ISSUE☆グリーンズ企画 greenz Talk!

1 year ago - 2015.04.18

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青森でも、下北沢でも。話題の書店「B&B」内沼晋太郎さんに聞く、おもしろい場のつくり方、回し方

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NPO法人グリーンズでは、だれでも自由に(無料で)読めるウェブマガジン「greenz.jp」をさらに発展させていくために、「greenz people」という寄付会員を募集しています。

その会員向けに、毎月欠かさず配信している限定メールマガジンでは、グリーンズメンバーが今抱えている悩みを先輩に相談する対談企画を展開中です。

2013年6月に配信したメールマガジン(コチラ全文が読めます)では、当時「リトルトーキョー」オープン直前の僕たちが、下北沢の新刊書店「B&B」ですでに盛り上がる場づくりに成功していた内沼晋太郎さんに相談しました。
 
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2013年6月に配信したメールマガジンは、コチラで全文が読めます。(限定メルマガは、配信半年後に一般無料公開しています)

そんななか、今年の3月からスタートした「greenz Talk!」は、過去に限定メルマガに登場いただいたゲストをお呼びして、1対1のディープな公開トークセッションで、さらに深堀りするトークイベント。

オープンから3年目に入り、ビール片手に楽しめる「これからの街の本屋」として、いつも盛り上がっている「B&B」。そんな、おもしろい場所をつくる秘密はなんなのでしょう? greenz.jpプロデューサー小野裕之が話をうかがいました。
 
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内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)
1980年生まれ。numabooks代表。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。2003年、本と人との出会いを提供するブックユニット「book pick orchestra」を設立。2006年末まで代表をつとめる。のちに自身のレーベルとして「numabooks」を設立し、現在に至る。異業種の書籍売り場やライブラリのプロデュース、書店・取次・出版社のコンサルティング、電子書籍関連のプロデュースをはじめ、本にまつわることを中心に、あらゆるプロジェクトの企画やディレクションを行う。2012年、東京・下北沢に「B&B」を博報堂ケトルと協業で開業。ほか、読書用品ブランド「BIBLIOPHILIC」プロデューサー(red dot award communication design 2012 を受賞)、これからの執筆・編集・出版に携わる人のサイト「DOTPLACE」編集長、街のシェアスペース「BUKATSUDO」のクリエイティブ・ディレクションなどを勤める。著書に『本の逆襲』(朝日出版社/2013)、『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版/2009)がある。

共同経営者が語る、B&Bの今

小野 今日は、「おもしろい場の運営」というテーマでお話ができればと思います。

内沼さん よろしくお願いします。

小野 今日はよくご存じない方もいるかもしれないので、あらためてB&Bがどんな本屋さんかを教えていただけますか?

内沼さん 「本屋はメディアである」とよく言われますが、B&Bはそれを意識的に、本気でやっている本屋ということになります。

今は本屋で本だけを売っていてもなかなか成り立たせるのが大変なので、本屋であるために、本屋という場のメディアとしての力を活かして、本だけを売ることにこだわらずに他のことを組み合わせている、というのがうちのお店の特徴です。

小野 その場を活かした最たる例が「毎日イベントを行うこと」だと思いますが、そもそもどうして毎日やろうと思ったんでしょうか?

内沼さん 「今日はB&Bで何やってるんだっけ?」と、下北に住む人や下北沿線の人が暇なときにチェックするようになってもらいたかった、というのはありますね。つまり映画館のように、毎日やってて当然と思われたかった。

小野 なるほど。B&Bに行けば何かやっていると。

内沼さん 本を買うみたいに、イベントにふらっと来てもらえるというのが、B&Bという本屋のもうひとつの “豊かさ”だと僕は思っていて。

芝居小屋や寄席のように、毎日違うトークイベントがやっている場所が街にあるというのは、嬉しいじゃないですか。B&Bに限らずどこでも、本屋はその箱になれる可能性があると思っています。
 
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小野 メルマガのインタビューのときにも、毎日イベントができるのは内沼さんと嶋さん(嶋浩一郎さん:B&B共同経営者 / 博報堂ケトル代表)だからじゃないですか?と聞いたら、そうじゃないということをおっしゃっていました。あれからさらに2年が経ち、現在の状況はどうでしょう?

