ISSUE 教育

1 year ago - 2015.01.13

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“デザイン思考”を当たり前の習い事に! モノコトシンキング西山恵太さんに聞く「子どもの創造力の伸ばし方」

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わたしたちが子どものころに映画やマンガの中で見たような、「あんな道具があったらいいな」と思っていたものが、21世紀になって次々と目の前に現れています。

たとえば、当たり前のように使っているスマートフォン。そこにはかつて夢見た「できたらいいな」がたくさんつまっています。

もしかしたら、あなたが子どものころに描いたアイデアも、形になったかもしれない。でも、きっと多くの大人たちは、「そんなの、やっぱり無理だよね」と手放してきたのではないでしょうか。

もし、あなたが発想力を育む方法を知っていたら……。
もし、あなたがアイデアを形にする力を伸ばす教育を受けていたら……。

モノコトシンキングの西山恵太さんは、スタンフォード大学で製品開発プロジェクトに携わったときに、そこで出会った学生たちの創造力に衝撃を受けました。そして、その背後にある”デザイン思考”というものの存在を知りました。

もし自分が子どものころにデザイン思考に出合っていたら……。

そんな想いが西山さんを動かしています。

これまでに日本各地の学校等でデザイン思考のワークショップを開催し、2015年にはデザイン思考をベースにしたアフタースクール「Curio School」の開校を控えている西山さんにお話をうかがいました。
 
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西山恵太(にしやま・けいた)
京都工芸線維大学にてデザインを専攻し、その後京都大学経営管理大学院に進学。その際にスタンフォード大学ME310プロジェクト(デザイン思考を活用した製品開発プロジェクト)に従事。2011年より株式会社野村総合研究所に経営コンサルタントとして新規事業開発支援や公官庁の政策調査・実行支援プロジェクトに携わり、現在に至る。

そもそも「デザイン思考」って何?

「デザイン思考」とは、簡単にいうと「デザイナーが日頃からアイデアを考えるときに行っている思考法を一般化したもの」です。「理解と共感 → 問題定義 → 発想 → 試作 → テスト」というステップを高速でくりかえすことで新しいアイデアを生み出していきます。
 
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まずは、ユーザーや現場で何が起きているのかをしっかりと観察し、ユーザーに共感すること(理解と共感)から始まります。

現場を観察することで解くべき問題は何かを特定(問題定義)したら、その問題についてアイデアを考えます(発想)。発想したアイデアについて試作品をつくり(試作)、テストしていきます。

デザイン思考は、スタンフォード大学d.schoolや、デザインコンサルティング会社であるIDEOが発祥で、海外の企業ではスタンダードになりつつあります。日本でもここ数年でメーカーなどを中心に取り入れられ始め、企業の製品やサービス開発、まちづくりなどで活用されるようになりました。

まさかの空気砲にいろんな意味で撃ち抜かれた

西山さんがデザイン思考を知ったのは4年前。大学院生として、スタンフォード大学での製品開発プロジェクトに1年間関わったときのことでした。2か国の学生がチームになり、企業からの依頼を受けて、実際に製品をつくるというプロジェクトです。

渡米して初めに取り組んだのは、ダンボールを使ったペーパーバイクをつくるという課題でした。いわゆるロボコンのようなイメージで、国ごとにチームになって1か月かけて取り組みます。
 
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コートの中央にあるボールをペーパーバイクを使って手前の木の枠に積んでいくという課題

西山さんたち日本人チームは、コンセプトを考えて、設計図を書くところから始めました。
 
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そして、完成したのがこちらの作品です。
 
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日本の文化もさりげなく(?)アピール

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一方、アメリカ人のチームは戦略もそこそこに試作にとりかかりました。つくってみて、実際に動かし、その試作品に改良を加えるというプロセスを繰り返していたのです。

そうしてできた作品は、なんと、空気砲を搭載!
 
