ISSUE インクルーシブ

2 years ago - 2014.09.15

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まずは「自分の隣にもいるかもしれない」という想像から。「ピンクドット沖縄」にみる”LGBTと共にある社会”への希望とは [イベントレポート]

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自分が自分らしくいられない、本当の自分を隠さなければならない、そんな居心地の悪さを常に感じなければならなかったら。想像するだけで息苦しくなってしまいそうです。

LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人たちの多くは、常にそんな風に感じながら生きています。

7月21日、沖縄県那覇市で行われた「ピンクドット沖縄」には、LGBTの人たちと彼らを支援する人たちが一同に会し、誰もが自分らしくあれる心地いい空間が広がっていました。

「ピンクドット」は、「LGBTがより生きやすい社会を!」という思いを持つ人たちがピンク色のものを身につけて集まり、その思いを社会にアピールするイベントです。日本では昨年初めて開催され、話題になりました。

今年は、昨年よりさらに多くの1,000人もの参加者が集結。このイベントの模様を知ることで、LGBTが生きやすい社会を求める声を感じていただければと思います。

さまざまな人の笑顔があふれた2回目となるピンクドット沖縄

会場となるテンブス広場は、観光客で常ににぎわう国際通りに面した場所。ピンクで彩られたテントとピンクの洋服などを身につけた人が、行き交う人の目を引きます。
 
stage
オープニングを飾った沖縄の伝統芸能エイサーをもとにした「那覇太鼓」によるパフォーマンス。ほかにもシンガーソングライターやドラァグクィーンによるパフォーマンスが行われました。

会場には、同性カップルと思われる人たちや、小さな子どもを連れたお母さん、海外から訪れた人など、さまざまな人が集っていました。LGBT当事者もたくさん足を運んでいたはずです。

この場では、いつもと違って当事者であることを隠す必要はありません。それは誰にとっても幸せな空間で、たくさんの笑顔が溢れていました。
 
workshop
紅型が体験できる沖縄らしいワークショップ。食べ物の販売、HIV/エイズの啓発を行う団体などのブースが軒を連ねていました。

ブースを出展していた、沖縄南部のセクシュアルマイノリティのサークル「にじまい」の方にお話をおうかがいすると、沖縄ではこういったサークルはまだ少なく、「にじまい」も去年5月にできたばかりとのこと。ピンクドット沖縄が初めて行われたことが大きなきっかけだったということで、このイベントが行われることの意味を感じました。

「にじまい」のようなセクシュアルマイノリティサークルは、全国の大学をはじめ、さまざまなところで増えてきているそう。こういった取り組みが広がり、LGBTの人たちが孤立するのを防ぐことが求められています。
 
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にじまいのメンバー。毎月一度集まってお茶会を開き、恋愛や悩みなどについて語り合っています。

カップル証明書を発行するブースには、証明書を求める同性カップルが立ち寄っていました。日本人とアメリカ人のレズビアンカップルは、10年前にカナダで結婚し、2歳の男の子を育てながら沖縄で暮らしているとのこと。

ただ、将来的には子どものために日本を離れることも考えているそう。その話を聞いて、日本でも同性カップルに対する法的な整備が必要であることを感じました。

たくさんの人に祝福された同性カップルの里帰り結婚式

イベントがフィナーレに向かった頃、いよいよ里帰り結婚式が始まります。これは、カナダで正式に結婚している金城一樹さんとハロルド・チャペットさんのお二人の結婚式を、金城さんの故郷である沖縄で改めて行うというもの。

このための資金はクラウドファンディングで集められ、117人もの人の賛同によって、この日を迎えることができました。
 
two-shot
金城さんをみつめるチャペットさんと、少々緊張気味の金城さん。幸福感が溢れんばかりのふたり。

ふたりが、白い半袖シャツに半ズボンという揃いの衣装でステージに登場。たくさんの人がステージ前に詰めかけ、暖かい祝福の気持ちを届けます。

宣誓書へのサイン、沖縄伝統のウージ(さとうきび)染めのピンク色のストールの交換、金城さんの弟さんからのお祝いメッセージの紹介、そしてブーケトス(2組みの同性カップルがキャッチ!)と、心温まるシーンの連続に涙する人も。

このふたりの様子を見て、いつかは自分たちもこんな風にたくさんの人に祝福されたいと願った同性カップルの人たちもきっといたことでしょう。将来自分もこんな風に幸せになれるんだと力づけられた人もいたはずです。

決して声高に何かを叫んでいたわけではありませんが、ふたりの幸せそうな姿には、力強いメッセージが感じられました。

金城さんも、

金城さん 結婚10年目にして故郷に帰ってきて、LGBTのコミュニティの大勢の人たちの前で結婚式を挙げられたのはとてもうれしいです。

結婚が幸せになる最終目的じゃないですけど、こういう機会を見ていただいて、同性結婚も(同性愛者の人生の)オプションのひとつになればいいと思います。結婚できないのと、できるのにしないのは全然違いますよね。

と語りました。

感動がさめやらぬ中、最後に、ピンクのものを身につけたイベント参加者が集合して記念撮影を行って、イベントは終了しました。

イベントは大成功! けれども残る課題

イベントは大成功に終わりましたが、「LGBTがより生きやすい社会を実現していく」というピンクドットの主旨を実現するには、まだまだ課題も数多く存在します。

ピンクドット沖縄実行委員共同代表である宮城さんに、これからやっていきたいこと、そして私たちにできることについておうかがいしました。
 
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Pink Dot Okinawa当日、Pink Dot Okinawaのキャラクター「ぴんくま~る」を持って。

