一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

スマホで東ティモールに格安運送サービスの導入を目指す「tranSMS」のその後 [クラウドファンディングのその後]


プロジェクト・リーダーの瀬戸義章さん

クラウドファンディングもすっかり定着し始めていますが、資金調達に成功した人たちの「その後」って、意外と紹介されないものですよね?そこで、グリーンズではそういう人々の姿を追ってみています。

今回は、激しい内戦の末にインドネシアから独立し、21世紀最初の独立国になった東ティモールで、スマホを使った格安運送サービスの導入を通じて、農村と都市を結びつけ国を活性化したいと取り組む「tranSMS」の瀬戸義章さんに話を伺いました。
 
transms
東ティモールの貧困層のために【格安運送サービス】をつくります! 

高馬 簡単に利用できる物流支援アプリを搭載したスマホを提供することで、格安の運送サービスを構築することが目的ですが、そもそも、なぜ東ティモールだったのでしょうか。

瀬戸 2006年に新卒でリサイクル・リユースの企業に勤めたのですが、2010年に退職して東南アジアを旅しました。そのときに「コペルニク」というNPOと出会ったのです。

彼らは、ゴミを燃料にできるコンロとか、転ばして運べるポリタンクなど、インフラがない地域でも役に立つテクノロジーを世界に届ける活動をしているんです。その活動の場のひとつが東ティモールだったのです。そこで「コペルニクス」に、その活動を見せてくださいとお願いしたのがきっかけです。

高馬 なるほど。でもなぜ、、そこから物流の整備ということになったのですか?農村部から都市への運送費には、農村部の月収の7倍程度もかかるそうで、とても農村部の方々には負担が大きいと思いますが。

瀬戸 そもそもそれまでのトラックは、都市から物資をのせて農村部に届けていましたが、帰りのトラックの荷台は空です。それではもったいない。だったら農村部の農畜産物をのせて帰ればいいのでは、と考えたのです。そうすればトラック所有者の運送業者も儲かるし、農村部の人々も助かります。
 

都市から運ばれたトラックの物資

高馬 それでそのWIN-WINの関係性を構築するために、スマホのアプリを開発したわけですね。

瀬戸 その通りです。READYFOR?で資金を募ったときは、アプリは完成していませんでしたが、資金が調達できたので完成させることができました。2013年5月に、そのアプリとスマホを数台用意して、現地で説明会を開きました。このアプリは運送業者のリーダーに運送スケジュールを組んでもらい、農村部の方々に知らせて帰りの荷台に積む農畜産物を返信してもらうというものです。
 

アプリの画面

高馬 その効果はどうだったのでしょうか?

瀬戸 残念ながら半年後の2013年11月に、現地を再訪した時にはほとんど使われていませんでした。

高馬 それは、なぜでしょう。

瀬戸 そもそもスマホに慣れるというハードルがあって、その後にこのアプリに慣れるというハードルがありました。

このアプリは、利用する前に農村部の名前を登録して、さらにその農村部の人々の名前を登録し、その上で農村部と都市部との紐付けをしルートを決定してから、メッセージを送信できるというものでした。相当ハードルが高かったのだと思っています。ただ、それらを反省して、もっとシンプルなアプリを開発しました。

高馬 そういうアプリの導入以前にも、帰りのトラックの空の荷台で都市部に戻るよりは、何かしら農村部の産物をのせて帰るほうが得だと思いますが、なぜそういう状況がなかったのでしょうか。

瀬戸 東ティモールでは、農村部と都市部の生産物が相当に偏っているのです。国民の7割が農業従事者といわれていますが、実態は農畜産物も隣国のインドネシアに頼っている状況です。東ティモールの農村部は、いまだに自給自足的な生産能力以上のものが育っていません。現地の大学教授は「東ティモールには、農業を含めて産業と呼べるものがない」となげいています。
 

農村部の物流は困難を極めます

高馬 それにしても、トラックを所有する運送業者には新たなビジネスチャンスだとは思いますが。

瀬戸 そもそも”運送費”という概念自体がうすいんです。たとえば、あるトラック所有者は農村部ですべての農畜産物を買い取って都市部に持って帰り、その利ザヤで儲けています。

運送業者というよりは、トラックを所有することによって農村部の産物を買いつけて都市部で売る商人です。そういうビジネスモデルが定着しているのです。また、彼らはファミリー・ビジネスとして確立しているので、そこを変えるのはむずかしいですね。

高馬 ということは、彼らのファミリービジネスにとっても「儲かる商売」だと認知してもらうことが必要ですね。

瀬戸 その通りです。彼らと数カ月一緒に行動することで、実感してもらう以外にないですね。幸い、50日間程度現地に滞在してくれる学生さんがいます。ちなみに東ティモールの大統領にも賞賛していただいているので、今後も中長期にわたって現地に滞在してくれる人を見つけたいと思っています。

高馬 今後も、東ティモールでの活動を続けられますか。

瀬戸 もちろんです。このプロジェクトを始めたからには責任があります。現在は8人のコア・メンバーがいますが、引きつづき進めていきます。
 

(インタビューここまで)

「tranSMS」の活動のその後、いかがでしたか? 途上国は、まだまだ多難な道を歩んでいます。海外では、日本人の力を待っている人々がいるんだな、というのが印象的でした。こういう活動こそ、継続的に応援していくことが大事ですね!