ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

2 years ago - 2014.08.02

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持ちモノ“全て”を倉庫に預けて、取り出すのは一日一個だけ!? パンツもないところから始まった1年間の“実験”を映画にした『365日のシンプルライフ』監督×鈴木菜央による「暮らしかた」対談

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あなたは、どのくらいの量の“モノ”に囲まれて暮らしていますか?

すっきりと気持ちのよい人生を送るために、持ちモノを少なくしたいのに、なかなか部屋が片付かない…という人も多いのではないでしょうか。

先日、8月16日公開のフィンランド映画『365日のシンプルライフ』の先行上映と、ペトリ・ルーッカイネン監督とgreenz.jp代表 鈴木菜央さんによるクロストークイベントが行われました。テーマは、モノと自分の関係から見えてくる、次の時代の暮らしかた。今回はその様子をお伝えします。

「人生で大切なもの」を見つけ出す365日のモノがたり

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©Unikino 2013

映画『365日のシンプルライフ』は、監督・脚本・主演を務めたペトリ・ルーッカイネン監督が、彼女にフラれたことをきっかけに、モノで溢れ返った部屋にウンザリし、自分の持ちモノすべてをリセットする365日の“実験”生活です。

映画は、ペトリが全ての持ちモノを倉庫に預けるところから始まります。そして毎日「自分にとって今、必要なモノは何か?」を考えながら、倉庫からひとつずつ持ちモノを取り出していきます。

ルールは4つ。

1. 自分の持ちモノ全てを倉庫に預ける
2. 1日に1個だけ倉庫から持って来る
3. 1年間、続ける
4. 1年間、何も買わない

「モノを買わないと決めたのに、直すより買った方が安い。どうしたらいい?」
「何のために、自分はたくさんのモノを持っていたのか?」

たくさんの問いと葛藤がペトリを襲いつつも、様々な人との関わりのなかで、「自分を幸せにする、人生で大切なもの」を見い出していくのです。
 

映画『365日のシンプルライフ』予告編

2013年のフィンランド公開時には、多くの“実験”フォロワーが生まれて、若者の間で一大ムーブメントになったのだとか。

この映画は、ただ観るだけではなく、自分とモノから“自分自身”が見えてくる映画なのです。

暮らしのサイズを“小さく”すること

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まずは、暮らしのサイズを“小さく”することを目指して、千葉県いすみ市で、土地と35m2のトレーラーハウスを購入し、家族4人で引っ越しをした鈴木菜央さんが、引っ越すまでの“断捨離”について話しました。

150m2の賃貸住宅から35m2ですからね。家のなかのあらゆるモノについて見つめ直すいい機会でした。

例えば、消費電力が500W以上の生活家電は使わないと決めて、電子レンジをようやく手放しました。800冊以上持っていた本を100冊まで整理したり、自分にとって必要最低限なモノの量はどれくらいなのか?を徹底的に考えました。

僕は、こうした暮らしのサイズを小さくすることを通して「小さくて大きな暮らし」がしたいと思っています。小さくすることで大きな幸せが得られる。

例えば、働く時間を減らして、家族や友人との大切な時間を増やす。買いモノを減らして、つくったりもらったり、あげたりすることを楽しむ。住宅ローンを抱えずに、収入や将来への不安から自由になることです。

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「知らず知らずのうちに、自分自身のサイズ感よりも大きなモノを背負わされているということもある」と話す鈴木菜央さん

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鈴木菜央さんの「必要なモノ100のリスト」も公開!何はともあれ、まずメガネとのこと(笑)

映画では、倉庫から一番最初に取り出したのは「○○(映画を観てのお楽しみ!)」でしたね。世界中の観客が、「なるほどー!」と膝をたたいたと思います(笑)。

僕が映画を観て、そして引っ越す際にモノと徹底的に向き合って気づいたことは、減らすよりもゼロから考えたほうがよっぽどスッキリするということ。人生という旅に出るつもりで減らせば、難しくはないんです。そして、自由になることは、楽しい!ということですね。

「人生で大切なモノ」って何だろう?

