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アートの力で記念日を忘れられない一日に! 結婚式からお祭りまで、”おめでたい日”をサプライズたっぷりにお祝いする「おめで隊」

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みなさんの“おめでたい日”はいつですか?

誕生日、結婚記念日、はたまた、初めてのお給料で大切な人にプレゼントを贈った日。念願叶って第一志望の会社から内定をもらった日、愛しい我が子が生まれた日。

カレンダーには載っていないけど、自分の歴史には欠かせない、そんなおめでたい日を誰もがもっているはずです。

今回ご紹介するのは、誰かの大事な日を演出する、その名も「おめで隊」です!

あなたへの「おめでとう!」をプロデュースするおめで隊

おめで隊の正体は、湘南を中心に活動する作家やアーティストたちです。

「美術隊」「音楽隊」「記録隊」「草花隊」「台所隊」「お世話隊」などの隊があり、各隊には現代アートの一線で活躍するアーティストやケータリングのお店、陶芸家なども参加。

2012年の発足以来、結婚式やお店の一周年記念などをプロデュースし、それぞれが持ち前の技をもって「おめでとう」をお手伝いしています。

どうして彼らは「おめでとう」をお手伝いし始めたのでしょうか? ”福”隊長の熊澤弘之さんに、そのきっかけについて伺いました。
 
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おめで隊”福”隊長の熊澤弘之さん

アーティストの出番を増やすには?

おめで隊が発足したのは、熊澤さんが運営するグリーンコミュニティ「リベンデル」の一周年を記念する企画展がきっかけでした。

熊澤さん リベンデルでは会員さんが畑を持ったり、古民家コミュニティスペースでイベントやワークショップも開催しているんですが、その一周年を祝うために、関わってくれる仲間と何かできないかなと思っていて。

そこで企画展の最終日に、お客さんも交えたパーティーをしようということになったんです。

企画展には、現在各方面で活躍中のアーティストたちが参加。熊澤さんは、その準備中に現代美術作家の石塚沙矢香さんが漏らしたひとことに、「おめで隊」発足の着想を得ます。

熊澤さん 企画展の準備を進める中でふと石塚さんが言ったんだよね。「現代アートって儲からない」って(笑)儲からないっていうより、現代アートっていうだけで敷居が高くなってしまうというか。

「じゃあ、誕生日とか記念日とかをアートでもっとおめでたくしたら、アーティストの出番も増えるんじゃない?」って話が膨らんできたところで、みんなで「おめで隊」になっちゃおう!と。

そうして始まった一周年記念企画展では、リベンデルに縁のある作家さんやアーティストの作品を使って、おめで隊が空間を演出。作品にも「おめでとう!」を贈りたいということで、”宴”ではお客さんみんなで赤と白の紙吹雪を撒いて祝ったそうです。
 
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左から、リベンデル代表おめでたい”福”隊長の熊澤さん。グリーンズ代表鈴木菜央さんの小屋を手がけたデザイナー、チョウハシトオルさん。オオシマ草花店の大島健吾さん。現代美術作家、石塚沙矢香さん。他にも多くのアーティストが参加したそう。

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茅ヶ崎にある「グリーンコミュニティ リベンデル」1周年記念の企画展を手がけたおめで隊。リベンデル所縁の品々をつるすことで1周年に集大成を込めた演出に。

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宴で使われた器もみな手づくり。器は宴の後、思い出とともに持ち帰ってもらったそう。

おめでたいことをもっとお祝いしよう!

そんな流れで始まったおめで隊の次の出番は、結婚式でした。なんといってもメンバーが力を合わせれば、できないことはほとんどないという彼ら。もちろん結婚式でもその本領を発揮します。

引出物から場の演出、指輪の制作まで、さまざまなジャンルの作家やアーティストが腕をふるい、どこにもない”おめでたい結婚式”をつくりあげてきました。
 
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蔵元をリノベーションしたギャラリーを使っての結婚式。空間アートを取り入れ、会場を見るだけでも楽しくなります!

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指輪は美術隊、小原聖子さんの作品。

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花嫁のつけるコサージュも手づくり!笑顔いっぱいの結婚式に!

こちらの結婚式では会場にたくさんの紫陽花が竹と共演。草花隊、オオシマ草花店の大島さんの演出です。
 
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会場にはたくさんの紫陽花と竹が

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オオシマ草花店の大島健吾さん

大島さん 「紫陽花が好き」という要望と会場や予算との兼ね合いを考えて、紫陽花や竹はFacebookで「誰か譲ってくれませんか」と呼びかけたんです。すると「うちの花、切ってもいいよ」って人が現れて。

