ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

1 year ago - 2015.05.16

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小さく暮らすと、豊かさのものさしが変わる。greenz.jp代表・鈴木菜央に聞く、トレーラーハウス、そのタイニーな暮らしの実験【全編】

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

千葉県いすみ市。畑に囲まれたのどかな田舎道を進むと、林の向こうに可愛らしいトレーラーハウスの姿が見えてきます。greenz.jp 編集長であり、わたしたち電力の言い出しっぺでもある鈴木菜央さんの自宅です。敷地内には菜央さんの書斎になっている可愛らしい小屋も。

新年早々この家を訪ねたのは、生まれたばかりの長男・墾くんを連れた暮らしかた冒険家のふたり。2014年7月末に家を設置し、9月に引っ越して約4ヶ月。トレーラーハウスで暮らし始めて、何がよかった? 何が変わった?そんなリアルな疑問をぶつけました。

トレーラーハウスでのオフグリッド生活、どうっすか?
 
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東京から電車で2時間、千葉のローカルに突如現れた”トレーラーハウス”… いったいどんな暮らしぶりなのか!?greenz編集長、鈴木菜央さんの自宅をみてきました。

ズバリ、せまくない?

菜央さん一家は、菜央さん・妻のともみさん・小学生のにこちゃん(10歳)みりちゃん(8歳)の4人家族。昨年夏まで住んでいたのは同市内にある、150平米の2階建てログハウスでした。それに引きかえ現在のトレーラーハウスは約35㎡、ロフトを入れても50㎡ほど。実に1/3〜1/4までスケールダウンしたことになります。
 
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屋根裏が子供部屋に。菜央さんちには二人の小学生の娘さんがいます。子どもたちの楽しそうな笑顔が印象的でした。子供の成長とともに、家がどうなっていくのかも気になりますね。

1階にリビング・ダイニング、キッチン、寝室、トイレ、浴室。2階(ロフト)には屋根裏部屋のように天井の低い子ども部屋と、今は納戸のように使っている空間があります。たしかに狭い!…でも、どうしてこんなにわくわくしちゃうのでしょうか。

菜央 子どもたちは超楽しそうだよ。友だちが来た時は、秘密基地みたいにして遊んでる。

ここに布団を敷いてゲストルームとしても使っているんだけど、お客さんが“すごく落ち着く”って一番気に入る部屋なんだよね。静かに本でも読みたくなるって。

寝室にはベッドと衣装棚。ベッドはダブル+シングルをつなげて4人で寝ています。水回りは、バス・トイレ別。脱衣所にはドラム式洗濯機が置いてあり、やや広めのアパートくらいの感じ。

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引越し当日に寝室のペンキを塗る・塗らないで揉めたという鈴木夫妻… たしかに荷物が入ってからではペンキは塗りづらい。かといって完成しないと寝れない…リノベーションは段取りも重要だということを学びました。

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いたって普通の水洗トイレ。ここが”車”の中だとは言われないと気づきません。左手前が階段下の収納になっているのはタイニーハウスならでは。

リビングのテーブルやソファは、大きな家に住んでいた頃のものばかりなので、この家にはちょっと大きめ。この配置に落ち着くまで、何度も模様替えをしたそうです。ロフトの柵に小さな鏡を並べて、部屋が広く見せる工夫をしているのがユニーク。

奥様いわく「平日に家族全員がいると、ときどき狭く感じる」程度で、普段は快適に暮らせているようですが、困っていることはあるのでしょうか?
 
