ISSUE まちづくり

2 years ago - 2014.11.10

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100年後の未来へ、暮らすことの原点と向き合うために。都道府県の各地と向き合い、”そのまんま”を伝えるフォトマガジン『ジャパングラフ』

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みなさんは自分の暮らす街が、100年後どうなっているかを想像したことはありますか? 街並みや暮らしぶりは、時の流れと共にどんな風に変わっていくのでしょうか。

写真家の森善之さんは、日本各地の風土とともにある”普通の人たち”の今の暮らしを、100年先の未来まで伝えようとフォトマガジン「ジャパングラフ」を創刊しました。47都道府県を1県ずつ各号にまとめ、これまでに「滋賀」「岩手」「愛媛」「群馬」「島根」と計5号を発行し、次号は「愛知」を予定しています。

今回は、京都府宇治市にあるジャパングラフのコンセプトショップ「ナナクモ」を訪ね、「ジャパングラフ」にこめた思いを森さんに伺いました。
 
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森善之(もりよしゆき)さん

自分の暮らしも含めて、今の暮らしかたに疑問があるんです。別に社会的な問題意識をもっているわけじゃない。政治家でもない。ただ、経済ばっかりにふりまわされるしか、生きていく方法はないのかなと。

1960年生まれの森さんは、高度経済成長を肌で感じて来た世代です。宇治市で過ごした幼少期の頃、近所の人はみんな顔見知りでした。井戸で水を汲んでいると、文字通り近所のおばちゃんが井戸端会議をしていたそう。

しかし、経済成長と共に町が郊外化するとマンションが乱立し、山が切り崩され、池や田畑が埋め立てられ、遊び場の竹やぶはなくなり、知らないひとが家の前を行き来するようになりました。

都市では昔話になりつつある、自然と共に人と人とが支えう合う暮らし。森さんにとって「ちょうどいい暮らし」は、地方に目を向けると今の日本にもきちんと残されています。代々大切に守られてきたその暮らしぶりを、未来のひとたちにも伝えていきたい。その思いを森さんは大切にしているのです。
 
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「ジャパングラフ」で紹介した各地の特産品が並ぶ「ナナクモ」の棚

一冊の「ジャパングラフ」ができるまで

ジャパングラフは個人で発行している雑誌としては分厚く、最新の「島根」で全122ページと内容もたっぷり。

取材は約1年かけて対象の県に何度も足を運んで行います。まず初めは、編集責任者である森さんが目的地を定めずに県を車で一周。続いて図書館へ行き、郷土本を熟読。取材対象をまとめていきます。

森さん以外のメンバーは現在、有志で6名。全員が写真家で、山、祭、農業、漁業、特産品など各々に担当を持っています。

「島根」で取り上げたのは、隠岐の島の牛突き、出雲の大土地神楽、五十猛の底引き網漁、木次の妙好人・佐藤忠吉翁、津和野の商店街など。
 
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高島の七川祭り(滋賀号)

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石段商店街・伊香保温泉(群馬号)

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遠野の地駄引き・菊池盛治さん(岩手号)

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和船職人・渡辺忠一さん(愛媛号)

取材先の方からの紹介で新たな取材先を増やしたり、担当外でも惹かれる出会いがあれば取材先に加えていく。そんな自由な取材スタイルの中、唯一の決まりは「そのまんま」を伝えること。それこそが観光雑誌とは違う、ジャパングラフの大切な役割です。

見たこと、聞いたこと、そのまんま

ここで言う「そのまんま」とは、地方で見たこと、聞いたことをなるべく個人の主観ぬきに淡々と伝えていくこと。そのために、森さんは取材先である工夫をしているそうです。

まず、「雑誌をつくっているから写真を撮らせてください」とは、初めは言いません。「何しに来たの?」と聞かれたら「写真が好きで撮りに来ました」とだけ伝えます。

取材ってなると、家を片付けはじめたり、おばちゃんが化粧をしだしたりして(いつもの姿が)写せなくなるでしょ?

そして森さんは同じ取材先へ何度も足を運び、ある日ふらっと、撮らせてもらった写真をプリントして持って行く。そこで種明かしをするそうです。その時に恥ずかしがる人はいても、掲載を許してくれなかった人はいないそう。

「僕ね、おばあちゃんに好かれるんですよ」と得意げな森さん。
 
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川場村の果樹園農家、宮内さんご夫婦(群馬号)

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津和野の商店街「峰月堂」のみなさん(島根号)

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西和賀町の農家(岩手号)

下手でもいいから、伝わる文章を

繰り返しになりますがジャパングラフのスタッフは、全員が写真家。文章を書くプロはひとりもいません。それでも自分たちで書きあげることにはこだわりがありました。

もともと全員が写真家で文章を書くことに慣れてない。それでも自分たちで書くのは、お金がないからです(笑)

文章は下手でも、稚拙でも、心に残る一節の方が大事。だから下手くそでも、実際にそこへ行った自分たちが書きます。

例えば、「隠岐の島で牛突きを見るために、車を指定の駐車場に停めたら、あとからどんどん車が来てスシ詰め状態になり夕刻まで出せなくなった」など一見、牛突きの本筋とは少しずれていることでも目の前で起きたことは、旅日記的にどんどん書いていきます。

どんな些細な記録にも、語っていることがあります。例えば、駐車場に車を停めて、その後出せなくなるなんて街中では起こらないでしょう。でもそれは(牛突きの時の)隠岐の島では当たり前なんです。

まず途中で帰るひとがいない。それに車を出すときでも、「俺のを先に出せ!」みたいなひともいません。

そういう隠岐の島の方の暮らしぶりや人柄を、読んだ人にも想像してもらえたらいいなと、小さなことも書き留めるようにしているんです。

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隠岐の島で牛突きの綱を取る若者(島根号)

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紙面のデザインはいたってシンプル、写真と文章が整然と並ぶ

100年先の未来まで「暮らすことの原点」を伝えたい

地方の観光名所やそこへのアクセス方法、祭りの開催時期など、読者にとって「すぐに役立つ情報」はほとんど掲載されていません。それはジャパングラフが、今はもちろん、100年後やその先の未来を見つめるためにつくられたものだからです。

ジャパングラフ1冊で、その地方の全てを伝えられるとはもちろん思いません。けれど少しでも、その土地の自然と結びついた生き方、人とつながり助け合う暮らしがちゃんと今の日本にあることを、今のひとにも未来のひとにも知ってもらって、誇りに思ってもらえるといいな。

47都道府県完結まで、あと42県。大きな目標を前に、「90歳過ぎても、まだやっているかも知れへんね」と苦笑いしながらも嬉しそうな森さん。

みなさんも一度ジャパングラフを手に、自身の今の暮らしをゆっくり見つめ、また100年先のひとが手にした時にどんな気持ちになるだろうと想像をめぐらせてみるのはいかがでしょうか。

『ジャパングラフ』を読んでみませんか?
『ジャパングラフ』公式ウェブサイト

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この記事は、グリーンズに新しく加わったゲストライターさんに執筆していただきました。 グリーンズでは、ゲストライターを随時募集しております。詳しくは、以下をご覧ください。 http://greenz.jp/guestwriter_wanted/

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