ISSUE 国際交流

1 year ago - 2015.03.10

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世界の家庭料理を旅しよう!日本発ウェブサービス「KitchHike」開発メンバーに聞いた、キッチンから平和を広げる方法

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みなさんは昨日、どんな「ごはん」を食べましたか?

ごはんを食べる時間は、日々生きていく上でかかせない世界共通の日常。誰かと囲んだ楽しい食卓の記憶は私たちを幸せな気持ちにしてくれます。

ごはんを前に会話をすると、初めて出会った人同士でも仲良くなれてしまうのも不思議ですね。「ごはん」には国籍も性別も関係なく、人と人の距離を近づけてくれる優しい力があるのかもしれません。

今回は、世界を旅した経験から気づきを得て、世界中の食卓とつながることのできるサービス「KitchHike(キッチハイク)」を共同で立ち上げた山本雅也さん、藤崎祥見さん、浅利泰河さんにお話を聞きました。

彼らの言葉から、食卓やキッチンから世界を変えていく、そんな未来が見えてきました。
 
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左から、藤崎祥見さん、山本雅也さん、浅利泰河さん

世界中で料理をつくる人と食べる人がつながる方法

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「KitchHike」は、ひとことで言うと“誰かの家でごはんを食べられる世の中にする”サービス。世界中の食卓で料理をつくる人“COOK(クック)”と、食べる人“HIKER(ハイカー)”、その双方がつながることのできるオンラインのプラットフォームです。

2013年5月にスタートし、2015年2月現在、日本、中国、韓国、インドネシア、タイ、トルコ、フランス、インド、アメリカなど世界25カ国以上から約370の食卓が登録されています。
 
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食欲そそる写真とともにCOOKからのメッセージも掲載されている食卓紹介ページ

使い方は、とってもシンプル。利用を開始するには、まず、ユーザー登録(無料)を行います。

COOK(クック)になって自分の料理を食べてほしい方は、COOKとして登録を行った後、提供する料理に自分で値段をつけます(最低価格は10ドルから)。HIKERから予約が入ったら、入金を確認の上、承認処理を行います。

一方、HIKER(ハイカー)として世界中の料理を楽しみたい方は、食べたいメニューを探して予約をします。オンライン上で支払い処理を行い、COOKから承認を得ることで予約が成立。

あとはCOOK、HIKERともに予約当日を待つばかりです。 例えばスリランカ人の方の食卓は、こんな感じ。
 

食欲を誘うスパイスの香りが漂ってきそうな映像ですよね。旅行中、お店以外で家庭料理をいただく機会は、親しいつながりがない限り、なかなかありません。

このようなサービスを通して、現地に住む人に「よく来たね!待っていたよ」と迎えてもらえたらうれしい出会いになりそうです。

初めて会う人同士でも、こんな風に気軽に食卓を共にすることで、世界中にコミュニケーションのきっかけを生み出すサービス。それが、“世界の家庭料理を旅する”「KitchHike」です。

世界を平和にするために、はじめました。

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山本さん、藤崎さん、浅利さんは、約3年前、それぞれ会社員時代に共通の友だちに紹介されて知り合った友人。まずは、KitchHikeをはじめたきっかけについてお話を聞きました。

山本さん これはいつも僕らが話していることなんですけれど、KitchHikeは、“世界を平和にするために”始めました。世界を平和にするって、総理大臣も大統領もみんな言うじゃないですか。僕らはその具体的な方法をずっと探していたんです。

世界を平和にするための具体的な方法とは? 山本さんは、ある文章からそのヒントを得ました。

山本さん 内田樹さんが書かれた文章の一節に「個食の幸せ」という、食と共同体に関する内容があります。人間は共同体をつくるときに、車座になって一緒にごはんを食べてお酒を飲んでということをやると。

昔はどんな民族も、客人が来たときに友好の証としてごはんを振る舞い、言語が通じなくても絆を深めていた。この慣習は、世界中にあるようなのです。

それを読んだ山本さんは、ご自身の旅先での体験と重ね合わせます。

山本さん 僕自身も、旅先でみんなでごはんを食べることで親密になることを体験していたので納得できました。知らない人同士や、対立している人同士でも、その間に新しい絆を築ける。

仲良くなりたいと思ったときには、一緒にごはんを食べればいいだけ。こんなにもシンプルな解決策があったんだと気づきました。

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世界47ヶ国を旅していたときの山本さん。メキシコシティのキッチンで料理の様子を見せてもらう。

一方で浅利さんは、人がつながるキーワードとして「家」に着目していました。

浅利さん SNSで個人同士がつながり初めた時、個人の次の単位である「家」同士が、ネットでもリアルでも世界中でつながっていく世界を想像しました。でもいきなり「家に訪問する」と言っても難しいですよね。

