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”留学生×シェアハウス”で、愛媛の空き家問題を解決! つながりと学びをコーディネートする「NPO SHARE LIFE DESIGN」

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近年、日本の人口減少に伴い、空き家の増加が問題となっています。メディアでもその話題が増えていますが、みなさんの周りではいかがでしょうか?

先日発表された、「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によると、日本の空き家の数は820万戸と、5年前に比べ、63万戸(8.3%)も増加。

また、空き家率(総住宅数に占める割合)も、13.5%と0.4ポイント上昇するなど、過去最高の数値となり、空き家の相続や活用などが進んでいない現状が浮き彫りになりました。

そんな中、全国的にも空き家率の高い愛媛(空き家率16.9%)で、“留学生”と“空き家”を結びつけた“シェアハウス”の取り組みが広がっています。

今回はその仕掛け人である、「NPO SHARE LIFE DESIGN(以下、シェアライフデザイン)」代表の山本康弘さんにお話を伺ってきました。
 
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山本康弘(やまもと・やすひろ)
1987年、愛媛県八幡浜市生まれ、松山市育ち。愛媛大学農学部生物資源学科地域環境工学コース卒業後、森松水産冷凍株式会社に勤務。2013年11月、「NPO SHARE LIFE DESIGN」設立。同年12月より NPO法人「いよココロザシ大学」のメンバーとして「瀬戸内しまのわ2014」授業コーディネーターを担当。

“学び”と“つながり”を提供するシェアハウスを次々と開設

シェアライフデザインは、2013年11月に設立。以前より留学生からの信頼が厚い愛媛大学教授のルース先生と、愛媛大学生協に勤める尾崎主幸さんと山本さんの3人でスタートし、これまでに4棟のシェアハウスを立上げました。
 
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設立のメンバー。左からルース先生、山本さん、尾崎さん

まず1棟目は、留学経験のある娘さんをもつ方が大家さんの「FOUNTAIN」というアパート。それまでは空室が多く、困っていたこともあってスムーズに契約が進み、現在は満室だそうです。

このアパートでは、3LDKの間取りに3人ずつが入居。留学生と日本人学生が一緒に暮らし、異文化交流が実生活でも図られる形となっています。

2棟目は、山本さん自身が前職時代にシェアしていた今治市の一軒家を改装し、新たにシェアハウスとして活用できるように整備。

また3棟目は1987年生まれ限定の一軒家シェアハウスとして開設。横のつながりを、より重視したタイプのシェアハウスになっています。ここには、四国87年会というコミュニティのメンバーが中心に入居し、運営してくれているそうです。
 
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3棟目の開設に携わった四国87年会のメンバーと山本さん

そして4棟目は、シェアライフデザインの取り組みをテレビで知った方から問い合わせがあり、契約となった一軒家。山本さん自身も住む、イベントやミーティングなどの活動拠点となっている場所です。

シェアライフデザインでは、留学生や入居者の特技を活かした“教室”を実施し、シェアハウスでの学びを促進しています。

これを、私たちは”Co-Learning Time”と呼んでいて、韓国語教室や英会話教室、ヨガ教室などを定期的に開催することで、入居者以外の方にも学びとつながりを提供しています。

今ではそれが発展し、さまざまなプロジェクトの打ち合わせや各界のリーダーを交えた交流会も開催され、“ソーシャルハウス”とも言えそうな側面も持ちつつありますね。

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英会話教室に参加したみなさん

入居者だけじゃない、いろんな人を幸せにするシェアハウス

シェアライフデザインのミッションは「人と人、人と地域、人と世界をつなげ、互いに学び合い成長できる場を創造することで、心豊かな生活を送ることができる世界の実現」。

入居者だけではなく、訪れる人やその地域・世界までを巻き込むことを視野に入れ、活動しています。

ただ住まいをともにするだけでない、シェアハウス。そこには、どんなメリットがあるのでしょうか。

まず、留学生にとっては、通常の不動産屋で求められる保証人が不要であり、家賃も抑えられます。その上、日本人と実生活において交流を図ることができ、より日本のことを知ることができますよね。

