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自分の人生は、じぶんでつくろう。共生革命家ソーヤー海さんに聞いた、都会からはじまる新しい生き方のはじめかた

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私たちが住んでいるこの世界は、みなさんの目にどのように映っていますか?それは、自分の子どもたちに残していきたい世界でしょうか?

自然環境と調和していて、社会的にも公正で、精神的にも満たされている。共生革命家を名乗るソーヤー・海さんは、そんな世界をつくろうと、パーマカルチャーの考え方を都会の自然、人間、街との関係にも応用することで都会から日本と世界を変えていく、「アーバンパーマカルチャー」を広めています。

今回は、「アーバンパーマカルチャー」を紐解きつつ、都会からはじまる新しい生き方のデザインについて、greenz.jp代表の鈴木菜央さんとともに、ソーヤー・海さんに話を聞きました。
 
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共生革命家ソーヤー・海さん。コスタリカでのジャングル生活中にパーマカルチャーに出会う。アメリカでのパーマカルチャー研修を経て「東京アーバンパーマカルチャー」を主宰。各地でアーバンパーマカルチャーの講演会やワークショップを開催している。

人とエネルギーがあふれる都会にこそパーマカルチャーを!

アーバンパーマカルチャーをご紹介する前に、その考え方のベースでもある「パーマカルチャー」について少しご紹介します。

「パーマカルチャー」は1970年代にオーストラリアで生まれた「Permanent(永続的な)と 「Agriculture(農業)そして「Culture(文化)をあわせた造語です。

・自然のシステムをよく観察すること
・伝統的な生活(農業)の知恵を学ぶこと
・現代の技術知識(適正技術)を融合させること

という3つの要素から農業をベースに考えられた、持続可能な生活・文化・社会のシステムのデザイン体系をパーマカルチャーと呼びます。

もともと、都市ではなく田舎を中心に展開されてきたパーマカルチャーですが、この理念やデザインを都市に落とし込み、都市の問題を解決しながらより良い社会づくりへと発展させようという「アーバンパーマカルチャー」が今、ムーブメントになっています。
 
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ポートランドで行われた交差点のシティリペアの事例。安全で住みよい街をコンセプトに市民が交通量の多い交差点に絵を描くというアクションを。絵で目をひくことでスピードが自然とゆるみ、交通事故の防止などにつながるそう。

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交差点のそばに設置された「t-station」(写真中央) 後ろには市民の手で作られたベンチが。ひととひとが出会いつながるデザインになっている。

世界の様々な地域で、アーバンパーマカルチャーが注目される中、ソーヤー・海さんがこのアーバンパーマカルチャーを日本で展開し始めたのは、今から3年前のこと。

街に出て、みんなでゲリラ的にその辺の茂みに草花の種をまくという「ゲリラガーデン」をするなど、パーマカルチャーの基礎や理念を様々な角度から伝えています。
 
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街の至るところにゲリラ的にで種をまく「ゲリラガーデン」。

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ゲリラ瞑想。名付けてStreet 坐 ZEN!少し立ち止まって自分をみつめる時間を共有することが目的だとか。もちろん、飛び入りも歓迎だそう。

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実際、身近な場所をイメージしながらパーマカルチャーを取り入れるアイデアを話し合うワークショップ

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アーバンパーマカルチャーの5つのキーワード、「EDIBLE」「DIY」「 EDGE」「GIFT」「STOP」に沿いながら、アーバンパーマカルチャーを学ぶグリーンズのスクールでも講師を務めている海さん。「つながりあう暮らしをつくろう」をテーマに座学やワークショップなど全6回のクラスでアーバンパーマカルチャーのレクチャーを行う。パーマカルチャー安房ファームにて研修風景