そこで、身近な食である「ごはん」で結んだらいいのではないかと。当時、そういうサービスはまだなかった。だったら自分たちでつくろうと思ったんです。

藤崎さん 他にもいろいろ理由はありますが、メンバーの原体験がもとになっているところも大きいです。僕らは学生時代から旅や冒険が好きで、人と人との出会いから学んだことも多い。そこで互いに得たことが今につながっています。

3人の思いが重なり合って、KitchHikeの原型となるアイデアが誕生したのは、今から3年前のこと。それぞれの仕事にきりをつけ、共同で株式会社キッチハイクの創業を決意しました。

昔は、みんな一緒に「ごはん」を食べていた。

約1年の準備期間を経て、2013年5月、最初は6ヶ国30件の食卓から、サービスをスタートしたKitchHike。一見新しい発想のように思いますが、その本質は「食卓を取り戻す」ことにあると山本さん、浅利さんは語ります。

山本さん 今でこそ24時間いつでも1人で外食したりすることもできますけれど、それはここ20〜30年くらいの話ですよね。それ以前は、みんな一緒にごはんを食べていたと思うし、誰かの家でごはんを食べるのは、もっと普通のことだったと思います。

そこで得られていたものは、「お腹がいっぱいになる」とか「栄養がとれる」ことだけじゃなくて。ごはんを食べることで絆が生まれたり共同体が始まるという文脈が、ちゃんとあったと思います。KitchHikeでは、そこを取り戻したいという思いがあります。

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グアテマラのアンティグアで、お母さんにごはんをつくってもらったときのこと

浅利さん 「食卓を取り戻そう」という思いを伝えるために、今はマスメディアの力だけでなく個人が発信する力も大きいと感じています。

山本さん 考え方としては新しく思われますが、実は昔は当たり前のようにやっていたんじゃないかと思います。それを今、インターネットを通じてもう一度最高の文化をつくり、再分配したいと考えています。

個人から個人へと手渡される対価と思い

サービス開始当初は、サービスイメージが伝わり難く苦労したこともあったそうですが、動画で食卓を紹介するなどのアイデアで一歩ずつ課題をクリア。

2015年2月現在、メニュー登録数は370を突破し、料理をつくる人“COOK(クック)”と、食べる人“HIKER(ハイカー)”の間で、様々な形の異文化交流が生まれています。そして、さらにそこから、新たな価値が生まれる可能性も見えてきました。

藤崎さん 先ほど山本から「再分配」という言葉が出ましたが、僕らのサービスの根底には「資本と文化の再分配」をしたいという思いがあります。

キッチハイクでは、料理を提供する人が値段を決められます。例えば、ガーナにある村では10ドルのメニューを提供しています。村に共同の水道が2つしかなく、ガスではなく釜戸で料理をするような暮らしを送っている人々にとって、10ドルというのは大きなお金です。

今は世界中で資本の格差がありますが、資本を再分配する仕組みをつくって世界中の人に使ってもらうことで、貧富の差を抑えていけると僕らは考えています。

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浅利さん サービスを活用して、ガーナの人々の元に世界中から月に10人でも訪れるなら、彼らの日々の暮らしは劇的に変わるかもしれない。たとえ彼らが変えようとしなくても、貯蓄することもできるし使うこともできるという選択肢が生まれます。

企業で働いて給与を得るという手段だけでなく、例えば日本の主婦の方々が、日々の生活の中で直接の収入を得られるシステムをつくりたかった。僕らは、個人から個人へとお金が支払われるシステムを世界中に確立することで、人と人が仲良くなれる平和な社会を実現したかったんです。

人と人との距離が近くなる「ごはん」の不思議

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新しい関係性や関わり方が生まれているのは、ユーザー間だけではありません。KitchHikeメンバーのみなさんにも、仕事を通して出会う人とのコミュニケーションに大きな変化が起きているようです。

山本さん 僕と浅利は、前職は広告会社で働いていました。一緒に働く人とは、当たり前なんですけど、仕事が中心にあるので基本的はビジネスの話になります。

しかし、KitchHikeを通じて出会うユーザーさんとは、全てプライベートの話(笑)

映像の撮影などで同行する時は、家の中まであがりこんじゃいますし、一緒にごはんを食べるともう他人じゃないんですよ。

これまでに比べると人と人との距離感が圧倒的に近い。僕はそういう関わり方ができて、幸せを感じています。

たくさんの関わりが生まれている中、まだ実際には会えていないけれど、すごく会いたい人がいると山本さんは言います。

山本さん KitchHikeを見たときに「これは私のためにあるサービスだ!と思った」とメールを送ってくださった日本のCOOKユーザーの方がいました。食の仕事につきたいけれど、働きたいお店もないし、ただつくるだけというのも違う。そんなときに、KitchHikeを見つけてくれて。

