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「わたしたち電力」の次なる展開は「オフグリッドに生きる」!暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子さん×鈴木菜央「OFF-GRID LIFE」対談(前編)

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

「わたしたち電力」の公式ウェブサイトがリニューアルをして、ウェブマガジン「OFF GRID LIFE」になりました。

わたしたち電力“言い出しっぺ”のグリーンズ代表・鈴木菜央(以下菜央さん)と“プロデューサー”の暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子(以下菜衣子さん)らが新創刊した「OFF GRID LIFE」。そのコンセプトは「なにかに依存する“つながり”を減らして、よい“つながり”を増やしていく」。

菜衣子さんは、暮らしかたの冒険をするなかで、気がついたこと、脱原発運動のなかで生まれた違和感。この2つを丁寧にウェブとコンテンツに反映した、と言います。

「わたしたち電力」の再確認。そして「オフグリッド」というキーワードを軸に、エネルギーについて、菜央さんと菜衣子さんが“新しく”語ります。
 
鈴木菜央prof

鈴木菜央
NPOグリーンズ代表/greenz.jp発行人 76年バンコク生まれ東京育ち。2002年より3年間「月刊ソトコト」にて編集。独立後06年「ほしい未来は、つくろう」をテーマにしたWebマガジン「greenz.jp」創刊。07年よりグッドアイデアな人々が集まるイベント「green drinks Tokyo」を主催。著作に『「ほしい未来」は自分の手でつくる』(講談社 星海社新書)。

伊藤菜衣子

伊藤菜衣子(写真左)
2004年写真新世紀入賞。デザイン事務所のマネジメント、撮影スタジオアシスタントを経て2006年独立。写真だけにとどまることなく、草の根ムーブメントのデザイン、ウェブのディレクションも手がける。
暮らしかた冒険家
ウェブディベロッパーの池田秀紀(写真右)と写真家の伊藤菜衣子による夫婦ユニット。高品質低空飛行生活をモットーに結婚式や新婚旅行、住居などの「これからのあたりまえ」を模索中。 100万人のキャンドルナイト、坂本龍一氏のソーシャルプロジェクトなどのムーブメント作りのためのウェブサイトやメインビジュアルの制作、ソーシャルメディアを使った広告展開などを手がける。
現在、「札幌国際芸術祭」にて「暮らし」をアート作品として発表中。http://meoto.co/

エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる、幸せ

菜央 まず「わたしたち電力」は僕らの企画名ではあるんですけど、同時に日本全国を巻き込んだムーブメントにもしていきたいと考えています。

ようするに、再生可能エネルギーを普及させていくことが目的なんです。だけど、ただ「増やそう」と声を上げても増えないわけで。問題は、どう増やしていくか。いろいろ考えた結果、どれだけみんなが楽しそうにエネルギーに関わっていけるかが勝負だな、ということがわかってきた。

だから、エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せを可視化して、そこに入りたい人をどんどん増やしていくことが目標。

その幸せっていうのが、本当に色々ある。例えば、自分で組み立てたミニ太陽光発電システムでパソコンを動かしてする仕事の気持ち良さだったり。サンセルフ・ホテルみたいに、アートとしてエネルギーを捉える面白さだったり。

また、エネルギーを減らしたりつくったりすることは、みんなの協力が必要なことが多い。だから人と人がつながっていく。そうやって幸せが広がっていく。そんな楽しいことを広めていこうぜ、っていうのが「わたしたち電力」です。
 

わたしたち電力の活動の一端。茨城県取手市にオープンした「サンセルフ・ホテル」。詳しくはこちら

菜央 エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、最終的には再生可能エネルギーが「みんなの経済」になってほしい。そして「文化」になってほしい。

たとえば自転車が、「みんなの経済」になっていて、「みんなの文化」になっているように。自転車って、無数の自転車メーカーがあって、まちには自転車屋さんがたくさんあって、多様なスポーツがあって、ファッションにもなってて、何社かが世界の自転車を牛耳ってるってこともないよね?