本当の現実が見えた瞬間に、この世界を変えたいと思った

海さんが、こうした活動をするきっかけは、2001年にアメリカで発生した9.11同時多発テロ事件でした。

海さん 9.11が起こるまでは、のほほんと生きていました。食べ物もあるし、安全だし、戦争や環境問題といった世界が抱える問題が全く見えていなくて。

でも、9.11が起きたことで、本当の現実がわからなくなったんだよね。目の前の現実についていくことがやっとだった。

当時、カルフォルニアで大学生活をスタートしていた海さんは9.11以降、目の前で日々起こることがまるでハリウッド映画でも見ているようだったと言います。

海さん 国防省関係者が大学に来て、教授陣に発言の規制をかけたり、周りは戦争が始まるんじゃないか、テロがまた起きるんじゃないかという雰囲気に包まれていた。

そのときに、今生きている世界というか社会が、いかにいびつに歪んでいるかを実感したんです。それが、この社会はおかしいと気づいたきっかけでした。思い込みの世界じゃもう生きていられなくなった。

じゃあ僕は、どういう世界で生きたいのか。ずっとそれを考えながら大学生活を送りました。

在学中、「持続可能な生活の教育プログラム」を学んだことをきっかけにサステナビリティとパーマカルチャーに出会った海さんは、平和心理学や非暴力コミュニケーションの勉強を始めたそう。

卒業後も「持続可能な生活の教育プログラム」のオーガナイザーと講師を務め、社会の様々な課題に取り組んでいた海さん。しかし、日々忙しくなるばかりで、体も心もボロボロになってしまったと言います。

海さん この忙しい社会で、さらに課題を解決しようと忙しく働いている自分がいる。その繰り返しで、体も心も完全に疲れてしまったんです。

そもそもいい社会をつくりたいのに自分がボロボロになっていること自体、100%の人が幸せになる社会づくりではない。そこで、これは違うって気づいたんですよね。

スタンスを変えるために講師を辞めた海さんは、友人を伝いコスタリカのジャングルに移住。そこでパーマカルチャーを実践する生活をスタートさせました。
 
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コスタリカ、ジャングルでの生活の場

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ジャングルでの自給自足生活を送る海さん。パーマカルチャーの実践をスタートさせる。

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電気、水道もない生活。調理はソーラークッカーを活用。

コスタリカで水道、電気のない小屋生活を送り、現地の農家と交流しながら、伝統文化や技術を学んだ海さん。そこで、お金を介さない生活の工夫に興味を持ち、さらにキューバ、ニカラグアなどに移住。それらの経験が徐々にパーマカルチャーの理解を深めていきます。

その後、もっと深くパーマカルチャーを学ぶため、アメリカ西海岸の一番北、ワシントン州の本土とカナダのバンクーバー島の間にあるオーカス島に移住。

暮らしの実験場でもある「ブロックス・パーマカルチャー・ホームステッド」で研修生としてパーマカルチャーを学んだ海さんは、自分が描く自分がどんな世界で生きていきたいかのイメージをどんどん膨らませていったと言います。
 
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ブロックス・パーマカルチャー・ホームステッドは、30年以上前、ブロックス三兄弟がパーマカルチャーの知識とデザインの実践の場として移住し開墾した広大な農園。現在、世界各地からパーマカルチャーを学びにくる研修生が後を絶たないそう。

海さん パーマカルチャーのひとつのキーワードに”アヴァンデンツ”という言葉があるんだけど、日本語で”有り余る”といったニュアンスかな。

ブロックス・パーマカルチャー・ホームステッドには、農園をつくったブロックス3兄弟の家族と研修生が生活しているんだけど、食べ物も暮らしの知恵もとにかく豊富。同じ意思を持ったたくさんの人が訪れるから、会話が生まれてその人の知恵やストーリーも聞けちゃう。

そこでは、ひとりひとりがそのコミュニティを生かすための重要なキーパーソンなんです。例えば、何か壊れたとしても誰かが修理できる。知恵の集積場ですね。

今の社会のほとんどが”消費”で成り立っている中で、ブロックスでは、無駄なエネルギーや労力を使わず、人や土地など、そこにあるものすべてをうまく生かしながら、つくり、暮らすという、パーマカルチャーの理念を実現できる世界が広がっているそう。
 
