ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

1 year ago - 2014.12.25

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“寄付のマジック”を社会の力に! NPOマネジメントラボ・山元圭太さん×日本ファンドレイジング協会・鵜尾雅隆さんに聞く「幸せを増やす寄付の広げ方」

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みなさんは「寄付」という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?

「コンビニの募金箱にお釣りを入れるくらいかな」「大きな災害が起きたときにはしたけど、普段はあんまり…」「お金持ちの人がするもの?」

などなど、あまり馴染みがなかったり、”特別な人”がする行為と思っている人も多いのではないでしょうか。

よく言われるのが、欧米に比べて日本には寄付文化がないという話。しかし、神社の修復やお祭りに寄進する日本人がたくさんいることを考えれば、一概にそうは言えないのかもしれません。

むしろ、「社会のために何か役に立ちたい」と考えている人が増えているいま、寄付こそが、素敵な未来をつくるための格好の “入り口”になる可能性もあるはずです。

寄付は、社会の幸せの総量を増やすもの。

NPOマネジメントラボ」の山元圭太さん(認定ファンドレイザー)、「日本ファンドレイジング協会」の鵜尾雅隆さん(認定ファンドレイザー)という、日本を代表するプロフェッショナル・ファンドレイザー(NPOなどの団体の資金調達を担当する人) のおふたりはそう口を揃えます。

そんな“幸せが増える寄付”がこれからの日本で増えていくためには、どうすればいいのでしょうか。グリーンズの寄付会員制度「greenz people」を担当する植原正太郎がおふたりに聞きました。

ファンドレイジングのプロができるまで

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左から、鵜尾雅隆さん、山元圭太さん、植原正太郎

鵜尾雅隆(うお・まさたか)
日本ファンドレイジング協会 代表理事。91年以降、日米インドネシアのさまざまなNPOの理事、運営委員などとして資金調達、起業顧客の開拓を経験。2004年米国ケース大学Mandel Center for Nonprofit Organizationsにて非営利組織管理修士取得。同年、インディアナ大学The Fundraising School修了。 2005年帰国後、「ファンドレイジング道場」を立ち上げ、ファンドレイジングのノウハウや寄付事業の各国比較などを発信している他、講演、全国各地での研修、個々のNPO向けのファンドレイジング改善や戦略策定のコンサルティングなどを行っている。2008年7月、ファンドレイジング専門のコンサルティング会社である株式会社ファンドレックスを創業。2009年2月、日本ファンドレイジング協会の発足に携わり、常務理事に就任。2012年6月より現職。 著書に「ファンドレイジングが社会を変える」等。
山元圭太(やまもと・けいた)
NPOマネジメントラボ 代表/認定講師/認定ファンドレイザー。1982年滋賀県生まれ。同志社大学商学部卒。卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月に認定NPO法人かものはしプロジェクトに入職。日本事業統括としてファンドレイジングや組織構築を担当。2014年9月に独立し、日本各地のソーシャルベンチャーやNPOのコンサルティング・支援を行なっている。専門分野は、NPO戦略立案、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化など。

植原 まずは、おふたりがいまのお仕事を始めたきっかけを教えてもらえますか?

鵜尾さん 私は2002年からの2年間、アメリカのNPOでファンドレイジングの仕事をしていたんですね。

日本に帰ってきてからは国際協力の仕事をしつつも「ファンドレイジング道場」というブログでそのノウハウなんかを書き続けていたんですけど、もう勢いが止まらない感じでした(笑)

するとだんだん、ブログ経由でファンドレイジングの相談を受けるようになって、「これを本業にしなきゃな」と思って独立したのがきっかけです。

植原 グリーンズでは自分ごとから始めるプロジェクトを「マイプロ」と呼んで応援しているんですけど、鵜尾さんもファンドレイジングの文脈でマイプロをされていたんですね。