内沼さん 今は企画から当日のアテンドまでひとりで進められるスタッフが、5~6人います。出版社さんに正面からお願いすればいいので、特別なコネクションがなくてもいい。

僕がやっているのは、企画をそのまま進めてOKかどうかといった最後のチェックだけですね。あとは自分でやりたいイベントをやるだけ。むしろ、みんなやりたい企画が多すぎるので、日程の争奪戦です。

小野 そうなると、気持ちも違いますよね。何かあったら自分が埋めなきゃ、と思っているときと、仲間に委ねておけば回るという状態とでは。

内沼さん 全然違いますね。それは、3年経って体制が整ってきたからだと思います。もちろん、それでも毎日顔を出しますけどね。そのためにずっと近所に住んでいます。
 
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Photo:Munemasa Takahashi

B&Bに学ぶ、“地方×本屋”の可能性

小野 内沼さんは最近、どんなことをされているんですか?

内沼さん 最近は、青森県の八戸市がつくる本屋のプロデュースをしています。現在の市長が「本のまち八戸」という構想を掲げて、その一環に「ブックセンター(仮)」という施設をつくるというのが公約に入っていた。それをどう実現するかという段階になって、廻りまわって僕のところに話が来て。

小野 なるほど。

内沼さん 今は月に2~3回八戸に行って、地元の書店さんや図書館さんをはじめ、本に携わるあらゆる人にヒアリングしたり、リサーチやディスカッションを重ねたりしている段階です。

具体的にはまだ何も決まっていないので、以下はあくまでぼく個人の思いですが、有名な、佐賀県武雄市の図書館があるじゃないですか。

武雄市図書館が「代官山蔦屋書店をベースに考えられた、公共の本の施設」だとしたら、ざっくり言うと「B&Bをベースに考えられた、公共の本の施設」をつくれるのではないだろうか、と考えています。

代官山蔦屋書店とB&Bは、規模は大きく違いますが、雑誌で本屋特集などがされるときには、横並びで紹介していただけたりする。

そう考えると、武雄市図書館のような大きな本館でない、いわゆる図書館の分館のような小さな施設でも、魅力あるものさえつくれば、大きな効果を上げることができるはずです。うまくいけば、他の地方自治体にも真似してもらえるような事例になるかもしれないので、力を入れて取り組んでいます。

小野 地方でも、イベントは毎日できるものなんですか?

内沼さん B&Bのように、毎日著者を呼ぶというのは、東京以外では難しいですね。

でもたとえば、北海道函館市にある函館蔦屋書店は、実際に毎日イベントをやっているんですよ。ここでやっているイベントは、地元の人が地元の人に教えるような、いわゆる公民館で行われているようなものなんです。

だからB&Bとイベントのスキームは違いますが、毎日やるという点では共通していて。「あそこで毎日何かやってるよね」と、地元の人に認知してもらうことは十分可能だと思います。

小野 地方だと、どうしてもコンテンツメーカーが少ないというイメージがあります。

内沼さん そうかもしれないですが、 “枠組み”があればいいんですよ。

小野 というと?

内沼さん 先ほど「公民館で行われているようなもの」と言いましたが、そういう「自分の得意なことを教える」というのも、それ自体がひとつの枠組みですよね。

大切なのは、それをどのように「受けてみたい」「聞いてみたい」と思われるような、魅力的な枠組みに変えるかというところです。

たとえばB&B鉄板のイベントで、「◯◯何年目ナイト」というのがあります。「コピーライター3年目ナイト」というようなものです。これは単に各広告代理店の、入社3年目のコピーライターが数人集まってしゃべるというものなんですが、毎回かなりの人が集まります。

この日の登壇者は、決して本の著者でも有名人でもありません。けれど「コピーライター3年目」という共通点があります。

「コピーライター3年目に共通の悩みについて語ります」とか言われると、広告代理店を志望する就活中の学生も、2年後にその立場を迎える1年目のコピーライターも、同じ境遇の3年目のコピーライターも、その人たちと仕事をする先輩やクライアントも、気になるわけです。

この場合は、共通点をある人を集めて可視化したことが、魅力的なコンテンツの枠組みになっている。そういう枠組みを考えられる「コンテンツメーカー・メーカー」さえいれば、その地域にいるいろんな人がコンテンツメーカーへ、いろんなものがコンテンツへと、変わっていくと思うんです。

小野 「ほたて漁師3代目」とかでもいいわけですね。

内沼さん そうそう。「イカ釣り10年目ナイト」でもいいわけです。

小野 そのイベントではイカも食えるんですよね?