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リビングのソファに腰掛ける菜央さん。壁には友人が描いた絵が飾ってあります。その上には屋根裏の収納部屋が。鏡を貼ることで室内を広く見せる効果が。ちなみに鏡はIKEA製。

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キッチンからリビングを眺めて。キッチンはワンルームマンションのようなガスコンロが2口と流し台。そして奥には電源の入っていない冷蔵庫。炊飯も土鍋で。オフグリッドな厨房でトライアル生活中。

菜央 前の家と違って、キッチンが狭いから洗い物を片付けないと次の料理が作れない。段取りが必要になった。あとお客さんが来た時に、物をどこかに寄せて布をかけて隠す、みたいなことはできない。でも前の家は、お客さんが来るとなると掃除に6〜7時間もかかっていたから、そこは楽になったね。

既成品の家具は(サイズが合わなくて)全部ダメ。でも工夫をし続ければ、これからどんどん快適になると思う。

最初の頃はお客さんが呼びにくかったけど、それも解消されてきた。もうじき完成する小屋にはロフトと、1階にハンモックをつけるから一家族は泊まれる。昔みたいに最大4家族が同時に泊まりに来たりはできなくなったけど、その代わり一家族ごととじっくり話すようになったね。

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YADOKARIと一緒につくったなおさんの仕事部屋、というか小屋。小屋の電力はオフグリッド達成!

小さな家で暮らすことで、家族にも変化が。

菜央 家族が一緒に過ごすようになった。前は別々の部屋で勝手に過ごしていたけど、今はみんなリビングにいる。

子どもの成長段階にもよるんだよね。高校生とかになったらさすがに狭いだろうから、一人一小屋、自分で作ってもらう(笑) でも子どもが進学して東京に出て行ったりしたら、夫婦ふたりには本当にこの広さで十分だよね。

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前の家から持ってきた食卓と椅子。家が手狭になったので、大きく感じるという。そう、規格品だとなかなかジャストな家具がないのだとか。タイニーな暮らしが広がれば、プロダクトもでてくるのかも。

秘密基地で育ち、大きくなったら自分の小屋を建てる!なんて楽しそうな子供時代でしょうか。

タイニーハウスの狭さは、イコール不自由や我慢ではありません。豊かさや楽しさの“ものさし”を変えることなのですね。

何が必要なくなった?

菜央さんがトレーラーハウスに関心を持ったきっかけは、近年アメリカから広がりつつあるタイニーハウス・ムーブメント。リーマン・ショック以降、大量生産・大量消費社会に対するカウンターカルチャーとして、なるべくモノを所有せずシンプルに暮らす「タイニーハウス」という暮らし方が注目され始めたのです。

「断捨離はしたけど、あと3回くらい必要」という菜央さん。洋服はほぼ半分ほど処分し、1500冊ほどあった本も400冊まで減らしました。

菜央 手元に置いて、何度も繰り返し読みたいような本って、実はせいぜい200〜300冊くらい。今も本は職業柄たくさん買うけど、Kindleで買ったり、一回読んだら誰かに回すようにしてる。

捨てられなくて困っているのは、おじいちゃんのカメラとかかな。カメラ自体はたいしたものではないんだけどね。

タイニーな暮らしで、電気を使う量も減りました。以前は当たり前に使っていた家電のいくつかも、本当に必要なのか見直す中で使用をやめたそう。びっくりするのは、冷蔵庫を使っていないこと!
 
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だいぶ断捨離したキッチン周り。なかでも薪ストーブや焚き火で使えるダッチオーブンはかなり出番が多いそう。タイニーな暮らしでは、必然的に「どんなものを残したのか」、必然的にその人のセンスがでてきます。

菜央 以前持っていたのが大きすぎたから、友達の小さいものと交換してもらったの。“ダウンサイズわらしべ”だよね(笑)。

だけど音が気になって、夜間はタイマーをつけてON/OFFを切り替えているうち“なくてもいいんじゃない?”ということになって、やめてみたら意外と大丈夫で。今は電源を切って、ただの食料保管庫になってる。

野菜も卵も常温で問題なし、魚や肉は食べきれる分だけ買ってくる。ビールは外に出しておけば冷たいし、牛乳を飲みたい時は500mlを買ってきて飲み切っているそう。

ごはんは土鍋で炊き、炊飯器はお客さんが大勢来た時や「何かがあった時のために」待機させています。

菜央 あと電子レンジは全然、要らなかったね。コーヒーをもう一度温めなおすときに使っていたけど、小さな鍋で全然できた。

今でも使うのはジュースを作るミキサーとパン焼き器。が、パンも最近はダッチオーブンで焼くようになったので、もうじき不要になる可能性大。

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なんと冷蔵庫はタイマーでON/OFFしていた!…が、そもそも冷蔵庫いらないよねと気づいていまは冷蔵庫=単なる収納庫になっている鈴木家。たべものとの関わり方も変わりました。

