ISSUE まちづくり

2 years ago - 2014.06.11

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プロの技を楽しく学ぼう!神戸の子どもたちとクリエイターが一緒につくる夢のまち「ちびっこうべ」

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子どもたちがつくる夢のまちは、売り手もお客さまも子どもたち。

最近は子どもたちと仮想のまちをつくるイベントが全国各地で開催されていますね。これまでも「Kids City! 天王寺」などを取り上げてきましたが、今回ご紹介するのは、神戸の子どもたちとクリエイターが一緒につくる夢のまち「ちびっこうべ」です。

ちびっこうべとは社会のしくみや仕事について楽しく学び、自分たちでお店をつくりあげ、そのお店の店員になって働く体験プログラムです。

2012年は夢のまちの実現に向けて、小学校3年生から中学校3年生の神戸の子どもたち(なんと約250人!)がシェフ、建築家、デザイナーといった広い意味でのクリエイターたちと「食」をテーマにいっしょにまちづくりを行いました。

今回は、この夢のまちを支えたクリエイターや事務局スタッフの方に、これまでの経緯と2014年に開催される2回目のちびっこうべの意気込みをお聞きしました。

デザインを子どもたちにより身近に感じてほしい

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「ぎんこう」では子どもたちが仕事を体験した後に専用通貨「キート」を受け取ることができる

そもそも「ちびっこうべ」は、2012年8月に開館した「デザイン・クリエイティブセンター神戸(以下KIITO)」のオープニングイベントとして、「暮らしを豊かにするデザインを子どもたちにより身近に感じてほしい」という思いからはじまりました。また、神戸のクリエイターが一緒に子どものまちづくりに取り組むことで、地域のネットワークを築くというも狙いも。

KIITOスタッフの中野優さんはその出発点についてこう語ります。

中野さん 「ちびっこうべ」はドイツで30年前から開催されているミニ・ミュンヘンをヒントにしたものです。

ミニ・ミュンヘンは子どもの創造力とプロの技があわさり、子どもがインパクトなどの工具を使って家をつくったりしながらまちをつくります。そんなふうに専門家の手にかかった本物のまちにしたい、学芸会的に子どもが好きにつくるだけのまちにはしたくないと考えていました。

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中野優さん

その考えのもと、副センタ―長の永田宏和さんやスタッフが「ちびっこうべ」の思いを伝え、企画に賛同してくれるクリエイターとの絆を深めていきました。その後、「ちびっこうべ」に共感したクリエイターが、シェフチーム、建築家チーム、デザイナーチームに分かれて、それぞれ子どもたちとワークショップを行うことに。

参加したクリエイターからは「自分たちが誇りを持って取り組んでいる仕事を、神戸の子どもたちに伝えられることが一番のモチベーション」という声をいただいたそうです。ではそのプロセスはどんなものなのでしょうか。

作戦会議!

まずは子どもたちとシェフ、建築家、デザイナーチームと合同でどんなお店にしようかと作戦会議がはじまります。
 
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チームは全部で15。3つの職業それぞれ5人、合計15人が1チーム。

方向性が決まると、シェフチームを希望した子どもたちは、プロのシェフから食材についてしっかりと学び、メニューのイメージを考えて実際にお店の厨房で調理を学びます。
 
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メニューやもりつけを考えて、シェフの仕事場へ。

一方で建築家チームの子どもたちは、作戦会議で話したお店のコンセプトにあわせた夢のお店をスケッチし、模型を制作し、実際の建物をつくっていきます。
 
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スケッチや自分たちがつくった模型を参考に、お店の建物や家具をつくっていく。

その頃デザイナーチームの子どもたちは、そのお店のロゴマークや看板などの「伝える」ツールをつくります。そんなプロセスを丁寧に積み重ねて、夢のまちが誕生するのです。
 
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店先に置く看板だけでなく、店員が身につける動く看板も制作。かわいい「サンドイッチマン」が誕生。

クリエイターとのミーティングの中で一番たいへんだったのは、子どもたちに自分のしごとを教えるというのは日頃あまりしていないことなので、何をどこまでどう教えるのか、という「子どもとの関わり方の度合いをいかにして決めるかだった」と中野さんは振り返ります。

