ISSUE まちづくり

1 year ago - 2015.06.24

SHARES  

思いつきで”のぞき見”を始めた若者が、街の人気者に! 「まえばしシャッタークエスト」竹内躍人さんに学ぶ、地域とマイプロの幸せなカタチ

maebashi1

「自分の住む街を盛り上げたい!」「いつか、マイプロジェクトをはじめたい!」

そう思っても、きっかけやアイデアが見つからない…始めてみたものの、仲間をうまく集められず苦戦中。そんな壁に直面している方もいるかもしれません。

そんな方々にヒントとなりそうなのが、今回ご紹介するまえばしシャッタークエストです。

負の象徴であるシャッターを活かして、「商店街を盛り上げよう!」という、ふとしたアイデアから生まれた企画が、ある若者の手によってひとつの街で形になり、紆余曲折を経て、街の日常へと溶けこんでいく。

山あり谷ありの道のりをお楽しみください。
 
SONY DSC

竹内躍人(たけうち・やくと)
1989年生まれ、青森県むつ市出身。高崎経済大学への進学をきっかけに群馬県へ。前橋在住の友人らの案内で前橋に興味を持ち、地元のコミュニティラジオ局「M-WAVE 84.5MHz」への就職をきっかけに、2012年には前橋に移住。ラジオ番組の企画に携わるかたわら、「まえばしシャッタークエスト」をはじめ、「とりあえず金曜ビアテラス」、「前橋駅前ままマルシェ」、「前橋○○部」など、地域に根ざした様々な活動に関わっている。

はじまりは”のぞき見”から

群馬県の県庁所在地である、前橋市。東京から新幹線に乗り、同じく群馬県の中心地である高崎駅で乗り換えて1時間半。赤城山(あかぎやま)の南に位置し、市内には利根川が流れ、駅から中心市街地へはけやき並木が続く、水と緑に恵まれたおだやかな街です。

かつては街なかの商店街が商業の中心として賑わっていましたが、地方都市の多くの例に漏れず、80年代後半より徐々に衰退が進み、いわゆる「シャッター通り」となってしまっていました。

そんなシャッター通りをなんとかしようという思いから、前橋在住の竹内躍人さんが2012年からはじめたのが「まえばしシャッタークエスト」です。

シャッターの穴の「のぞき見」体験、シャッター前でのパーティー、新規オープン店舗の「式典」開催など、ネガティブなイメージのあるシャッターに、遊び心を加えて商店街を盛り上げようしています。
 

ワークショップから生まれた「シャッタークエスト」

「シャッタークエスト」のはじまりは、2012年3月に東京で開催された1泊2日のワークショップ「AQUA SOCIAL FES!! Student Camp」でした。

トヨタのハイブリットカー「AQUA(アクア)」のキャンペーンの一環で、グリーンズのメンバーがプログラム進行を担当。全国から東京に集まった学生が、よりよい未来を作るために自分が実現したいマイプロジェクトを企画するというものでした。(→当日のレポート記事はこちら

竹内さんはこの場で、「シャッター商店街をなんとかしたい」という課題に取り組みました。そこで出たのが、「あえて降りたままのシャッターを活かして商店街に人を呼べないか」という切り口。そこに、「のぞき見」というアイデアをかけ合わせて生まれたのが「シャッタークエスト」です。

穴があったらついつい覗きたくなる人の性(さが)に着目し、シャッターの郵便受けを「のぞき穴」に見立てて、「次は揚げ物屋へ」といったクエストを仕掛けるというアイデアが好評を博し、主催者賞と参加者投票賞のダブル受賞したのです。

竹内さん 自分たちで考えたことが思いのほか評価されたことは自信になりましたね。そこまで言ってもらったなら、絶対に自分の住む街で実現しなきゃという、使命感のようなものも生まれました。それが原動力となって、すぐにアクションを起こせたのだと思います。

大学を卒業後、地元のコミュニティラジオ局に就職した竹内さんは、さっそく企画実現に向けて動き出します。

持ち主と連絡がつくシャッターを見つけたら直談判すると、「普段は貸さないけど、若い人が新しいことをやるなら」と使用許可をいただくことに成功。学生時代のつながりを頼りに仲間も集まり、「Student Camp」から半年後の2012年9月、第一回目のイベントを実現したのです。

シャッター内部を水族館に見立て、映像演出を施しての「のぞき見体験」。商店街にある大量のシャッターをみんなで数える「シャッターカウントウォーク」。シャッター前でのパーティー「シャッターフロントパーティー」。そして、新規開店をした店舗をお祝いする「シャッター開き記念式典」…

一回目から、コンテンツは盛りだくさんの内容で、20名以上が参加する大盛況の催しとなりました。
 
maebashi2
2012年9月の第一回イベントには前橋内外から20名以上の若者が参加。こちらは企画のひとつ、「シャッターフロントパーティー」の様子

成功、の先の迷走。本当に大切なことは何?

