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1 year ago - 2014.12.24

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ゆずの北川悠仁さんがセレクトした1枚も! 世界の路上で暮らす子どもたちの思いをカレンダーで届ける「ストリートチルドレン芸術祭」

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仙台市街のデパート前で行った販売会で、カレンダーを掲げる大学生たち。 © ストリートチルドレン芸術祭

みなさんは、来年のカレンダーはもう準備しましたか? 毎年様々なカレンダーが店頭に並ぶ中、自宅や職場用に「コレ!」というひとつを選ぶのは、なかなか時間がかかりますよね。

お店や企業からのもらい物を使うという方や、パソコンやスマホがあるから特に買わない、という方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方にも是非知っていただきたいのが、ボランティア団体「ストリートチルドレン芸術祭(以下、芸術祭)」が発行しているチャリティカレンダーです。
 
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先月発売された2015年カレンダー。「ゆず」北川悠仁さんが選んだ絵が表紙を飾ります。 © ストリートチルドレン芸術祭

インド、インドネシア、カンボジア、ザンビア、タンザニア、モンゴルの子どもたちによって描かれた139点の絵の中から選ばれた、13作品を収録。

カレンダー販売費から必要経費を除いた収益は全て、NGOなどを通してストリートチルドレン支援に充てられます。2005年にスタートして以来、今までの寄付総額はなんと1,300万円を超えるというから驚きです。

絵の選考者には、「ゆず」北川悠仁さんなどのミュージシャンや、プロフィギュアスケーターの鈴木明子さんなど、各界の著名人が名を連ねます。この豪華なカレンダーは、一体どのようにして生まれたのでしょうか?

世界の20人にひとりが、ストリートチルドレン

世界中には、戦争や紛争で生活の場を失ったり、家庭環境の崩壊や親の暴力から逃げ出したり、経済的な事情で学校に行くこともできず、やむなく路上で暮らす子どもたちがいます。

こうしたストリートチルドレンは、世界中に1億から1億5,000万人も存在すると言われ、実に日本の総人口もしくはそれ以上の数に相当。世界の20人に1人が、路上生活を余儀なくされていることにもなります。

学校に行くこともできず、物乞いや日雇いの仕事を探して暮らすストリートチルドレンは、犯罪や薬物、性的暴行に巻き込まれたり、臓器売買のために命を奪われたり、子ども兵として戦場に送り込まれるなどの恐怖や危険と隣合わせで暮らしています。

各国政府やNGOが運営する施設で保護された子どもたちの中には、立派に自立してく一方、路上生活に再び戻っていくケースも少なくありません。
 
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カンボジアの首都プノンペンにある、貧困などの理由から学校に行けない子どもたちのためのフリースクール「愛センター」で遊ぶ子どもたち。 © ストリートチルドレン芸術祭

そうした過酷な状況で生きる子どもたちを支援しようと芸術祭が始まったのは、2005年静岡県熱海市の「小嵐中学校」(以下、小嵐中)でした。

玄岳の中腹に位置する小嵐中は、自然に恵まれた環境教育実践校。2004年に地元新聞社主催の環境に関する座談会に出席した生徒が、静岡県出身の歌人で、当時国連WAFUNIF親善大使だった田中章義さんに出会ったことが縁で、翌年、田中さんが小嵐中を訪れます。

田中さんは中学生たちに、世界中を旅して出会ったストリートチルドレンについて話をします。世界で自分と同年代の子どもたちが置かれている現状に衝撃を受けた中学生たちは、「ストリートチルドレンのために、何か行動を起こしたい!」と申し出ました。

2005年に開催される「愛・地球博」の総合プロデューサーとして、路上で暮らす子どもたちの絵を展示する芸術祭に関わってくれる中学生を探していたという田中さん。生徒たちが真剣に話を聞く姿を見て、小嵐中に芸術祭の参加を依頼します。

当時同校長だった中島洋一郎先生(現:芸術祭代表)のバックアップのもと、芸術祭の作品送付先として、小嵐中が絵を取りまとめるという大事な役割を担うことになります。
 
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フィリピンの15歳少年によって描かれた「将来自分が住みたい家」というタイトルの作品。「自分が15年間生きて来た中で、ここが1番安全な場所だから」というコメントに、中学生たちも心を打たれたといいます。 © ストリートチルドレン芸術祭