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ブロックスの広い農園至るところに設置されたコーンポストトイレ。どこにでもあるから便利! いっぱいになるとトイレを移動し、排泄物は発酵し自然堆肥に。そこに果樹を植え、たくさんの果実を収穫することができる。

海さん ”消費”で成り立つ社会を支えるための労力や時間は、もう無駄以外の何でもないと思いました。自分がどんな世界で生きていきたいか、その答えがここにあると思ったんです。

どんな状況でもパーマカルチャーはできる!

ブロックスで研修生活を続けながら、新しい研修生にパーマカルチャーワークショップを行うなど、指導者としても活躍していた海さんですが、2011年に東京に戻り、都会でパーマカルチャーを取り入れるアーバンパーマカルチャーに取り組みます。
 
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東京アーバンパーマカルチャーとして主催した、オーカス島、シアトル、ポーランドをめぐるツアーでは、菜央さんを含む、日本から参加者とともに海さんがアテンドを務め、パーマカルチャーの最前線を見学。

海さん なぜあえて東京からチャレンジすることにしたのかというと、先ほど話した余りあるもの”アヴァンデンツ”を都会に置き換えてみると、それは人口とエネルギーなんじゃないかと思って。

今の社会は都会に人が集まるシステムになっていて、そこからゴミの問題や地方の過疎化といった課題が生まれている。その解決にこそ、アーバンパーマカルチャーを取り入れてみようと思ったんです。

それにオルタナティブな人たちが地方でいくら素晴らしい活動をしても、都会に決定権がある限り、地方の課題はなかなか解決しないですよね。僕は、今のいびつな社会を変えることが、結果として自分が生きていきたい世界だと思っています。

海さんは、東京には、都会にしかない美しいエネルギーがあると続けます。

海さん パーマカルチャーの理念に「問題こそ解決策」という言葉があります。都会に人が集まることで課題が生まれるのなら、そこを活用すればいいんじゃないかと考えたんです。それに、都会に魅力があるから、もっと学びたい、夢をかなえたいというエネルギーを持った人がたくさん集まってくる。それは美しいエネルギーですよね。

大切なことは、やりたいことを実現するための方法を考えるときに、自分が”消費”されない生き方ができているか、そこに意識をフォーカスして欲しいんです。言い換えると、自分のパワーで生きるということです。

今そこにある、資源や知恵をうまく活用するのがアーバンパーマカルチャーの考え方です。都会にあるエネルギーを街に落とし込むことで、僕はみんなが次世代の社会をつくるデザイナーになれると思うんです。そうやって社会は変えていけるんじゃないかと。

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東京アーバンパーマカルチャーのホームページトップ画像

現在、海さんは「東京アーバンパーマカルチャー」というWebサイトを立ち上げるほか、パーマカルチャー、共感コミュニケーション、マインドフルネスのギフトエコノミー式ワークショップ、ユースのエンパワーメント、 気候変動防止活動と脱原発活動など、持続可能社会づくりに深く関わっています。

また、海さん自身も神奈川県・葉山にて暮らしをつくることに挑戦中だとか。

海さん 僕は今、共生革命家として活動しているけど、僕自身が「ギフト経済」で生活が成り立つかどうかを実験中です。

「パーマカルチャーは本当に楽しい!みんなに知ってほしい!」というパッションを持ってこの活動をしているので、自分が伝える情報やワークショップの参加費は、みんなの価値観で決めてもらうことにしています。パッションに値段はつけられないから(笑)

「ギフト経済」とは、お互いが優しさを贈り合うことで成り立つ経済のこと。その根底には、見返りの求めない親切がめぐりめぐって自分に戻ってくる「pay forward」 という考え方があります。

