店のご夫婦には、若者にターゲットを絞った商品開発とブログでの情報発信を提案。相談を経て誕生した「肉球羽二重餅」は、全国のネコ・犬好きの人々の間で話題になり、今や遠方からも問い合わせが相次いでいるそうです。

今では、相談を受けた人たちのクチコミで来所する人が全体の78%にもなりました。中小企業の人たちのやる気を引き出すうえでは、「G-net」のインターンで学生と受け入れ先とのやりとりのノウハウがそのまま活きていますね。「G-net」と「Oka-Biz」は、今の僕にとってふたつの柱です。

一方、「G-net」では、インターン事業の次のステップも考え始めています。2013年には、「採用意思のある、魅力的な中小企業」を1500社リストアップ。学生たちと一緒に取材をして「若者が選ぶ岐阜の魅力的な会社100選」を認定し、冊子とアプリを作成しました。

僕らの財産は、地域の企業を「面白い順」に知っていること、そしてその企業とのネットワークを持っていること。そういう企業の採用支援、そこで“右腕”として働きたい若者の就職支援をビジネスとしてやる。それが、これからの「G-net」が取り組む第二弾ロケットですね。

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「若者が選ぶ魅力的な会社100選」冊子。アプリも作成し、好評を得ました

「先のことはわからないけれど、やりたいことは変わらないですよ」と言い切る秋元さん。事業内容は変遷しても、掲げるキャッチコピー「挑戦の伴走者に。熱意のつなぎ手に」は15年前と同じです。

「ウダウダ言いながら何もしないこと」と「ウダウダ言われてでも何かすること」の間には、実はそれほど大きなギャップはないと思います。

たとえば、「いい商品を持っているのに経営不振で閉店しそうになっているお店」を、短期間で繁盛店に生まれ変わらせるのは容易ではありません。でも、自分が大事に思うお店に、週に1回は必ず通うことなら誰にでもできるはず。

誰かが挑戦しようとする気持ちに寄り添って、応援することだってそんなに難しくはありません。「手を挙げて行動する人を増やす」方向へ、あなたも一歩踏み出してみませんか?

「G-net」をもっと知ろう!
NPO法人G-net

writer ライターリスト

杉本 恭子

greenz シニアライター 大阪生まれ、東京経由、京都在住。関西を中心に活動するフリーライター。人の話をありのままに聴くことからテーマを深めるインタビューに取り組む。インターネット寺院「彼岸寺」にてお坊さんインタビュー「坊主めくり」連載中。

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