\新着求人/地域の生業、伝統、文化を未来につなぎたいひと、この指とまれ!@ココホレジャパン

greenz people ロゴ

閉じられた空間をオープンな場へ!「SUNDAY BEER GARDEN」仕掛人に聞く「集合住宅の屋上でビアガーデンを開くための5つのステップ」

beergarden1_3

千葉県松戸市、松戸駅前を中心にアーティストやクリエイターとともに”クリエイティブなまちづくり”を行っているMAD Cityプロジェクト。「MAD “Life” Gallery」ではそんなMAD Cityで起こっているユニークな取り組みをご紹介します。(くわしくはこちら

MAD Cityプロジェクトでは、改装OK・原状回復なしの賃貸物件を貸し出す不動産事業や、入居者同士の交流を促すコミュニティづくり、コワーキングスペースの運営などを行っています。

そんなMAD City不動産の看板物件であるMADマンションでは、住人主催の企画が続々と進行中。(MADマンションについての以前の記事はこちら

今回はそんな企画の一つ、マンションの屋上を使って開催されている「SUNDAY BEER GARDEN」について、主催者である食空間プロデューサー/「Teshigoto」代表・古平賢志さんと、MAD Cityプロジェクトを運営する「株式会社まちづクリエイティブ」寺井元一さんにお話を伺いました。

それまでは住人ですら正式には利用できなかった、閉じられていた空間をオープンな場へとつくり変える、その方法とは?

人と人のつながりが生まれるきっかけの場所に変えるまでの5つのステップを紹介します。オープンな場づくりに興味のある方必読の情報満載でお届けします!

SUNDAY BEER GARDENとは?

SUNDAY BEER GARDENはMADマンションの屋上を使った、入居者およびその知人向けの招待制ビアガーデン。

広い開放的な屋上で、美味しいお酒と料理を食べながら参加者が思い思いに交流を楽しむパーティーです。これまで、今年の8月と10月の2回行われ、MAD City界隈で話題のイベントとなっています。
 
IMG_6528_3

今年10月26日に行われた「SUNDAY BEER GARDEN Vol.2」は、「屋上キャンプ」というテーマでドレスコードを設けて開催されました。スタート時刻の16時には、アウトドアウェアに身を包んだ約40名の参加者のみなさんが屋上に集合。

丸鶏のオーブン焼き、柿と春菊の白和え、カボチャとキタアカリとベーコンのチーズ焼きなど、秋のキャンプを感じさせる料理はあっという間に参加者の胃袋に吸い込まれていきました。
 
IMG_6532_3
料理の最後の仕上げを屋上で行う演出も。

IMG_6533_3
カボチャとキタアカリとベーコンのチーズ焼きはチーズがこんがり溶けてほくほくの美味しさ。

IMG_6516_3
旬の柿と春菊の白和え(左)は豆腐のソースを上からかけて風味豊かに。キノコの梅肉和え(右)はキノコの焼き方の違いによる二つの食感を楽しめました。

IMG_6564_3
キャンプらしい丸鶏のオーブン焼きもメインとして登場

IMG_6538_3

日が落ちると、会場はライトアップされ、キャンプ気分も一層盛り上がります。終了時刻の19時まで、参加者の会話と笑顔は絶えることなく、大盛況のうちにイベントは終了しました。
 
beergarden8_3

beergarden9_3
会場では場をつくる要素としてDJによる音楽や映像も流れ、雰囲気を盛り上げていました。

SUNDAY BEER GARDEN実行までの5ステップ

このビアガーデンを主催するのは、MADマンションに入居する古平賢志さん(フードユニットTeshigoto代表)を中心とした、MAD Cityに関わるみなさん。そもそも、屋上でビアガーデンをやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

古平さん もともと、まちづ社のスタッフとも「いつか入居者みんなで、屋上ビアガーデンやりたいね」と言っていたんですよ。

その後、Teshigotoでのワークショップのとき、突発的な思いつきでMADマンションの屋上でテーブルを出してごはんを食べてみたことがあって。「こういう開放的な場所でごはんが食べられるのっていいな」「屋上って意外と使える」と、そのとき思ったんです。

寺井さん 僕らのほうでも屋上を使用したいという意識はあったんですよ。この物件は5階建てでエレベーターがなく、5階の部屋はやはり借りてもらいにくい。

だけど、屋上に公園のように使えるスペースがあったら「借りたい」という人もいるんじゃないかと思って。実際に、入居者である古平さんが「屋上を使いたい」と言ってくれてうれしかったですね。

afterbeergarden1_3
主催者の古平賢志さん(右)と、まちづクリエイティブ 寺井元一さん(左)