アンゴラ、インド、ザンビア、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ、ルワンダで活動するNGOなどを通して153点の子どもたちの描いた絵が小嵐中に集まり、「愛・地球博」で最初の展示会が開催されました。

また、集まった絵の中から、芸術祭の主旨に賛同してくれる各界の著名人に、無償で絵の選出を依頼。選出された作品を掲載した、2006年カレンダーを制作します。その売上から必要経費を引いた収益約80万円は、現地NGOを通じて路上や難民キャンプなどで暮らす世界の子どもたちのために活用されました。

大学生らしさを前面に 東北版オリジナルカレンダーの完成

当初は静岡県の中学校と、国際協力関係者や教員、主婦などで構成される東京支部が担っていた芸術祭の活動。現在は、宮城県の大学生を中心メンバーとする東北支部が運営しています。どのような経緯で、その原動力が伝わったのでしょうか。

芸術祭東北支部事務局代表で、「東北福祉大学」(以下、福祉大)准教授の生田目学文(なまため・のりふみ)先生に、お話を聞きました。
 
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生田目学文先生 © ストリートチルドレン芸術祭

東北支部発足のきっかけは、2007年3月に「独立行政法人国際協力機構」(以下、JICA)と「財団法人仙台国際交流協会」(現:公益財団法人)の共催で実施された「地球市民講座」というイベントでした。

そこで私が田中章義さんの講演を聞いて大変感銘を受け、是非大学に講師として来てくれないか、とお願いしたのです。

田中さんはその後仙台に訪れてくださり、授業で学生たちに世界のストリートチルドレンの状況についてお話をしてくださいました。その悲惨な現状に、涙を流しながら聞き入る学生もいるほどでした。

講義後に田中さんが、「福祉大版カレンダーをつくるのも面白いんじゃないですか?」とおっしゃられたのです。素晴らしいアイデアだと思いましたが、そのときは実現するとは考えもしませんでした。

生田目先生は同年8月に、東京にある芸術祭実行委員会本部に立ち寄りました。ちょっと顔を出しただけのつもりが、実行委員会では既に福祉大が参加してくれる、という流れになっていて、驚いたといいます。

その後、仙台に戻ってゼミの学生たちに話したところ「是非やりたい」と即答し、大学側も快諾。主体的にこの活動に取り組みたいと意気込んだ学生たちは、福祉大独自のカレンダーを制作したいということになりました。

企画から制作、販売、広報、寄付までの一連の流れや、現地で活動するNGO、選考者や印刷会社とのやりとりなども含めたありとあらゆる作業を、大学生たちと生田目先生が一から手探りで進めることになりました。
 
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東北福祉大学版として初めて制作した、2008年4月始まりのカレンダー。一部1,000円。 © ストリートチルドレン芸術祭

「東北らしさ」も意識し、仙台市出身で当時メジャーリーガー(現:東北楽天ゴールデンイーグルス)の斎藤隆投手を始めとした、地元や福祉大にゆかりのある面々に絵の選考を依頼。芸術祭本部で制作されているカレンダーとは別バージョンの、福祉大版オリジナルカレンダーが完成します。

地域イベントでの出展や、仙台市街デパート前での販売会、ネット販売などの手段で販売されたカレンダー。本部版の販売収益と合わせると、寄付金額も300万円と前年度の110万円から2倍以上にアップし、ストリートチルドレン支援に大きな貢献を果たします。

翌年の2009年度版は、卓上型カレンダーを制作。その月が過ぎた後も、絵の部分だけを切り取ってポストカードとしても使用できるデザインという、アイデアあふれる商品になりました。
 
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一部500円で販売された、2009年度版からの一枚。「世界中の人たちが、いつでもどこでも平和に暮らせますように」という想いで描かれた、ベトナムの少女の作品が使用されています。 © ストリートチルドレン芸術祭

3年目となる2010年度版は、スケジュール帳タイプ。表紙カバーは色違いの4色を揃え、好みの1冊が選べるように配慮します。中身も書き込みがしやすく、購入者から好評を得ました。
 