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アンティークのジューサーと常温でOKな果物や野菜。置いてあるものに主人の暮らしへの愛着を感じます。オフグリッドした先に、その人の個性が光ります。

リビングの家電は、iPhoneにつなげる直流電源のスピーカー。そしてWi-Fi、アンドロイドタブレット、iPad、Kindleなどのガジェット類。

テレビもやめました。結果、子どもたちの間を持たせるために“テレビで解決しちゃう”ことがなくなったそう。

電話はありますが、電源は接続していません。何でも「電話線から電気が来てるから、電源を入れていなくても鳴る」のだとか! ちなみにディスプレイ等は使えません。

エアコンはあまり使いませんが、冬は温かい空気を1階に下ろすためのサーキュレーターが活躍しています。ただし夏は暑そう。
 
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iPhoneに繋げられるアンプ。サウンドシステムはこれとスピーカーさえあれば十分いい音がでるのだそう。もちろんソーラーの音です。

菜央 だから今年の夏までに、庭に面した窓にデッキと屋根をつくる予定。夏は日差しを避けて、冬は日射があるように角度を計算して。それから屋根の上にソーラーパネルを乗せれば、屋根の熱吸収が減るから、暑さがやわらぐはず。

以前住んでいたログハウスは広かったから暖房代もかかるし、家が大きいと物が増えちゃって、4年間でぶくぶくと暮らしが膨れ上がって。

ここに住んで、物欲がなくなったのが楽ちん。1個しか買えないからめちゃめちゃ吟味するし、一個しか買わないから高くてもいいものが買える。

車は2台必要だけれど、せめて1台は軽自動車にしたい、という菜央さん。メタボな暮らしを脱却し、本当に必要なものを絞り込んだシンプルな暮らしへ。家の大きさだけでなく、暮らしにまつわるあらゆるものをスケールダウンしているのです。

“お客さん”をやめて、暮らしのつくり手になる

トレーラーハウスの前に4年間住んでいた家はロケーションにも恵まれ、とても魅力的な家でした。一方で断熱が十分で無かったり、お風呂が一般的な仕様ではなく寒かったりといった悩みもありました。ところが賃貸なので、自由に手を入れることができません。家賃も12万円と、周辺相場(高くても8万円、平均で5万円、安くて3万円。うまくすれば1〜2万円)と比べるとかなり高めでした。
 
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ワークスタイルも東京の比重を下げていく決断をした菜央さん。オフグリッドな生活では、時間の使い方が問われます。

菜央 外から来た“お客さん”をやめたくて東京から引っ越してきたのに、暮らしのつくり手になれていなかった。自分で思ったようにどんどん手を入れていく暮らしをしたいなと思って。

とはいえ、広い家を自分の好きなように変えていくのは大変だし、お金も時間もかかります。一方、タイニーハウスのよさのひとつは「自分の好きなように手を入れやすい」こと。

菜央 内装を変えて断熱をちゃんとして庭にも手を入れたら、いずれ貸すこともできるし、もう一回売ることもできる。建てたら改築か解体しかないけど、家自体を運べるから、千葉・東京・埼玉の3県くらいが一気にマーケットになる。

それと、中古車と一緒でリセール・バリュー(再販価格)が下がりにくい。普通の家は10年経ったら土地とセットじゃないと売れないけど、これだったら上モノだけでも売れるんだよね。

ちなみに新車時に900万円で、友人である以前の住人が6年間住んだ後に菜央さんが500万円で購入。お友達は400万円で6年間住んだ計算になります。

トレーラーハウスはカーローンしか組めないので、税制により優遇されている住宅ローンより金利が高め。それでも家賃(ローンの支払い)は月々11万円で、4年間で完済予定。75坪の敷地は150万円で購入しました。