また、「ワークショップなどに値段を設定してしまうと払えない人には届かない、それはお互いに残念なこと」という想いからも、海さんはお金の価値をあらためて考える、「ギフト経済」を取り入れているのです。
 
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自宅でもパーマカルチャーを実践中。玄関横にはコンポスト「キエーロ」。「これはバクテリアの力で本当に生ゴミが全部消えちゃうから都会にオススメ!」と海さん。

アーバンパーマカルチャーを生活に取り入れるには、まずは自分の暮らしのなかで「実験」することが大事、と海さんは続けます。

海さん よく「自立しなさい」という言葉を聞きますが、ここで表現されている自立は、就職をして給料をもらい、必要なものは消費するという意味に近いんじゃないかと思います。

でも、それは企業に依存している状態。アーバンパーマカルチャーでいう自立とは、ひとりひとりが持っている自分の創造力とパワーで生活に必要な事をできるようになる事。お金に依存するのではなく、自分や周りの人、そして自然に頼り、生態系の一員として行きていく事。

例えば、少しでもいいから食べるものをつくってみる。エネルギーをつくってみる。自分が夢中になれることを社会課題に置き換えたときに、何ができるか少しだけ考えてみる。そこがスタートなんです。

都会からはじまる、新しい生き方のデザイン

最後に、ソーヤー・海さんとgreenz.jp代表の菜央さんに、それぞれが描くほしい未来について聞きました。
 
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海さん 海外でアーバンパーマカルチャーを実践している若者は、本当に楽しんでる。超派手なファッションで、フェス感覚で街の木々に接ぎ木をしたりね(笑) そこには「僕たちは自由!楽しい!」みたいな気持ちがあるんだよね。

日本でも、そうした楽しいエネルギーは絶対必要だし、もう既にあるんだから、みんながデザイナーになれば、どんどん広まって未来はよくなるよね。

greenz.jpのようなメディアがあることも重要で、情報が伝わることで実践者同士がつながって、もっと良い社会を生み出していく。僕の使命は、これからもパッションを持ってアーバンパーマカルチャーを伝えていくことだね。

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菜央さん greenz.jpをやっている理由のひとつに「ひとりひとりが実力を発揮しづらい今の世の中はもったいない。全員が実力を発揮できれば、世の中は変わる、よくなるよ!」を伝えたいという想いがあるんだけど、伝えるだけでは突破できないことがあるよね。

海くんのやっているアーバンパーマカルチャーもひとりひとりが社会つくりのデザイナーになって社会を変えていくこと。僕はひとりひとりが上昇できる場づくりに興味があるから、メディアの役割として、アーバンパーマカルチャーを社会化する手伝いができればと思う。

ひとりひとりが生きていきたい世界、暮らしをつくること、そこに欠かせないのはデザイナーである、わたしたちだということをソーヤー・海さんは教えてくれました。

アーバンパーマカルチャーに答えはありません。

その場、その人、そのまわり、そこに合ったものを実験しながら、探しながら、つくっていくものなのです。

今年の2月にはソーヤー・海さん監修のもと、仲間たちと制作した『URBAN PERMACULTURE GUIDE 都会からはじまる新しい生き方のデザイン』が出版されました。

初回の2000部はすでに売り切れ。アーバンパーマカルチャーのムーブメントはもう日本でも始まっています。
 
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アーバンパーマカルチャーが楽しく、ポップに学べるソーヤー・海さん監修の書籍『URBAN PERMACULTURE GUIDE 都会からはじまる新しい生き方のデザイン』(c)明石タカフミ(さとうきび畑)

アーバンパーマカルチャーや社会づくり、生き方のこと、考えてみたくなったら、海さんの本を手に取ってみませんか?

– INFORMATION –

 
ソーヤー海さんと一緒に、アーバンパーマカルチャーを学ぶクラスが7/6(月)から開校します。先着12名なので、お申込み(コチラをクリック)はお早めに!