一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

東京ではじまったグリーンズが、どうやって全国に広がったの? 編集長YOSHさん&プロデューサー小野さんに聞く「スケールアウトの現在地」

DSC_0337
一昨年に関西で開催した忘年会より

特集「グリーンズのひみつ」は、ウェブマガジンを読んでいるだけでは見えにくい、普段のグリーンズのこと、メンバーが考えていることを、より多くの方に知っていただくための対談シリーズです。

greenz.jpには、読みたい記事を「エリアでさがす」機能があるのを知っていましたか?(PCの方は、メニューから「さがす」をクリック!)

そこから「福岡」や「大阪」など地域ごとに絞り込むことができるのですが、最近は記事にさせていただく地域の広がりを感じています。

それもそのはず、ここのところプロデューサーの小野さんは、毎週のように福岡に飛んでいたり、編集長の兼松佳宏(以下、YOSHさん)は京都精華大学の教員に就任するということで、この春、鹿児島から京都に引っ越したり。特に関西や九州の話題でもちきりなのです。

もともとは東京ではじまったグリーンズですが、どんな風に活動を全国に広げていったのでしょうか? 今回はそんなテーマでYOSHさん、小野さんに話を聞いてみました。お相手はgreenz peopleアシスタントの渡邊が務めます。
 
NAY_0632
(写真:Yuko Nara)

活動を広げるコツは?

渡邊 前に、グリーンズのメンバーは4人という話を聞きましたが、むしろどんどん全国に広がっている感じがありますね。

小野 いろんなつながりが生まれたひとつのきっかけは、僕たちが東京でやっているgreen drinksを「あなたの町でも開催しませんか?」と呼びかけたことですね。

2010年に「green drinks Japan」を立ち上げて、今は150箇所くらいに広がりました。

渡邊 すごいですね。

小野 とはいっても、基本的に企画や運営はそれぞれのオーガナイザーが担当するので、ゆるいつながりなのですが、たまに「ミニ太陽光発電システムをつくりませんか?」などの企画を僕たちから呼びかけることもあって。

そのワークショップは全国10箇所くらいでやりましたが、今年はその太陽光システムを使って映画を上映する「ソーラーシアター」を広げていきたいなと思っています。
 
001
「green drinks Fukuoka」の様子

渡邊 どうやって広がっていったんですか?

小野 そもそも僕たちがメディアをやっているので、greenz.jpの読者がその地域のキーパーソンであることが多いんです。

そうした人たちが、「ソーシャルデザインに興味がある人たちが集まる、地元コミュニティを自分でつくりたい」と思って、連絡をくれる場合がほとんどですね。

YOSH 特に2011年の東日本大震災以降、もともとgreen drinks Tokyoに参加していた人たちが、地元に帰ったり、各地に移住したことも大きいと思います。もともと強い関係性があった上で広がっていった。

小野 グリーンズの寄付会員(greenz people)の方向けに、月に一度発行しているメールマガジンで、東京だけでなく、山形、大阪、神戸、福岡と、全国的なメディアへと広がっている東京R不動産の林厚見さんに「暖簾分けのコツ」を聞いたことがあるんです。

そのときに、「価値観が最初から握れていて、能力的にも回せるひと」が見つかるかどうかが大事だと言われたんですよ。同じテーマを抱えてきた「同志」のような人とは自然に出会っていくものだと言われましたが、その通りでしたね。

渡邊 グリーンズ的な価値観をすでに共有していた仲間たちの力で、どんどん広がっていったんですね。

「東京のメディア」からの脱皮

6ba56a6c2baf11e19e4a12313813ffc0_7

YOSH もうひとつは、グリーンズとして初めての本となった『ソーシャルデザイン』も影響が大きいですね。いままで接点が少なかった東京以外の人たちがグリーンズに興味を持ってくれて、問い合わせが全国から増えました。

ソーシャルデザインに関するフェアを展開している出版社さんたちの力も大きいのですが、あの本がなかったら、本当に「東京のメディア」になっていたかも。

渡邊 というと?