菜央 盲点だったのは、カーローンは本体にしか適用されないこと。土地代、工事代、移動、整地、設置の350万円はローンが組めないので現金払い。支払いが大変だった。

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野菜をプランターで育てています。畑はこれから。普通のコンポストのほかに、ミミズのコンポストにも挑戦中。菜央さんの周りにはいろいろな先生がいます。

ところで一口に「タイニーハウス」と言っても、コンテナやキットハウスなどさまざまな選択肢がある中で、なぜトレーラーハウスを選んだのでしょう?

菜央 セルフビルドにも興味があるけど、僕の場合は仕事が忙しくてつくる時間が取れない。かと言って、誰かに建ててもらうほどお金があるわけじゃない。

でも一番の理由は、このエリアに住み続けたかったこと。いい人たちがいっぱいいて、自然もあって、移住者に対しても寛容。

この家が土地も入れて総額800万円だから、同じくらいの金額で手直しすれば住める家付きの土地はある。でもたまたまこのエリアでは、そういう物件が見つからなかったんだよね。だけどトレーラーハウスなら、新築で建てなくてもここに住めるなって。

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空き地に小屋とトレーラーハウスが。土地さえあれば、どうにでもなる。地方での暮らしかたの実験として非常におもしろいですね、菜央さん!

当時、海外のトレーラーハウスの動画などを見ては、妄想を膨らませていたという菜央さん。Twitterでつぶやいたところ、千葉の九十九里浜でトレーラーハウスに住む友人から「俺の家、売りに出すけど見に来る?」という返信が。奥さんと“とりあえず見に行くだけ行ってみよう”と出かけたはずが、実際に見てみると “意外とありかも”になっていました。

菜央 だって、面白いじゃん。何千万円もかけた一生に一度の買い物ってわけではなくて、4年間がんばって働けば買える。だったら面白い生き方をしたいなと思って。

まあ、ギャグだよね。一世一代のギャグ。“そう来たか!”ってみんなに言われたい、みたいな(笑) でも打算的な部分もあって、電気代とか支出が下がるだろうな、という計算もあった。

その計算通り、電気代は以前の1万前後から、3千円〜4千円へ減少。水道代は5千円前後が2千円に。ガス代・電気代を合わせれば、年間で15万円ほど下がる見込み。灯油の使用量も劇的に減ったというから、家を小さくすることがかなりのコスト減、エネルギー使用量減になることがわかります。暮らし全体で、電気を使う量を減らすこと。それがまずは、オフグリッド・ライフへの第一歩だと、菜央さんはいいます。

ずぼらな人でもできる“なんちゃって”オフグリッド

菜央さんのオフグリッドな暮らしの実験は、庭に建てた小屋から始まりました。

現在、室内灯とパソコン、スピーカーの電力すべてを太陽光パネルと電池でまかなっています。ちなみにこちらの小屋、YADOKARI小屋部と一緒に企画してつくった小屋で、わずか2週間で延べ150人もの参加者と一緒に建てたもの。
 
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菜央さんの書斎小屋。もちろん電気はオフグリッドです。

トレーラーハウスの設備はまだこれからですが、パネルも電池も準備済み。タイニーハウス暮らしで月3千円分にまで下がってきた電気使用量も、24時間稼働している浄化槽のブロワーやまだLED電球に交換できていない白熱電球など、まだまだ改善の余地=電力消費を抑えられる可能性があります。

菜央 電気代が月2000円くらいまでいくと、いよいよオフグリッドが見えてくる。この家はもともと床暖房があるから50アンペアの設定だったけど、うちは一切使っていないので30アンペアに下げられた。もうじき15か10にする予定。

今はまだ、いきなりオフグリッドにしないで、まず電気の消費量を減らす段階。分母が大きい状態をオフグリッドにすると、追加で買わなきゃいけない電池とか、設備投資にすごくてお金がかかってしまうから。
サブとして、電気契約も5〜10アンペアは残しておくつもり。