原価をかけず身近にあるもので演出すれば、結婚式の他の部分に予算を使えるし、自分には草花を使って空間を演出するノウハウがあるから、いろんな提案が出せます。

それに、「ただ、買ってきて飾る」よりもその花がきた経緯がわかれば、また場に想いがつまるんじゃないかな。

大島さんに限らず、おめで隊に参加する作家さんの発想力と技術力は高く、「たとえ予算が少ない場合でも、冷蔵庫の中にあるもので料理ができるのが得意技」だと石塚さんは続けます。

石塚さん 普段は芸術祭やトリエンナーレなどに参加展示をしていたり、個展を各地で開催しているんですが、なにかもっとアーティストとして身近な事柄で手を動かしてみたくて。

たとえば、商店街の魚屋さんや八百屋さんのように「活きのいいアートあります!」みたいな、”街のアート屋さん”のイメージですね。

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石塚沙矢香さん。結婚式会場での作業風景。

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結婚するふたりに内緒のサプライズもおめで隊は手がけます!来場者にあらかじめ用意した「替え歌」を渡し、式の最後にみんなで合唱。嬉しいサプライズになったそう。

現代アートというと、「なんだかよくわからない」という声もあるかもしれませんが、こうしておめで隊の活動を見ていると、アーティストたちは「見方を変える、発想を持つ、ものをつくる」ことが得意な面々なのだと思えてきませんか?

「おめでとう!」という気持ちで、アーティストならではの多角的な視点を生かして場をつくる。そんなおめで隊が大切にしているのが、「遊び心とデザイン」というのはデザイナーのチョウハシさん。

チョウハシさん 僕は「焼き芋日和」という焼き芋屋さんもやっているんだけど、昔はよく見かけたのに、今はそんなにないでしょ? でも、おいしい焼き芋は食べたい(笑)

そこで芋を焼くビジュアルや、できた焼き芋を包む紙を工夫する。すると「お、焼き芋っていいよね」に視点が変わると思うんです。

そういう、ちょっと古いものや、ちょっと忘れられそうなものごとに、遊び心とデザインを取り込んで魅力あるものにする。そんな提案ができるのもおめで隊ならではかなと思います。

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デザイナーのチョウハシトオルさん

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チョウハシトオルさんデザインのネームプレート。新潟出身の方の結婚式で実りの秋に開催だったこともあり、稲穂を入れたロゴに。ちょっとした遊び心です。

祝うことでその日が忘れられない一日になる

おめで隊が発足して2年。結婚式、企画展、イベントなどのプロデュースを経験することで、「いろいろな気づきがあった」と熊澤さんは振り返ります。

熊澤さん お客さんと作家さんをつなぐコーディネーターとして、単純に祝いの場に携われることが嬉しいですね。そして、作家さんの想いや視点でつくられた場は本当に素敵だし心地よい。

アーティストというのは、はっとするようなしつらえや気持ちよく過ごせるような空間づくりが得意なのですが、こういうことがもっと身近になれば、気持ちのよい景観の街や家、場が増えていくと思います。だからこそアートから眺める目線は、社会にとっても大事なんじゃないかなと。

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「運動会とかやってみたいよね」「お見合いパーティーとかね」まだまだ手がけたいことは山ほどあるそう。

また、おめで隊は、「作家さんやアーティストが、身近なところに仕事をつくるモデルケースにもなっている」とも。

熊澤さん 例えば、絵がすごく上手なのに、絵だけで食べていけないのはなんだか寂しい。それは残念な社会だと思うんですね。僕はみんなが好きなことで生き生きしながら過ごすのが、いい社会なんじゃないかなといつも思うんです。

おめで隊はみんなの得意技をいかして、はっとするような一日をつくりますが、それには作家さんやアーティストの面々が不可欠。もっと身近にアーティストが手が動かせる出番をつくることも、おめで隊の大切な役割なんです。

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おめで隊はアーティストや作家の集まりですが、身近なものを使い、手を動かすという演出方法やアイデアは、わたしたちにも応用できそうなヒントがいっぱいつまっています。そこで何より大切なのは、「お祝いしたい」という気持ちの方なのかもしれません。

熊澤さん 忙しさにまかせて、世の中が「お祝いする」ということをちょっと忘れがちになってるような気がするんですよね。

本来、お祝いとは”感謝”すること。面倒だったり、ふだん、照れ臭くて感謝を伝えられないような人や場所に、改めて、お祝いして感謝を表すと、また何か新しい気づきや関係が生まれてくると思うんです。

一日一日に気持ちをフォーカスして暮らすのは無理があるけど、祝うことでその日が忘れられない一日になる。一生忘れられない日がいくつもある人生は、素敵じゃないですか。ぼくらはそのお手伝いができればと思っています。

おめで隊のホームページにはこんな言葉が添えられています。

埋もれてしまうような一日を特別な一日にしませんか。
同じ一日なら楽しい一日に。

あなたが感謝したい人や「おめでとう!」を贈りたいことはなんですか? もし、ちょっと照れくさいなんて思ったらおめで隊にご相談を。きっと素敵な「おめでとう!」をお手伝いしてくれますよ。