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2015人で乾杯しよう! 「大阪を盛り上げたい!」から始まった「OSAKA盛り上げ隊」に聞く、手作りの夏フェスとこれからのこと

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乾杯プロジェクトの風景

この記事は、「グリーンズ編集学校」の卒業生が作成した卒業作品です。編集学校は、グリーンズ的な記事の書き方を身につけたい、編集者・ライターとして次のステージに進みたいという方向けに、不定期で開催しています。

みなさんは「こんなことできたらいいのになー」なんて、仲間と、もしくは一人で、妄想したこと、ありませんか? とはいえ、悲しいかな、実現せずにその場限りで終わってしまったという人も、少なくないかもしれません。

しかし、「夏フェスしたい。だから2,000人集めて乾杯しよう」という単純な思いつきから、本当に夏フェスを実現させてしまった人たちがいます。それが、今回ご紹介する「OSAKA盛り上げ隊」です。

彼らが4年前に始めたのが「乾杯プロジェクト」という、野外ライブイベント。indigo jam unitウルフルケイスケなど、青空の下で聴くのにとっても気持ちいいアーティストが勢揃い。ライブだけでなく、フードブースやクリエイターブース、キッズスペースなどもあり、家族みんなで楽しめます。

そしてメインイベントである「乾杯!!」タイムは、観客、出演アーティスト、スタッフみんなのテンションも最高潮に! 今年も7月19日(日)に予定されていますが、素敵な夏の一日を過ごせること間違いなしのイベントです。
 
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みんなめっちゃ楽しそう!

そんなOSAKA盛り上げ隊のコアメンバーは、デザイン会社「setten design株式会社」代表の平山健宣さん。結婚式の二次会の幹事代行サービスやレンタルドレスショップ「BLANC CHOUETTE」の運営など、結婚に関するトータルプロデュース会社「株式会社BHF」の代表、廣瀬大輔さん。

そして、空間デザイン、店舗設計&家具、プロダクトデザインの「slyme designSLYME DESIGN STOREも運営)」代表の吉田龍司さんと副代表の酒井雄大さん。

そう、みなさん、経営者なのですが、プロのイベンターではありません。そんな、「夏フェス開催」に関しては素人の彼らが、なぜこんな大きなイベントを実際にやっちゃうことができたのか? 今日はその謎を紐解いてみたいと思います。
 
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左から、酒井さん、吉田さん、平山さん、廣瀬さん。インタビューも乾杯から始まりました

客席側にいるんじゃなく、自分が「わー!」と言わせたかった

もともと高校時代からの友人だった廣瀬さんと吉田さん、そして吉田さんの大学時代の後輩である酒井さんは、毎年大阪城公園で、大人数でのお花見を開催していました。

そのお花見は、どんどん参加人数が増え、200人(!)もの規模だったそうですが、たまたま共通の知人を介して参加していたのが平山さんでした。その出会いをきっかけに、いろんなことがスタートします。

平山さん 俺が一括でみんなにメール送ってん。200人集められるんやったら、夏フェスやりたいねんって。

それは、もともと自分が客席側におるのが嫌で、『わー!』って言わせる側にいきたかったから。だから、みんなに「200人集まるなら、なんかおもしろいことできそうじゃない?」って、振っかけてん。

お花見で200人集められるなら、人数を10倍にして、2000人集めよう。そして2012年だったから、2012人で乾杯しよう。と、トントン拍子に話は進みます。

廣瀬さん 名前どうする?ってなって。こんなんわかりやすさやろ、と。

平山さん 「サマーチアーズ」略して「サマチア」とか考えとった(笑)めっちゃ言いにくい(笑)

吉田さん サマーチアーズじゃなくてよかったな(笑)

「OSAKA盛り上げ隊」という名前も、「大阪を盛り上げたい!!」からという至極シンプルな理由。

ただ、いきなり大それたことを言ってもできることは限られてるからと、最初に据えたのは「自分の近くの人たちと楽しく盛り上がろう」というコンセプトでした。

けちょんけちょんやった

そして動き出した「2012人で乾杯プロジェクト」ですが、いきなり大きな壁にぶつかりました。

廣瀬さん 今思えば、ヨコシマで。「協賛とれたらええんちゃうん」っていう甘い考え。

協賛になってもらうべく、様々なところにアタックしますが、大手ビール会社も、大阪で一番有名な某ラジオ局も、まったく興味を持ってくれなかったのだそう。

アーティストのブッキングも、今では「出させてほしい」とアーティスト側から打診されることもあるそうですが、初年度は出演交渉もまったく手応えがありませんでした。

平山さん 最初にどこから始めたっていうか、どこからでもなんでもやったけど、どれも成立せえへんかった。あんときはめちゃへこんだな。

廣瀬さん 全部ぶちのめされて。ビール、音楽、広報系、行くとこ行くとこ、ことごとくダメ。ほんでもう「いらんわ!」ってなってんな。協賛を取りに行くの、もうやめよって。