鵜尾さん 阪神大震災以降、日本にもNPOが増えてきたんですが、多くの団体がお金に困っている状況だったんです。肉は付いてきたけど、よく見ると血が流れていない、そんな感じで。

「そろそろ誰かがNPOを支える”お金のしくみ”について、向き合わないといけない」と思い、2009年に「日本ファンドレイジング協会」の設立に加わりました。

植原 なるほど。

鵜尾さん 実際、現場で頑張っているNPOのプレイヤーがどんどん増えているんです。それがこの業界の半端なくおもしろいところ。

でも社会を動かすためには、全体像を描いたロードマップも必要なんです。当時はそれがなかったので、つくらなきゃと思いました。

植原 山元さんはいかがですか?

山元さん 僕の原体験も阪神大震災なんですよね。そのとき何か社会の役に立ちたいと思って、大学では海外のボランティア活動やNPOのインターンに参加していたんです。

そこでわかったのは、熱い想いと知識・経験を持った現場のプロたちはたくさんいるんだけど、経営やマネージメントのプロが全然いないということでした。

僕は大学が商学部でビジネスのことを勉強していたので、どこかの駐在員になるよりも、「ビジネス×NPO」というテーマで何か貢献できることがありそうと思ったんです。

植原 その後、経営コンサルの経験を経て、児童買春の解決に取り組む「かものはしプロジェクト」に関わったたんですよね?

山元さん はい。5年間NPOのファンドレイザーとして仕事をし、今年の9月に独立しました。いまはセクターを問わずに、「社会を変えたい」と思っている人たちの想いを形にするお手伝いをしています。
 
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幸せの総量を増やす、寄付のマジック

植原 僕も含めて、そもそも寄付とはどういうものなのか、ふわふわした思いを持っている人も多いと思うんです。もし僕が3歳児で、「寄付って何?」と聞かれたら、おふたりはなんと答えますか?(笑)

山元さん 僕がよくいうのは、「あなたが生きたい世界に一歩近づくための買い物」だということです。

そう確信できたのは、かものはし時代に講演で知り合った、ある中小企業の社長さんとの出会いからでした。ありがたいことに数百万円の寄付をしていただいたので、後日そのお礼のために伺ったんです。そこでお金をどう使ったかの報告をしたところ、「本当にありがとう」とおっしゃっていただいて。

その方は以前から子どもの問題に関心を持っていたのですが、どうすれば貢献できるのかがわからなかったそうなんです。

そこで僕たちのNPOなら信頼できると寄付をしたことで、「自分がずっと心を傷めていたことが晴れた。そういう機会をくれてありがとう。自分は稼ぐことしかできないけど、そのお金をまた寄付するからそれで問題解決してくれ」と。

植原 とてもいい話ですね。

山元さん その寄付によって、現地の子供たちも救われるし、僕たちNPOもハッピーになる。さらに寄付してくれた人もハッピーになる。これはすごくいい仕事なんだと、本質的な気付きがありました。
 
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鵜尾さん 寄付を考える際に、そのお金を動かしたときにどんな変化が生まれるか、どんな笑顔が生まれるか。誰かと想いを分かち合うとどんな感覚がするのかという方が本質なんですよね。

お金はAさんからBさんに移ると、片方が増えてもう片方が減る。だけど、幸せな気持ちは寄付で分かち合っても減らない。むしろ両方にとって増えていく。

寄付って、そのお金に乗っかっている想いがものすごい勇気を与えてくれるときがある。その想いに関わった人の心が動き、社会の幸せの総量が上がっていくんです。これは、寄付のマジックだと思います。

植原さん ペイフォワードに近い感覚ですね。

山元さん いい寄付は等価交換以上に幸せが増殖していくので、不思議な錬金術みたいですよね(笑)

これからの寄付が、“かっこいい”になれば

植原 そういう想いのあるお金を増やしていくためには、なにが必要なんでしょうか?