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このオレンジの部分が空気砲になっていて、相手チームが積んだボールを落とせるようになっています。実際に、ちゃんと撃ち落とせるんです! 早い段階で試作し、テストをして修正をくり返しているので、できあがったものも精度が高い。

彼らの発想力に衝撃を受けたのと同時に、このように発想し、それを形にする方法が確立されているなら、もっと早く知りたかったと思いました。大学院に入ってからでは遅い、と。

これが西山さんとデザイン思考との出合いでした。

その後、スタンフォード大学でさまざまな経験を積んだ西山さんは、帰国後、小学生を対象にしたデザイン思考のワークショップを始めることになります。

子どもたちに「そんなん無理や!」なんて言わせたくない

野村総合研究所にコンサルタントとして就職し、社会人となった西山さんは、デザイナーの友人と一緒に、デザイン思考のワークショップをやらせてもらえる学校を探します。

とはいえ教育現場の教員から見たらまったくの門外漢。「デザイン思考」というもの自体がまだ世の中に浸透していなかったこともあり、ときには企画書すら見てもらえないこともあったそうです。

しかし、出会った人たちに自分の想いを粘り強く語ることで、2時間や半日といったワークショップを複数の学校等で開催することができるようになりました。

実際に授業をしてみてショックだったのは、誰かの提案に対して「そんなん無理や!」という声があがることです。斬新ですごく面白いアイデアなのに。

「できなかったら恥ずかしい」という気持ちが、自由な発想のじゃまをしてしまうようです。小学4年生くらいからその傾向が強くなります。

いくつかの学校で授業をしていくうちに、短い時間のワークショップでは、子どもたちの目が輝く瞬間があったとしても、それは一時のもので、何も変わらないのではないか、という気持ちが西山さんの中で強くなっていきました。

そんな折に、広尾学園から、半年間というスパンで授業をしてもらえないかという依頼が舞い込みます。

広尾学園では、生徒の探求する力を伸ばしたいという課題を持っていました。トントン拍子で話が進み、2014年5月から、土曜日の枠を使って、中高生を対象としたデザイン思考の授業を行うことになりました。

続けることで生徒の中に根付くデザイン思考

これまでの単発のワークショップとはちがい、広尾学園では半年かけてじっくり生徒と向き合うことができます。

最初はなかなか自分の意見を言えなかった生徒たちも、西山さんの問いかけによって、次第にためらいなく発言するようになっていきました。半年が過ぎるころには、同じチームのメンバーの意見も聞きながら、新しいアイデアを生み出せるようになっていきます。

2014年前期のコースでは、教室で学んだデザイン思考を実践すべく、学校の近くにある「広尾商店街」へ繰り出しました。

生徒たちは3〜4名のチームに分かれ、商店街をお客さんとしての目線で観察したり、商店街の人にインタビューしたりしつつ、商店街にある問題を考えます。最終的に、「自分たちにはどんなことができるのか」というテーマでアイデアを発表しました。
 

半年というスパンで関わってみて、生徒たちが「自分の意見を言えるようになった」ということが一番大きな変化だと思います。

「そんなん大したことないやん!」って思われてしまうかもしれないけど、最初に彼らに接したときは、なかなか自分の意見を言ってくれなかったんです。中には言える子もいたけれど、みんながちゃんと発言できるわけじゃなかった。

でも、自分ではしょうもないと思っていたことでも口に出してみたらみんなに認められたということを繰り返すうちに、発言することに意味があると認識し始めるんです。

現在は後期のクラスが開講中ですが、前期の様子をふまえて、学校側とも打ち合わせをしながら授業の内容もブラッシュアップしています。

土曜の午前中に教室をのぞいてみると、中学1年生から高校3年生までが混在しているにもかかわらず、中学生も物怖じせず発言し、学年の垣根を越えて活発に話し合いが進んでいました。

この講座に集まってきているのは「将来、デザイナーになりたいから」という明確な目的意識のある生徒もいれば、「なんとなく面白そうだと思って」という生徒も。しかし、共通しているのは「アイデア」や「デザイン」といったキーワードに反応した生徒たちであるということです。

前期の授業が終了したときにとったアンケートを見てみると、生徒たちが「人の意見を聞く、自分の意見を話す、現状を疑ってみる」ということの大切さをしっかりと吸収した様子がうかがえます。

最初は、「アイデアを生み出す方法」と聞いて、パッとアイデアがひらめく魔法のような方法を教えてもらえるのかと思った生徒もいたようですが、どうやら半年間の授業を通して、こちらが伝えたかったことをきちんと学び取ってもらえたようです。