大成功に終わった第一回イベントは、greenz.jpでもレポート記事として紹介され、さらには2012年の「いいね!JAPANソーシャルアワード」最終選考にノミネート。「シャッタークエスト」は、外部からの大きな注目を浴びながらのスタートとなりました。

ところが、その注目度の高さとは裏腹に、2年目となる2013年の活動は、迷走の日々だったそう。

やりたいことが実現した。実現したなら何かしらの形で続けたい……。「シャッター×のぞき見」という切り口で商店街を盛り上げようと、新しい企画も実施していきました。
 
maebashi3
シャッターの中をのぞいて提携商店のサービスを受けられる「のぞき見クーポン」

たとえば、「のぞき見クーポン」という企画。シャッターをのぞいてクーポンを見つければ、商店街のお店でサービスが受けられるという仕組みが、活動を応援してくれる複数の商店の協力で実現しました。しかし、参加者・利用者がそこまで増えず、いまひとつの盛り上がりに終わります。

「のぞき見」という行為の面白さから、地元の若者をたくさん巻き込んで商店街を盛り上げていこうという展望でしたが、Facebookなどで発信しても地元の若者になかなか情報が届かない。

参加者を集めることにも苦労するなかで、「のぞき見」行為自体は楽しいけれど、その先、街をどうやって盛り上げるのか、わからなくなってしまいます。

竹内さん 活動が迷走しているうちも、色々なイベントでスピーチを依頼されたりと、前橋の外からの注目は続いていました。そのことは、迷いながらも活動を続ける励みになりましたが、同時にプレッシャーでもありました。

「シャッター×のぞき見」というテーマで受賞したことで、思考が縛られていた面もあったかもしれません。

はじめての企画から約1年が経った、2013年の9月。これまでの企画にとらわれず、もう一度自分たちの活動を見直そうと、メンバーみんなで話し合いました。そこで生まれたのが、「シャッターで遊ぼう!」というシンプルなコンセプト。

メンバー全員に共通していた思いは、「前橋の街を盛り上げたい!」ということ。そのために、負の象徴とされるシャッターを、楽しい場所に塗り替えていくこと。

企画当初からそのユニークさが評価・注目されていた「のぞき見」は、あくまでその方法の一つに過ぎません。本質的な目標がブレなければ、企画の切り口はもっと自由で、柔軟であっていい。そう考えられるようになったのです。
 
maebashi4
なにより大切なのは、みんなで楽しめること!コンセプトもシンプルに「シャッターで遊ぼう!」と改め、表情が和らぐメンバーたち。

商店街の日常に、特別な10分間を

コンセプトも気持ちも新たに動き出した「シャッタークエスト」チームが仕掛けたのは、新規店舗やリフォーム店舗のオープンをお祝いする「式典プロジェクト」。「さよならシャッター」の合言葉とともに、商店街からシャッターが一つ一つなくなっていく喜びを、街のみんなで共有できる企画です。

企画の方法はとってもシンプル。新規オープンした店舗の軒先に、レッドカーペットを敷いてテープを張れば、それだけで式典の準備は完了です。道行く人は、「お、何か始まるのかな?」とついつい立ち止まり、お店の前に集まってきます。

竹内さんの司会アナウンスとともに、新規オープンを祝う「式典」がスタート。お店のオーナーさんの開店のご挨拶の後に、オーナーさん、お店のお客さん、商店街の会長や市長など街のリーダーたちが一緒にテープカットを行います。
 
maebashi5

maebashi6
テープカットの様子

わずか10分で終わる短い企画。必要なものはレッドカーペットとテープ、白手袋とハサミだけ。ですが、これが商店街の方々にはとっても好評なんだそうです。

それもそのはず、ほとんどの人にとっては、テープカットを行うなんて人生で初めての経験。それが自分の住む街で、しかも自分が手がけるお店のオープンを祝ってもらえるのですから、特別感もひときわです。

「式典プロジェクト」は大好評を博し、2015年5月にいたるまで、15店舗以上で式典を開くことができました。

初めの頃は、まちなかで新規開店の噂を聞いたり、工事中のテナントを見て直接話しかけたりと、竹内さん自身が式典の実施を提案していたのですが、だんだんと店舗の方から直接お願いされることが増えてきたそうです。