山元さん  率直に言えば、寄付の受け手と出し手、両方が成長していかないといけないと思っています。

受け手側の課題でいうと、約束通りきちんとミッションを実現できる団体が増えていかないといけない。そして出し手の課題は、自分が大事にしている価値観を知って、それを実現してくれるNPOを知ることです。

先ほどの買い物の例で言えば、出し手は何を買いたいのかをまず知る。そして受け手は、買ってもらったからにはその商品を約束通り届けることに責任を持つ。
 
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鵜尾さん 寄付ってね、字を見ると、「寄り添って付き添う」と書いてあるわけですよ。たとえば、自分は東北に行って支援活動はできないけど、活動しているNPOに寄付をすることで被災者の気持ちに寄り添ってあげることはできる。

そうやって寄り添うことのできる誰かがいることで、自分の気持ちにとってもプラスになるし、社会にとってもプラスになる。そんな感覚で、寄付が自分の喜びにつながっているという雰囲気が、日本に出てくることは大事だと思いますね。

山元さん 寄付をすること自体が、かっこよくてポジティブなもの、自慢したくなるものにもっとなっていくといいですね。

社会を変えたいと思っているなら、必ずヒントがある

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植原 来年2月に開催される日本ファンドレイジング協会主催の「ファンドレイジング・日本2015」(以下、FRJ2015)も、その延長線上にあるんですね。これはどういった内容になりますか?

鵜尾さん 日本中のファンドレイジングの成功事例を集めて、日本一元気になる場にしたいと思っています。今日は資金調達のひとつの方法である寄付の話が中心でしたが、寄付集めだけではなく、ファンドレイジングは「共感を集めて人を巻き込んでいく」ことだと思うんです。

多くの人の参加によって成功したプロジェクトや地域ならではの資金循環など、わくわくするような事例が2日間でたくさん紹介される。それを聞いているだけで「お、自分でも何かできるんじゃない?」と、発想のパラダイムが変わっちゃうような機会になるといいですね。

植原 主催者として、どういう人に来てほしいですか?

鵜尾さん 自分の経験を活かして、社会の課題を解決するために何か役に立ちたいと思っている方には、是非来てほしいですね。必ずヒントがあると思います。

今年のテーマは「日本社会を、動かす。」なんです。今までもファンドレイザーの育成はやってきて、形はでき始めてきた。これからはいよいよ日本社会全体を巻き込んでおもしろい未来をつくっていくステージだと思うので、今までNPOやファンドレイジングに関わったことがない人にこそ面白い場になると思います。

植原 山元さんは第1回目から登壇されていますが、FRJ2015はどのような場所だと思いますか?

山元さん 僕自身そうだったように、ビジネスパーソンが社会を変えたいと思ったときに、一番入りやすい分野がファンドレイジングだと思います。しかもいまの日本経済の中では、ファンドレイジングは数少ない”成長産業”でもあるんです。にも関わらずプレイヤーは少ないので、敢えて言えばブルーオーシャンとも言える(笑)

この波に乗るなら今だと思うので、まずはFRJ2015に来ていろいろな事例を知ることが、自分の働き方について見なおしたり、社会にもっと貢献するためのちょうどいいドアになるかなと思います。

(鼎談ここまで)

 
3人の対談、いかがでしたでしょうか?寄付は「あなたが生きたい世界に一歩近づくための買い物」である。「寄付」に対するイメージに少しでも変化があれば、とても嬉しいです。

FRJは2015年2月14・15日に開催ですが、グリーンズの植原も登壇予定です。ファンドレイジングや寄付に興味を持った方、社会の課題を解決するために何かしたいと思っている方は、ぜひ足を運んでみてください。

FRJ2015に行ってみよう!
ファンドレイジング日本2015

writer ライターリスト

宮本 裕人

宮本 裕人

greenz.jp ジュニアライター 1990年、神奈川生まれ。科学者になりたいと思って大学では生物学を勉強しましたが、いつの間にか編集者を目指していました。Always Be Curious. blog: miyamoto radio twitter: @yutomiyamoto

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