ISSUE まちづくり

1 year ago - 2014.11.11

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誰も知らない日本の魅力を、30秒に凝縮して届ける。都会に住む若者たちが参加した、地域のための映像づくりプログラム「my Japan Creative Summer Camp」

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今、日本各地で“街おこし”や“地域活性化”が盛り上がっています。実際、各地に足を運んでみても、その地域ならではのユニークな魅力に気づかされます。

それでもやっぱり、「都会に住んでいるほうが便利だし、そもそも遠くの知らない地方に出かけて行くきっかけがない」という方も少なくないでしょう。

今回は、そんな地域の魅力を、学生や若手クリエイターたちがCM形式で表現し、都会の人々に「この街に行ってみたい!」と思ってもらうきっかけを届ける企画「my Japan Creative Summer Camp」をご紹介します。

クリエイターが自ら体験し、発信する地域の魅力

my Japan(マイ・ジャパン)」は、“クリエイティブな表現を通して、一人ひとりが日本を語れる世の中をつくること”をミッションに活動している非営利団体です。

これまでは、まだ気づかれていない日本の魅力を独自の視点で掘り起こし、CM形式で表現するコンテスト「my Japan Award(マイ・ジャパン・アワード)」の企画・運営を中心に活動してきました。

そして、設立5年目を迎える2014年の新たな取り組みとして始まったのが、都市部在住の若者たちが実際に地方に滞在し、体感した魅力をCMにするまでを合宿形式でプロデュースする「Creative Summer Camp(クリエイティブ・サマー・キャンプ、以下CSC)」です。

今年の受け入れ先は、宮城県石巻市、福島県只見町、長野県長野市の3地域で、都市部在住の学生や若手クリエイターを中心に計60名が参加。同じ地域を希望したメンバーの中で3人1組になり、20のチームが結成されました。

そして、毎月週末を利用して、現地視察やロケハン、東京でのワークショップ、撮影・制作、発表会などの行程にチームで臨み、作品を完成させていきます。

これまでの「my Japan Award」では、完成したCM動画を全国から募集する運営形式でしたが、CSCという新たな挑戦を始めるにあたり、どのような考えがあったのでしょう。「my Japan」代表の岡本俊太郎さんと、広報の岡野陽一さんにお話を伺いました。
 
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my Japan代表の岡本俊太郎さん(左)と広報の岡野陽一さん(右)

岡野さん 「my Japan Award」では、毎年さまざまな地域からの作品が応募されているのですが、全体で見ると、やはり東京や大阪などの都市を紹介する作品が多くなりがちです。

そこで、5年目を迎える特別なタイミングだからこそ、今までスポットライトが当たりにくかった地域に、自分たちから飛び込んでいこうと考えました。

岡本さん 今回、キャンプを受け入れてくださった3地域とは以前から関わりがあり、それぞれとても魅力的な人たちが活動しています。

ですが、震災から数年が経過して、人々の関心が風化しつつあること、地域観光資源が十分に活用されていないなどの課題を抱えています。そうした地域の課題解決に、もっとクリエイティブの力を活かせないかという問題意識がありました。

岡野さん 地方に住む人にとっては当たり前な日常が、都会から見たらものすごい魅力であることも少なくありません。クリエイター自身が現地で体感すれば、地方の魅力をうまく発信することができるのではないかと考え、現地滞在型の企画をプロデュースすることにしたんです。

地元の人にとっては身近過ぎて気づかないその街の魅力を、クリエイター自らが体感して形にし、世に伝えていく。これまでのアワードとは違う、新しい「my Japan」が浮かび上がってきそうな企画ですね。

リアルな体験を、30秒の映像に込めて

今年のCSCは、「東北新社」の中島信也さんが“校長”、「銀河ライター」主宰の河尻亨一さんが“教頭”を務めるという設定で、6月から9月まで、3ヶ月に渡って開催されました。
 
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CSC”校長”の中島信也さん(左)と”教頭”の河尻亨一さん(右)

6月、東京でのオリエンテーションとワークショップから始まり、7月に現地視察・ロケハンツアーを実施。現地コーディネーター協力のもと、地元の方々と直接触れ合いながら、各地を回りました。

おいしい海産物に美しい海と山。津波の爪痕が残る街並みと、そこから生まれる新たな活動やつながりに出会う石巻。

見渡す限りの豊かな山林と、そのふもとでつくられる美味しいお米や野菜。ゆるやかで穏やかな時間の中で人々が暮らす、只見町。

善光寺を中心とした歴史と伝統ある街並みに、古民家をリノベーションしたカフェや書店など、若く新しい息吹が感じられる、長野市。

それぞれの地域の魅力をたっぷり堪能した後、8月末〜9月でいよいよ撮影と制作作業を行います。
 
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初めて訪れ、肌で体感したその魅力を伝えるため、カメラ片手に街中を駆けまわります。

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現地滞在最終夜、囲炉裏を囲んでの編集作業

最後は文字通り徹夜での編集作業となりましたが、どのチームも真剣そのもの。

最終日にはお世話になった地元の方々へのCM発表と合わせて、審査・講評が行われました。審査の結果に明暗は分かれましたが、どのチームも自分が訪ねた地域にすっかり愛着が湧いたようです。
 
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福島県只見町コース参加者と地元の皆さん。発表の後はみんなで記念写真。

CSCは、これで終わりではありません。9月29日には渋谷ヒカリエに全チームで集まり、最終審査会を開催。「東急電鉄」協賛のもと行われた今年のCSCでは、各地域から一組ずつ、優秀賞に選出されたチームのCMが、なんと渋谷の交差点で放映されることに。

長年広告に携わってきたトップクリエイターの方々が審査員として作品を採点し、会場の一般投票も合わせて優秀賞が決まります。

当日は満員御礼、各チーム緊張した面持ちでプレゼンテーションとCM上映を行いました。印象的な歌やフレーズにストーリー、どのチームも面白いCMでしたが、果たして結果はいかに…!

