ISSUE☆おすすめの連載! 暮らしのものさし

1 year ago - 2014.12.26

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「家とごはん、つくってます」家を建てる側が住む人の暮らしかたばかり考えたらこうなった!鯰組・岸本耕さんが挑戦する、暮らしづくり

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どこに住み、どんな暮らしをつくるのか。本当に必要なものは何か。「暮らしのものさし」は、株式会社SuMiKaと共同で、自分らしい住まいや好きな暮らし方を見つけるためのヒントを提供するインタビュー企画です。

仮にみなさんが家を建てるとして、そのときどんな行動をとりますか?
ハウスメーカーの資料を取り寄せる、住宅展示場に行ってみる、もしくは自分で建てる方法を探す…なんて人もいるかもしれませんね。

これからご紹介する「鯰組」は設計から施工まで、家づくりを全て自社でこなす、家づくり職人の集団です。

鯰組代表の岸本さんは言います。

僕たちは、建てる家に住む人の”暮らし”をつくってます。

暮らしをつくるとは?
そもそも家を建てるってどういうこと?

今回は、”暮らしをつくるプロ集団”鯰組の取り組みから、これからの家づくりに必要なこと、住まいに対する捉え方、さらには建てた家がずっと継承されていくために何が必要なのかを、株式会社吉川の鯰代表・岸本耕さん、広報の馬把(まが)真理子さんに聞きました。

設計だけでは、暮らしはつくれない

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東京・池袋から地下鉄で一駅の要町。駅を出て、一本路地裏を歩くと見えてくる築60年の建物の2階に、建築事務所「鯰組」のオフィスはあります。1階には鯰組が運営する「なんてんカフェ」。毎日、子連れのママたちやご近所さんで賑わいます。

建築事務所とカフェ。あまり聞いたことのない組み合わせですが、ものづくりの精神を大切にしながらも人の暮らしにまで想像力を膨らませていくために、住まいをつくる「鯰組」と食から暮らしを考えるなんてんカフェというふたつの部門に分け、様々なプロジェクトに取り組んでいます。

例えば2014年9月に開催された「鯰展」では、鯰組が一目でわかるしかけとして、人物大の展示を用意。「家づくり職人集団」であることを知ってもらうきっかけの場となりました。
 
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外苑前のプリズミックギャラリーで開催された「鯰展」。オープニングイベントでは、なんてんカフェのスタッフによるお料理も振る舞われたそう。

さらには、桜設計集団との共同プロジェクトとして、日本らしい「木の家」に特化した設計の標準化、施工の合理化に取り組む「桜×鯰プロジェクト」も始動。

現場での間違いや手戻りをなくし、工期を短くするだけでなく、適正な設計料・施工費で家づくりをすることで、建て主、設計者、施工者、材料提供者など、関わる人みんながハッピーになる取り組みも始めています。

考えるより先に動く。大工修行を通してものづくりを体で覚える

鯰組は、設計士であり大工でもある岸本耕さんによって2009年に立ち上げられました。
 
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鯰組代表の岸本耕さん

設計士を目指し、大学で設計を学んでいた岸本さんですが、ある時、大工にとどまらず設計、施工、企画や研究でも活躍し、「学者棟梁」の異名を持つ田中文男さんと出会ったことから、建築の仕事の捉え方が大きく変わったそうです。

岸本さん そうか、建築の仕事は設計だけじゃないんだという、当たり前のことに気がついたんです。それならば、大工仕事から覚えようと、田中文男さんを訪ねて、早速修行を始めました。

学校では「よく考えよう」と教わりますが、「考えるな」と怒られるのが職人の世界。考えるより先に動く。つくる。これが僕の出発点となりました。

数年の現場修行を経て、大工として独り立ちした岸本さんは、2004年、個人事業を立ち上げ、設計も大工もできるマルチプレイヤーとして動き始めます。自社工場をもつことで「つくること」の徹底を図りながら、日本の家づくりの根底を考えることに取り組んできました。

岸本さんが鯰組を立ち上げた背景には、大工という職業をとりまく環境が厳しくなってきている現状があると、広報の馬把さんはいいます。
 
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広報担当の馬把(まが)真理子さん。

馬把さん 「鯰組」は、もともと代表の岸本がマルチプレイヤーとして家づくりをはじめたところから始まっているんですが、2011年に少し考え方が変わってきて。

それは大工が激減してきたことや、社会的に大工をとりまく環境が厳しくなっていく現状の中で、社会的な意義として、岸本がプレイヤーとして前にでるのではなく、少し引いたところでちゃんと技術を持った職人を育てて、つくった家を長い目でメンテナンスをしていける強い組織にしようという背景があるんです。