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モンゴルの子どもによる色鮮やかな絵が印象的な、2010年度版からの1ページ。一部500円で販売されました。 © ストリートチルドレン芸術祭

こうして大学生らしい斬新なアイデアで、新しいスタイルに挑戦し続けた芸術祭東北支部。2008年度から2010年度までの3年間で、独自の4月始まりカレンダーを3冊制作しました。

震災後は被災地支援にも 人と人をつなげ続けるカレンダー

そんな2011年3月11日、東日本大震災が発生。大学生たちは自分たちが住む町で起こった甚大な被害を目の当たりにします。

次第に大学生たちから、「芸術祭として、何かできることはないか」という声があがるようになったのです。

そこで、東北支部が中心となり「頑張っている人たちをつなげたい」というコンセプトのもと、1月始まりの「2012年チャリティカレンダー 震災復興特別版」を制作しました。絵の選考は、被災地で復興に向けて尽力する方々に依頼しました。

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ベトナムの少年の作品が表紙を飾る2012年版は、一部1,000円で販売。「明るい未来に向って一緒に頑張りましょう」というメッセージが込められています。 © ストリートチルドレン芸術祭

「日本と、世界中の方々が日々を大切に生きるきっかけにしてくれたら」という思いが詰まった、2012年版カレンダーの収益は、ストリートチルドレン支援団体の他、被災地の仮設住宅などにも送られました。

続く2013年版は「絆」、2014年版は「夢」をコンセプトとし、収益金の一部を引き続き被災地へ寄付。また、仮設住宅で子どもの学習支援に取組むなど、被災地の子どもたちへの支援も続けています。

絵を通して子どもたちの可能性を引き出したい

それまで生田目先生のゼミ学生が中心となっていた芸術祭は、次第にゼミ以外の学生や、福祉大以外からも参加したいという声が多くなります。2011年度からは、研究室の枠を超えた国際ボランティアサークルとして新たなスタートを切りました。

より多くの人々にストリートチルドレンの現状を知ってもらおうと、学園祭や地域のイベントで展示会を行うなど、啓発活動にも取組んでいます。

また、現地で子どもたちを支援している施設を訪問し、絵を描いてくれた子どもたちと直接触れ合うスタディツアーも開催。これまで、モンゴル、カンボジア、バングラデシュ、インドに訪れています。
 
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2013年のカンボジアスタディツアーで、子どもと一緒に絵を描く参加者。 © ストリートチルドレン芸術祭

学生に人気があるのはカレンダー販売などの目立つ仕事ですが、一番大事なのは裏方の地味な仕事です。絵の整理や関係者との連絡調整、お礼状書きなど、活動の大部分を占める事務作業に、学生たちがいかにやりがいを見つけていくか。そこが継続のポイントになってくると思いますね。

国際協力の世界へ飛び出した卒業生も

大学生時代に芸術祭の活動に励んだことがきっかけで、卒業後も国際協力に携わっている方がいます。佐藤健(さとう・たけし)さんです。

卒業後、企業のIT分野で4年間勤務した後、JICAの青年海外協力隊としてタンザニアに赴任。現地の人々にコンピューターを教えています。佐藤さんが芸術祭の活動に興味を持ったきっかけについて伺いました。
 
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佐藤さんの赴任先「Community Development Training Institute – Rungemba」のスタッフたち。前列左が佐藤さん。(写真提供:佐藤健さん)

大学生のときに、世界の子どもたちのために何かできることはないかと思っていました。そんなときに生田目先生から芸術祭の活動を紹介され、参加したのです。

芸術祭は、途上国に暮らすストリートチルドレンを支援する現地NGOを、日本から支援するボランティア団体です。そのため、現地の子どもたちと直接関わることがあまりないんです。

芸術祭の活動の目的の一つは、途上国の子どもたちの現状を理解し、そのことを日本の方々に広く知って頂くこと。現地NGOとのやり取りの中で、子どもたちについて少しでも多くの情報をいただいて、日本の支援者の方々に報告するなど、そのやり取りには特に力を入れていました。

作品を送付してもらったり、寄付までの流れなど、現地NGOとの調整には苦労することもあったという佐藤さん。芸術祭で活動する中でやりがいを感じたのはどんなときでしょうか?