空室率に頭を悩ませている大家さんにとっては、空室率の改善が図られます。特に一戸建て賃貸住宅の活用は、これまでなかなか進んできておらず、喜ばれますね。また、近所に若者が集うことで、自分の子や孫のようなかわいい存在が増え、元気がでるそうです。

入居者以外の人にも気軽に来てもらえる開かれた環境づくりを積極的に行うことで、大家さんがシェアハウスに差し入れを持ってきたり、交流会に参加したりと、周辺住民と顔の見える関係構築が図られている様子。

互いに支え合う暮らしが生まれることは、地域にとっても大きなメリットになりそうですね。
 
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入居する留学生と地域の方との盆踊りを通じた異文化交流

水産会社からの独立。留学生とシェアハウスが結びついた理由

山本さんは大学時代、サークル「焼き畑の会」に所属し、焼き畑農業による農地の活性化を目指して県内外で活動していました。大学2年の時、その活動が発展し、「タイに炭焼き文化を広めるプロジェクト」に参加。タイの農地の土壌改良のため、現地に入りました。

そこで、農村地域の貧富の差を目の当たりするとともに、環境さえ変われば現地の人々の可能性が高まることを目の当たりにします。

大学卒業後は「海外の可能性を引き出すような仕事がしたい」と、地元にありながら海外との取引がある水産会社に就職。魚市場での現場経験を積みながら、貿易部署の最前線に出ることを今か今かと待ち望んでいました。
 
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タイに炭焼き文化を広めるプロジェクトに参加した山本さん

天気が訪れたのは、社会人になって3年目のときのこと。家と仕事場を往復する日々に物足りなさを感じはじめた山本さんは、近くに住んでいた友人とのシェアハウスをはじめます。

最初は戸惑うことも多かったそうですが、互いの友人と知り合いになれたり、視野が広がったり、もちろん家賃等の負担が軽くなるなど、シェアハウスの楽しさを経験として理解することができました。

また、ちょうどその頃、大学の恩師から「留学生の増加やニーズの多様化によって、大学側の寮だけでは留学生の対応が難しくなっている。一方で留学生自身が不動産屋に出向き、家探しを行っているが、保証人の問題などで契約になかなか結びついていない」という現状を耳にします。

そのとき、ピンときたんです。留学生同士だけでなく、日本人学生や若者などと共同生活をすると、異文化の交流も図れるし、より互いの国のことが理解できるようになる。だから留学生でシェアハウスをしたらおもしろいんじゃないかと。

それに、周りに空き家も増えてきていると聞いていたので、うまく結びつけられるはず。それからは、起業に向けての準備に夢中でした。

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愛媛県の留学生数の推移。愛媛県経済労働部管理局国際交流課による「国別留学生の推移」よりグラフを作成。平成18年に落ち込んで以降、再び緩やかに増加しています。

シェアライフデザイン設立から間もなく1年、今年2月には法人化を予定しています。

今後は、留学生500人分の住居をシェアハウスを創出し、留学生・日本人など幅広い世代で助け合えるような、愛媛ならではのシェアハウスを広めていきたいですね。

将来的には中古住宅のリノベーションやインテリコーディネートも手掛けることで、住まいと幸せをトータルコーディネートできるNPOになりたいと思います。

持ち前の明るさと行動力、そして何より人を惹きつける魅力を武器に、山本さんは日夜活動を続けています。
 
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シェアライフデザインの3つの事業

留学生でも、日本人でも、幅広い世代でシェアする暮らしには、たくさんの可能性が秘められています。ちょっと覗いてみたいと思った方はぜひ、シェアハウス主催のイベントに遊びに来ませんか?

(Text: 浜田 規史)