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鯰組施工事例。シンプルな作りにこだわり、心地よい暮らしが生まれる家を手がける。(撮影:三嶋義秀)

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(撮影:三嶋義秀)

株式会社として大工を抱えるのは異例なことですが、鯰組は現在、代表の岸本さんを筆頭に大工に親方、監督、広報で家づくりをしています。

付加価値より基礎価値。日本らしい木の家を考える

日本らしい住まいづくりに欠かせない大工という職を大切にしなければならない。そう考える鯰組は、昨年からもうひとつあらたな挑戦を始めます。

それは、高度な技術を必要とする木造建築の構造と防火に関する技術・研究開発を行う桜設計集団との共同プロジェクト、「桜×鯰プロジェクト」です。
 
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芝浦工業大学にて講師も勤められている岸本さん。

「桜×鯰プロジェクト」は桜設計集団代表、安井昇さんと岸本さんの対談がきっかけで生まれました。

家づくりが複雑になっていることに疑問を感じていた岸本さんと「普通の家づくり」を考える安井さんとの対談から、「対談の答えとなるような家をつくる」という発想が、このプロジェクトの始まりだったそうです。

岸本さん 日本の住宅は、もう一度原点に戻るべきなのではと思ったんです。そもそも家は、雨風をしのぎ、暮らしをおく、いわば箱です。

でも今の住宅には、例えば、キッチンまわりの便利さやガラスの機能、デザイン性といった、たくさんの付加価値が加えられすぎていて、家本来の基礎価値が見えにくくなっています。

そこで原点に戻って、日本らしい「木」の家にコミットし、基礎価値をしっかりみつめた家づくりをしようと木造建築の防火のプロフェッショナル集団として知られる「桜設計集団」とともに「桜×鯰プロジェクト」を始めたんです。

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桜×鯰プロジェクト第一弾の住宅。シンプルな形状へのこだわりは、構造と外壁といった家の基本を大切にし建主にあった家づくりを手がける「桜×鯰プロジェクト」のコンセプトから。

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スギのはりと床板が印象的な室内。

岸本さん プロジェクトでは、これまでに3棟の住宅を施工しましたが、そもそも、住宅は建築家の作品じゃない方がいいんです。デザインが特化することも付加価値。

僕たちは”暮らし”を考えたときに、本当に住みたいと思えるような木の家を建てたいと思っています。住宅の未来や大工をとりまく環境のことを考えた場合でもそこが重要なんです。

大工を、憧れの職業にしたい

家づくりのマルチプレイヤーから始まり、暮らしづくり、住宅の未来、大工の未来を見据え、その家づくりの形をどんどん進化させながら鯰組を引っ張ってきた岸本さんですが、そこから見えてきた”気づき”や”学び”について伺いました。
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現場では大工として腕をふるう岸本さん。

岸本さん 20〜30年前まで、大工の人数は100万人以上でした。しかし、その数は激減。今は40万人を切ります。そしてその半数は高齢者。若い人材が毎年数千人増えても、現状は毎年1万人減ってるんです。

その背景には工業化が進み、大工がものづくりをするというより、すでに出来上がってきた部品を大工が取り付けるだけになっていて、大工仕事そのものの魅力を失いつつあるという課題もあります。

大工が減ると、家づくりの未来はおかしな構造になっていくと岸本さんは言います。
 

岸本さん 家って、建てた人間より本来長く使われるものです。木造に関していえば、だいたい建てた木の樹齢くらい家はもつと言われています。

その家をメンテナンスできる職人が絶えてしまったとしたら、日本の木の家の未来はなくなってしまう。その課題に鯰組がどう取り組むかを考えたとき、「大工の社員化」という方向が見えたんです。

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隔月で発行している鯰組広報誌「鯰日和」。毎回自社の職人にスポットを当て、「大工を魅せる」ことにも力を入れている。

岸本さん 広報がいることも鯰組の特徴ですね。大工の魅力を知ってもらうことも大事だけど、家を建てるとき、建て主さんが「誰が建てているのかわからない」というのは、一緒に暮らしをつくっているとは言えないと思うんです。

鯰組は顔が見えるというより顔、人柄丸見え(笑)そんな状況のなかで、設計者とつくり手と建主さんが一緒に暮らしをつくっていく。もちろん、大工仕事、ものづくりのリアリティーを伝える手段としても鯰組には広報が必要なんです。

