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いま福井中心市街地が面白い!まちづくりセンター「ふく+(たす)」&「まちの保健室」に学ぶまちづくりのポイントとは?(中編)

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街には、市役所や区役所、PTA、自治会、商工会議所等など、それぞれの役割を持った機関がたくさんあります。また、テーマ毎に活動するNPOやコミュニティも存在します。では、「自分の住んでいる街を盛り上げたい!」と思ったときには、一体どこへ行き、誰に会いに行けば良いのでしょうか?

今、日本の各所に立ち上がっている「まちづくりセンター」や「フューチャーセンター」という場は、ひとつのヒントになるかもしれません。

2013年7月末、福井の中心市街地に「ふく+(たす)」という福井まちづくりセンターがオープンしました。さらに、お年寄りのコミュニティや、生き甲斐や仕事をつづけるための応援機関として「みんなの保健室」も同時にオープン。

この立ち上げや運営には「NPO法人まちづくり福井会社」に所属するメンバーが大活躍しています。それぞれ、どんな機関で、どんな方なのでしょうか。

前編をまだご覧になっていない方は、そちらからお楽しみください。

「ふく+」について

2013年7月末、福井駅からメインストリート沿いに徒歩4分の誰でも気軽に立ち寄れる場所に、福井市まちづくりセンター「ふく+(たす)」がオープンしました。

開いているのは月・火(祝日の場合は営業)を除く10〜19時。スタッフが常駐しており、オープン時間中は誰でも気軽に訪れ、スタッフと世間話を楽しんだり、資料を閲覧したりすることができます。

これを運営しているのは、第3セクターや株式会社ではない、市民団体です。3年間は市からの委託事業として運営することが決まっており、現在は月に1度、市と事務局の間で定例会がもたれ、事業の方向性を検討しながら運営されています。
 
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向かって右側は一面本棚。福井の歴史やまちづくりに関する専門資料などが充実しています。懐かしい学校の椅子に座れば、みんなで授業を受けているような和やかな雰囲気に?

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向かって左側はホワイトボードへは、「ふく+」へ集った人の意見や想いがびっしり書き込まれています

例えば、駅前中心市街地の魅力を再発見しようと、みんなで街歩きをして、歴史的な認知を深めたり、街中での遊び方を考えるワークショップや、モデル物件に対して、リノベーションを施してコワーキングスペースをつくるなど、有効活用の方向性を模索するワークショップ、もしくはフラワーアレンジメント等の楽しいワークショップも行なわれています。
 
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2014年3月27日に行なわれたワークショップの様子

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「コミュニティをつくることも、建築の仕事だ。」

「ふく+」の立ち上げに尽力し、現在運営管理責任者の丸山さんにお話を伺いました。

丸山さんはまちづくり福井株式会社が開催した事業「まちの担い手づくりプロジェクト」及び「まちの担い手実践プロジェクト」の参加者のおひとりで、本業としては「丸山晴之建築事務所」を構え、建築業を営んでいます。
 
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丸山さん 僕は愛知出身ですが、妻が福井出身なんで福井に住み、福井で事務所を開いています。建築の同業者と話していると、福井駅前開発や中心市街地活性を他人事のように感じ、距離を置いている人は多いんです。「金沢があるからいいや」「郊外で仕事すればいいじゃないか」というように。でも、それはちょっと違うだろうと。

自分たちの住んでいる街をどう快適にするか、自分たちの住んでいるコミュニティをどうつくるか、そういったことを含めて“建築の仕事”だと思っているので、プロジェクトに参加しました。

丸山さんは「きちづくり福井会社」に所属し、企画会議の中で「本の企画をやりましょう」と提案。「タビスル文庫」の実行委員を立ち上げます。
 
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丸山さん 信濃大町や小布施で実施されている「まちなか図書室」を参考に、福井でも本を通して人々が交流するような企画を実施したいと思い立ちました。