中野さん 話していくうちに技術的なことやお客様との関係だけでなく、「仕事に取り組む姿勢だとか、どういう考えで働いているのか本質的なことを伝えたい」という思いをもった方ばかりだと気づきました。だから大人は、子どもたちの考えを尊重した上で、あくまで子どもたちが自分たちで進むためのほんの手助けをする、という方針になりました。

夢のまちをつくるプロセスが、子どもたちの創造力を引き出す

実際に夢のまちづくりをサポートしたシェフチームの西川功晃さんはこう語ります。
 
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神戸北野にある人気のパン屋「サ・マーシュ」シェフ、西川功晃さん。

西川シェフ 豊かな時代になっているからこそ、本当の意味で子どもたちにモノを買う楽しみや食べる楽しみを伝えていかなければと思っていました。それは単なる料理教室では伝わらないので「ちびっこうべ」はちょうど良い機会をいただきましたね。

神戸・阪神間の個性的なレストランやショップが集まり、1年に一度、1日限りの“市”を開く「神戸マルシェ」などの活動を以前からされてきたことで、畑違いのお店や実力のあるお店と知り合う機会が増えて、刺激を受けてきたという西川さん。

西川シェフ どんどんシェフとのつながりが増えていく中でみんなが共通して話していたのは、「食」というものに対して少し、世の中がおざなりになっているから、社会の中でいろいろな問題が起きているのでは、ということでした。

個人個人がちゃんと本物を選ぶための知識をもってもらいたいという思いから、パンのつくり方だけでなく、パンとは何か、といったことをじっくりお話しされたといいます。

西川シェフ 子どもの頃、大人のお手伝いをしたときに、誇らしいというか特別な思いを体験することができました。だから彼らにも家にスキルを持ち帰ってもらって、親といっぱいお話してもらいたい。話すことで満たされているからこそ気づかなかったことを知ってもらいたいんです。

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ちびっこうべのまちで提供するメニューを実際につくり、接客や包装などについてのレクチャーも受ける。

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西川シェフが担当した6班の夢のお店。名前はポテTOベーカリー。

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「外観、内観、デザインに感動しました。お店の中が迷路というコンセプトだったのですが、内装がパン生地にも見えるデザインなんですよ」

以上のようなプロセスをそれぞれのチームでも行われ、子どもたちの創造力がどんどん育まれていきます。あるデザイナーチームの方からは、こんな話を聞きました。

デザインというのは描きたい絵を描くとか、つくりたいものをつくるだけではないということを知ってほしいと願いました。そうすることで、日々の暮らしの中で困ったり悩んだり、役に立ちたいと思ったときに「何とかするチカラ」が子どもたちに芽生えるのではないかって。自分で考えて、行動できる子どもたちが増えれば、未来はきっと今よりステキになりますよね。

子どものまちは、神戸の未来。

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子どもにとっては創造的な教育の場となり、協力した専門家にとっては普段えることのでない新しい刺激を感じ取ることができたよう。

「ちびっこうべ」終了後は、保護者の方がお礼に来られたり、電話やメールで子どもの成長を感じたというメッセージが多く届いたそう。

「クリエイターのみなさんが協力してくれることで、学校だけでは学べない、クリエイティブな体験をする機会になったのは大きい」と中野さん。2014年は、シェフ、建築家、デザイナー、それぞれのチームの子どもたちが協力し合い、職業ごとの横のつながりをもっとつくっていきたいと考えているようです。

中野さん 「ちびっこうべ」のキャッチコピーである、「子どものまちは、神戸の未来。」という言葉がまさしくこの活動をあらわしていると思います。

クリエイターもサポーターもみんなボランティアで集まり、一緒になって子どもたちのまちづくりを手助けする。そして、子どもたちが自由な発想でまちをつくっていくことで、未来の神戸のまちをつくっていくことにつながれば、と思います。

神戸にお住まいのみなさん、クリエイターでなくてもサポーターとして参加することができます。ぜひ体験してみてはいかがでしょうか?

(写真撮影: 森本奈津美)

writer ライターリスト

狩野哲也

狩野哲也

greenz ライター 京都生まれ、大阪在住。雑誌の編集者兼ライターを経て、現在は冊子やwebの企画編集執筆から、イベントの企画、NPO/NGOの広報アドバイス、企業や大学、行政のプロジェクトをデザインするなど、さまざまな領域で活動中。遊びと仕事の波打ち際で、流浪のトークイベント「サロン文化大学」 を運営しています。

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