たしかに屋上は、入居者同士の憩いの場にピッタリですし、広い空間が使われていないのはもったいないですよね。同じように感じているマンションの住人の方も多いのではないでしょうか。

でも、実際にビアガーデンというアイデアは浮かんでも、「どうやって進めればいいか分からない」という方も多いはず。そこで、古平さんと寺井さんに、SUNDAY BEER GARDENを実施するまでに踏んだ5つのステップを伺いました。

1.徹底したルールづくりがポイント[会場の使用許可]

まずは、物件を所有するオーナーさんに企画を理解してもらうことが先決。実はほとんどのマンションでは、事故の危険などの理由で、屋上は使用禁止になっています。

それまで、MADマンションでも屋上は使用禁止となっていました。そこで、屋上の使用許可を取るために寺井さんは、古平さんが書いた企画書を持ってオーナーさんを訪ねました。

古平さん 以前松戸でやっていた「酔いどれまつり」のように、飲食する場ではない路上のようなところに、突然飲食する空間ができるのが面白いなと思っていて、それを屋上でやろうと思いました。

今年2月ごろに企画書を書いて、まずはまちづクリエイティブ社(以下、まちづ社)に相談にいきました。

寺井さん 不動産関係者からすると、建物の屋上が立入り禁止なのは今やごく当然のことです。物の落下で通行人が怪我したり、自動車に当たったり。ホームレスの人が住み着いてしまうことも考えられます。

そうなると建物全体にマイナスが及ぶので、オーナーさんがOKしないことが一般的になっています。

これらの問題を解決するため、寺井さんは、安全面や音出し、入居者への配慮などをまとめた「屋上専用のガイドライン」をつくることに。

寺井さん 最終的にはまちづ社側の管理者が常駐し、統括責任者として何か問題が起きた場合に直ちに中止する権限を持つようにしたんです。

そのようなルールを持ってオーナーさんに話をしに行ったら「そこまで責任もってやってくれるなら」と許可を得られました。

オーナーさんとしても、昔この屋上で花火大会観戦などしていたそうで、気持ちとしては企画に共感してくれていたみたいです。

ルールづくりは、イベントを安心・安全に運営する上でベースとなる、一番大事な作業なのかもしれません。様々なリスクを考慮した徹底したルールの元に、SUNDAY BEER GARDENは運営されていたのです。
 
afterbeergarden3_3

2.アイデアで課題をクリア[打ち合わせと集客]

使用許可が取れたら、さっそく関係者との打合せです。メンバーは、有志で集まった入居者を中心としたスタッフと、まちづ社の方々。

ちなみに今回で2回目となったSUNDAY BEER GARDENでは、前回の課題をクリアするためのアイデアが練られました。例えば、そのひとつが参加者同士のコミュニケーション不足。1回目の時には参加者同士の交流があまり活発ではなかったのだそう。

そこで2回目は「屋上キャンプ」というテーマを定め、「キャンプに行く格好」というドレスコードを設けて一体感を演出。結果として、当日は自然な形で参加者同士のコミュニケーションがとれていたようです。

他にも集客や告知、会場設営など、イベント全体に関する打合せを重ねて形をつくっていき、Facebook上で招待制のイベントとして告知。最終的には約40人の参加者が集まりました。

関係者と課題を共有し、アイデアを活かすことはイベントをよりよくする上で、大切なんですね。また、テーマをしっかり設定することでイベントの個性が際立ちますし、それが参加者の満足度にも大きく関わってくるでしょう。

3.ポスターも料理も入居者の手づくりで[事前準備]

内容が固まったらいよいよ当日に向けた準備です。今回は参加者のためにSUNDAY BEER GARDENオリジナルのWebポスターやコースターも制作。

入居者でデザイナーの佐藤大輔(佐藤さんのMADマンションでの個展の様子)さんがデザインしたもので、参加者にも好評でした。まちづ社もコースターの印刷費を補助するなどサポートしました。
 
beergarden7_3
SUNDAY BEER GARDENのために制作されたポスター。まるで雑誌の表紙のようです

beergarden5_3
SUNDAY BEER GARDENオリジナルのコースター。こちらも佐藤さんがデザインしたもので、参加者に配られました。

IMG_0863_3
前日にはスタッフで会場装飾に使う落ち葉や松ぼっくりを近所で採集。山の雰囲気を演出するのに一役買いました。

beergarden2_3

また、古平さんは料理の仕込みをスタート。
 
IMG_0866_3
旬のきのこをたっぷり使った梅肉和えはピリリとした梅の風味が広がります

IMG_0872_3
お酒は日本酒などを中心に9種類用意

IMG_0888_3
国産レモンを使った自家製レモネードはSUNDAY BEER GARDENの人気メニュー

こうした手づくりのアイテムや料理は、スタッフの思いも伝わり、参加者の間に会話も生まれそうです。

4. 楽しむための演出はぬかりなく![会場設営]