内沼さん もちろんイカも食える。八戸はイカの水揚げ量が日本一で本当に美味しいですから、そのイベントには東京のみなさんもぜひ来たほうがいいですよ、ほんとに(笑)
 
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「B&B 2号店はない」

小野 B&Bもだいぶん下北沢に根付いた感がありますが、声がかかれば他の場所でもやる可能性はありますか?

内沼さん いや、いまのところは考えていません。僕らは別にB&Bをたくさんつくって、ビジネスを拡大したいとは思ってない。むしろB&Bから出て行った人が、新しくいろいろな何かを始めてくれるほうがいいと思っています。

小野 もう卒業生の活躍はあるんでしょうか?

内沼さん リトルトーキョーの「小屋ブックス」やリトルマガジン「HUB」をつくっている松井くん(松井祐輔さん)もそうだし、広島市の「READAN DEAT」という器と本のお店の店主の清政さん(清政光博さん)もB&B卒業生です。

あと僕は横浜のBUKATSUDOというスペースで「これからの本屋講座」という少人数制の講座もやっているんですが、もう3期目なので、ここの受講生にはさらにたくさん活躍している人がいます。

たとえば、最近リリースしたばかりの本と出会えるアプリ「Stand」は、開発者の井上さん(井上隆行)さんが受講生で、講座の課題としてアプリをブラッシュアップしていって、最終的にはぼくもアドバイザーとして加わることになりました。そういう人が少しずつ出始めていて、すごくいいなと思っています。

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小野 そういう方は、内沼さんにとってどういう存在なんですか? 自分と同じような価値観を共有して広めてくれる仲間なのか、それとも弟子なのか。

内沼さん 仲間ですね。ぼくは広義の「本屋」を、数も種類も増やしたいと思っていて、それは自分1人ではやりきれないですから。自分が人を増やしてたくさんの企画を実現するというよりは、B&Bのノウハウは公開するし、講座ではアイデアも提供するしアドバイスもするから、興味のある人はみんな来てねというスタイルです。

小野 なるほど。

内沼さん 僕はこの10年くらい本に関わることで、前例の少ないことをずっとやってきているので、多くの人が躓いてしまうポイントについて、人より知っていることがある。

そこで「本でこういうことをしたいけど、この部分が足りない」という人がいるときに、僕が少しアイデアを足したり、アドバイスをするだけでその人が自分で走れるようになるのなら、こんなにいいことはないと思っていて。

ぼくはそもそもアイデアというのは、それ自体には大した価値はないと思っています。

実現して初めて価値が出る。だからそこで生まれる本屋の価値は、あくまで受講生のみなさんが生み出したものです。僕はこの講座でその足りない少しの部分を補うことができたときが、最近やっていることの中では一番、単純に個人的な喜びを感じています。

小野 内沼さんがだんだん仏に見えてきました。

内沼さん いやいや、そんなことないです。講座はお金とってるから(笑)

小野 グリーンズでもスクールをやっているんですが、受講生たちとある一定の期間濃密な時間を過ごすことにはすごい意味があるなと思っていて。個人的に、スクール卒業生の活躍は人生の糧になっていますね。

内沼さん 僕もそう思います。いや、うれしいですよね。
 
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トーク修了後にはQ&Aの時間。その後も内沼さんは遅くまで会場に残っていただき、参加者との交流が行われました。

第1回目のgreenz Talk!、いかがでしたか? どんな“本の逆襲”がB&Bから、そしてその卒業生から生まれてくるのか、これからも楽しみです。

– INFORMATION –

 
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宮本 裕人

宮本 裕人

greenz.jp ジュニアライター 1990年、神奈川生まれ。科学者になりたいと思って大学では生物学を勉強しましたが、いつの間にか編集者を目指していました。Always Be Curious. blog: miyamoto radio twitter: @yutomiyamoto

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