去年、共同代表になるまでは、LGBTにまつわる活動に関心はあったものの、特にアクティビストとして活動はしていなかった宮城さん。共同代表になり、活動していくうちに問題意識は高まったと言います。

宮城さん 今年から、(LGBTに関する)出前講座みたいなことをしているんですね。そうすると、あまりにも当たり前のことから言わないとわからないんだって思うようなことがあるんです。実感として、(異性愛者の)頭の中に私たちLGBTはいなかったんだと思うこともありました。

ピンクドットなどのイベントには理解のある人が集まるため、そのギャップに驚きを感じたと言いますが、だからこそコツコツ伝えていくことが大切だと感じているそうです。

また、問題意識が高まるだけでなく、宮城さん自身、パートナーとの生活が長くなるにつれ、いろいろな支障も実感していると言います。特に実感したのは、病気になったとき。

宮城さん 去年、新聞記事が載ってレズビアンであるとカミングアウトしたときにちょうど入院・手術をしたので、病院にパートナーを紹介し、「この人に全権を任せてあるので、何かあったらこの人にもちゃんと連絡をしてください」と伝えました。

同性カップルは、ひとりが病気になっても、相手が病状の説明を受けられない、処置に関して判断をくだせないといった問題が生じることがよくあります。ふたりの関係を受け入れられない家族によって、大切な人の入院に付き添えないといった悲しい話も耳にします。

どれだけ永くカップルとして生活や人生を共にしていても、日本の法律上、何ら保証もない状態では、これが現実なのです。

宮城さん 病院などがLGBTを知る機会を持つことは必要だと思います。「LGBTの人がパートナーです」と言ってきたらどう対応するというのも決まってないと思うので、そういうのも必要かなと思っています。

持病を抱え、病院から離れられない宮城さんとしては、これは大きな課題なのだそう。そういったLGBTの人たちはきっとたくさんいるはずです。

LGBTが行きやすい社会にするために今すぐできること

「活動し始めると、やることがいっぱいあるんですよね」と言う宮城さんに、LGBTの人たちが生きやすい社会にするため、私たちがまずできることが何か訊ねてみました。

「常にという言葉がふさわしいかどうかわからないけれど」と前置きをしたうえで、「LGBTの人たちがいることを常に意識してほしい」と、宮城さんは言います。具体的にはどうすればいいのでしょう。

宮城さん LGBTに対するネガティブな言葉がありますよね、そういうのを言わないようにするのも大切なことです。テレビで流れてくるような言葉がネガティブということがわからなかったりもするから、普通に使ってしまうんでしょうね。

テレビなどでよく使用されている言葉(オネエ、ホモ、レズなど)にも、実は差別的なニュアンスを持つものはたくさんあるので、注意が必要です。(当事者が使用する場合をのぞき、ホモはゲイ、レズはレズビアンもしくはビアンという言葉で表すほうがベターだそう。)
 
event
この中に多種多様なセクシュアリティを持っている人がいます。それは日常生活でも同じ。

宮城さん たとえば出前講座で、「私は普通ですけど、友達に(LGBTが)います」って言われることもあるんですけど、そのたびに、普通?って思うんですよね。

普通の反対を示す言葉は異常。ついついなにげなく使ってしまいがちな“普通”という言葉は、LGBTに限らず、マイノリティの人を傷つけてしまう可能性がある注意が必要な言葉です。

だからと言って、言葉にさえ気をつけていればいいのかということではもちろんありません。

宮城さん ただ、(LGBTが)そばにいるかもということを意識してもらいたいんですね。

自分の身近な人間関係のどこかにLGBTがいるかもしれないと想像すれば、言葉ひとつを口にするときも、ほんの少し注意深くなれるのではないでしょうか。

現実の厳しさを感じつつも、今年2回目のピンクドットが開催できたことを宮城さんはとても喜んでいます。
 
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開会宣言をする宮城さん。昨年生まれたドット(点)が輪になった、その輪を広げていきたいと、喜びと希望を語りました。

宮城さん 今回手伝ってきてくれた人たちは、当事者でもそうじゃなくても、去年お客さんとして来てよかったから、今年はがっつり関わりたいという人なんです。

それに今年はいろいろな人が、観光のついでじゃなくて、ピンクドットのために集まってくれているから、大成功ですよね。どんどん沖縄からこの輪が広がっていくのが理想かなと思っています。

いま、LGBTを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。問題がある場合もありますが、テレビなどのメディアが誠実にLGBTの話題を取り上げる機会も増えました。

ピンクドットのようなイベントもさかんになり、ゴールデンウィークに東京で行われた「レインボープライド2014」では、パレードに安部首相夫人も参加し、国内はもちろん海外でも大きく報道されました。

それでも、家庭や会社、学校などの日常生活で、いま目の前にいる人や隣の席に座っている人たちの中にLGBTが含まれているという意識を持っている人は少ないかもしれません。日常生活でこそ、そういう意識を持つことを心がけたいものです。

イベントに集ったたくさんの笑顔を目にして、この笑顔がありとあらゆる場で、もっともっと広がるように、そう心から願いました。

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Pink Dot Okinawa

writer ライターリスト

村山幸

村山幸

greenz シニアライター 1973年京都生まれ。ライター。 好きなことは、インタビュー、ことば、美しいもの、芸術全般。 誰もが自分らしくあれる、平和な社会のために一歩ずつ歩みたいです。

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