本は企画に賛同した人や地域の図書館に提供してもらっています。本を借りたい人は “文庫宿”で好きな本を借り、読み終わったら他の文庫宿へ返却してもらうのがルールです。本も人も “旅する”仕組みです。

雑貨屋さんやカフェへお声掛けして文庫宿になっていただき、5カ所からスタートしましたが、今では他県にも広がり42カ所にまで増えました。

丸山さんは、通称「UDC(アーバンデザインセンター・仮)」と呼ばれている会合にも参加しており、ここで“まちづくりセンター”の構想が浮かび上がります。

丸山さん 市が市民との恊働事業として“まちづくりセンター”を運営することを決め、まちづくりセンターの運営団体が公募されることに。「きちづくり福井会社で応募しましょう」と代表らと話し合い、市長プレゼンへ向けて準備をしました。

きちづくり福井会社の4名でプレゼンへ望み、無事に採択され、2013年7月にオープンしました。

「ふく+」は展示会スペースとしても無料で利用することもでき、口コミを経て会期を空けることなく様々な展示が行なわれています。今後、ますます多種多様な人々が出会いつづけ、より大きな流れを生み出していくことが重要だと語る丸山さん。

丸山さん 福井の中心市街地活性を考えたり、一緒に活動する仲間をどんどん増やしていきたいと思っているんです。そのために、今後は、他団体とイベントを共催するなどの連携を考えています。

“まちを盛り上げる”となると、テーマは大きく、その手法や切り口は様々。どの様に主体者を生み出し、実現へ向けて動き出すのか、取り組みの試行錯誤はまだまだ続きます。

まちづくりのポイント

人が集い、企画が生まれ、スタートアップするときには、「楽しそう!」「盛り上げたい!」といったポジティブで大きな力が生まれます。ところが、“まちの人”には「日々の生活(例えば家族の行事など)」や「仕事」など、日々こなさなければならない役目は多く、忙しいもの。

まちづくりは分かりやすい「責任」や「売上」によって管理されているわけではないため、一定の期間を過ぎるとチーム全体のポテンシャルが落ち、中だるみや、マンネリ化の時期が訪れることも考えられます。

それを防ぐために有効なのが、やはり、“新しい風”である「新しい仲間」の存在。さらに「タビスル文庫」のように具体的な取り組みがあると、前進しやすくなります。

具体的な取り組みが決まっていない段階では、「活性化」を掲げて一体何を目指すのか。まちを構成する多様な人との対話を交え、活性化の具体的な中身や目標(実現できそうなことを前提に)を明らかにしていくこと。

そういった交流を持っていることで、ある時に不思議と条件が噛み合い、「ふく+」が立ち上がったようにガンっと動き出すことがあるように思います。

「まちの保健室」について

「ふく+」と同時の2013年7月末に、同中心市街地内・新栄商店街の中に「オレンジホームケアクリニック」が運営する「まちの保健室」がオープンしました。
 
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2007年に、総人口に占める65歳以上の割合が20%以上を越えた日本。これからのまちづくりは、お年寄りの存在抜きには語れないでしょう。

高齢者医療や介護といった代替医療を行なうオレンジホームケアクリニックは、健康面に留まらず、街で暮らす生活者としての高齢者の、生き方そのものをサポートしようと2011年2月に「ふくいまちケアプロジェクト」を立ち上げ、そのプロジェクトの一環として2013年7月に「みんなの保健室」を開設しました。
 
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明るくてカジュアルな雰囲気の「みんなの保健室」

オープン日時は月〜金曜日の10〜15時まで。スタッフはナースが1名と、社会福祉系などの一般スタッフ1名の2名が日替わりで常駐しています。小学生から70代くらいまでの多様な年齢の人々が5〜10名訪れ、2014年5月末の段階では1200名ほどが訪れました。
 
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さらに、カフェ「トマリギ」という認知症カフェを毎月開催しており、認知症の勉強会を行なったり、フリーマーケットや百貨店の健康フェア等に呼ばれて“出張保健室”として健康相談会や認知症チェックを行うなど、積極的にまちへ出ていき、まちの人々との接点を持っています。
 