渋谷の人々を振り向かせるCMはどれだ!? CSC最終審査会

まず、福島県只見町コースからは、チーム「AXL Tokyo」による「只見の人になる」が優秀賞に輝きました。

都会を抜け出し、只見町を訪れた一人の若者が、人の暖かさに触れ、移住することを決意するストーリー。只見の一番の魅力は「人」にあり、というメッセージがよく伝わってくるCMです。
 

只見コース優秀賞作品「只見の人になる」 by AXL Tokyo
 
続いて長野コースでは、チーム「チーズケーキ」による「恋人と歩きたい街」が優秀賞を受賞。

ベートーヴェンの“運命”に合わせながら、街行くカップルをうらめしそうに眺める、ひとりぼっちの青年の表情がコミカルで思わず笑ってしまいます。
 

長野コース優秀賞作品「恋人と歩きたい街」 by チーズケーキ
 
そして、コース別の優秀賞に加え、全チームの中での最優秀賞を見事勝ち取ったのは、石巻コースの「ユニサイクルず」による「二人の男」でした!

夢やぶれて東京を離れ、「被災地のために何かをしたい」と石巻を訪れる青年と、「被災者の街と思われたくない」と、新しいまちづくりに挑む青年。その二人が出会うストーリー。

「がんばれ、石巻」
「がんばってみろ、東京」

ここから何が始まるのか、ドキドキするような力のある言葉です。
 

最優秀賞作品となった石巻コースのCM「二人の男」 by ユニサイクルず

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最優秀賞を授業したチーム「ユニサイクルず」のみなさん。何度も意見がぶつかり合い、迷走したとのこと。なんと今回の受賞作品は、現地発表後に新しく制作したものだとか。

結果発表後は審査員の方々からの講評をいただきました。

「広告とは基本的に邪魔なもので、お?と思わせる仕掛けがあってようやく見てもらえるもの」「どれだけ魅力を感じていても、良いものをただ良いと褒めるだけでは、嘘っぽく見えてしまうのが広告の難しさ」と語るのは、石巻コースを審査した「ワンスカイ」の福里真一さん。

一方で「30秒で視聴者に投げかけて、考えさせる余白を残すこと。みなさんの作品は“正解”を先に出してしまっている傾向が強い」と、長野コースを審査した「博報堂ケトル」の木村健太郎さんは話します。

最優秀賞に輝いた「二人の男」は、“正解”ではなく何かの“始まり”を予感させる作品で、人を振り返らせる力があったとのこと。地元の人たちの暮らしに寄り添いながらも、その地域を全く知らない都会の人たちの注目を掴むような、ドキッとさせる工夫が大切なのだと感じました。
 
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長野コース審査担当「博報堂ケトル」の木村健太郎さん(左)と、石巻コース審査担当「ワンスカイ」の福里真一さん(右)

世界に向けて、まだ見ぬ日本の姿を届けたい

会場の熱気冷めやらぬ中、幕を閉じた今年の「Creative Summer Camp」。最後に「my Japan」の岡本さん、岡野さんに感想と今後の展望をお聞きしました。

岡本さん 「やって良かったな」と、終わってみて改めて思います。もともと「若手クリエイターの力で日本の魅力を発信しよう」という趣旨で始まった「my Japan」ですが、今回はつくり手を実際に地域に連れて行く試みで、発信の方法や視点を考える良いきっかけとなりました。

岡野さん キャンプの最中には、地元の方々と参加者のみなさんが本当に打ち解けていて、世代や地域を越えた相互作用が生まれているようで嬉しかったですね。地元住民の方々には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

今後も、地域住民の方々や自治体・行政からのお誘いがあれば、いろいろな地域でCSCを開催していきたいと思います。

岡本さん CSCもAwardも、今後はやはり、もっと海外向けのコンテンツづくりや発信力を高めていきたいです。2020年に東京オリンピックを控え、海外から少しでも多くの人が、多様で魅力的な日本の街を訪ねるきっかけをつくっていければと思っています。

地方から東京へ、日本から海外へ。立場も、知識や関心も異なる人たちを振り向かせるように表現するという視点は、日本の魅力を海外に伝えていく上で、活かせる要素がたくさんありそうですね。

今回優秀賞を獲得した3作品は、11月10日〜12月31日までの期間、渋谷のスクランブル交差点にて順次放映される予定です。渋谷を歩く際は、ぜひ街頭ディスプレイを見上げてみてください。きっとそこには、あなたの知らない日本の風景が広がっているはずです。

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writer ライターリスト

鈴木悠平

鈴木悠平

greenz シニアライター ひと・もの・ことの閒-あわい-にある物語を探求しています。 お仕事は、企画・執筆・編集業が中心。 東日本大震災後の宮城県石巻市におけるコミュニティ事業、大学院での地域保健政策及び高齢者ケアの国際比較研究を経験した後、株式会社LITALICO入社。発達障害に関するポータルサイト「LITALICO発達ナビ」の企画・編集を担当。 ウェブマガジン「アパートメント」「soar」の運営・編集にも携わる。

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