実際に絵を描いてくれた子どもたちに会えたときですね。芸術祭では毎年スタディツアーを開催していて、絵を送ってくれた子どもたちに直接会いにいくことができるのです。

日本でいつも見ていた作品と作者の子どもとが結びついたときは、とても感動します。そしてその出会いの後、この子たちの未来が少しでも明るくなるように頑張ろう、って思うんですよ。

2015年カレンダーには、佐藤さんの赴任先の近くの小学校からも絵が出展されています。その実現は、ある偶然がきっかけでした。
 
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タンザニアのローカルバス。佐藤さんが車内で偶然小学校の先生と隣り合わせになったことから、新たな出会いが生まれました。(写真提供:佐藤健さん)

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佐藤さんの赴任先近くにある「The Glory Kibena English Medium School」に通う子どもたち。この小学校からも芸術祭に作品が出展されました。(写真提供:佐藤健さん)

地域のローカルバスに乗ったときに、たまたま隣の席に座った学校の先生から話しかけられ、自分たちの夢や子どもたちの将来について熱く語り合い、意気投合したんです。

また、芸術祭の活動について話した際に、ぜひうちの学校の生徒が描いた絵も出展したいとお願いされ、芸術祭へ参加することになりました。

芸術祭の活動は、たくさんの人とのつながりを与えてくれました。共に活動した仲間、友人、後輩の学生たち、現地で出会った人々すべてが、今の自分を形づくっていると言えます。この活動に参加していなければ出会えなかった人は、本当にたくさんいますね。

佐藤さんは大学卒業後も一般企業で仕事をしながら、芸術祭に継続して参加。就職後も国際協力に対するモチベーションが下がることがなく、現在の道へとつながったのは、まさに芸術祭のおかげだと言えるでしょう。

世界で何が起きているのかを「まずは知る」ことから

「ストリートチルドレンのために何かをしたい!」という静岡県の中学生たちがあげた産声は、宮城県の大学生によって大切に育てられ、カレンダーを手に取った方々の心に共感の種を撒き続けています。

それだけではなく、佐藤さんのように現地で芸術祭との橋渡し役を担う人材を輩出するという実績も生み出しています。

生田目先生は、芸術祭が目指す役割についてこう語ります。

理論物理学者のアルベルト・アインシュタインの名言で、“Those who have the privilege to know have the duty to act.”(知ることができる特権を持つ者には行動する義務がある)というものがあります。

ストリートチルドレンについても、知らないことには、行動することはできません。まずは、世界で何が起きているかを知る。知った上で、自分はどう行動するかを考えることが大事だと思うのです。

親や社会に見捨てられて自尊心が失われている子どもたちに、絵を通して自分の存在意義を見出してもらえるよう、少しでも芸術祭が力になれれば。

そしてカレンダーを通して、夢に向かって頑張っている子どもたちの存在や可能性を多くの方々に実感してもらい、一歩踏み出すきっかけとしてもらえれば、と願っています。

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2015年版4月ページに掲載された、デザイナーになる夢を持つ、インドネシアの少女の作品。「夢に向かって頑張ることは私の幸せ」というコメントが寄せられています。 © ストリートチルドレン芸術祭

世界の子どもたちが思い描く「幸せ」が詰まった2015年版カレンダーは、芸術祭ホームページから申込できます。ご自宅や職場、プレゼント用に、ぜひ1部購入してみてはいかがですか?

2015年チャリティカレンダーを購入して、世界のストリートチルドレンを支援しよう!
ストリートチルドレン芸術祭ホームページ

writer ライターリスト

デラベキア 牧枝

デラベキア 牧枝

greenz ライター Makie DellaVecchia 宮城県仙台市の国際交流協会、中間支援NPOなどで勤務後、2012年に米国に移住。オレゴン州ポートランド、コロラド州デンバーと引越し、現在はミシガン州アナーバーで夫と猫と暮らす。 動物保護、環境、貧困、食(ベジタリアン、ヴィーガン)にまつわるソーシャルビジネスに関心があります。

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