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2013年12月7日に、大安禅寺で行なわれた認知症カフェ「トマリギ」の様子

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出張保健室の様子

「お年寄りを街の登場人物に。」

プロデューサーの広部さんにお話を伺いました。
 
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広部さん 「まちの保健室」には、思いのほか色んな人が訪れます。学生さんが雑談しに来たり、高齢者の方もみんな「健康相談」と言いながら色々なことをお喋りして、話していると思考が整理されるのか、自分で納得して帰っていくケースが8割くらいです(笑)。後の2割は本当の意味で健康の相談に来られています。

血圧測定や健康相談は全て無料。こういったヒアリングを重ねながら、潜在的なニーズを掘り起こしたり、次なる展開を模索中です。

広部さん 在宅医療の現場にいると、高齢者の方たちはたくさんお金を持っているわけではなく、医療保険や介護保険を駆使して生活をしている現実が見えてきます。

“夫婦でもう一度旅行へ行きたい”といった“生きるための楽しみ”は保険適用外なので、それらは公益事業や社会事業として取り組もうと、プロジェクトを立ち上げました。

生きる楽しみは、旅行やレジャーに留まらず、“仕事”であることも多いはず。

広部さん 例えば足の具合が悪くて会社を辞めなければならない、遠方の事務所を畳まないといけない、等というケースはとても多いんです。介護保険ではそういうサポートはできないし、そもそもどこで相談すればいいのかも分かりません。健康に不具合があると、“みんな夢をあきらめていく”って僕らは表現しています。

お年寄りが仕事をあきらめれば、“街へ税金を収める人”から、“支えてあげる人”へ変わり、経済的にもマイナスです。広部さんたちは、一度郊外へ出ていったお年寄りを、街の登場人物として駅前に呼び戻すことも考えているそうです。

広部さん 空き店舗、空き家を使ってお年寄りが最期を迎えるような居場所づくりは当然考えていますし、ニーズも増えています。医療サポートの体制を具体化すれば実現できると思います。

また、地域の人々同士で支え合う仕組みや意識づくりも大切だと思っています。「きちづくり福井会社」に参加して、分野を超えたアイデアを考えています。

福井市内では、実際にお年寄りのホスピス(最期を迎えるケア)や医療介護を行なう施設を立ち上げる動きも出てきています。

広部さん みんなの保健室では、お年寄りの相談に乗りながらニーズや課題を見つけ出すことからスタートしていますが、直接的な事業化は難しいと感じています。ただ、病院や行政からのニーズがあり、連携する形で新しい取り組みが生まれるかもしれません。

実際に竹田という無医村地区では医療や介護のワークショップを実施したり、「みんなの保健室」を出店するための検討が始まっています。

ところで、福井のあちこちを飛び回り大活躍中の広部さん。福井で生まれ育ったものの、結婚してから2011年までは広島に住んでおられたとか。

広部さん オレンジホームケアクリニックの院長が、高校の同級生なんです。高校でも特別仲が良かったわけではないのですが、ある日突然電話がかかってきて、“新しい事業を始めるから、福井へ戻って手伝ってくれないか”と。それが嬉しくて、またその想いに応えたくて戻って来ました。

広島出身の奥様の理解を得て、晴れて福井に戻った広部さんの活躍は、まだまだ始まったばかりです。

まちづくりのポイント

高齢者にしろ、サラリーマンや、子育て主婦層、学生にしろ、家族以外の、そして同世代ではない第3者とネットワークを持っているか、いないかというのは人生の豊かさを大きく作用するポイントのひとつかもしれません。

「健康」とは、若い人〜お年寄りまで世代を越えた人々共通の話題であり、結果「みんなの保健室」が本当に“まちの、みんなの保健室”として機能している点が面白いと感じました。

医療や介護という、決して軽くはない話を、カジュアルに、気軽に話せるような場ができたこと。そこで生まれたコミュニティから、今後どんな取り組みへ発展するのかとても楽しみです。

後編につづきます