デザイン思考を身につけた子どもたちは何ができるのか

教科の学習とちがって、デザイン思考を学んだ成果は、点数のようなわかりやすい指標で評価することが難しいものです。デザイン思考を身につけた子どもたちには何ができるのかということを目に見える形にしようと、企業と連携をとりながら、さまざまな試みが進んでいます。

そのひとつとして開催されたのが、竹下製菓と連携した小学生を対象としたワークショップ。テーマは「冬でも売れるアイスを考えよう」というものでした。
 
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竹下製菓HPより

初めは自分の意見を言うのをためらっていた子も、粘土を使って形をつくったり、絵を描いたりして、自分の意見を周りに伝えられるようになっていきます。「チームでひとつのものをつくり上げる」という経験を通して、子どもたちの中に変化が生まれます。

竹下製菓の担当の方には、小学生だからといって手加減しないでほしいと伝え、ダメ出しも厳しくしてもらいました。
 
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粘土でつくった試作品を持って竹下製菓の方に説明。野菜味のアイスってあまりないよね、というところからスタートして考えたかぼちゃ味のアイス

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ケーキの上に飾れるクリスマスツリーの形をしたアイス。アイディアは褒められたものの「クリスマスが終わったどうしますか?」と聞かれて思わず顔を見合わせる

商品開発のプロによる容赦ない指摘にがっくりと肩を落とす子もいれば、逆にやる気に火がつく子も。お互いに励まし合いながら、各チームともに最終プレゼンでは全員の前で自分たちの企画を発表しました。
 
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最優秀賞は雪だるまのアイス。表面はホワイトチョコでコーティングするのだそう

「デザイン思考」が習い事のひとつになる時代へ

小学生の早い段階から、チームで考え、新しいものを生み出すという経験を繰り返すことで、社会の変化に応じて人とつながり、その中で自分の能力を最大限に発揮できるような力を育てていく。

そんなデザイン思考を「子どもたちに学んでほしい!」と思った方におすすめなのが、西山さんが4月に東京で開校するアフタースクール「Curio School」です。

立ち上げにあたってモデルにしたのが、シリコンバレーにある「The Nueva School」。いわゆる探求型の学習をする全日制の学校です。

小学校1年生であれば、大きな画用紙に4人で話し合いながら一枚の絵を描くというようなことから始めます。「チームで何かを成し遂げる」という経験が土台となり、学年が上がるにつれて、高度なテーマについて建設的な話し合いができるようになるのです。
 
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The Nueva School

現在、日本で探求型の全日制の学校としては、東京コミュニティスクールやラーンネット・グローバルスクールなどがあります。ただし、これらは学校教育法第一条に定める「小学校」や「中学校」にはあたりません。そこで、子どもたちは地元の公立学校に学籍を置いたままこれらの学校へ通うことになります。

そんな事情もあり、現在の日本の環境では、全日制の探求型の学校に子どもを通わせることはなかなか勇気が要る選択です。しかし、これがもし週に1回、放課後や週末に通うようなアフタースクールなら、検討できる方も増えるのではないでしょうか。
 
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学生のころ、発想力は自分で手さぐりで身につけるもんや、と思ってました。大学に入ったばかりのころは、同級生と自分を比べて、同じように18年生きててもこんだけ差ができるもんなんやとがっくりしたこともあります。

でも、発想力は学べるし、鍛えることができる。その方法を子どもたちに伝えていきたいんです。

西山さんの考えに賛同する人が集まり、現在、「Curio School」の開校に向けて着々と準備が進んでいます。近い将来、「習字」や「ピアノ」といった定番の習い事のひとつとして「デザイン思考」が仲間入りする日が楽しみですね。

(Text: 松山史恵)

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writer ライターリスト

Fumie Matsuyama

Fumie Matsuyama

greenz シニアライター ライター/ヨガインストラクター 静岡県出身。横浜市在住。 大学卒業後、教育系の出版社で国語・小論文教材の編集に5年、新卒採用・新人教育に3年携わる。 現在はヨガインストラクターとして都内および横浜近郊のヨガスタジオ・カルチャースクール・スポーツクラブ等で指導を行っている。季節の移ろいを感じとる目を養い、それぞれの時期に合った身体を作る「こよみヨガ」を提唱し、都内・横浜でワークショップも開催している。 関心のあるテーマは教育・健康・女性の生き方。 website:纂灯舎 facebook:Fumie Matsuyama

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