暮らしづくりに取り組みたい。だから、食卓から暮らしを考える

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ぬくもりを感じる木のしつらえが印象的な、なんてんカフェの店内

これまで、大工の現状問題の解決や原点に戻った家づくりを大切にしてきた鯰組ですが、鯰組のコンセプトのひとつである、「暮らしをつくる」をもっと身近に感じてもらうための場所として、新たにカフェの運営もスタート。「食卓から暮らしを考える」をコンセプトに、もともと鯰組のショールームとしてリノベーションしたオフィスの一階を「なんてんカフェ」として2010年にオープンしました。

そこには、鯰組の大きな目標、「暮らしづくりに取り組むプロ集団」でありたいという想いが詰まっていると馬把さんは言います。

馬把さん 暮らしづくりに取り組むにはどうしたらいいのか、どうやって提案していくのか考えたときに生まれた発想がカフェの運営です。

なんてんカフェのコンセプトは「食卓から暮らしを考える」ということ。家づくりが暮らしの舞台となる箱、ハードな部分とするならば、カフェは暮らしの中で繰り広げられる会話であったり、食事であったりする”ソフト”の部分。

どちらも”暮らしづくり”には欠かせませんよね。なんてんカフェは、ものづくりできる人間が配信する場所であり、外からふらっと入ることができる場所なんです。設計事務所って本来入りづらいですよね(笑)

なんてんカフェでは、家づくりを考える「家づくりのカフェミーティング」を始め、東京都豊島区要町というエリアにある隠れた名店のメニューを味わいながら地域を考える「マチクイ食堂」、地域のママたちによる手づくりマルシェなど様々なイベントが開催されています。
 
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なんてんカフェ前で開催された「こどもまつり」の様子

馬把さん なんてんカフェに行くと、美味しいごはんもあるし、「ちょっと興味のある暮らしのレクチャーに気軽に参加できて楽しそう!」と、このエリアの方に感じてもらえればと思っています。

その先になんてんカフェの空間っていいな、とか、素材を吟味して丁寧につくるご飯はおいしいな、こんな暮らしがいいな、と気づきが生まれる。暮らしかたから家づくりを考える。そこを知ってもらうきっかけがなんてんカフェであればと思うんです。

鯰組×なんてんカフェが描く未来

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ほっと一息つきながら暮らしを少し考える空間が広がるなんてんカフェ

馬把さん このエリアにはカフェがなく、なんにもない印象だったんです。オープンすると、近所のママたちが喜んでくれて。

「食卓から暮らしを考える」がコンセプトのメニューは、手間暇をかけ、丁寧につくる家庭料理です。自然とこのエリアに住むいろんな世代の人が足を運んでくれるようになってきて、同時に鯰組がこの街に馴染んできたというか。

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なんてんカフェの入り口にて。

鯰組がこの地に拠点を置き、家づくり、暮らしづくりをする。そこで終わってしまうのではなく、この地域とともにコミュニケーションをとりながら若干ゲリラ的にものづくりを浸透させていく。

そこには「自分でつくった暮らしは楽しい!」をまず体感してほしいという想いが詰まっています。

すでに「鯰組」はこの町のランドマークであり、これからも、私たちに暮らしをつくるヒントを届けてくれます。

大工のこと、家づくりのこと、なんてんカフェのおいしいごはん。気になったらまずは鯰組を訪れてみませんか? おいしいごはんと素敵な空間があなたを待っていますよ!

鯰組が運営する「なんてんカフェ」に行ってみよう!
「なんてんカフェ」

writer ライターリスト

たけいしちえ

たけいしちえ

greenz ライター 湘南在住。大豆レボリューションに参加のち、大豆の魅力の虜に。大豆を育て、収穫、味噌を仕込むサイクルを基本とした365日を営む。大豆栽培7年目。神奈川県津久井在来種を化学肥料に頼らず、自然の力で収穫中。

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SuMiKa

これまで、家づくりと年収は切っても切れない関係でした。 住みたい家に住めるのは特別な人たちだけ、そんな思い込みをなくして、好きに思い描いて、こだわり続けて暮らす。 SuMiKaは、自分にフィットする暮らしを応援したいと考えています。 どこに住み、どんな暮らしをつくるのか。 本当に必要なものは何か。 自分にフィットする「暮らしのものさし」を、探してみませんか? ⇒ https://sumika.me

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