YOSH 僕たちが抱いている読者のイメージが、自然と東京近郊に住んでいる人になっていたかもしれない。あるいは、東京以外の読者のみなさまも、グリーンズと一緒に何かをやりたいと思っても、どこか距離を感じて躊躇してしまうかもしれない。

考え過ぎかもしれないけれど、無意識のところでそういうものってあるような気がするんです。

だから、僕が鹿児島に引っ越したあとに、西鉄さんから声をかけていただいて、「マイプロSHOWCASE福岡編」が始まったというのは、とても示唆的だなあと感じています。編集長が鹿児島にいるって、大きいメッセージなんだなって。

渡邊 なるほど。
 
nishitetsu01
「マイプロSHOWCASE福岡編」キックオフ!座談会にて。左から山口宰さん、YOSH(greenz.jp編集長)、松尾伸也さん(写真:前田亜礼さん)

小野 そもそもメディアは、地域で活動するときによく耳にする「風と土」の議論で言えば風の役割で、「必ずしもどこか特定の地域に深く根ざしている必要はないんだなあ」と思うようになりましたね。

greenz.jpとしては「ここは地方で、ここは都会で」と対立させるのではなく、フラットな視点を持ちたいと思っています。

YOSH 地域それぞれの特性は大事だし、魅力的なローカルメディアもたくさんあります。だから逆に言えば、greenz.jpは土着メディアになってはいけない。その間をつなげることが、僕たちの価値なのかなと感じています。

グリーンズのスケールアウトは続く!

小野 各地のクライアントさんとのやりとりで感じるのは、「とりあえずやってみよう!」という土壌があることですね。

大阪ガスとの「マイプロSHOWCASE関西編」や西鉄との連載など、地元に愛されている、力のある企業さんと一緒に仕事ができていることは、僕らにとっても学びが大きいです。

YOSH 大阪ガスさんとの仕事が決まって、初めて関西のライターさんを募集することができました。また、同様に福岡のライターさんも、西鉄さんとの仕事をきっかけに増えていった。

もちろんクライアントの方々がそれぞれ抱えている悩みを解決することは、仕事として当たり前のことですが、こうして一度でもライターさんとの関係性がつくれると、価値を生み出すベースができます。

これは本当にありがたいことだと思っていて。
 
hakusyu
大阪で開催した「マイプロCAMP!!」の様子(写真:NaraYuko)

渡邊 ちなみに、会員向けメールマガジンの創刊号の中でも、マドレボニータ吉岡マコさんと「スケールアウト」について対談をしていますね。

YOSH ちょうど大阪ガスさんとの仕事がはじまった、2013年の春の対談ですね。マコさんに聞かれてはっとしたのが、「何のためのスケールアウトか?」ということでした。

そのときは「いい宿題をいただけたので、もう少し整理ができたらまたお伝えしますね」と答えたんですけど。

渡邊 もうすぐ2年、今ならどう答えますか?

YOSH 今のところはまだ、「グリーンズの伸びしろを広げるため」というところに留まっているんですよね。

ただ、今後は、企画を生み出す編集者さんやライターさん、そしてお金を生み出すプロデューサーさんがチームを作って各地域に散らばり、それぞれの編集部が自走できるくらい稼げるようになることが、ひとつのゴールかもしれません。

そうやって人文系ソーシャルイノベーターとしての、ライターや編集者の新しい仕事像をつくっていけたらいいなあと思っています。

渡邊 ”伸びしろ”っていいですね。

YOSH 本当にまだまだ、できていないことだらけで。例えば「マイプロジェクトSHOWCASE」だけでも、北海道編や離島編、アジア編まで地域の魅力を掘り起こしていきたいですし、地域にかぎらず、教育編、音楽編もありえると思っています。

他にも『少年ジャンプ』のような『少年(少女)グリーンズ』や、左利きのための『レフティ・グリーンズ』もいいですね。絶賛、パートナーを募集中です!
 
scs_shounen
昨年4月1日のエイプリルフールには、『少年グリーンズ』の記事を公開したこともありました。

渡邊 左利きグリーンズ(笑) よくわからないけど面白そう!

YOSH それも半ば冗談、半ば本気ですが、greenz people のみなさんから寄付をいただいていることで、編集部内で「こんなことやりたいね!」という会話が増えてきました。こうして攻めの気持ちになれているのは、この9年で最大の変化で、本当にありがたいことだと思っています。

この春に京都に引っ越すのですが、リトルトーキョーのような場所を京都にもつくりたいですね。具体的な話はひとつもないのですが、とにかく自分たちでも数年後、どこで何をしているのか、想像できないくらいです。

渡邊 常に成長していくグリーンズということですね。ありがとうございました!

(対談ここまで)

 
グリーンズのスケールアウトの道のりを眺めてきた今回の対談、いかがでしたでしょうか?

地域の人たちとの丁寧な関係性づくりによって、どんどん活動の幅を広げていったグリーンズ。みなさんがあっと驚くような「マイプロSHOWCASE●●編」を、これからも楽しみに待ちたいと思います。

(Text: 渡邊めぐみ)