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そして、ペトリ監督と鈴木菜央さんによるクロストークでは、ペトリ監督がこの映画をつくるに至った経緯やその後の影響などが語られました。

最初の質問は、この映画をつくろうと思った背景について。

自分の部屋に、幸せを感じなかったんです。あらためて部屋を見渡してみると、モノが限度を超えて溢れていて、モノが憂鬱感さえ与えるような存在になっていると気づきました。

それに、モノが増えているのに、自分自身は何も変化していなかった。だから、本当に必要なモノを見極めることができたら、きっともっと幸せになれると思って。

荷造りをしながら、自分がモノを選び取るリアルなプロセスこそ価値があって面白いと考えて、撮影することにしたんです。

そして、映画をつくってよかったことは、「知らず知らずのうちに習慣になってしまった“モノを買うこと”を、ゼロから習慣をつくりなおすことができたこと」と語ります。

今回の“実験”を通して、一番学んだことは?という質問には、ペトリ監督は次のように答えてくれました。

モノは、生活をより便利にしてくれると思っていたんですが、自分が思っている以上にエネルギーを消費させられると気づきました。

例えば車。あれば便利だけど、買って終わりではなくて維持するために労力やお金がかかる。駐車場代、ガソリン代、自動車保険…と、モノがあればあるだけ、モノにまつわるケアも必要になります。

この“実験”を通して、モノは人間関係と一緒だと思いました。親友とご飯を食べると有意義な時間になるけど、10人になるとガヤガヤして、全員と同じようには話せなくなる。

50人になると一人一人とは話せないし、一日が終わるとぐったりと疲れてしまう。モノも同じで、持ち過ぎるとひとつのモノと接する機会も少なくなるし、大事にしなくなるんですよね。

ちなみに、映画を撮影した1年の実験生活のうち、最初の3ヶ月は洋服が1着しかなかったのだそう。「洋服がたくさんあると何を着るか迷うけど、考える必要もなかった」とペトリ監督は笑います。
 
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会場の参加者から「1年の実験が終わって最初に買ったものは?」と聞かれて、「歯ブラシ」と答えたペトリ監督。実験が終わっても3〜4ヶ月何も買わなかったのだとか。

買わないことに慣れすぎて、お店に行こうとも思わなかったです。買うことに恐怖さえ感じましたよ(笑)。実験が終わってからも、モノはそれほど増えませんでした。

自分を変えようとするときに、よく人は旅に出ますが、僕は内なる旅に出たかったんですね。旅から戻ってもとても心地いい状態が続いています。

実際にこうして日本に来ているように旅もしますが、旅に必要な荷物をリュックとスーツケースに詰めると、家の中にモノが残らない。どこに行ってもそこが家になるから、どこにでも自分の居場所があるんです。

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近くの人とシェアタイム。もし全てのモノを倉庫に預けたら、何を最初に取り出す?など、会場は大いに盛り上がりました

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ペトリ監督と鈴木菜央さんのクロストークから、「自分にとって必要なモノは何か?」といった考えを深めていきます

最後にペトリ監督は、彼自身の“モノと自分の関係”についても話してくれました。

この実験は“モノ”がテーマだったんですが、徐々に自分の生き方そのものへの問いに変わっていきました。

自分がどうしてこんなにモノに執着しているのか、自分自身を見つめ直してみると、愛が欲しくてモノに囲まれる生活になったのかなと。自分自身に正直になっていくプロセスを経て、ありのままの自分を受け入れることができるようにもなりました。

人によって、ほどよい状態、心地良い状態は異なると思いますが、それを見つけることが大事だと思うんです。大好きなお菓子でも、毎日食べていたら何の感動も生まれませんからね。

喜びや満足を得るために、適度な状態を見つけること。それがその人にとって一番健全で、満足感を得られる“幸せ”な状態なのだと思います。

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あなた自身とモノとの関係は、健全ですか?

ひとつひとつのモノとの関係を見直して、モノにエネルギーを消費されてしまってはいないか、立ち止まって考えてみませんか?

映画『365日のシンプルライフ』は、8月16日(土)より、オーディトリウム渋谷他全国順次ロードショー!ぜひ足を運んでみてくださいね。

これはあなたとモノとのストーリー。あなたのモノからあなた自身が見えてくる
映画『365日のシンプルライフ』を観てみよう!

writer ライターリスト

増村 江利子

増村 江利子

greenz シニアエディター/シニアライター 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。一児の母。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。八ヶ岳の麓の賃貸トレーラーハウスで、“小さく暮らす”をモットーに、DIY的暮らしを実践中。 facebook:http://www.facebook.com/e.masumura twitter:https://twitter.com/eriko_n

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