いまではリクエストに対して式典開催のペースが追いつかないほど。

竹内さん コンセプトを改めて、さて何をやろうかと考えた時、2012年の活動初期に実施した「式典」が、地元の方にとても好評だったことを思い出したんです。

シャッターが上がるのをお祝いすることは、街の人にとっては、新たなお店の誕生を知る機会にもなるし、そのままお客さんとしてお店に入るきっかけにもなります。また、僕も式典開催を通じて、商店街の一軒一軒のお店の方との関係がぐっと深まりました。

はじめの「のぞき見」とは違った手法になりましたが、これが一番、前橋の街に合う形だと今は思います。自分たちも、街の人たちも、日常生活の延長で自然体で楽しめる企画になりました。

maebashi7
お店のオーナーさんだけでなく、街に住む人々も巻き込むのが「式典プロジェクト」のこだわり。この日は「テープカットのプロ」である、前橋市の山本龍市長(右)も参加してくださいました。

細く、長く続けることで地域に溶け込んでゆく

決して順風満帆なものではなかったけれど、3年間、地道に活動を続けてきた竹内さんの胸には、学生時代に憧れていた、ある友人の背中があったそうです。

竹内さん 学生時代の友だちが、高崎のまちづくりに熱い思いを持って取り組んでいて。街に溶け込むようにして、地元の人たちと広く深くつながりながら企画を形にしていっていたんです。

そんな彼を見て、当時から「こいつ、かっこいいな」、「自分もいつかやってみたいな」って憧れていました。

活動が迷走して悩んだ時期もありましたが、それでも「やめよう」と思わなかったのは、あの頃の憧れを、自分の街で、自分の行動でカタチにしたいという思いがあったからだと思います。

勤務先であるコミュニティラジオ局の仕事や、友人たちと手がける他の活動とも相まって、竹内さんは今ではすっかり前橋の有名人になりました。

今回の取材で商店街を一緒に歩いていても、「こないだはありがとね」、「うちでも今度式典やってよ」、「次は何やるの」と、次々にまちなかの人々に声をかけられる様子が印象的でした。
 
SONY DSC
商店街を歩けば、5分に1回は誰かに話しかけられる竹内さん。今ではすっかり前橋の人気者。

うまくいかない時期もありましたが、細く長く、試行錯誤を続けるなかで、「式典プロジェクト」という前橋にぴったりの形を見つけ出した竹内さん。

シャッターがなくなる瞬間をお祝いする特別な時間でありながら、そこに”非日常感”はなく、前橋の人々の日常延長線上にある、あたたかいひとときとして溶け込んでいます。

「シャッタークエスト」を始めた当初は、なかなか地元の若者と出会えなかったそうですが、ここ数年で前橋へのUターン・Iターン移住者も増え、「前橋○○部」や「前橋駅前ままマルシェ」、シェアハウスやシェアオフィスなど、若者が手がけるさまざまなプロジェクトが盛り上がりを見せている様子。

竹内さんもラジオ局の仕事を続けるかたわら、さまざまな活動に参加し、「シャッターで遊ぶ」どころか、「前橋中で遊ぶ」といっても過言ではないほどです。
 
SONY DSC
ここ数年で前橋へUターン・Iターンする若者も増加し、「シャッタークエスト」を始めた当初より、同世代の友人がずいぶん増えました。偶然出会った立ち話で、そのまま次の企画案が盛り上がることもしばしば。

肩に力を入れず、自分も、周りのみんなも楽しめる方法で続けていくこと。始めた当初の形態や一つの活動だけにこだわらず、日常生活に自然と溶け込んでいくまで試行錯誤を続けていくこと。

竹内さんの前橋での活動は、”ライフワーク”としてのマイプロジェクトの、一つの在りようを示してくれているように思えます。

あなたも、自分の住む街で、自分だけの「クエスト」を始めてみませんか。はじめの一歩を踏み出したあと、道に迷うこともあるでしょう。だけど、迷いながらも自分の足で探検していく日々は、きっと楽しいはずです。

シャッタークエストに参加してみよう!
まえばしシャッタークエストFacebookページ

writer ライターリスト

鈴木悠平

鈴木悠平

greenz シニアライター ひと・もの・ことの閒-あわい-にある物語を探求しています。 お仕事は、企画・執筆・編集業が中心。 東日本大震災後の宮城県石巻市におけるコミュニティ事業、大学院での地域保健政策及び高齢者ケアの国際比較研究を経験した後、株式会社LITALICO入社。発達障害に関するポータルサイト「LITALICO発達ナビ」の企画・編集を担当。 ウェブマガジン「アパートメント」「soar」の運営・編集にも携わる。

AD

infoグリーンズからのお知らせ