いままでのエネルギーは、多くの人にとっては、お任せで、自分には関係ないブラックボックスの中にあった。でも、原発事故を経験して、ブラックボックスなんかじゃなかったということがわかったし、エネルギーをどうにか自分でつくりたい、という思った人が多かったと思う。

その後、エネルギーを自分でつくる動きや、市民発電所なんかも増えてきているけど、それをはるかに上回る勢いで、すでにマネーを持っている存在が、純粋に経済的利益を目的に、日本中に発電所をバカスカ建てている。

うちの地元でも、どこの資本かすらわからない発電所が森のなかにいくつもできている。このままでいくと、再生可能エネルギーはまたもや「誰かの経済」になってしまう。でもそれは本来の経済ではないと思うんだよね。
 
世界中の人がつくりあげてきた自転車文化。
世界中の人がつくりあげてきた自転車文化。

菜央 それで、「わたしたち電力」が2013年6月に開始して、まずは一番気になってるエネルギーである「電気をつくる」ってところに集中してやってみようということでワークショップなど始めました。
 
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わた電2

菜央 昨年1年間活動してきたわけど、ワークショップは日本中に広がってきた。それはすばらしいことなんだけど、それでいいのか? そこに留まっていていいのか?という思いがどんどん出てきて。

それでモヤモヤしている時に、2年目としてウェブサイトをリニューアルすることになり、伊藤菜衣子に相談したんですね。

そこでエネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せの「幸せ」に焦点を合わせたほうがいいんじゃないか、という菜衣子の指摘があって。

「それもそうだよね」って僕も思ったし、概念をもっと拡げていくことによって、みんながもっと楽しめるきっかけを提供できたらいいよね、ということで「わたしたち電力」のwebサイトをオフグリッド・マガジン「OFF GRID LIFE」を暮らしかた冒険家と一緒にリニューアルしようと思いました。
 
鈴木菜央1

伊藤菜衣子1

菜衣子さん 最初にわたしが菜央くんに「自分で発電する意味がわかんない」って言ったんじゃなかったっけ?(笑)

それで、電力会社から自立するっていうことの重要性はわかっているけど、それでもわたしは発電に萌えない、っていう話をしたのがそもそもの始まりだったはず。

菜央 そうそう。わたしたち電力の活動に、菜衣子は萌えてくれるんじゃないかと思っていたんだけど(笑)

菜衣子さん だけど、FISHMANSなどを手がけるサウンドエンジニアのzAkさんから「電源が変わると音も変わる」って話をきいたとき、それはちょっと気になるな、思い始めて、そのことを菜央くんに話したんだよね?

発電することが目的ではなくって、発電することによってプラスαになるよってことを提示されたら、発電、やるかもなぁ〜。って。

菜央 まあ、「目的と手段」だよね。発電はあくまで手段で、目的はその先にある。最初は自分でエネルギーをつくるだけで大満足だったんだけど。

僕は2012年に雑誌のecocoloで「一部屋をオフグリッドしてみる」っていう企画をやって、その部屋にパネルやインバーターを導入してオフグリッドライフを少しだけ体験したの。で、実際に自分でオフグリッドしてみて「なんて気持ちいいんだろう「って思ったわけですよ。

実際自分で発電してみて「電気をつくれるようになれる」という爽快感があったよね。「なんだ俺つくれるじゃん!!なんだったの今まで!!」そのギャップがマジ面白くて。同時に電力会社が24時間電力を安定供給するスゴさも逆にわかった。

大げさに言えば、東京電力と僕、同等になったみたいな(笑)。「自分でもつくれるんだけどね、夜は無理だし、大量の電気が欲しい時もあるよね。だからこれくらいのアンペアでいいかな?」みたいなことが考えられるようになった。

ある意味、「まっとうな」感覚で暮らせる気持ちよさもあって、それが僕の中で最初の着眼点だった。

だから、みんなが自分で電気をつくれるようになったら、みんなワクワクするに違いない!と思ってたんだけど、菜衣子から「萌えない」とはっきり言われて(笑)。

菜衣子さん エネルギーのことに関しては、「美味しい」とか「楽しい」とかが盲点になっていると思う。

うちでは電気炊飯器を使わず、土鍋でご飯炊いたりしているけど、それは省エネとか考えているわけではなく単純に土鍋のほうが美味しいし早いんだよ。なのに「エコな奥様」ってレッテル貼られるの。今のところ(笑)。

電気へのアンチテーゼとかではなく、美味しいんだよ!だから、もう戻れないの。ロードバイクで移動しているひとをみて、エコじゃん!とかあんまり言わないでしょう。でもエネルギージャンルでは、ねじれ現象が起こっている気がする。
 
暮らしかた冒険家の食卓。このごはんも、オフグリッドしている。
暮らしかた冒険家の食卓。このごはんも、オフグリッドしている。

菜央 エネルギーは、「目的地」ではなく幸せに至る「道」なんだよね。

菜衣子さん そう。だからその選択肢を掘り起こしていきたい。増やしていきたい。今回は発電とかだけじゃない、みんなのチャンネルを増やすということを念頭において「わたしたち電力」を「OFF GRID LIFE」にリニューアルしました。

(後編に続きます)

(文/アサイアサミ)