平山さん もう全部(協賛は)いらんって。それはいまも基本、変わらへんけど。

なんと、協賛集めをやめてしまったOSAKA盛り上げ隊。今もその収益は、入場者のチケット売り上げのみで支えられているんです。

平山さん 当初、協賛ってもっと簡単に取れると思ってたけど、あ、取られへんねやって。でも、協賛を取らへんっていう選択肢は、結構レアで、それが実はこのプロジェクトの強みに変わっていってるんやっていうのは、予想だにしてなかったこと。

自分たちがそうせざるを得なくて、イベンターもメディアも使わずに続けてきたことが、いわゆる業界の人たちからは「どうやってやってるの?」って、不思議に見えてるみたい。

酒井さん まあ、金銭的な利益がないから。稼げたらいいけど、乾杯プロジェクトで稼いでどうにかせな、っていうのはない。それが目的ではないからできてることやと、思いますけどね。

でも時間も体力も使っていることは事実やから、自分の中でどんな利益を感じるかというのは重要なこと。

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ポスターとフライヤー。マスコットキャラクターのカモリンが目印です

そんなわけで、チケットを全力で売ることになったOSAKA盛り上げ隊。最初は完全に、すべて手売りでした。しかも、1年目は500円でワンドリンク付きという破格の値段設定!

吉田さん チケットを1人1000枚ずつ持って帰ってきて、枕元に置いて寝て、朝起きてもそのまんまで、全然減ってないねん(笑)血の気引く毎日(笑)

廣瀬さん もう不安で不安で仕方なかった。

平山さん チケット500円っていうのも、とにかく2000人集めたかったからだけで、トントンになるかもわからずやってた。

そんな必死の頑張りもあって、初回にして動員数は1000人超。結果的に収益も赤字にならず、素人が協賛なしで開催するイベントとしては、大成功と言えるものになりました。

そこで手応えをつかんだOSAKA盛り上げ隊ですが、これが「地獄の2年目へと繋がっていくんやけど(廣瀬さん)」。

2年目の2013年には、初回では見向きもしてくれなかったメディアからの取材依頼もあって、自分たちの動員力、情報拡散力に自信を持った彼ら。吉田さん曰く「心のあぐらをかいちゃってん」。結果、初回を上回る動員は叶いませんでした。

このときは、メンバー全員かなり辛かったそうですが、広報や収支など、イベンターであれば当然あるであろう知識を、彼らは自らの苦い経験を通じて、吸収していきます。その結果、昨年は1400人超という過去最高の動員数を達成しました!
 
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子供たちも楽しめるんです

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ステージ横ではライブペインティングも!絵描きのCABさん

なんのためにやってるのか

「2000人で乾杯してみたい」という純粋な初期衝動から始まった乾杯プロジェクトも、過去3回を経て、メンバーにはそれぞれいろんな想いがよぎっているようです。

例えば、利益を出すことの大切さ。

平山さん 収益がトントンで「すげーな」っていうのじゃあかんのちゃうかって。本来、そんなギャラでは出てもらえないミュージシャンの人たちに出てもらってる。それは、利益が出たら、ギャラを上乗せしますっていう約束をしてるから。

僕らだけ儲けたら、ミュージシャンの人たちには悪い印象しかないから、そこはきちんとお返ししないと、来年につながらへんから。初期衝動を守るためには、結局それこそ先立つものがないと、それを追っかけられへんって、3年どっぷりやって気付いた。

ほかにも、それぞれが、独立した仕事人として超多忙なメンバーにとっては「本業との両立」「家族との時間」というのも大きな課題。

だからこそ「限られた時間のなかで、なんのためにこのプロジェクトをやるのか」について、シビアな課題としてメンバー間で激論しあう場面もあるそうです。

平山さん 俺の場合は、これに割いてる時間がすごく多いから、本業に対するメリットがなければ、やる意味は見いだしにくい。それはみんなにとってもそうで、OSAKA盛り上げ隊をうまく使いながら、それぞれにとってプラスになることが大事やと思う。