当日はお昼ごろからスタッフが屋上の会場設営を行いました。キャンプに不可欠なテントやタープ、ガーランドなどを使って「山のキャンプ」の雰囲気をつくっていきます。
 
IMG_6496_3

IMG_6498_3

IMG_6520_3
折りたたみのイスやランタンなどもスタッフや参加者で持ち寄りました。

beergarden6_3
各階のフロアにはイラストレーターである入居者がデザインした標高の表示も

たくさんの手の混んだ演出は、参加者のみなさんにも大好評。当日は美味しい料理とお酒に舌鼓を打ちながら、参加者同士思い行くまで交流を深めました。
 
beergarden4_3

5.参加者にも最後はイベントを手伝ってもらう[片付け&清掃]

当日のイベントは19時に終了。近隣への配慮からこの時間の設定にしたそうです。終了後は、参加者みんなで協力して撤収作業と片付けを行いました。階段や廊下への掲示物や装飾も撤去し、屋上も片付けて終了。

さらに後日、MADマンションの入居者有志で、屋上を元の状態に再清掃しました。参加者も最後まで協力している姿から、イベントによって生まれた一体感を感じました。

みんなで「つくる」ことから始まる、次への展開

こうして見ると、企画段階から様々な準備を経てSUNDAY BEER GARDENが開催されていたことがわかります。

正直、とても大変そう。それでも、この企画を続けたいという古平さんのモチベーションはどこから来るのでしょうか。

古平さん 一番は、「お客さん」でいたくないな、と思うんですよね。お客さんの意識でイベントに行くと、お金を払えばたしかにその瞬間は楽しいけれども、その体験はすぐに風化していってしまう。物を買って消費するのと変わらないんじゃないかと思うんです。

僕は、企画をつくる側でいることで得られる参加意識や、達成感がすごく好きなんですよね。「つくる側」と「お客様」に分かれているよりは、みんなでつくる方が楽しい。最後に自分のもとに手応えとして返ってくるのはやっぱり「つくっている」ときなんです。

寺井さん 受身の姿勢でお客さんとしているより、つくることに参加する方が良い、というのはすごく分かります。お客で居るのは楽なんだけど、自分が成長するのは、つくる側になったときだから。

実際に今回のSUNDAY BEER GARDENでは、参加者にもそのような意識が見られたのだとか。

古平さん 前回の参加者のうち、何人かが今回はスタッフとして入り、初めて来た人のケアにまわってくれました。

また、会場の装飾品を持ってきてくれた人もいてうれしかったですね。そういったところからも、今回のビアガーデンは一体感が感じられました。

寺井さん まだ2回目だけど、完成されたイベントになってきたと思います。

2回の開催を経て、一定の手応えを感じることができたというお2人。今後、SUNDAY BEER GARDENはどのようなものになっていくのでしょうか。

古平さん 今後は、扱っているお酒や食材のストーリーを伝えることをやっていきたいですね。「イベントをやって楽しんでおしまい」じゃなくて、何か持って帰れるようなものができたらいいかなって。

それが紙媒体なのかWeb媒体なのか、生産者を呼んでプレゼンするのかはわからないけど。押し付けがましくない感じで、よりかっこよくて文化的なものに進化できたらいいなと思います。

さらにSUNDAY BEER GARDENを特定の日に定めて、同時多発的に全国各地で開催されると面白いですね。横のつながりで、いろいろな団体がそれぞれに運営しているイメージです。

寺井さん 今回のイベントが“とっかかり”になって、屋上をもっとこうやって使いたいとか、そこで学びや成長が生まれる、という展開が始まっていくといいですよね。

もしこういうことをやりたい人が他にもいたら、まずは手伝ってもらって、大変さも含めて見てもらえるといい。そこから一緒に次の展開をつくっていけたらいいな、と思います。

通常は使われていない場所をオープンな場にしていくためには、様々なノウハウやコツがあることがわかりました。SUNDAY BEER GARDENではお客さんも「つくる」部分に関わっていくことで、より参加意識が芽生え、イベントとしての広がりも出ていると感じます。

今後のSUNDAY BEER GARDENがどう変わっていくのか、ますます楽しみになってきました。あなたも、住んでいるまちや家のスペースを使って、いつもとは違ったオープンな企画をつくってみませんか。