菜央さんの場合はインバーター、チャージコントローラーは以前購入したものがあり、パネルはソーラー発電会社を運営する友人からもらってきたため、毎月の電気料2000円くらいに相当する電力なら、6万円くらいの追加投資でオフグリッドできる計算。2年弱で回収できる金額です。

さらに薪ストーブを入れれば、灯油代もゼロに。プロパンガスを完全にオフグリッドするのはややハードルが高いので、屋根に手づくりの太陽熱温水器を設置し、ガス給湯器に温水を供給する「なんちゃってハイブリッド給湯器」にチャレンジするつもりだそうです。

電気使用量を下げるためにも、薪ストーブの暖房効率を上げるためにも、大前提となる重要なことがあります。それは、家の「断熱」。タイニーハウスは小さいからこそ、断熱しやすいというメリットもあります。
 
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トレーラーハウスの床下。ここを断熱する予定なのだそう。(このインタビューの後、すでにやってました!→https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10152669490537963&set=a.10150595631252963.386317.605247962&type=1

こちらのトレーラーハウスでは、床下と窓を断熱する予定。床下には断熱材を張り、窓はもともとペアガラスですが追加の内窓、ハニカムの断熱ブラインドなどを検討中。視察に行ったアメリカのポートランドで見た、キルティングの断熱ブラインド(手づくり!)も印象的だったそう。

さらに、テレビのアンテナも“オフグリッド”してしまいました。もともと、菜央さんが見たい番組はサッカーのワールドカップとドキュメンタリーだけ。

菜央 近くの公民館でパブリックビューイングを企画すればみんなで見れて楽しいし、ワールドカップが迫ってきたら、友だちの家を渡り歩こうと思って。あいつの家のガレージにでっかいテレビがあるから集まろうぜ! じゃあ◯月◯日の◯◯戦はお前の家な! みたいな。そうやって友達と一緒に見れば、テレビがなくても大丈夫。

その他にも自家用車を電気自動車に替えてカーポートの屋根に置いた太陽光パネルから直接充電する、太陽熱を利用した空き缶ソーラーヒーターなど、やってみたいアイデイアはたくさん。

とはいえ東京で働き、仕事でもたくさんのプロジェクトを抱えて多忙な菜央さん。すべてをDIYでやったり、生活の全部をオフグリッドしたり、高い完成度を目指すことは考えていません。
 
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菜央 安くて手をかけずにできること、僕みたいに忙しくてずぼらな奴でもできることをやりたい。普段の生き方まで考えていくと、そんなに細かくやっていられないでしょ。そんな俺でも安定運用できることなら、みんなもできるだろうし。だから “なんちゃって”をたくさんやりたいんだよね。

小さく、楽しく、がんばりすぎない範囲で。そんな新しい暮らしの実験場に、タイニーハウスはぴったりなのですね。

オフグリッド=つながり直す知恵

引っ越しの時はご近所さんへの挨拶回りを丁寧にしたという菜央さん。新築であれば数ヶ月かけて出来ていきますが、トレーラーハウスは完成品を運んでくるだけ。ある朝、目覚めたら空き地にいきなり家が出来てた!なんて、ご近所さんもひっくり返っちゃいますよね。
 
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引越し前にちゃんとご近所へ挨拶まわりをした菜央さん。たしかにトレーラーハウスがやってきたらたまげるかも!こういうのは大事ですよね。

近隣のお宅・約30軒を回って直接手渡ししたというお手紙には、家族ひとりひとりの名前と年齢、「家を設置させて頂きたく存じます」の挨拶文。

ご近所の人たちの反応はどうだったのでしょうか?