廣瀬さん だから、OSAKA盛り上げ隊がそういう受け皿になればいいよねって。別に乾杯プロジェクトをやるだけの団体じゃなくてもいいはずなんで。各々が力つけたり、経験値積んだり、関わる人それぞれのプラスになるような団体になればいいんじゃないかと思う。

平山さん で、乾杯プロジェクトで培った知名度を最大限活用するためには、イベントがちゃんと機能せんとあかんから、乾杯プロジェクトを続ける、っていう。

廣瀬さん まあ、俺の中では本業に直接つなげるというよりは、最初の初期衝動の「楽しい」っていうのが、勝ってるほうがいいんじゃないかなっていうのもあるから。

それぞれ、見ている方向性は同じでも、モチベーションや着地点や折り合いのつけかたはさまざま。それでも、お互いを理解しながら、絶妙なバランスで成り立っているようです。

吉田さん この時期になったら「乾杯の時期やね」って言うてもらえるのはすごい嬉しい。風物詩的に。対外的に認知されてきて、「あ、あれやってるメンバーなんや!」ってなりゃあ、それで興味も抱かれるし、話のネタにもなるし。それは嬉しい。

酒井さん 俺が明らかに他の3人と違うのが、前に立ちたくもないし、目立ちたくもない、インドアやから、一人やったらこんなこと絶対やろうなんて思わないし。

でも、1年目から、兄貴たちに巻き込んでもらってやってることで、普段使わへん脳ミソとか、いろんな体験とか、自分が別のこと考えるチャンネルの切り替えになってることとかには、生きてる。

普通にいまの(プロダクトデザイナーの)仕事をしてたら使わへん脳ミソ使う、そこがやってる意味やと思ってる。

時間的なコスト、収益の問題などを抱えつつも続けていくためには、それぞれが「そこに関わる理由」を作り出すしかない。得られるメリットも、デメリットも、自分次第ということ。

平山さん 別に、OSAKA盛り上げ隊をやめない理由はない。いつやめても全然いいと思ってる。ほかにやりたいっていう人がいれば、全然やったらいいと思う。

でも、そこから、なにを抽出してなにを自分のメリットにするかっていうのは、それぞれがそれを見つけることに対して必死にならないと、誰もやってくれないことやから。

それを指くわえて見てる人には、とてもじゃないけど、できひんことやっていうのは、間違いないことかなぁと思う。

吉田さん 俺はこんなことに関われてるっていうことが、楽しい。もちろん”楽しい”なんか、100あったら1ぐらいのもんかもしれへんけど、でもその1が見れるのってここにおるからやし。見たいから。

廣瀬さん 俺、去年は仕事の都合でいったんメンバーを抜けて、最後の2時間だけ、客として俯瞰でこのイベントを見た。そこで「ああ、いいな、楽しいやん」と。そこで、その1を見て、また今年はメンバーに戻ろうと思った。見んでもいい99あんのに(笑)

終始爆笑続きだったインタビューですが、ときに見せるメンバーそれぞれの葛藤が、彼らの正直さと、「実際にぶちあげちゃったプロジェクト」を続けていくことの難しさを物語っています。

きれいごとばかりじゃもちろんないし、シビアな局面もたくさんあるけれど、そうやって本音でぶつかりあっている彼らを見ていると「仲間っていいなぁ」と、羨ましくなってしまいます。
 
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左から、次男、長男、父、末っ子。いい笑顔!

私に見えたのは、どっしり構えた頼りがいのあるお父さんの平山さん、やんちゃで華のあるお兄ちゃんの廣瀬さん、クレバーで繊細な次男坊の吉田さん、情熱を内に秘めたマイペースな末っ子の酒井さん、という、超個性豊かなファミリーの図でした。

そんな彼らに、みなさんも出会ってみませんか? そして一緒に乾杯しませんか? 豪華なアーティストとともに、大阪服部緑地野外音楽堂で、今年の夏も、待ってます!

(Text: 池田佳世子)

– INFORMATION –

 
OSAKA盛り上げ隊プレゼンツ 2015人で乾杯プロジェクト
日時:2015年7月19日(日)開場11:30 / 開演12:00 / 終演18:00
会場:服部緑地野外音楽堂
アクセス:北大阪急行(地下鉄御堂筋線直通)「緑地公園」駅から徒歩5分
入場料:前売り1,515円(イコイコ) / 当日2,015円(2015人)※6歳未満は入場無料
出演アーティスト:GONTITI / ウルフルケイスケ / indigo jam unit / 広沢タダシ / Leyona / 辻コースケ(ライブペイント:CAB)
チケット:こちらから(イープラス)
詳細:http://osakamoriagetai.net