浅利さん KitchHikeが始まって間もない頃、このCOOKのところに外国人のHIKERが行ったんですが、「すごく楽しかった!日本のことが知れたよ!」とお礼を伝えていて、お互いに楽しかったと言っていました。

僕らが直接関わりのないところでも、コミュニケーションが生まれているのを知ってうれしかったですね。

サービスを提供する彼ら自身も、出会いを楽しみながらKitchHikeを運営している様子。そのワクワクがユーザーに伝わって、サービスにいい循環を生み出しているのかもしれません。

いつも食べているもので、いつものやり方で

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食欲そそる写真とともにCOOKからのメッセージも掲載されている食卓紹介ページ

現在KitchHikeは、日本の食卓を中心に、世界中に広がりつつあります。でも、「COOKになるにはハードルが高いかな…」「初対面でも打ち解けられる?」など、初めて利用するときは少し不安を感じる方もいるかもしれません。

KitchHikeの楽しみ方について、アドバイスをいただきました。

山本さん COOKになる場合も、普段の“ありのまま”をHIKERの人に見せてあげるつもりで。いつも食べているもので、いつものやり方で、日常のままであるほどいいと思います。

自分にとっての普通は、誰かにとっては特別なこと。日常を共有するという感覚で、気負わずに参加してもらえたらいいなと思います。

そして、あまり海外へ行くことのない日本人の方にも、もっと気軽に利用してもらうため、浅利さんを中心にあるプロジェクトを展開しているのだとか。

浅利さん 日本にある身近な海外を紹介したいと思っています。日本には海外から来て暮らしている方が多くいるので、その方々に母国の料理をつくって提供してもらう仕組みです。旅行に行く前に、現地の人から詳しいお話を聞く機会にもなりますよね。

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日本在住のアルジェリア人のCOOK。一緒にスーパーで買い物をしました

藤崎さん 日本に住んでいる海外の人にインタビューしてみたところ、自国の文化を日本人に伝えたいと思っている人が多かったんです。みんな同じ地球に住んでいる人同士。それぞれが深く知っている文化を伝え合える機会そのものを楽しんでもらえたらうれしいです。

「KitchHike」のサイトを見ると、目黒に住むベネズエラ人の方や、代々木上原在住のスリランカ人の方など、様々な日本在住のCOOKが紹介されています。日本に居ながらにして海外の文化を身近に感じられるめったにない機会、あなたも利用してみてはいかがでしょうか。

世界中の人に参加してもらうことでつくる”未来の食卓”

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最後に、KitchHikeメンバーのみなさんの目指す未来について聞きました。

浅利さん 僕たちは今、やってみたことのない未来をつくっていくことを実験しています。そこには、世界中の人が経済に参加できるといいなという考えがあって。

自分の手の届かないところで動いているような現状の金融経済を、みんなの中にある”ごはんをつくる力”で変えたい。個人と個人でつながっていくことや考え方が、世界全体で増えていくといいですね。

藤崎さん これからの新しい経済の通貨は”信頼”だと思っています。「ごはんをつくる」というスキルを活用して人と人が出会うことで、「信頼」をエンジンに小さな経済がまわると感じています。

山本さん 今は個人的な世の中といわれますが、昔は個人の次の単位が「家」だったと思うんです。例えば4人家族でひとつの生命体というか、それくらい人と人が支え合って共有し合っていた世界。家族や夫婦だけでなく、寄りかかれる未来になるといいですね。

世界中の食卓で人と人が出会うきっかけをつくることで、信頼関係や新しい価値を生み出していくこと。それは、彼らが地球に生まれた1人の人間としてできることを考えて辿り着いた、ほしい未来をつくるための「ひとつの方法」なのだと思います。

「世界を幸せにする」というと、どこか壮大で難しそうに感じるかもしれません。しかし、わたしたちにとって身近な「食卓」を通じた方法は、誰もが関わりやすいアクションですよね。

みなさんが、ほしい未来について考えるとき、どんな未来を描くでしょうか。いつもの自分のままで気軽に、はじめられる方法を探してみませんか?

世界中の食卓を旅してみよう!
「KitchHike」はこちら!

writer ライターリスト

藤本 あや

藤本 あや

greenz ジュニアライター 広島県出身、鎌倉市在住。デザイナー、ライター。ときどき旅人。暮らし、働き方、食、ものづくり、地域、学びが日頃から気になるテーマ。 ものづくりをコミュニケーションの場として捉え、もの/コト/場をつくるKULUSKA(クルスカ)に所属。全国各地を訪れ参加型のワークショップ「旅するデザイン」を展開している。つくるひとを育む「自分でつくる教室」主催。地域に仕事をつくること、誰かと誰かの笑顔がつながる未来をつくることが目標。 暮らしの目線と旅の視点を行き来するリトルプレス「旅と手紙のある暮らし」を準備中。

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