菜央 びっくりしてたね(笑) ただこのエリアに4年は住んでるから、子どもの小学校の父兄とか知り合いもいる。みんな“面白いね〜”みたいな反応で、怒る人は全然いなかった。

もともとこの辺りは海にも車で10分という好環境でもあり、移住者が多いエリア。新しい生き方や暮らし方に関心の高い人も多い土地です。

菜央 でも相当、気を使いました。工事の時は改めて、通行止めのご案内もした。でもおかげで、ご近所さんとも知り合えたからよかった。

土地も買ったし、これを機に消防団に入ったから、“どこかに行っちゃう人ではないんだ”と思ってくれたんだろうね。地元の人たちがやっと迎え入れてくれて、周りの見る目が変わった気がする。

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また菜央さんは最近、地域の人たちと一緒に薪集めにも参加しています。その名も「薪ネット」。

農家さんにとって、山の手入れを自分でやるのは大変です。そこで薪ネットが依頼を受けてボランティアで伐採をする代わりに、出てきた薪を無料でもらうという仕組み。共有の薪割り機で半日ほどかけて山積みの薪を作り、各自“自分が貢献したと思う分”を軽トラに積んで持ち帰ります。
 
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いずれ設置する薪ストーブのために、薪は薪ネットでシェアする実験中。

菜央 薪集めが人のつながりをつくっているんだよね。自分だけでやるとすごく大変だけど、みんなで協力すればやりやすい。クラブでは薪の基本やチェーンソーの使い方を教えてもらったり、おすそ分けをもらったり。

暖房代もタダになるし、皆ともつながれるし、地域の資源は活用されるし、森もきれいになる。そういう、全部つながった、理にかなった暮らしをひとつずつ作っていきたい。

お金のかわりに、必要になるもの

私たちの暮らしがこれまで依存してきた大きなシステム。そのつながりを媒介してきたのは、お金でした。ですがオフグリッドがもたらす新しいつながりには、お金に代わって別のものが必要になります。

菜央 たとえば、薪を買わない暮らしは、時間と手間がかかる。その楽しさを一度知ると、自分の働き方や暮らし方を全部、見直したくなってくる。時間の使い方が変わるんだよね。

菜央さんは現在、東京のオフィスに週4日ほど通っています。仕事が忙しくて、なかなか暮らしをつくること、地域の未来につながることをする時間がないのが悩みだそう。

菜央 自分の中で、東京での時間の使い方、つまり資本主義社会でのお金と時間の使い方と、ここでの暮らしのつくり方や、たとえば薪ネットでの人とのつながりとを、どうバランスさせて行くか? 悩みながら模索しています。

いいバランスの暮らしをつくっていくために必要なのはまずは無駄な支出を減らすこと、しあわせに生きていく上で大事なところから「つくる暮らし」を少しづつ増やしていくこと。
 
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妻のともみさんが取材中に焚き火で焼き芋を焼いてくれた。都会のマンション暮らしではできない贅沢。

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コンポスト。生ごみはこちらへ。ごみを捨てる回数も減ったとか。

自分でつくる暮らしは、お金はかからないけど時間や手間がかかる。だからこそ、作業や場所や資源をシェアできる「仲間」や「つながり」が重要になってきます。

菜央 “自分の暮らしをつくる”というと自分で全部やるみたいなイメージがあるけど、薪ネットみたいに皆でやれば、やりやすい。薪割り機は15万円くらいするけどシェアすれば持てるし(手作業に比べて)ものすごく早くて、10人で半日作業すれば薪の山が出来る。それを定期的にやって、2年前とかにストックしたものから使う。

シェアすることで個人の時間も確保して、みんなとの関係性もつくりながら、持続可能な社会をつくる、ということ。
 
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すべてを自力で何とかしなくてもいい。こうした「つながり」をつくるために、もうひとつ菜央さんが関心を持っているのが、地域通貨がつくるローカルなつながりと経済。

菜央 今、グリーンズで「ローカル経済とコミュニティ」クラスを企画したりしながら自分も勉強中です。地域通貨って、純粋につながりとコミュニケーションが増えるんですね。

地域内にいる人と需要が見えるようになる。お金を払って解決することじゃないけど、無料じゃ気が引ける、そういう需要。「引っ越してきたから家財道具を募集しています」とか、「◎月◎日、駅から家まで送ってほしい!」とか「この番組を録画してほしい」とかそういう情報が飛び交うわけです。

「パティシエ目指してるけど、お菓子つくったから売ります」とか小商いの実験もできる。地域のコミュニケーションツールとして、ローカル経済が生まれる場所として、すごく可能性を感じています。

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野菜も常温で。冷蔵庫がなくてもぜんぜんなんとかなると気づいた。

今まで私たちの暮らしを支えてきたシステムを一気に「オフ」するだけでは、孤独だし、しんどいし、きっと暮らしが破綻してしまいます。

「オフ」するためにこそ、もっと心地いい関係性に「つながり直す」知恵が大切なのです。

一人ひとりができる、生き方の実験

誰もがワクワクするような、菜央さんの暮らしの実験。ですがその出発点にあるのは、すでにあちこちでひずみやほころびが生まれている資本主義社会に対する危機感です。

菜央 今の経済システムがこのまま持続するとは思えない。あと数年で中国の不動産バブルが弾けたら、日本はまた激震に見舞われる。その時に何でもお金で解決する生き方をしていると、かなり被害をこうむると思う。

だから皆、もうひとつの軸足を持った方がいい。そういう暮らしの実験をしたいんだよね。

「僕は専門家ではないけれど」と前置きした上で、菜央さんが話してくれたのはこんなシナリオでした。

資本主義は、フロンティアと市場の「差」で儲けるシステム。人件費が安い途上国というフロンティアでつくって、市場がある先進国が買うパソコン、スマートフォンはそのいい例。僕たちが豊かに暮らせている理由。

全世界がフラットにつながったり、データのコピーがほぼ無料のインターネット空間というフロンティアと、いろいろな制約があって市場がある現実世界という差を活かすビジネスもたくさんありますよね。でも、途上国はどんどん豊かになってきているし、全員がインターネットにつながってくると、差を活かしたビジネスもどんどんやりにくくなってきた。

そこで、今や日本やアメリカの飽和した資本主義経済は、フロンティアを新たにつくるほかなくなってしまった。その結果、自国の中で格差がつくり出されつつある。一人ひとりに聞いてみればそんなことを求めていない人がほとんどなのに、システム全体としてはそれを目指してしまう。資本主義社会ってそういうものなのかなって思っています。

菜央 その先に未来があるのかというと、“ないよな”と思う。今の経済システムに加担するような生き方をしていたら、資本主義がおかしくなっちゃった時に本当に対処できなくなっちゃう。

だから自分の暮らしのニーズのすべてを消費行動で満たすのをやめて、お金じゃない解決策とか、困ったときに助け合える人間関係とか、自分で食べ物をつくる力とか。そういう、もうひとつの生き方を一人ひとりが実験して、模索した方がいいと思う。

実際、そっちの方が楽しいと思うしね。

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菜央さんが実験しているのは、私たちひとりひとりがオフグリッド=私たちの未来を望まない方に導きかねない大きなシステムとの相互依存を断ち切って、もっと気持ちいい関係性や大切にしたい人たち、自分の望む未来とつながり直すこと。まさにOFF-GRID LIFEが提案する「わるい“繋がり”を減らして、よい“繋がり”を増やしていく」ことです。
 
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なんだか嬉しかったのは、「新しいお家に引っ越してきて、どう?」という質問に、娘のにこちゃん・みりちゃんが「楽しい」「気に入ってる」と答えてくれたこと。

暮らしの冒険は、やっぱり楽しくなくっちゃ。まだ始まったばかりの菜央さん一家のタイニーな暮らし、これからがますます楽しみです。

(TEXT: 石神夏希、PHOTO: 伊藤菜衣子)

わたしたち電力公式ウェブサイト
「OFF GRID LIFE」

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この記事は、グリーンズに新しく加わったゲストライターさんに執筆していただきました。 グリーンズでは、ゲストライターを随時募集しております。詳しくは、以下をご覧ください。 http://greenz.jp/guestwriter_wanted/

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